1 / 10
小規模ギルドのある町
第1話 ある旅人の話
しおりを挟む昨日降った雪が足を飲み込み、吐いた息が白く煙る。
もうそろそろ新たな町に着き暖をとりたい。対して、目の前の四足獣は厚い毛皮のせいか暑い吐息を撒き散らしている。
ドンッという足音を鳴らして私を越える巨体が突進してくる。
衝突の寸前に相手の挙動に合わせ身を屈み、相手の喉元に剣を突き立てる。
私を通過していった獣が直ぐ様私を振り替える。
こいつの動作は完全に理解したつもりだったのだが、急所には浅かったか。
獣は急所にこそ刺さらなかったもののこちらの出方を伺っている。
ここで決める。
私は右手に握った剣を、両手で持ち構える。
相手の真正面に突進し、接触と同時に額めがけて剣を突き立てる。
死を察知した獣が突きをかわすが、中空で反転し剣がゴリっという音を鳴らす。獣の脛椎を切る音だった。
森の主であった巨獣が死に、森が静まり返る。
さて、どう捌いたものか・・・。
町に着くと辺りはもう暗くなっていた。
獣の換金は後回しにして、先に酒でも飲むか。
酒屋は冒険者やその関係者達でごった返していた。
そこでしばらく飲んでいると店の端の方で若い集団が何かを叫んでいる。
「若いパーティは賑やかでいいねぇ」横目で彼らを見ながら呟いているとマスターに彼らがメンバーを一人失ったことを聞いた。
どこであろうと悲劇は降りかかる、か。
彼らの事が少し気がかりではあったが、無関係の私が関わっていい問題ではない。彼らが解決すべき問題だ。宿に戻り疲れを癒す。
ギルドで換金を済ませ、適当な任務を探していると昨日のパーティがギルドの受付ともめている。
「何か問題でも?」ギルドの役人に訪ねるとどうも彼らは身の丈に合わないダンジョンでボスと遭遇してしまったらしい。若いメンバーで構成されたパーティにはよくあることだが、なんとも嘆かわしい。
「そのダンジョンの探索任務は出ているのか?」役人に訪ねると、現在立ち入り禁止になっているという。
「そんな危ないモンスターがいるのでは、この町にも被害が出るかもしれない。探索任務でも出してもらえないだろうか?私が受注する」少し考えて役人に提案すると、少し間を開けて確認しに行くと言ってその場を去った。
後日確認しにこよう。
暖をとって直ぐに町を出ていく予定だったが、当分町に残ることになりそうだ。
町の周辺で採集ミッションや雑魚の討伐ミッションをこなしていくうちに大分装備が充実してきた。いつもはギリギリの装備でやってきたため、この状態ならどんな的でも倒せそうだ。
「よぉし。いつも皆ありがとう。今日は俺の奢りだ。好きなだけ飲んでくれ」そういうと席の皆が苦笑いをする。
「いや、いつもあんたの奢りじゃねぇか今日は俺たちに奢らせてくれよ」そう戦士の一人が言うと、パーティの魔法使いが貴方の奢りではないのね。私も払うの?等といっている。
私たちがそう笑っていると、若いパーティが入ってくるのが見える。
どうしても無視できないでいると、「旦那気になりますか?」と他のメンバーに見透かされたようなことを言われる。
「どうも死に急いでいるように見えてな」
たまらず私は肉をほうばる。私には関わり合いのないことだ。彼らの問題なのだから。
「例の任務彼らが受注しようとギルドで揉めているらしいですよ」魔法使いが知りたくもない話をしてくる。
「彼らには無理だ」思わず口調が強くなる。
回りの連中も聞いていたようで、レベルがどうのと言い出す。
「そういう話ではない。彼らでは低級ミッションですら失敗するぞ」ダンジョン内ではミッションを失敗すると最悪・・・。
私たちが話をしていると聞こえたのかは分からないが、彼らの方からこちらに向かってくる。
勘弁してくれ。せっかく関わらないようにしていたのに。
「なあ、あんたたちだろ大人狼討伐ミッションを進めているのは?」少年達で一番死に急いでいる少年が私に向かって言い放つ。
私は黙って飯を食う。
「あんたが中心になって調査を進めているって、そこのダンさんに聞いたんだ。俺たちのためにやってるんなら俺たちも入れてくれ」
私は食べながら戦士のダンをにらむ。こいつ何か余計なことをしやがったな。何も言っていなかったはずなのに、こんな奴にまでばれるなんて。
ダンは諦めさせるためにどうのと言っているが、無視だ。
彼らと関わっても何もいいことはない。「帰れ」と呟く。もちろん私は流れ者なのでこの言葉に何の拘束力もないのだが、何故か周りの奴等に摘まみ出される。私も偉くなったものだ。
「ダンお前も帰れ」彼には妻子がおり、毎回仕事終わりに飲みに繰り出しており、さすがに罪悪感を感じていた。がさつではあるが、根がいい奴だそれで彼らを放っておけなかったのだろう。攻めることも出来ない。
酒も不味くなり、この日はいつもより早く解散した。
0
あなたにおすすめの小説
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる