強面な騎士様は異世界から来た少女にぞっこんです

島崎 桜

文字の大きさ
43 / 50

42話 おとり捜査

しおりを挟む

「サトミちゃん、悪いけどこの書類、ルイス先輩に渡しておいてくれない?」
「はい」

ユリウスくんにそう頼まれて、私は隊長室に向かった。ドアをノックする前に聞こえてきたのは賑やかな声。なんかしてるのかな?

「......失礼しま」
「ぎゃーっはっはは!」
「あっははは! こりゃ傑作だぜ!」

私が隊長室に入ると、視界に飛び込んできたのは腹を抱えてゲラゲラと大笑いをするヨハンさんとキールさん、そしてもう一人。真っ赤なパーティ用みたいなヒラヒラしたワンピースを着て、頭には金髪のロン毛のウィッグ、顔面にはまるで幼児の落書きのような化粧を施したルイスさん? だった。

「あっ」
「失礼しました」
「違うんだサトミ! 俺はしたくてこんな格好をしてるわけじゃ……」
「いいと思いますよ。ほら、趣味や嗜好は人それぞれですから。ルイス隊長がどんな性癖を持っていようと……」
「示すな! 理解を!」

お楽しみ中のお邪魔になってはいけないと、机の上に書類を置いてそそくさと退出しようとしたが、困惑気味のルイスさんに腕を引っ張られたのでもう少しここにいることに。その不自然な胸の膨らみの中身はボールですか? 似合わなすぎて変な笑いが込み上げてきた。

「ヨハン! サトミに説明してくれ!」
「あー、実はな、最近城下町で若い女性が変質者からの被害を受ける事件が多発しててな」
「変質者?」
「犯人はトレンチコートを着ていて、すれ違いざまにバッとそのコートを広げた。その下にはなにも履いていなかったそうだ」

……つまり己の息子を女性の前に晒すことで興奮を覚えるタイプの露出狂ですね。どこの世界にも変態っているんだな。

「被害届が出ている以上無視はできねぇ。ってことで、おとり捜査をして、犯人を誘き寄せようって話になってな」

キールさんがそう言って、恥ずかしげに下を向いているルイスさんにチラリと視線を向けた。ルイスさんがおとりになって、犯人を捕まえるために女装することになったのか……。でも、うまくいくのかな? どこからどう見ても男だけど。

「今更ですが……マーガレット様にお願いすればよかったんじゃ?」
「ダメだ、あいつは顔だけは良いかもしれないが、気が強え。それにタッパもあるから近寄りがたい」
「……あれも十分近寄りがたいけどな」

早速現場に移動するとのことなので、面白半分で私もついて行くことにした。人気のない小道で内股でクネクネするルイスさん。いや、ルイ子。うーん、気持ち悪い。靴はハイヒールだし……身長百八十センチの大男がヒールで身長を盛ってるのなかなかの恐怖。

私とヨハンさんとキールさんは建物の影に隠れて変質者が来るのを待っていたが、一時間経っても二時間経っても収穫は得られず。

「やってられるか! こんなこと!」

とうとう痺れを切らしたルイスさんがウィッグを地面に叩きつけた。

「やっぱり本物の女の子じゃないとダメか」
「あーあ、どこかに変態好みのお淑やかで気が弱そうで、小柄な若い女の子はいないかなぁ」
「……もしかして、私?」
「「ザッツライト! (その通り!)」」

選手交代。場所を移動して、私がオロオロしながら突っ立っているハメに。ヨハンさんとキールさんは何かあったらすぐに助けに来てくれるって言ってたけど、大丈夫かな……。

「これなら俺、必要なかったよな……」
「さてと、これで現れるかどうか」

そして数十分後、向こう側からゆっくりと歩いてきたのはメガネをかけたサラリーマンっぽい成人男性。普通にどこにでもいそうな感じだ。その服装を除けば。着ているのは膝下まで丈があるロングコート。そして、その下にはムキムキの綺麗な生のおみ足が。あれだよね、短パン履いてるだけだよね!?

「お嬢さん、いいもの見せてあげようか?」
「い、いいもの?」
「ほーら! 僕のおち○ち○見て!」
「きゃぁぁぁ!!!」

その男は私の目の前に来るなり、コートの前をバッと広げた。中身は生まれたままのお姿。ズボンはもちろん、下着も履いてなかった。小さいクセに自慢すんじゃねぇよ。ルイスさんのが大きかったぞ。

「「「逮捕だー!!!」」」
「な、なんだお前らは!?」

その瞬間ルイスさんとヨハンさんとキールさんが飛び出して、その男を囲み、縄でぐるぐる巻きにした。

「ごめんなサトミ、嫌な思いさせて」
「大丈夫ですよルイス隊長」
「変態でなにが悪い!? 変態は正義だ! 僕はただ、自分が好きなことを好きなようにしただけだ!」
「黙れ変態」
「お前も変態だろうが!」

露出狂の男がルイスさんを怒鳴りつけると、ルイスさんは拳をかまえて、思い切り男の顔面に叩き込んだ。変態変態うるせーな。

「勘違いするな。変態であることは構わない。お前が自分の好きなことをするのは自由だが、他人に迷惑をかけてしまった時点でそれは正義ではなく犯罪なんだ」

名セリフ。……女装姿じゃなかったらめちゃくちゃカッコよく決まってたのになぁ。

なんやかんやあって事件解決。変質者を軍警に引き渡して、隊長室に戻ってくるなり、ルイスさんはワンピースを脱いでさっさと化粧を落としてしまった。

「はぁ、全く、こんなことは二度とごめんだ」
「えー、もう着替えちゃうんですか?」
「次はルイスにミニスカ履かせてみようか」
「バニーガールもいいな」
「次は私にお化粧やらせてください!」
「やらせねーよ!」

私とヨハンさんとキールさんの笑い声が隊長室中にこだまする。ルイスさんは疲れたのか、ぐったりして机に突っ伏してしまった。

その後、彼は新たな性癖に目覚めたとかなんとか……。

「目覚めてません!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

お飾りの妃なんて可哀想だと思ったら

mios
恋愛
妃を亡くした国王には愛妾が一人いる。 新しく迎えた若い王妃は、そんな愛妾に見向きもしない。

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳 ロミオ王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

処理中です...