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「マリー様!髪をおとかしいたします!」
「いいよ、そのくらい自分でやる」
「いえ!やらせてください!救っていただいたご恩を返したいのです!」
リズはそう告げるとクシを持ち私の髪をとかしてくれる。
リズは母のケーキを落としてしまい解雇を宣言されてしまってたあのメイドさんだ。
今は私が母にお願いをして、専属のメイドさんになってもらっている。
別に善意からではない。
しっかり打算的な考えの基だ。
原作のマリーはメイド達にきつく当たっていた。
けれどそのせいでメイド達に恨まれ、メイドさん達は裏で主人公達とつながり、
たくさんの情報を流されてしまっていたのだ。
魔法の弱点とか、帝国の穴とかをね。
貴族達は彼らがいなければまともな生活はできないのだから、優しくするにこしたことはない。
常に隣にいる子が、敵と繋がっているのは怖すぎる。
だから助けた。それだけだ。
それだけなのだけれど、肝心な彼女は子犬のように私の後をついてきては、マリー様!マリー様!とせわしない。
どうやら私が解雇を撤回してくれたことに相当恩義を感じているようだった。
「私には弟が二人いるんです。おばあちゃんと一緒に暮らしているんですけど、
私からの仕送りがないととても食べていけなくて。だからマリー様は私達の命の恩人なのです!」
髪をとかしながらうれしそうにリズは言った。
命の恩人などとは、大げさだなと思った。
そもそも彼女ら家族が困窮しているのは貴族の重税が原因だ。
私は加害者側なのだ。
確かに助けたのかもしれないが、それはただのマッチポンプ。
助けた理由も打差ありき。賞賛されるには値しないよ。
「いえ!マリー様は他の貴族様と違ってやさしいです!」
それは完全な失言だよ、リズ?
うれしいけどね。
絶対に他の貴族の前で言ったらダメだよ、と、リズを軽く叱っておく。
リズは、すみません、またやっちゃいました、としょんぼりしていた。
私はまだ子どもだ。
さすがに両親や他の貴族には逆らえない。
失言をしてしまえばもう庇ってやれないのだ。
人間関係で大切なのは何をいうかよりも、何を言わないかだ。
彼女には幸せになってほしい。だから気をつけてもらわねば困るんだ。
せっかく手に入れた敵ではないメイドさんなのだから。
こうして私は新しい仲間?を手に入れた。
「マリー。君は優しい子だ。しかし貴族たるもの優しいだけではダメだ。
特に平民にはそれ相応の態度を示せ。それが貴族としての責任なのだ。平民なぞに貴族が頭を下げる必要はない」
けれどリズを専属メイドにしてから、少し父に叱られてしまった。
どうやら私のリズの扱いが適切ではないらしい。
そして貴族の世界では父が正しく、私は異端なのだ。
素直に、
「申し訳ございません、父上。以後気をつけます」
と謝っていく。
先は長そうだなと思った。
次の日。
「このままでは帝国は滅びますぞ!改革を!改革をお考えください!」
皇帝陛下に意見を述べた貴族が兵士に連行されていく所を目撃してしまった。
罪状は、皇帝への侮辱。
神に権力を与えられし陛下が政策を間違えるはずがない、とのことであった。
私以外にも帝国の問題を認識している人がいるようだ。
貴族にも話の分かる人がいるのは心強い。
だがそれ以上に恐怖が襲ってくる。
あれは見せしめだ。
帝国の伝統を、品位を汚そうモノなら貴族であろうとも容赦はしないという証明。
私が思っている以上に、帝国の改革は難しいのかもしれないと思った。
「マリーか。いくつになった?」
「5歳になりました、陛下」
「そうか。顔は母に似たな。聞いたぞ?父と同じ青い炎が使えるとも。精進せよ。
そして帝国にふさわしい振る舞いをしろ。おぬしには期待しているぞ」
「はい、陛下」
そしてただ頑張るだけではだめだとも思い知った。
皇帝や貴族達から支持を集めなければ、改革は臨めない。
私が好きなように振る舞っているだけでは、誰も私の事を支持などしてくれないだろう。
皇帝と貴族の輪を乱せば、私もさっきの貴族と同じ末路をたどってしまう。
郷に入れば郷に従え。
貴族ならば貴族らしい振る舞いをして、
貴族の皆さんに認めてもらわなければならない。
豪華な食事も、たくさん装飾のついた服も、本当はいらない。
でも貴族達を味方に付けるためには、食べて、着なくてはいけない。
平民の血税だと思うと、どちらも楽しめなかった。
でも無理矢理押し込んで、笑顔をつくる。
私の首がかかっているのだ。
リズのような比喩ではなくて、物理的なものが。
頑張るしか、ないだろう。
そう自分に言い聞かせた。
「いいよ、そのくらい自分でやる」
「いえ!やらせてください!救っていただいたご恩を返したいのです!」
リズはそう告げるとクシを持ち私の髪をとかしてくれる。
リズは母のケーキを落としてしまい解雇を宣言されてしまってたあのメイドさんだ。
今は私が母にお願いをして、専属のメイドさんになってもらっている。
別に善意からではない。
しっかり打算的な考えの基だ。
原作のマリーはメイド達にきつく当たっていた。
けれどそのせいでメイド達に恨まれ、メイドさん達は裏で主人公達とつながり、
たくさんの情報を流されてしまっていたのだ。
魔法の弱点とか、帝国の穴とかをね。
貴族達は彼らがいなければまともな生活はできないのだから、優しくするにこしたことはない。
常に隣にいる子が、敵と繋がっているのは怖すぎる。
だから助けた。それだけだ。
それだけなのだけれど、肝心な彼女は子犬のように私の後をついてきては、マリー様!マリー様!とせわしない。
どうやら私が解雇を撤回してくれたことに相当恩義を感じているようだった。
「私には弟が二人いるんです。おばあちゃんと一緒に暮らしているんですけど、
私からの仕送りがないととても食べていけなくて。だからマリー様は私達の命の恩人なのです!」
髪をとかしながらうれしそうにリズは言った。
命の恩人などとは、大げさだなと思った。
そもそも彼女ら家族が困窮しているのは貴族の重税が原因だ。
私は加害者側なのだ。
確かに助けたのかもしれないが、それはただのマッチポンプ。
助けた理由も打差ありき。賞賛されるには値しないよ。
「いえ!マリー様は他の貴族様と違ってやさしいです!」
それは完全な失言だよ、リズ?
うれしいけどね。
絶対に他の貴族の前で言ったらダメだよ、と、リズを軽く叱っておく。
リズは、すみません、またやっちゃいました、としょんぼりしていた。
私はまだ子どもだ。
さすがに両親や他の貴族には逆らえない。
失言をしてしまえばもう庇ってやれないのだ。
人間関係で大切なのは何をいうかよりも、何を言わないかだ。
彼女には幸せになってほしい。だから気をつけてもらわねば困るんだ。
せっかく手に入れた敵ではないメイドさんなのだから。
こうして私は新しい仲間?を手に入れた。
「マリー。君は優しい子だ。しかし貴族たるもの優しいだけではダメだ。
特に平民にはそれ相応の態度を示せ。それが貴族としての責任なのだ。平民なぞに貴族が頭を下げる必要はない」
けれどリズを専属メイドにしてから、少し父に叱られてしまった。
どうやら私のリズの扱いが適切ではないらしい。
そして貴族の世界では父が正しく、私は異端なのだ。
素直に、
「申し訳ございません、父上。以後気をつけます」
と謝っていく。
先は長そうだなと思った。
次の日。
「このままでは帝国は滅びますぞ!改革を!改革をお考えください!」
皇帝陛下に意見を述べた貴族が兵士に連行されていく所を目撃してしまった。
罪状は、皇帝への侮辱。
神に権力を与えられし陛下が政策を間違えるはずがない、とのことであった。
私以外にも帝国の問題を認識している人がいるようだ。
貴族にも話の分かる人がいるのは心強い。
だがそれ以上に恐怖が襲ってくる。
あれは見せしめだ。
帝国の伝統を、品位を汚そうモノなら貴族であろうとも容赦はしないという証明。
私が思っている以上に、帝国の改革は難しいのかもしれないと思った。
「マリーか。いくつになった?」
「5歳になりました、陛下」
「そうか。顔は母に似たな。聞いたぞ?父と同じ青い炎が使えるとも。精進せよ。
そして帝国にふさわしい振る舞いをしろ。おぬしには期待しているぞ」
「はい、陛下」
そしてただ頑張るだけではだめだとも思い知った。
皇帝や貴族達から支持を集めなければ、改革は臨めない。
私が好きなように振る舞っているだけでは、誰も私の事を支持などしてくれないだろう。
皇帝と貴族の輪を乱せば、私もさっきの貴族と同じ末路をたどってしまう。
郷に入れば郷に従え。
貴族ならば貴族らしい振る舞いをして、
貴族の皆さんに認めてもらわなければならない。
豪華な食事も、たくさん装飾のついた服も、本当はいらない。
でも貴族達を味方に付けるためには、食べて、着なくてはいけない。
平民の血税だと思うと、どちらも楽しめなかった。
でも無理矢理押し込んで、笑顔をつくる。
私の首がかかっているのだ。
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頑張るしか、ないだろう。
そう自分に言い聞かせた。
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