ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

文字の大きさ
132 / 145
フロストハウル編

第132話 彼女持ちにキスしてくる大人気インフルエンサー

しおりを挟む
 普通に殴られると思った。

 もちろん俺に罪はない。
 雷電らいでんもまた被害者なので、悪いのは全部あのノッポの男だ。

才斗さいとちゃん!」「さい君!」

 俺のことを愛していると言っても過言ではない真悠まゆ姉さんと西園寺さいおんじが叫び狂う。

 ほんの1秒だけ。
 俺は雷電と口付けを交わしたのだ。

 嫌いな男に唇を奪われる悲劇に、雷電は怒り狂い、俺の顔面を本気で殴る――かと思われたが、現実は違った。

「……」

 かーっと顔を赤く染め、初心うぶな少女のように挙動不審になる雷電。
 キスの経験くらいあるだろうと思っていたわけだが、まさかこれが初めて・・・だったのか……?

 いや、さすがにそれは――。

「初めて……だったのに……」

「え?」

「もう1回ちゃんとしないと気が済まない」

「……は?」

 そう言って、今度はちゃんとキスっぽい口付けをしてくる雷電。

 言い訳したい。
 まず、その時の俺はかなり動揺していた。まさかお互いに苦手意識のある相手とキスするなんて思ってなかったし、殴られると思って防御の構えをしていたし……。

 それに、雷電の力は強い。
 仮にも彼女はSランク冒険者だ。下敷きになっている俺が抵抗したところで、大して効果はない。

「やめろぉぉぉおおお!」

 可哀想かわいそうなことに、雷電はまた吹っ飛ばされた。

 これに関しては彼女にも罪はあるだろう。
 彼女持ちの男にキスをしたわけだし、俺を愛する西園寺たちの前で堂々とキスをしたわけだし――って、なんでこうなった?

「才君、大丈夫か?」

 精神的には大丈夫じゃない。

 だが、この状況で心配すべきは雷電の方だ。
 さいわい西園寺も加減をしたようで、軽く飛ばされただけで済んだみたいだが、こんなくだらないことに時間を使っている場合じゃない。

舞姫まいひめちゃん? ちょっといいかしら」

 年上のお姉様ムーブをかましながら、怖い顔で雷電に近付く真悠姉さん。

 雷電はその静かな恐怖にビクッとしながらも、痛そうに立ち上がって真悠姉さんに向き直った。
 西園寺キックはそれなりのダメージになっているらしい。

「どういうつもり?」

「いや、その……もしかしてまいちゃん、やっちゃった感じ?」

 てへぺろしながら可愛い顔で真悠姉さんを見る。
 それは間違いなく逆効果だからやめておいた方がいいと思うが。

「あとでゆっくり話を聞かせてもらいましょうか」

「……ひゃい」

 俺もその話、聞く権利はあるだろう。

 なんだか茶番が始まりそうなので、ここで軌道修正をしたい。
 こうしている間にも、ノッポの闇超人ヴィランは暴走を続けていることだろう。

 彼の目的はわからないし、彼以外にも仲間がいるのかとか、ヴェルウェザーが関与しているのかとか……いろいろと考えるべきことはあるが、ひとまずはこの事態を収束させなければ。

 せっかく気合いが入っていた西園寺も、今では雷電と俺のキスのせいでショックを受けている状態だ。

「社長、あの男との戦いに関しては、考えがあります」

 この場にいるSランク冒険者全員を正気に戻すつもりで、俺は自分が考えている戦略を打ち明けた。



 ***



 俺、西園寺、雷電の3人が体育館に入る。
 全員一度は敗北した相手に、リベンジしにいく。

 敵は俺たちが戻ってくるのを待っていた。

 最初に戦った時よりは落ち着いていて、破壊欲のままに目の前のものを壊そう、なんていう危険性はないように見える。
 だが、相変わらず同じ人間とは思えないような獣の目をしているし、針のようにとがった敵意は少しずつ膨れ上がっていた。

 天音あまね姉さんと佐藤さとうのおかげで、一般人は全員体育館から逃げることができたみたいだ。

 体育館の外では真悠姉さんが怪我人の治癒ヒールに当たっている。

 被害は出たものの、死傷者は出ていないことを願いたい。

黒瀬くろせ、やっぱあの作戦、厳しくない? 変えよー」

「いや、相手の勢いが落ちてる今がチャンスだ。作戦はこのままで行く」

 ノッポの男の強みは間合いを詰めるスピードと、パワー。

 それがわかっているのであれば、こっちはそのスピードとパワーをあらかじめ対策・・するだけだ。

「才君、頼む」

 西園寺のセリフと同時に、作戦が動き出した。

 敵が吠え、魔力オーラを全身に収束している西園寺に襲いかかる。
 間合いを詰めるスピードはやはり速い。だが、ああいうのは所詮しょせん、初見殺しだ。

 攻撃が来るであろう場所ポイントに剣を構えておけば、十分に対応できる。

 拳を剣で見事に防ぎ、空気を弾くような激しい音が鳴り響く。

 俺は大慌てでステージ裏の精密機械がいっぱいあるところに走り、体育館のブレーカーを切った。その瞬間、照明が全て消え、窓から差し込む日の光だけが体育館を照らし出した。

 敵の男はほんの少しまともに考えられるようになったのか、ようやく剣を抜き、西園寺とやり合っている。

 だが、そこに雷電が加勢に入った。

「なーんだ、テスト対策すれば楽勝じゃーん。みんなちゃんと勉強しようね~」

 ここで、雷電の超能スキルが発動。
 この前の冒戦で初めて見たわけだが、何度見てもやっぱり羨ましい。シャドウライドよりもはるかに使い勝手がいいぞ。

 全身が電気を帯び、さわるな危険状態に――。

 雷電が帯電したことを確認した西園寺は、すぐさま後退し、戦いの主役を電気ビリビリ女に明け渡す。

 本人によれば、超能スキルはあくまで帯電・・なので、攻撃として電撃を放つ、なんていう雷神みたいなことはできない。
 とはいえ、剣にも電気を通すことができるので、斬撃が当たれば相手に電気ショックを与えられる。

「みんなのアイドル舞ちゃんに熱愛報道が出たら、あんたのせいだから! ばいばーい!」

 たとえ剣で攻撃を防ごうが、電気は剣をつたって流れてくる。

 ほんの数秒の足止め。
 だが、数秒足止めしてもらえるのなら、もうこっちのものだ。

 影と影の繋がりを見つける。

 シャドウライドは影から影に飛び移ったりすることはできない。だが、途切れていない影の中での移動であれば、一瞬で可能だ。

 日の光まで防ぐ時間はなかったが、天井の照明を消した今なら――。

 ――敵の背後に一瞬で回れる!

 美味おいしいところをもらった感は否めないが、これで決着だ。

 ノッポの男の背中を大胆に斬りつけ、そのまま剣を握る右手を切断する。男は最後に唸ったかと思うと、バタンと前に倒れ込んだ。

 警戒しながらツンツンするが、動き出す様子はない。

「どうやら、体育館を壊す必要はなかったようだ」

 西園寺がつまらなそうに言う。
 その言い方だと、本当は壊したかったみたいなニュアンスになるが、いろいろと気にするだけ無駄だ。

「これで一件落着? うわ! 今日の配信でめっちゃフォロワー増えたじゃん」

「……は? 今までずっと、ライブ配信してたのか!?」

 無神経にもほどがあるという非難を込めた意味で、雷電を睨む。

「だってぇ、絶対バズること間違いなしって感じだったしぃ。実際バズったしぃ」

「てことは……まさかお前……」

 ――西園寺のふにゃふにゃな姿、及び俺と雷電のキス、及び真悠姉さんの静かなブチ切れが、全国に生中継されていたってことなのか?

 言葉に出してはないが、俺の深刻な表情から言いたいことは伝わったらしい。

「いやいや、さすがにこの戦いだけだから大丈夫。舞ちゃんと黒瀬ブラックがキス!とかいうスキャンダルにはなんないって」

 ほっと一息。
 俺はもちろんのこと、冷や汗がにじみ出ている西園寺も思わず胸を撫で下ろした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】メインヒロインとの恋愛フラグを全部ブチ壊した俺、サブヒロインと付き合うことにする

エース皇命
青春
《将来ヤンデレになるメインヒロインより、サブヒロインの方が良くね?》  16歳で自分が前世にハマっていた学園ドラマの主人公の人生を送っていることに気付いた風野白狼。しかしそこで、今ちょうどいい感じのメインヒロインが付き合ったらヤンデレであることを思い出す。  告白されて付き合うのは2か月後。  それまでに起こる体育祭イベント、文化祭イベントでの恋愛フラグを全てぶち壊し、3人の脈ありサブヒロインと付き合うために攻略を始めていく。  3人のサブヒロインもまた曲者揃い。  猫系ふわふわガールの火波 猫音子に、ツンデレ義姉の風野 犬織、アニオタボーイッシュガールの空賀 栗涼。  この3人の中から、最終的に誰を選び、付き合うことになるのか。てかそもそも彼女たちを落とせるのか!?  もちろん、メインヒロインも黙ってはいない!  5人の癖強キャラたちが爆走する、イレギュラーなラブコメ、ここに誕生! ※カクヨム、小説家になろうでも連載中!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

処理中です...