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第24話 闇はすぐそこに
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ジャックは夜遅くに帰ってきた。
アキラはずっと心配していたのか、他のメンバーが寝ている中、一人だけ起きてジャックを待っていた。
「ジャック、よかった!」
「起きてたのか?」
「ああ、全然寝る気にはならなかったんだ。ほら、俺、今日はドラゴンキラーと戦う予定だっただろ? だからどうも体が休まらない」
ジャックは小さなため息をついた。「建国事業はどうなった?」
「それなら順調だ。クリスとランランが参加した会議によれば、ゲチハデ王国、ナスカ街、サルカン王国、ルーズ共和国は、俺たちの国への参入を承認した」
「どんな条件だ?」ジャックはまだ不安そうだ。「何百年も続いた王国が、そう簡単に一つになるとは思えない」
「それは安心してくれ。資金も戦闘力も、俺たちは完全に信頼されている。それに、一つ一つの王国や共和国の伝統は変えず、多文化・多種族国家になるから」
「そうか。建国に関しては四人に任せたい」
「ジャックは何をする気だ?」
「リーサル杖士の生き残りを倒す」ジャックが簡潔に答える。「それだけだ」
「やつらがどこにいるのかわかってるのか?」
「シバから聞き出した。やつらはサルカン王国に隠れている」
アキラはしばらく黙っていた。
サルカン王国はゲチハデ王国の隣にある小さな王国だ。その国民のほとんどは人間である。
「可能性はなくもない。もしジャックがサルカン王国に行くって言うなら、俺も行く」
「だめだ」ジャックが即答する。「リーサル杖士の一番の標的はアキラだろう。ドラゴンキラーを倒したことでやつらもお前を狙っているのかもしれない」
「行きたい」
「絶対にだめだ」
「じゃあ、ついていっていいか?」
「だめだ」
「だよな。そう言うと思った」
「今回ばかりは危険だ。リーサル杖士は相手の心をむさぼり、深い闇へと誘う術に長けている。強い精神力が必要だ」
「おいおい、俺に精神力が足りないって?」
「そういうつもりはないが、俺一人で行く」
アキラが素直にうなずいた。「確かに、ジャック一人で行った方がよさそうだな」
やけに素直だ。ジャックは少し嫌な予感がしたが、黙ったままうなずいた。
「三人を頼んだ。俺が帰ってくるまでに、国を作っておいてくれ」
そう言い残して、ジャックはヤコンでアジトを去った。
「おはよー!」
デイブレイクの朝は早い。まだまだ暗いが、ランランは元気よく部屋から出てきた。
「ジャックは帰ってきた?」
アキラに聞いたつもりだった。しかし、アキラはどこにもいない。それにジャックもだ。
二人の部屋を含め、アジトのあちこちを調べてまわったが、やはり二人は不在だった。
「クリス、アキラとジャックを知らない?」
「どうかしたのか?」
「二人がいないの」
「まだ帰ってきてないだけじゃないか?」
「でも、そしたらアキラは?」
「もしかしたらジャックを捜しにいったのかもしれない」
「帰ってくるかな?」ランランが上目遣いで聞く。「せっかく建国できそうなのに」
「二人なら大丈夫。そのうち帰ってくるよ」
クリスは二人を完全に信用していた。
「ここか」
一方、ジャックはサルカン王国のある小さな酒場にいた。
カウンターに座り、酔っぱらいたちでにぎわう店内を観察している。
「酒はいらない」
ジャックが何も飲まず、何も食べずに座っていると、予想通り体格のいい白人の男がずかずかと隣に座った。
真っ黒のマントを着ていて、真っ黒のフードをかぶっている。いかにも悪人という装いだった。
「なんだ?」ジャックの視線に気づいた男が聞いた。「文句でもあるか?」
「リーサル杖士だな」
「そうだ」
「ここで何をして――」
「それは俺様のセリフだ。あんたこそ、サルカン王国に何しにきた?」
「リーサル杖士を倒すためだ」
「あんたはオズ道場で訓練を受けた杖士のようだ。なぜ俺様を倒したい? 倒してなんになる?」
「悪を滅ぼすのが俺の仕事――特にリーサル杖士専門だ」
ジャックが杖を出した。
魔力のこもった杖が、光源対であるかのように光り輝く。
周囲の酔っ払いたちも、杖士の本物の杖に驚き困惑している。
「俺様とやろうって?」
男も立ち上がり、杖を出現させた。杖はマント同じく真っ黒で、百十センチほどと、そこまで長くはない。
まさに光と闇の杖だ。
二人が攻撃の構えを取り、最初の攻撃を繰り出す。
ジャックは強力な魔力ばかりが注目されがちだが、実は杖術の腕前もかなり高い。守備が強い守りの型で、安定して突きを繰り出せるのが特徴だ。
光と闇の杖が、酒場の真ん中でクロスする。
客は決闘の試合を楽しむかのように見物していた。歓声を飛ばしている者だっている。
そのとき、酒場の扉がゆっくりと開かれ、杖士の杖を持った一人の男が現れた。
「ジャック!」アキラだ。
アキラは素早くジャックに加勢し、二人でリーサル杖士を追い込んでいった。
しかし、やつも負けてはいない。ドラゴンキラーよりも遥かに優れた動きで、二人を相手に攻撃を繰り出していく。
ジャックとアキラは少しずつ酒場の扉に近づき、タイミングを見て酒場の外に飛び出した。
店の中では戦いにくいし、さらには客にまで被害が及んでしまう可能性があるからだ。
しかし、それはさらなる不幸を呼んだだけだった。
酒場の外では、黒いマントを羽織った、合計八人ものリーサル杖士が、二人を待っていた。
★ ★ ★
~作者のコメント~
最後のシーズンはやはり、戦いのシーンを増やし、より盛り上げていきたいです。
伏線なんかも回収していくので、お楽しみに!!
アキラはずっと心配していたのか、他のメンバーが寝ている中、一人だけ起きてジャックを待っていた。
「ジャック、よかった!」
「起きてたのか?」
「ああ、全然寝る気にはならなかったんだ。ほら、俺、今日はドラゴンキラーと戦う予定だっただろ? だからどうも体が休まらない」
ジャックは小さなため息をついた。「建国事業はどうなった?」
「それなら順調だ。クリスとランランが参加した会議によれば、ゲチハデ王国、ナスカ街、サルカン王国、ルーズ共和国は、俺たちの国への参入を承認した」
「どんな条件だ?」ジャックはまだ不安そうだ。「何百年も続いた王国が、そう簡単に一つになるとは思えない」
「それは安心してくれ。資金も戦闘力も、俺たちは完全に信頼されている。それに、一つ一つの王国や共和国の伝統は変えず、多文化・多種族国家になるから」
「そうか。建国に関しては四人に任せたい」
「ジャックは何をする気だ?」
「リーサル杖士の生き残りを倒す」ジャックが簡潔に答える。「それだけだ」
「やつらがどこにいるのかわかってるのか?」
「シバから聞き出した。やつらはサルカン王国に隠れている」
アキラはしばらく黙っていた。
サルカン王国はゲチハデ王国の隣にある小さな王国だ。その国民のほとんどは人間である。
「可能性はなくもない。もしジャックがサルカン王国に行くって言うなら、俺も行く」
「だめだ」ジャックが即答する。「リーサル杖士の一番の標的はアキラだろう。ドラゴンキラーを倒したことでやつらもお前を狙っているのかもしれない」
「行きたい」
「絶対にだめだ」
「じゃあ、ついていっていいか?」
「だめだ」
「だよな。そう言うと思った」
「今回ばかりは危険だ。リーサル杖士は相手の心をむさぼり、深い闇へと誘う術に長けている。強い精神力が必要だ」
「おいおい、俺に精神力が足りないって?」
「そういうつもりはないが、俺一人で行く」
アキラが素直にうなずいた。「確かに、ジャック一人で行った方がよさそうだな」
やけに素直だ。ジャックは少し嫌な予感がしたが、黙ったままうなずいた。
「三人を頼んだ。俺が帰ってくるまでに、国を作っておいてくれ」
そう言い残して、ジャックはヤコンでアジトを去った。
「おはよー!」
デイブレイクの朝は早い。まだまだ暗いが、ランランは元気よく部屋から出てきた。
「ジャックは帰ってきた?」
アキラに聞いたつもりだった。しかし、アキラはどこにもいない。それにジャックもだ。
二人の部屋を含め、アジトのあちこちを調べてまわったが、やはり二人は不在だった。
「クリス、アキラとジャックを知らない?」
「どうかしたのか?」
「二人がいないの」
「まだ帰ってきてないだけじゃないか?」
「でも、そしたらアキラは?」
「もしかしたらジャックを捜しにいったのかもしれない」
「帰ってくるかな?」ランランが上目遣いで聞く。「せっかく建国できそうなのに」
「二人なら大丈夫。そのうち帰ってくるよ」
クリスは二人を完全に信用していた。
「ここか」
一方、ジャックはサルカン王国のある小さな酒場にいた。
カウンターに座り、酔っぱらいたちでにぎわう店内を観察している。
「酒はいらない」
ジャックが何も飲まず、何も食べずに座っていると、予想通り体格のいい白人の男がずかずかと隣に座った。
真っ黒のマントを着ていて、真っ黒のフードをかぶっている。いかにも悪人という装いだった。
「なんだ?」ジャックの視線に気づいた男が聞いた。「文句でもあるか?」
「リーサル杖士だな」
「そうだ」
「ここで何をして――」
「それは俺様のセリフだ。あんたこそ、サルカン王国に何しにきた?」
「リーサル杖士を倒すためだ」
「あんたはオズ道場で訓練を受けた杖士のようだ。なぜ俺様を倒したい? 倒してなんになる?」
「悪を滅ぼすのが俺の仕事――特にリーサル杖士専門だ」
ジャックが杖を出した。
魔力のこもった杖が、光源対であるかのように光り輝く。
周囲の酔っ払いたちも、杖士の本物の杖に驚き困惑している。
「俺様とやろうって?」
男も立ち上がり、杖を出現させた。杖はマント同じく真っ黒で、百十センチほどと、そこまで長くはない。
まさに光と闇の杖だ。
二人が攻撃の構えを取り、最初の攻撃を繰り出す。
ジャックは強力な魔力ばかりが注目されがちだが、実は杖術の腕前もかなり高い。守備が強い守りの型で、安定して突きを繰り出せるのが特徴だ。
光と闇の杖が、酒場の真ん中でクロスする。
客は決闘の試合を楽しむかのように見物していた。歓声を飛ばしている者だっている。
そのとき、酒場の扉がゆっくりと開かれ、杖士の杖を持った一人の男が現れた。
「ジャック!」アキラだ。
アキラは素早くジャックに加勢し、二人でリーサル杖士を追い込んでいった。
しかし、やつも負けてはいない。ドラゴンキラーよりも遥かに優れた動きで、二人を相手に攻撃を繰り出していく。
ジャックとアキラは少しずつ酒場の扉に近づき、タイミングを見て酒場の外に飛び出した。
店の中では戦いにくいし、さらには客にまで被害が及んでしまう可能性があるからだ。
しかし、それはさらなる不幸を呼んだだけだった。
酒場の外では、黒いマントを羽織った、合計八人ものリーサル杖士が、二人を待っていた。
★ ★ ★
~作者のコメント~
最後のシーズンはやはり、戦いのシーンを増やし、より盛り上げていきたいです。
伏線なんかも回収していくので、お楽しみに!!
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