強面な騎士様は異世界から来た少女にぞっこんです

島崎 桜

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14話 ハーベストフェスティバル

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肌寒い。そう思った私は換気のために開けていた窓をそっと閉めた。この国の気温は年を通して十五度から二十度の間で安定。雨はあまり降らない。四季という概念がないので、寒すぎることはないが、暑すぎることもない。聞いた話ではもっと南の大陸では一年中真夏だったり、北にある大陸は毎日が大雪だったりするけど、その中でアスディア王国が位置する大陸はもっとも安定していて温和な地帯らしい。ほかの国に行ったことないからわからないけど。

だからこの国の人々は季節に対して情緒を感じることがない。桜を見て別れを惜しんだり、新緑の鮮やかさに目を輝かせたり。秋の落ち葉に悲しみを覚えたり......。でも、そういうのって日本独特なものなのかもしれないな。

「サトミ! 収穫祭の日は特別に門限が伸びるから、お仕事終わったらその足で一緒に行こうよ!」
「うん、いいよ」

収穫祭(ハーベストフェスティバル)その名の通り、食料の収穫に感謝して開催されるお祭り。ほかの国からも大勢の観光客が訪れ、花火が上がり、大がかりなパレードも開かれる。

私は一度も参加したことがない。酒場で働いていたときはお祭りの日は稼ぎどきで、お客さんがひっきりなしに来るから休みなんて取らせてもらえかったし。毎年花火の音を聞きながら、私も行ってみたいなと思っていたから丁度いい。今まで貯めていたお給料、パァーッと使っちゃお。

勤怠表に自分の名前の欄のところに退勤時間を書いて、自分の部屋に戻る。着替えたりなんだりしていたら、あっという間に夜になってしまった。

「わぁー! すごい!」

町にはたくさんの露店が並んでいた、ガス灯のおかげで夜でも明るい。道ゆく人の中には、頭に犬や猫の耳が生えた人もいる。コスプレかな? 頭上では花火が上がり、赤、黄、青など、さまざま大きさの菊輪がパッと咲いては人生のように儚く散っていった。ガヤガヤ、ワイワイ。みんな浮かれているんだろう、この空気感好きだな。

「よっ、」
「こんばんは、サトミ」
「こんばんは」

ヨハン隊長とルイス隊長にばったり会った。お二人ともかっちり決めた仕事着だが、ヨハンさんは肉の串を片手に持ちながら口の中をもぐもぐさせている……歩きながらもの食うなよ。

「お二人も祭りを楽しみに?」
「ちげーよ。俺たちは警備隊として召集されたの」
「広場のところに簡易テントが設置されてるから、なにか困ったことがあったらそこに来てくれ」
「はい」
「ルイスー、あっちに射的あるぜ! あっ、輪投げも!」
「ヨハン! 俺たちは遊びで来たんじゃないんだぞ!」

さっさと走り去っていくヨハンさんを、ルイスさんが慌てて追いかけていく……ほんと自由人。

「うわー、綺麗」

私は、目の前の露店で作られている飴細工に夢中になっていた。はじめはただの白い塊だったのに、着色料が加えられることで艶やかな桃色に変化すると、職人さんが棒やらハサミやらをたくみに利用してあっという間に鳥の形に変えていく。長く伸びた三本の尾、羽の造形も凝っている。精巧に作られたフィギュアみたい。これは魔法なんかじゃなくて、何年、何十年と積み重ねた努力の結晶なのだろう。

「すごいねぇアイシャちゃん。一個買ってみようか……」

横を見ると、アイシャちゃんがいない。まずい、いつ逸れた? 気がつかなかった。携帯電話がないから連絡を取ることもできないし、この大勢の人混みの中一人で探し回るのは厳しそう。

「迷子になった?」
「面目ない……」

ルイスさんの言葉を思い出して、騎士団のメンバーが集まっている黄色の仮設テントに来てみた。中ではすでにできあがったヨハンさんが顔を赤くして飯食いながら酒飲んで花火見てる。勤務中に酒飲むなよ。

「俺は忙しいからなぁ」
「お酒を飲むのに?」
「これも仕事のうちだ」

仕事っていえばなんでも許されると思うなよ。

「ルイス、一緒に探してやれ」
「わかった」
「お前ら! せっかくの祭りだ! じゃんじゃん飲めー!」
「サトミ、あのバカは放っておいて、いこう」
「はい。向こうも私のことを探しているでしょうし……待ち合わせ場所を決めておけばよかったですね」
「とにかく歩くか、流石に町の外には出てないだろ……うっ!?」
「あ、ごめんなさい、嫌でした?」

また逸れたらどうしようもないので、私はルイスさんの手をギュッと握った。すると、ルイスさんが変な声を出して跳ねた。なんかめっちゃびっくりしてる。

「いや、いい。絶対に俺のそばから離れるな」
「はい」

さーて、捜索開始!
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