【完結】勇者パーティーの裏切り者

エース皇命

文字の大きさ
12 / 29
第1巻 犬耳美少女の誘拐

10

しおりを挟む
「素晴らしいです! あの【絶望の魔人】を倒されるなんて!」

 ギルドに魔人討伐を報告しにいくと、ロルフ大好き受付嬢ライリーが、尊敬の眼差しでロルフを褒め称えている。

 ちなみにアルの怪我はかなりよくなった。
 回復ポーションは常に携行しているので、ああいった緊急事態にもすぐに処置できるのだ。勿論回復魔術が使える魔術師がいた方が回復も早く確実だが、肝心なクロエは討伐メンバーではなかった。

 アルはまだ朦朧とした状態でうなだれているが、そのうちわけのわからない寝言を言い始めるだろう。
 そしたら完全回復したと思っていい。

 ハルはひとまず安心した様子で、俺に礼を言ってきた。

「今回ばかりはあんたに助けられた。その……ありがと」

 普段感謝のセリフは言い慣れないらしい。

 ほんの少し顔を赤く染めているハルは可愛かった。

「気にするな」

 俺はとりあえずそう言い、真剣な表情を作ってハルを見る。

「困った時はお互い様だろ?」

「う、うん」

 俺にそんなことを言われるのが気に食わなかったのは確実だ。
 だが、弟の恩人に嫌な態度を取るわけにはいかない。

 ハルは静かに頷いた。

「魔人はロルフ様が一撃で倒されたのですか? 本当にカッコいいです!」

 ライリーはひとりで暴走している。

 彼女の中では、魔人を倒したのがロルフになっているらしい。
 別に訂正しなくてもいいと思った。
 ロルフほどの実力者なら、あの時の俺ほど苦戦せずに、魔人を圧倒できたはずだ。

「魔人を討伐したのはオーウェン以外の何者でもない。オレはただ見ていただけだ」

 ロルフは淡々としている。
 自分の手柄にするのもありだ。だが、真面目なロルフにそんなことはできない。

 仮に魔人を倒したのが自分でもない新人だ、と述べたとしても、その後に、まあオレは戦ったら余裕で勝てちゃうから、敢えて手を出さなかったんだけどね、みたいなことを言うやつも多い。

 ロルフは無駄なことは言わず淡々と事実を述べる。
 
 そこに、自分オレだったら……とかいう自己顕示はない。
 
 その存在だ。
 ただ立っているその風格だけで、ロルフの強さは証明されている。だからわざわざ自慢したりする必要もない。

 そしてそれは、他の古参の3人にも共通する。

 ウィルの全身から出る自信のオーラと余裕が、絶対不可侵な己の強さを象徴していた。
 もっとも、今までウィルが本気で戦っているところを見たこともないが。

 ヴィーナスは……言わなくてもわかるだろう。彼女の美しさは女神をも魅了し、嫉妬させる。アレクサンドリアだけでなく、その美貌はいつか世界に轟くだろう。

「オーウェンちゃん、たまには凄いカッコいいことするじゃん」

 茶髪ロングのナンシーが俺の肩に手を乗せる。
 顔と顔が近づき、ふと思った。

 あ、酒臭い、と。

 今日はいつも以上にテンションが高いと思ったら、そういうことだったのか。昨日たっぷり酒を飲んだんだろうな。

「アルちゃんが心配だな~」

 寝ているアルの左頬を、指でツンツン突っつく。
 3回に1回のペースでアルの顔が緩み、それと同時にナンシーの表情も和やかになる。

「癒やされる~」

 俺とハルは呆れて溜め息を漏らした。



 ***



「おかえり」

 本拠地アジトの大広間で紅茶を飲みながら待っていたのは、我らがリーダー、ウィルだ。

 ウィルは俺達を見て、おや、という顔をした。

「アルがいないようだね」

「戦闘で負傷して、部屋で休んでます」

 俺が反射的に答える。

 アルを部屋まで運んだのは、また俺だ。
 双子の姉ハルにまた頼まれてしまった。俺が弟の命の恩人だということはもう忘れていそうだな。

 ウィルは一瞬心配そうな顔をのぞかせたが、すぐに落ち着いた様子に戻った。

「僕も今はやることがないから、しばらく土産話でも聞かせてもらおうかな」



 ***



「オーウェンもA1か。勇者パーティー全体としても、キミのランク昇格は大きな飛躍だよ」

 地下迷宮ダンジョンでの話はほとんどハルがしてくれた。

 ロルフは冷酷に自分達新人の死闘を黙って見ていたこと、アルの馬鹿が何も考えず魔人に飛び出したこと、俺がなんとか魔人を倒したこと。

 勿論少し話は誇張されている。

 ロルフが血も涙もない残忍な性格として描写されていた節や、俺がなんとか・・・・魔人を倒した、という節。

 ハルとしては、格下だった俺に魔人を倒されたのが複雑な気分だったようで、あたかも運のいい勝利だったかのように話を切り上げた。
 まあ別にそれでも俺は構わないが、悪役になったロルフは少し可哀想だ。

 ランクが上がった件については、俺の口から報告した。

「あっしと同じランクになったからって、調子乗らないでよねっ」

 なぜかハルが釘を刺す。
 そんなに俺が活躍したのが悔しいのか?

 俺の方が後輩で年下だし、ハルにもハルなりのプライドがあるのかもしれない。

「今回のオーウェンの動きは的確だった」

 驚いたことに、ロルフからお褒めの言葉が。

 これにはハルも顔をしかめる。
 だが反論はしない。
 俺の戦いぶりを認めていないわけでもないということだ。

 今度はロルフが厳しい灰色グレーの目でハルを見る。

「それに比べて貴様は弟のことで感情が支配され、できるはずのこともできていなかったようだ。本来ならばオーウェンの加勢をすべきだった」

「……」

「相変わらず厳しいね、ロルフは」

 ウィルが微笑んだ。
 
「ハル、今回の反省点は次に活かしてくれればいい。アルの心配をするのは当然だ。だから落ち込む必要はないよ」

「……」

 場の空気が少し柔らかくなった。
 それもこれも優秀過ぎるリーダーのおかげだ。

「オーウェン、ハル、僕からひとつ言っておくよ。強敵に立ち向かい、偉業を成せばランクは上がる。でも、A2からA1に上がることはさほど難しいことじゃない。A1からS3に昇格するためには、試験を突破する必要がある。AかSか、ここに大きな実力の差が生じるんだ」






 そう。
 まだ俺はランク戦争のスタートラインに立ってすらいない。

 Sランク……その道を通過することで、復讐に大きく近づく――この神聖都市、アレクサンドリアへの復讐に。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

処理中です...