エゾ伝

satoshi1994

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小規模ギルドのある町

第1話 ある旅人の話

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 昨日降った雪が足を飲み込み、吐いた息が白く煙る。
 もうそろそろ新たな町に着き暖をとりたい。対して、目の前の四足獣は厚い毛皮のせいか暑い吐息を撒き散らしている。
 ドンッという足音を鳴らして私を越える巨体が突進してくる。
 衝突の寸前に相手の挙動に合わせ身を屈み、相手の喉元に剣を突き立てる。
 私を通過していった獣が直ぐ様私を振り替える。
 こいつの動作は完全に理解したつもりだったのだが、急所には浅かったか。
 獣は急所にこそ刺さらなかったもののこちらの出方を伺っている。
 ここで決める。
 私は右手に握った剣を、両手で持ち構える。
 相手の真正面に突進し、接触と同時に額めがけて剣を突き立てる。
 死を察知した獣が突きをかわすが、中空で反転し剣がゴリっという音を鳴らす。獣の脛椎を切る音だった。
    森の主であった巨獣が死に、森が静まり返る。
 さて、どう捌いたものか・・・。


 町に着くと辺りはもう暗くなっていた。
 獣の換金は後回しにして、先に酒でも飲むか。
 酒屋は冒険者やその関係者達でごった返していた。
 そこでしばらく飲んでいると店の端の方で若い集団が何かを叫んでいる。
 「若いパーティは賑やかでいいねぇ」横目で彼らを見ながら呟いているとマスターに彼らがメンバーを一人失ったことを聞いた。
 どこであろうと悲劇は降りかかる、か。
 彼らの事が少し気がかりではあったが、無関係の私が関わっていい問題ではない。彼らが解決すべき問題だ。宿に戻り疲れを癒す。


 ギルドで換金を済ませ、適当な任務を探していると昨日のパーティがギルドの受付ともめている。
 「何か問題でも?」ギルドの役人に訪ねるとどうも彼らは身の丈に合わないダンジョンでボスと遭遇してしまったらしい。若いメンバーで構成されたパーティにはよくあることだが、なんとも嘆かわしい。
 「そのダンジョンの探索任務は出ているのか?」役人に訪ねると、現在立ち入り禁止になっているという。
 「そんな危ないモンスターがいるのでは、この町にも被害が出るかもしれない。探索任務でも出してもらえないだろうか?私が受注する」少し考えて役人に提案すると、少し間を開けて確認しに行くと言ってその場を去った。
 後日確認しにこよう。
 暖をとって直ぐに町を出ていく予定だったが、当分町に残ることになりそうだ。
 町の周辺で採集ミッションや雑魚の討伐ミッションをこなしていくうちに大分装備が充実してきた。いつもはギリギリの装備でやってきたため、この状態ならどんな的でも倒せそうだ。
 「よぉし。いつも皆ありがとう。今日は俺の奢りだ。好きなだけ飲んでくれ」そういうと席の皆が苦笑いをする。
 「いや、いつもあんたの奢りじゃねぇか今日は俺たちに奢らせてくれよ」そう戦士の一人が言うと、パーティの魔法使いが貴方の奢りではないのね。私も払うの?等といっている。
 私たちがそう笑っていると、若いパーティが入ってくるのが見える。
 どうしても無視できないでいると、「旦那気になりますか?」と他のメンバーに見透かされたようなことを言われる。
 「どうも死に急いでいるように見えてな」
 たまらず私は肉をほうばる。私には関わり合いのないことだ。彼らの問題なのだから。
 「例の任務彼らが受注しようとギルドで揉めているらしいですよ」魔法使いが知りたくもない話をしてくる。
 「彼らには無理だ」思わず口調が強くなる。
 回りの連中も聞いていたようで、レベルがどうのと言い出す。
 「そういう話ではない。彼らでは低級ミッションですら失敗するぞ」ダンジョン内ではミッションを失敗すると最悪・・・。
 私たちが話をしていると聞こえたのかは分からないが、彼らの方からこちらに向かってくる。
 勘弁してくれ。せっかく関わらないようにしていたのに。
 「なあ、あんたたちだろ大人狼討伐ミッションを進めているのは?」少年達で一番死に急いでいる少年が私に向かって言い放つ。
 私は黙って飯を食う。
 「あんたが中心になって調査を進めているって、そこのダンさんに聞いたんだ。俺たちのためにやってるんなら俺たちも入れてくれ」
 私は食べながら戦士のダンをにらむ。こいつ何か余計なことをしやがったな。何も言っていなかったはずなのに、こんな奴にまでばれるなんて。
 ダンは諦めさせるためにどうのと言っているが、無視だ。
 彼らと関わっても何もいいことはない。「帰れ」と呟く。もちろん私は流れ者なのでこの言葉に何の拘束力もないのだが、何故か周りの奴等に摘まみ出される。私も偉くなったものだ。
 「ダンお前も帰れ」彼には妻子がおり、毎回仕事終わりに飲みに繰り出しており、さすがに罪悪感を感じていた。がさつではあるが、根がいい奴だそれで彼らを放っておけなかったのだろう。攻めることも出来ない。
 酒も不味くなり、この日はいつもより早く解散した。
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