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38話 謹慎処分
しおりを挟む次の日、私に下された判決は三日間の謹慎処分。トイレ付きの個室に閉じ込められて、部屋の外へ出るのは一切禁止。窓はあるが、鉄格子がついているのでそこからの脱出は不可能。ドアは外側からのみ鍵がかかるようになっていて、内側からじゃどうやっても開かない。くそっ、これじゃ刑務所と変わらないじゃないか。
「......」
そのとき、ルイスさんがドアを開けて食事を持ってきてくれた。誰かと話せる唯一のチャンス!
「あの、黙ってホストクラブ行って、すみませんでした」
不機嫌丸出しでそそくさとお盆を部屋の隅に置いて、無言で出ていこうとするルイスさんの服の袖を引っ張って引き留めた。すると、彼は大きく息をついて、床に膝をつき、私と向かい合って視線を合わせた。
「お前は自分がここに閉じこめられているのはいじわるだと思ってるだろ?」
「......思ってません」
「反省なんて全くせず、次はどうやったらバレずに抜け出せるか、そんなことばかり考えている」
「......いいえ」
「ひどい人だ。自分のことしか考えていない」
「......すみません」
今のルイスさんはねっちりネチネチモード。昨夜のような激しい怒りこそ感じられないが、低い声で淡々と責められるのは精神的にキツい。
「もう一度聞く。どうしてダメだと言われていることをする?」
「みんな、こっそりやってるから。どうして私だけ」
「へぇ、みんながやってればなにをしてもいいのか? みんなが人を殺したら、お前も人を殺すのか?」
「……いいえ」
そんないきなり極端な例え話持ってこられても困る。でも、反論したら火がついて余計ネチネチ言われそうだしな。ここは大人しく落ち込んでいるふりをして、悲しげな表情をするのが吉だ。
「夜の町は魔物の巣窟、表面上は煌びやかに見えるかもしれないが、その影には暗い闇と、どす黒い欲望が入り交じっている。食われてから後悔しても遅いぞ」
「......すみません、もうしませんから、許してください」
「わかってくれたならいいんだよ」
私はルイスさんの目をじっと覗き込んだ。すると、彼は途端に穏やかな顔つきになって、私の肩を軽く叩いた。
「サトミはいい子だから、夜遊びなんて不良がするようなことはもうしないよな?」
「……はい」
「それならいい。だが、もし次も似たようなことがあれば……」
「あれば?」
「三日の謹慎じゃ済まない」
「どれくらい?」
「一生かもな」
ルイスさんの言葉に対し、背筋に弱い電流が走ったような震えが走った。三日間だって辛いのに、こんななんの生産性もないその辺に生えてる草みたいな生活が永遠に続くの!? そのときのルイスさんは表面上こそ笑顔だったが、目の奥は笑っていなかった。
「それは、脅しですか?」
「さぁ、どうだろうか」
ルイスさんは私を抱きしめると、唇にカサカサした生ぬるいキスをして、立ち上がった。
「食器を下げにまたくるよ」
「あ、はい」
そして彼は手を振って、喉の奥から低い笑い声を出して、部屋から出て行った。さっき、私はなにをされたんだっけ。大好きな人からの口付けなのに、嬉しくない。むしろ恐怖心のほうが優っている。私は、彼の瞳に一瞬だけ狂気を感じたんだ。
私は部屋の隅に置かれたスープをスプーンですくって口の中に入れた。ああ、とっくに冷えちゃって、美味しくない。いつもは食堂でみんなと食べるから、ひとりきりの食事は久しぶりだ。
......なんか、寂しいな。
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