探偵たちに歴史はない

探偵とホットケーキ

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第1章

後編

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明らかに興奮した様子の汐海を、事務所の青いソファに何とか座らせた。先ずは落ち着かせるために、理人が紅茶を淹れにいく。
水樹は、汐海の話を聞きつつ、テーブルに投げられるように広げられた、汐海からの書類を整理し始めた。
どうやら彼女の同級生である神崎麻理香が消えたらしいのだ。行方不明になる前に最後に目撃されたのは、二人でルームシェアしているマンションということだった。彼女らは何方も大学生で、大学院に進学が決まっている才女だったらしい。
「お二人は、どのような学問を?」
「私も麻理香ちゃんも、考古学をやっています」
理人が運んできた紅茶を一口啜り、汐海は少し落ち着きを取り戻したようだった。ベルガモットの爽やかな香りが、ふわっと事務所の中に漂う。
水樹は書類に綴られた情報を確認しながら、汐海の話に耳を傾けた。その資料の中に、麻理香の写真があった。長い黒髪をポニーテールにし、眼鏡をかけて、カジュアルな服装に身を包んでいる。前髪に二本のピン。マンボウの飾りがついたものと、猫の飾りがついたもの。
麻理香が行方不明になった日、汐海とルームシェアをしているマンションで、食事をする予定だったそうだ。食事の準備のために二人で台所に立った時に姿を消したらしい。キッチンにはサラダ油の入った皿が倒れていて、その隣には包丁が落ちていたという。
また、彼女の部屋も物色された形跡があり、クローゼットが開けられていた。鍵がかかっていたにも関わらず、どうやら室内に入り込まれているらしい。
麻理香は、警察の調べによると死亡しているということになりそうだったが、汐海はスマートフォンを両手で握り締め、
「麻理香ちゃんは生きています。絶対に!」
と、叫んだ。そう、信じたい気持ちも分からなくはない。現実がそうではなかったとしても、その望みがなかったら、汐海は潰れてしまうだろう。
水樹は書類に綴られた情報を読み終えると、汐海に笑いかけた。
「僕たち『探偵社アネモネ』が、あなたの依頼をお受けしましょう」
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