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15話 ハーベストフェスティバル2
しおりを挟む探すといっても、アイシャちゃんと似たような背格好の女の子が多く、なかなか見つからない。お祭りが開催されている範囲を二周くらい歩き回ってみたが収穫なし。ほんとにどこいっちゃったんだろ。まさか寮に帰っちゃったとかないよね?
「サトミ、地面に膝をついて頭を下げろ!」
「え?」
「早く!」
「わ、わかりました」
急にルイスさんに強い口調でそう言われて、私は道の端の寄ってその場で土下座のポーズをとった。あたりを見れば、ほかの人も同じように地面に膝をついている。一体なにがはじまるんだと思っていたら、聞こえてきたのは数十人の足音と馬の足音。チラリと目線だけ上げてみると、大通りの向こう側から前と後にそれぞれ十人くらいの真っ白な軍服を着た王子様みたいなイケメン集団に挟まれて、逞しい髭を蓄えた性欲強そうなガチムチでダンディーなイケオジがゆっくり、ゆっくりと白馬に乗って歩いてきた。さながら大名行列。こんなに大勢で闊歩する必要あるか? あっ、お祭りの日だからか。
「あれは......」
「王の行軍だ」
アスディア王国十五代目国王、テオドール・フォン・ローゼンハイツ。名前だけは知っているが、初めて見た。この国一番の権力者の座に相応しく、ただならぬ威厳とオーラを放っている。
「もういいよ」
私はしばらくそのままの姿勢でいたが、ルイスさんに肩を叩かれて、ようやく腰を上げて服についたホコリを取り払った。
「王様が前を通るときは、いつもあんなふうにしないといけないんですか?」
「ああ、むやみに立ち上がったり、横切ったりすれば不敬罪とみなされてその場で切り捨てられても文句は言えない。理不尽だと思うかもしれないが、それがルールだ。覚えておいてくれ」
「……はい」
結局アイシャちゃんは見つからず、諦めてテントに帰ってきたら、アイシャちゃんが兵士さんに囲まれていろんな食べ物をもらっていた。可愛がってもらえていたようでなにより。
「ただいま……」
「サトミ! ごめんね、勝手にいなくなっちゃって」
「大丈夫、無事でよかったよ」
「サトミ、なんかすごい疲れた顔してんな、そんなに動き回ったのか?」
「それもありますけど、実は……」
私はヨハンさんにさっき王の行軍に遭遇した話をした。
「へぇ、こっちには来なかったな」
「あの真っ白な服着たホストみたいな集団はなんですか?」
「ホスト? それは近衛兵団の連中だろ。警備兵だよ」
「あれ? でも騎士団の皆さんがいますよね?」
「あっちは王族専門の護衛部隊。ウチと違って全員が貴族で構成されてるから、いつも俺たちを下に見てやがる。今回の件だって格式高い王の警護を卑しい平民風情に任せるわけにはいかない、だとさ。お高く止まりやがって」
ヨハンさんはふんっと鼻を鳴らすと、イライラした様子で紙コップに注がれたラガービールを一気に飲み干した。
「身分がそんなに大事か!? いくら努力しても報われず、しょせん血統やコネクションだけで全部決まっちまうのか!?」
「落ち着け、酔い過ぎだ」
「いーや、酔ってねぇ!」
大きな声を出して、酒乱と化したヨハンさんをルイスさんが宥めている。ほかの兵士さんは隊長に文句を言うことなんてできないのか、荒れているヨハンさんを心配そうに見ているだけだ。
「サトミ」
「はいっ」
ヨハンさんの完全に座った目が私を捉える。
なんか、蛇に睨まれたカエルになった気分。
「アイシャと逸れたとき、逃げずにすぐウチのテントに来たよな」
「逃げたりなんてしませんよ」
「窮屈だとは思わねえか? 自由が欲しいだろ。チャンスだったはずなのに、なぜそうしなかった」
「......私はこの生活に満足しています。私の居場所は、騎士団の中だけですから」
「よく言った! 俺はお前を認める! 友好の証だ! お前も飲め!」
「私、お酒は飲めませーん!」
「やめろ! サトミが嫌がってるだろ!」
親戚のおっさんみたいに絡んでくるヨハンさんをルイスさんが無理やりひっぺがして、祭りも終了し、テントを畳んで、ようやくお開きの流れになった。完全に潰れて眠っているヨハンさんをルイスさんが背負って、みんなで仲良く寮まで帰る。
「すまなかったな。こいつ、どうにも酒癖が悪くて」
「ルイス隊長が謝ることじゃないですよ」
「なぁサトミ。もし来年も一緒にいられたら、また祭りに来てくれるか?」
「いいですよ。今度はルイス隊長がお休みのときに行きましょう」
「……ああ」
ルイスさんがしっかりと頷く。空には真っ赤な丸い球体が二つ浮かんでいた、これはここがたしかに異世界であるという証。私、元の世界に帰れるのかな。もしダメでも、今の生活が楽しいからそれでいいか。
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