強面な騎士様は異世界から来た少女にぞっこんです

島崎 桜

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37話 怒りと説教

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「あのね、お願いがあるんだけど......」
「んー、なに?」

夜の二十二時ごろ、私は申し訳ないと思いつつ隣で眠っているアイシャちゃんの身体を揺さぶって起こした。着替えは済んである、あとは抜け出して町に繰り出すだけだ。夜遊びしたっていいよね。もう私は三歳や四歳の子どもじゃない、結婚もできる。

「......というわけで、外出したいから、誤魔化すの手伝ってくれない?」
「わかった、トイレだって言っとく......」

寝ぼけまなこのまま、アイシャちゃんはふたたび夢の中へトリップ。大丈夫かな? まぁ、布団の中に長枕を入れておいたから膨らみで寝ているように見えるだろうし、日が登るまでに帰ってくればバレないだろう。ルイスさん、夜の外出は危ないから絶対ダメだって連れ出してくれないからなぁ。

物音を立てないように部屋から出て、階段を降り、建物の外へ。案外すんなり行ったな。


私の目的はホストクラブ。店の中は夜中とは思えないほどギラギラと眩しく輝いていた。洋風のカッコいい兄ちゃんにいっぱい囲まれておしゃべり。私はお酒が飲めないからジュースだけど、自分が住んでいるところとは別世界って感じがしてすごく楽しい。

「サトミ、また来てね。待ってるよ」
「はーい」

セイ。というホストに店の玄関先まで見送られて帰りの道を歩く。セイくんいい人だなあ。顔は特別イケメンってわけじゃないけど、サービスがうまいっていうか、話が上手っていうか。親身になって私の話を聞いてくれる。今度はアイシャちゃんやララちゃんも誘って来よっと。

「……うげっ」

ホクホクで寮に戻ると、そこはもう大騒ぎ。庭でルイスさんやヨハンさんを中心とした隊長格の面々に、レオ副団長までなにやら話し込んでいる。なんだなんだ? 泥棒でも入ったか?

「あっ、帰ってきた!」

ヨハンさんの大きな声を合図に、一斉にランタンの灯りが私の顔面に向けられた。眩しい。え、もしかしてこれ全員、私を探して……。

「……すみませんでした」

完全に注目を集めてしまった。誰に謝ったらいいかわからなくて、とりあえず目の前のルイスさんに頭を下げた。

「バカ野郎!!!」

耳がつんざくような怒鳴り声と共に、唐突にルイスさんに右の頬を平手打ちされた。加減してくれたのだろう、痛みはそれほどでもないが、その軽い音と衝撃は私に恐怖を植え付けるのに十分だった。

「どうしてダメだと言われていることをする!?」
「……すみません、すみません」

ああ、完全に怒っている。私は溢れそうになる涙をグッと堪えて、ただひたすらに謝罪を繰り返す人形になっていた。大丈夫、明けない夜はない。この説教だって必ず終わるときがくる。

「今までどこほっつき歩いてた!? ああん!?」
「……ホストクラブ、です」
「汚い! 俺はサトミを信じてたのに、裏切った!」
「まぁまぁルイス、落ち着きなさい。まず彼女が無事に帰ってきて良かった、それを喜びましょう」

鬼のように荒れ狂うルイスさんをレオさんがなだめた。いいぞ、そのまま怒りの炎に水をかけて消火してくれ。

「サトミさん、とりあえずもう寝なさい。懲罰の内容は追って下します」
「懲、罰」
「当然でしょう? 貴女は重大なルール違反を犯した」
「……すみません」

私は静かに睨みつけるルイスさんとレオさんの横を通って、建物の中に戻った。部屋に入って、大きくため息をつく。

「ごめんね! ほかの人ならなにも言わないんだけど、見回りに来たのがたまたまルイス隊長だったの。サトミはどこだ! なんてすごい剣幕で迫られて......つい」
「あー、いいよ。大丈夫、アイシャちゃん」


……こりゃ明日から、ルイスさんとの関係気まずくなっちゃうなぁ。
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