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41話 自問自答
しおりを挟む最近、サトミが本を読んでくれと頼みに来ることがめっきり減った。それだけじゃない、前は俺の仕事が終わると隊長室の前で大人しく待っていて、ルイス隊長遊んでくださいと主人を待つ犬のように尻尾をふってねだってきたのに…...。俺、飽きられちゃったのかな。
建物内でサトミの姿が見当たらなくて、部屋を覗いたらもぬけの殻。どこに行っていた? と俺が問いただすと、サトミは少しだけ嫌そうな顔をした。俺のなにが悪いっていうんだ? 俺はただサトミのことが心配なだけなのに。
「ルイスさん、なんか変です」
「ルイスさんは私にどうして欲しいんですか?」
サトミの言葉がぐるぐると頭の中を反芻する。一体、俺のなにが悪いっていうんだ。
「はぁぁぁ……」
「キモっ」
俺が部屋の中でブルーな気持ちで何度目かわからないため息をつくと、ヨハンからのいつものひとこと。
「お前さぁ、逆の立場になって考えてみ? 例えばルイスが俺とキャバクラに行ったとする。帰ってきたら部屋の前にサトミがいて、誰と、どこに行ってきたんだ! ってギャーギャー騒ぎ立てたらどう思う?」
「チューしたいって思う」
「ドアホ。頭の中お花畑か。めんどくせぇって思うだろ? 恋人でもない相手に自分の行動をいちいち詮索されたらよ」
「でも、それは俺のことを考えてくれてのことだし、やっぱり抱きしめてチューしたい」
「……ダメだこりゃ。いいか? お前はサトミの父親じゃない。家族でもない、所詮は赤の他人なんだ」
「だって、心配、だから」
サトミにとって俺は特別ではないにしても、いい人くらいには思われたい。……本当にそうか? それは心配なんじゃなくて、嫉妬してるだけなんじゃないか?
最後に女性と付き合ったのはいつだっけ。そうだ、あれはまだサトミと出会う前、俺は図書館の事務員に恋をした。三年ほど交際を続けたが、結婚して、家族になるビジョンが見えなくて、俺が一方的に別れを切り出した。そのときの彼女の反応は、悲しみもせず、怒りもせず、流れのない水面のように静かにたった一言「そう」と呟いただけだった。
結局本気ではなかったのだろう。俺も、彼女も。
サトミは俺のことどう思ってるんだろうか。
「お前はサトミとお付き合いがしたいんだろ? でも男女の一線を超えるってのは簡単なことじゃない。変化を受け入れられなければ、永遠にこのままだ」
それは責任を取りたくないから? 彼女に否定されるのが怖いから? ずっとサトミが無邪気な子どものままでいるならありがたいと思うのは、俺のわがまま?
「このままがいい。ずっと、でも、サトミの彼氏にもなりたい」
「それが独りよがりだって言うんだよ。ただの自己満足、オナニーもいいところだ」
「結局、俺は、自分のことしか……」
「忠告しておく。独占欲と愛情を履き違えるなよ」
サトミが欲しいと思っているのは本当だ。セックスしたい、毎日そんなことばかり考えて。あの柔らかな肌に触れて、緩やかなキスをして、一番奥を突いて、小鳥のように喘ぐ甘い声を聴いて。でも、彼女が安心できるように、少しでも彼女の周りに危険が及ばないように、排除してあげたいのも本心で。
......ああそうか、俺は今まで一度も、サトミに好きだと言ったことはなかったんだ。
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