探偵たちに歴史はない

探偵とホットケーキ

文字の大きさ
7 / 16
第4章

前編

しおりを挟む
明くる日、引き続き大学を訪れた「探偵社アネモネ」の面々。朝が早かったからか、考古学部の人たちは、珈琲を飲んでいた。
「教授、また可愛いマグカップ使ってますねー」
汐海が隆道の左側から身を寄せるようにして手元を覗き込み、笑う。それは確かに愛らしい、クレヨンらしき画材でウサギの絵が描かれたマグカップである。
「本当だ、可愛いー! お子さんが描いたんですか?」
 陽希も、隆道の右側から身を寄せるようにして、声を弾ませる。すると、隆道は困ったように眉を下げて、曇った声で答えた。
「……まぁ、子供が描いたことは事実です。私の子供ではありませんがね」
陽希が更に質問を重ねようとしたものの、各々が自身のマグカップの話を始めてしまったので、タイミングを失ったようだ。
「文明の資料が見つかったという、神崎小学校のことについて聞かせていただけませんか」
進展しない調査に焦りもあったが、水樹は、マグカップの話が一秒途切れたところで、迷わずに神崎小学校について口にした。何も分かっていない状況で、手札を隠していても意味はない。
「この学部は、偶然、神崎小学校の出身者が多いんですよ。全員、井の中の蛙大海を知らずというか、挑戦しないんだ」
健吾が唇を尖らせる。すると、優子が穏やかに笑って、こう答えた。
「私の家、代々この近くに住んでいますから、父母も兄も、神崎小学校の出身ですよ。私も、勿論」
水樹が前のめりになると、流石の優子も一瞬ぐっと首を引いたが、すぐに目を細める。
「明日、うちから何か、資料をお持ちしますね。と、言っても別に、ごくごく一般的な小学校ですから、たいしたものはないですが……写真や、卒業アルバムですとか……家族の分も」
「ありがとうございます。ご都合の良い時間と場所を教えてください。取りに伺いますので。理人」
優子の横に立っていた理人が、水樹の呼びかけですぐに手帳を開いてメモを取り始めたものだから、全員が少し引いたのが水樹には分かった。取り敢えず理人の背中を叩いて、アイコンタクトを送って、それからにこにこと笑みを作って見せておいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あやかし警察おとり捜査課

紫音みけ🐾書籍発売中
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。  しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。  反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。  

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...