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白熱の最強冒険者決定戦編
第97話 3人の美少女に慰められるという敗北後のご褒美
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「才斗くん!」
観客席に戻ると、楓香が飛び込んできた。
桃の香りがする柔らかい体を、さっと受け止める。
華奢な女の子の体が包み込まれる。
「怪我はもういいんですか?」
「大丈夫だ。大したことない」
「むぅー、心配したんですからね!」
「悪い」
「才斗くんが元気ならノープロブレムです! さあ、隣に座ってくださいね」
楓香はやけに元気だ。
俺が無事だったことを喜んでいることは間違いないが、初戦敗退してしまったことに関してはどう思っているんだろう?
失望しているような仕草はないが、期待してくれていた分、こちらとしては謝罪を――。
「才斗、お疲れ様」
「姉さん」
ぽんぽんと。
自分の隣の席に誘導する天音姉さん。
相変わらず表情からはどんな感情も読み取ることができないが、その変わらないところが俺を落ち着かせた。
楓香の手を握ったまま、姉さんの隣に腰掛ける。
どうやら俺のために用意されていた席らしい。右には姉さん、左には楓香という特等席だ。
姉さんの右隣にはむっとした表情で佐藤が座っていた。
「なに初戦敗退してんのよ」
目が合った佐藤が、唇を尖らせて言ってくる。
その言葉が欲しかった。
「悪い。まだまだ実力が足りなかった……」
「別に、決勝トーナメントに勝ち上がっただけで凄いから気にしないでなんて、思ってないんだからねっ!」
佐藤はやっぱりツンデレだ。
その言葉に彼女の優しさを感じる。
「気にすることない。鬼龍院って人、強かった」
「そうですよ~。不謹慎かもしれないですけど、わたしは嬉しいんですよね、才斗くんでも負けることがあるってわかって」
姉さんも楓香も、俺を慰めてくれる。
「でも、1番嬉しいのはこの大会を才斗くんとイチャイチャしながら観れることです! 頑張ったご褒美に、わたしの胸を揉みながら観戦してくださいねっ」
「「「……」」」
周囲をドン引きさせるのは、楓香の才能だ。
***
ベスト8が決まり、2回戦が始まった。
真一は1回戦で西園寺に滅されているので、全てを諦めたような顔で俺たちのいる客席に上がってきていた。
「スミレさん……やなくて天音さん。隣座ってもいいすか?」
「……ダメ」
「あ、はい」
まだ未練があるのか、姉さんに視線を奪われている真一。
しょんぼりとした様子で佐藤の隣に腰掛けた。
「才斗もおれも災難やったなぁ。1回戦でとんでもない実力者に当たってん」
「同感だ」
「ま、そんなん気にしてたら冒険者は務まらんし、ここにいる美女たちと観戦楽しもうな」
彼の楽観的なところがよく出ていた発現だったが、ここにいる美女たちとやらはあまり良く思わなかったらしい。
隣に座られた佐藤は、明らかに嫌そうな顔をしている。
それがツンデレのツンだったらいいんだが、きっとただの嫌悪感だろうな。
***
始まる2回戦。
フィールドには、2人のSランク冒険者が向かい合って立っていた。
「次の相手はてめぇか。さっきよりかぁいい戦いになりそうだぜ」
「私の部下が世話になった」
西園寺と鬼龍院だ。
もし黒瀬が勝ち上がっていたのであれば、彼は西園寺と戦うことになっていたということ。
「てめぇがあの野郎の上司なら、今までいいアドバイスができたんじゃねぇのか?」
「……恋愛の経験はない。知見のないことを部下に教え込むことはできない」
「ったく。くだらねぇこと俺に教えさせやがって」
「その件は感謝する」
剣を構えるよう、指示が出される。
軽い会話を交わした2人は、準決勝に勝ち上がるために神経を研ぎ澄ませていく。
観客席に上がっている黒瀬をチラ見する西園寺。
黒瀬の隣には白桃と黒瀬の姉である天音がいる。きっと大丈夫だろう。
黒瀬は鬼龍院と戦い、負けて正解だった。敗北を気にしていないかが心配だった西園寺にとって、鬼龍院が黒瀬にかけた言葉はまさに救いだったのだ。
所属する組織は違えど、彼らは互いに刺激し合い、尊敬し合っている。
「家族は来ているのか?」
「当たりめぇだろ! てめぇに勝つところを見せてやるんだよ!」
勢いよく迫ってくるのは、黒瀬を苦しめたスピード感のある攻撃。そしてその威力の高さ。
さすがの西園寺も、後退しながら戦いを動かしていかざるを得ない。
西園寺は守備型のフォームで鬼龍院の攻撃を凌ぐ。
使うエネルギーを最小限にとどめながら、自分の次の攻撃を考えていく。
可能性は無限大だ。
多くの冒険者は、西園寺との対戦を怖いと表現する。
闇組織のレックスとの対戦の時と同様、西園寺は様々なフォームを駆使して戦いに応じていた。
隙を見れば手首の返しを得意とするルーテン派に切り替えて攻撃を弾き、その反動で後ろに下がった鬼龍院を、パワーのボルドー派で吹き飛ばす。
戦い始めておよそ1分。
この時にはすでに、西園寺優勢へと戦況が動いていた。
『パパ! かんばえー!』
観客席から飛ぶ、小さな女の子の声。
その声はさほど大きくはなかったが、鬼龍院の耳にも、そして西園寺の耳にも届いていた。
「負けられるかよ……」
「――ッ」
「……娘の見てる前で、負けるわけにはいかねぇんだよ!」
ここから、鬼龍院の逆襲が始まった。
観客席に戻ると、楓香が飛び込んできた。
桃の香りがする柔らかい体を、さっと受け止める。
華奢な女の子の体が包み込まれる。
「怪我はもういいんですか?」
「大丈夫だ。大したことない」
「むぅー、心配したんですからね!」
「悪い」
「才斗くんが元気ならノープロブレムです! さあ、隣に座ってくださいね」
楓香はやけに元気だ。
俺が無事だったことを喜んでいることは間違いないが、初戦敗退してしまったことに関してはどう思っているんだろう?
失望しているような仕草はないが、期待してくれていた分、こちらとしては謝罪を――。
「才斗、お疲れ様」
「姉さん」
ぽんぽんと。
自分の隣の席に誘導する天音姉さん。
相変わらず表情からはどんな感情も読み取ることができないが、その変わらないところが俺を落ち着かせた。
楓香の手を握ったまま、姉さんの隣に腰掛ける。
どうやら俺のために用意されていた席らしい。右には姉さん、左には楓香という特等席だ。
姉さんの右隣にはむっとした表情で佐藤が座っていた。
「なに初戦敗退してんのよ」
目が合った佐藤が、唇を尖らせて言ってくる。
その言葉が欲しかった。
「悪い。まだまだ実力が足りなかった……」
「別に、決勝トーナメントに勝ち上がっただけで凄いから気にしないでなんて、思ってないんだからねっ!」
佐藤はやっぱりツンデレだ。
その言葉に彼女の優しさを感じる。
「気にすることない。鬼龍院って人、強かった」
「そうですよ~。不謹慎かもしれないですけど、わたしは嬉しいんですよね、才斗くんでも負けることがあるってわかって」
姉さんも楓香も、俺を慰めてくれる。
「でも、1番嬉しいのはこの大会を才斗くんとイチャイチャしながら観れることです! 頑張ったご褒美に、わたしの胸を揉みながら観戦してくださいねっ」
「「「……」」」
周囲をドン引きさせるのは、楓香の才能だ。
***
ベスト8が決まり、2回戦が始まった。
真一は1回戦で西園寺に滅されているので、全てを諦めたような顔で俺たちのいる客席に上がってきていた。
「スミレさん……やなくて天音さん。隣座ってもいいすか?」
「……ダメ」
「あ、はい」
まだ未練があるのか、姉さんに視線を奪われている真一。
しょんぼりとした様子で佐藤の隣に腰掛けた。
「才斗もおれも災難やったなぁ。1回戦でとんでもない実力者に当たってん」
「同感だ」
「ま、そんなん気にしてたら冒険者は務まらんし、ここにいる美女たちと観戦楽しもうな」
彼の楽観的なところがよく出ていた発現だったが、ここにいる美女たちとやらはあまり良く思わなかったらしい。
隣に座られた佐藤は、明らかに嫌そうな顔をしている。
それがツンデレのツンだったらいいんだが、きっとただの嫌悪感だろうな。
***
始まる2回戦。
フィールドには、2人のSランク冒険者が向かい合って立っていた。
「次の相手はてめぇか。さっきよりかぁいい戦いになりそうだぜ」
「私の部下が世話になった」
西園寺と鬼龍院だ。
もし黒瀬が勝ち上がっていたのであれば、彼は西園寺と戦うことになっていたということ。
「てめぇがあの野郎の上司なら、今までいいアドバイスができたんじゃねぇのか?」
「……恋愛の経験はない。知見のないことを部下に教え込むことはできない」
「ったく。くだらねぇこと俺に教えさせやがって」
「その件は感謝する」
剣を構えるよう、指示が出される。
軽い会話を交わした2人は、準決勝に勝ち上がるために神経を研ぎ澄ませていく。
観客席に上がっている黒瀬をチラ見する西園寺。
黒瀬の隣には白桃と黒瀬の姉である天音がいる。きっと大丈夫だろう。
黒瀬は鬼龍院と戦い、負けて正解だった。敗北を気にしていないかが心配だった西園寺にとって、鬼龍院が黒瀬にかけた言葉はまさに救いだったのだ。
所属する組織は違えど、彼らは互いに刺激し合い、尊敬し合っている。
「家族は来ているのか?」
「当たりめぇだろ! てめぇに勝つところを見せてやるんだよ!」
勢いよく迫ってくるのは、黒瀬を苦しめたスピード感のある攻撃。そしてその威力の高さ。
さすがの西園寺も、後退しながら戦いを動かしていかざるを得ない。
西園寺は守備型のフォームで鬼龍院の攻撃を凌ぐ。
使うエネルギーを最小限にとどめながら、自分の次の攻撃を考えていく。
可能性は無限大だ。
多くの冒険者は、西園寺との対戦を怖いと表現する。
闇組織のレックスとの対戦の時と同様、西園寺は様々なフォームを駆使して戦いに応じていた。
隙を見れば手首の返しを得意とするルーテン派に切り替えて攻撃を弾き、その反動で後ろに下がった鬼龍院を、パワーのボルドー派で吹き飛ばす。
戦い始めておよそ1分。
この時にはすでに、西園寺優勢へと戦況が動いていた。
『パパ! かんばえー!』
観客席から飛ぶ、小さな女の子の声。
その声はさほど大きくはなかったが、鬼龍院の耳にも、そして西園寺の耳にも届いていた。
「負けられるかよ……」
「――ッ」
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ここから、鬼龍院の逆襲が始まった。
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