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42話 おとり捜査
しおりを挟む「サトミちゃん、悪いけどこの書類、ルイス先輩に渡しておいてくれない?」
「はい」
ユリウスくんにそう頼まれて、私は隊長室に向かった。ドアをノックする前に聞こえてきたのは賑やかな声。なんかしてるのかな?
「......失礼しま」
「ぎゃーっはっはは!」
「あっははは! こりゃ傑作だぜ!」
私が隊長室に入ると、視界に飛び込んできたのは腹を抱えてゲラゲラと大笑いをするヨハンさんとキールさん、そしてもう一人。真っ赤なパーティ用みたいなヒラヒラしたワンピースを着て、頭には金髪のロン毛のウィッグ、顔面にはまるで幼児の落書きのような化粧を施したルイスさん? だった。
「あっ」
「失礼しました」
「違うんだサトミ! 俺はしたくてこんな格好をしてるわけじゃ……」
「いいと思いますよ。ほら、趣味や嗜好は人それぞれですから。ルイス隊長がどんな性癖を持っていようと……」
「示すな! 理解を!」
お楽しみ中のお邪魔になってはいけないと、机の上に書類を置いてそそくさと退出しようとしたが、困惑気味のルイスさんに腕を引っ張られたのでもう少しここにいることに。その不自然な胸の膨らみの中身はボールですか? 似合わなすぎて変な笑いが込み上げてきた。
「ヨハン! サトミに説明してくれ!」
「あー、実はな、最近城下町で若い女性が変質者からの被害を受ける事件が多発しててな」
「変質者?」
「犯人はトレンチコートを着ていて、すれ違いざまにバッとそのコートを広げた。その下にはなにも履いていなかったそうだ」
……つまり己の息子を女性の前に晒すことで興奮を覚えるタイプの露出狂ですね。どこの世界にも変態っているんだな。
「被害届が出ている以上無視はできねぇ。ってことで、おとり捜査をして、犯人を誘き寄せようって話になってな」
キールさんがそう言って、恥ずかしげに下を向いているルイスさんにチラリと視線を向けた。ルイスさんがおとりになって、犯人を捕まえるために女装することになったのか……。でも、うまくいくのかな? どこからどう見ても男だけど。
「今更ですが……マーガレット様にお願いすればよかったんじゃ?」
「ダメだ、あいつは顔だけは良いかもしれないが、気が強え。それにタッパもあるから近寄りがたい」
「……あれも十分近寄りがたいけどな」
早速現場に移動するとのことなので、面白半分で私もついて行くことにした。人気のない小道で内股でクネクネするルイスさん。いや、ルイ子。うーん、気持ち悪い。靴はハイヒールだし……身長百八十センチの大男がヒールで身長を盛ってるのなかなかの恐怖。
私とヨハンさんとキールさんは建物の影に隠れて変質者が来るのを待っていたが、一時間経っても二時間経っても収穫は得られず。
「やってられるか! こんなこと!」
とうとう痺れを切らしたルイスさんがウィッグを地面に叩きつけた。
「やっぱり本物の女の子じゃないとダメか」
「あーあ、どこかに変態好みのお淑やかで気が弱そうで、小柄な若い女の子はいないかなぁ」
「……もしかして、私?」
「「ザッツライト! (その通り!)」」
選手交代。場所を移動して、私がオロオロしながら突っ立っているハメに。ヨハンさんとキールさんは何かあったらすぐに助けに来てくれるって言ってたけど、大丈夫かな……。
「これなら俺、必要なかったよな……」
「さてと、これで現れるかどうか」
そして数十分後、向こう側からゆっくりと歩いてきたのはメガネをかけたサラリーマンっぽい成人男性。普通にどこにでもいそうな感じだ。その服装を除けば。着ているのは膝下まで丈があるロングコート。そして、その下にはムキムキの綺麗な生のおみ足が。あれだよね、短パン履いてるだけだよね!?
「お嬢さん、いいもの見せてあげようか?」
「い、いいもの?」
「ほーら! 僕のおち○ち○見て!」
「きゃぁぁぁ!!!」
その男は私の目の前に来るなり、コートの前をバッと広げた。中身は生まれたままのお姿。ズボンはもちろん、下着も履いてなかった。小さいクセに自慢すんじゃねぇよ。ルイスさんのが大きかったぞ。
「「「逮捕だー!!!」」」
「な、なんだお前らは!?」
その瞬間ルイスさんとヨハンさんとキールさんが飛び出して、その男を囲み、縄でぐるぐる巻きにした。
「ごめんなサトミ、嫌な思いさせて」
「大丈夫ですよルイス隊長」
「変態でなにが悪い!? 変態は正義だ! 僕はただ、自分が好きなことを好きなようにしただけだ!」
「黙れ変態」
「お前も変態だろうが!」
露出狂の男がルイスさんを怒鳴りつけると、ルイスさんは拳をかまえて、思い切り男の顔面に叩き込んだ。変態変態うるせーな。
「勘違いするな。変態であることは構わない。お前が自分の好きなことをするのは自由だが、他人に迷惑をかけてしまった時点でそれは正義ではなく犯罪なんだ」
名セリフ。……女装姿じゃなかったらめちゃくちゃカッコよく決まってたのになぁ。
なんやかんやあって事件解決。変質者を軍警に引き渡して、隊長室に戻ってくるなり、ルイスさんはワンピースを脱いでさっさと化粧を落としてしまった。
「はぁ、全く、こんなことは二度とごめんだ」
「えー、もう着替えちゃうんですか?」
「次はルイスにミニスカ履かせてみようか」
「バニーガールもいいな」
「次は私にお化粧やらせてください!」
「やらせねーよ!」
私とヨハンさんとキールさんの笑い声が隊長室中にこだまする。ルイスさんは疲れたのか、ぐったりして机に突っ伏してしまった。
その後、彼は新たな性癖に目覚めたとかなんとか……。
「目覚めてません!」
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