強面な騎士様は異世界から来た少女にぞっこんです

島崎 桜

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34話 鳥籠の中

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ユリウスくんとキールさんにあれだけダメだと念押しされたが、どうしてもトウワ国に行ってみたい。

今私の手元にあるのは有給休暇申請書と、外泊許可願。一年で一回しか付与されないのに、十日間全部一気に使い切っちゃって大丈夫かな。......いや、いいんだ。世界地図はあらかじめ書き写しておいた。瞳の件はサングラスをかければ色は分からないだろう。周りから小さい小さい言われてる私だが、中学生の頃から身長は百六十センチあって、むしろ同年代の女子と比べれば背が高い方だった。男装すれば女だとは気づかれないはず。この時ばかりは凹凸の少ない貧相な自分の身体に感謝感謝だ。

副団長室の前まで来て、ドアをノックして部屋の中へ、机の上にこっそり置いて出ていこうかと思ったが、レオさんが居たので、恐る恐る申請書を手渡した。

「失礼します。あの、これ」
「ああ......」

レオさんはメガネをカチャリとかけ直すと、上から下までジロジロとその紙を見つめた。

「サトミさん。理由は私用のためとありますが、詳細は?」
「旅行に、行きたくて」
「お一人で?」
「はい」
「......申し訳ありません。この申請書は受理できません」

彼は大きくため息をつくと、その紙を二枚ともクシャクシャにして丸めて、ゴミ箱に投げつけた。

「えっ? なんで?」
「受理、できません」

レオさんは機械のように冷たくそう呟くと、ふたたび机仕事に戻った。これ以上は何を言っても取り合ってくれなさそうだ。私は唇を強く噛み締めると、静かにその場から退出した。

そのあとは箒を持って庭掃除。落ち葉を集めて、ちりとりで取って……。ふと足を進めると、騎士団本部の大門のところまで来てしまった。あと一歩足を前に進めれば簡単に外に出られる。誰かに許可を得る必要なんてないじゃないか。自分の人生だ、好きなように生きればいい。

そのとき、まとわりつくような視線を感じて振り返ってみると、遠くでルイスさんとユリウスくんが身振り手振りを交えて何やら話していた。私のこと、かな。

ルイスさんが私の方に向かって歩いてきた。いつものような優しさは感じられない。疑惑と不信感が混ざったようなあの目。この胸の変なドキドキは教師に呼び出されて叱られる直前のあれに似ている。

「……っ、なにか?」
「悲しいな」

ルイスさんが私の肩をポンと叩いて、ボソリと呟いた。まずい、私の計画全部バレてる、ユリウスくんに話してしまったということは、それがそのままルイスさんにも伝わるということで。

「十日以内に必ず戻ってきます。ご迷惑はかけません」
「殺されに行くようなものだぞ」
「わかっています。でも、トウワ国に行けばなにかあるかもって」
「なにもないかもしれない」
「それでも構わない! 私は成長したいんです。
恵まれた変わらない日々に甘え続けるのは楽かもしれない。でも、危険だとしても、私は自分の足で広い世界を歩いてみたい」

もうこのまま彼を押しのけて、飛び出してしまおうかと思った。でも、呆れられてしまうのが怖くて、次に帰ってきたら自分の居場所がなくなってしまうことを恐れて、私は門の方へ背を向けた。

「楽でいいじゃないか、成長なんてしなくていい。頼むからそのままで。俺はサトミのことが心配なんだよ」
「……すみません、勝手なことばかり」
「いいんだよ。もうおやつの時間だ、中で一緒に食べよう? 今日はサトミが好きな甘いケーキを用意した」
「やった! ケーキ!」

私は精一杯の作り笑いを浮かべると、彼が差し出した手をそっと握り返した。……ああ、ダメだ。やっぱり私はルイスさんには逆らえない。
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