エゾ伝

satoshi1994

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小規模ギルドのある町

第2話 少年たちの物語

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 雪が降ることが減ってきたとはいえ、まだまだ寒い早朝から冒険者達から旦那と言われている男は宿を出る。
 今日仕事がないことは確認済みだ。あの男は俺たちがジャンを失った日に東の森でボスであった《主の獣》を討伐して、この町に来た。
 それから冒険者たちの信頼を得た頃になると、ギルドであのモンスターの調査任務を引き受けた。
 俺たちがどれだけ食い下がってもおりなかった仕事の許可が、彼はギルドからの依頼でおりている。
 ふざけやがって。
 周りからの噂では、よく仕事をし寡黙だが的確な指示を出すという。
 ようは他人に仕事をやらせて、威張ってるだけだろ?
 何かあいつの弱味でもないかと思ってここ最近調べてみたが、奴は仕事してギルドと居酒屋で一日の大半を過ごし後は宿舎で寝るだけ。
 人間性は見えてこなかった。
 冒険者に多い、金に対する欲求や復讐心といった強い行動理念が分からなかった。
 何故あの手間のかかる任務を受注しようとしているのだろうか。大人狼は最近迷宮変動をおこした《北の洞窟》の最新部の恐らくではあるが、ボスモンスターである。
 ギルドは新たに見つかったダンジョンや迷宮変動を起こしてまだ安定していないダンジョンに入る許可を出さない。
 そのため彼は一度ギルドの評価を得て、一緒にミッションに行く仲間を用意して、ダンジョンの探索任務を何度もこなしてきた。
 冬頃から春になる今までの間に《北の洞窟》の最深部の地形やモンスター・採集できる物の情報はギルド内で共有されているらしい。
 ギルドで開示される情報は各ギルドで認められたランクによって違うが、少なくとも俺たちに《大人狼》どころか最深部の情報は開示されていない。
 いくらダンジョン内で仲間を失おうが、開示情報が増えることはない。
 全情報を保持しているのは5等級のパーティだが、俺たちはようやく3等級になったばかりだ。
 そのため、5等級のやつらとギルドメンバー達から旦那と呼ばれるあいつと一緒に任務を終えたやつらの話を聞いて仲間と一緒に話をする程度だ。
 しかしその仲間たちとの話も最近はやっていない。
 ジャンが死んでからしばらくたち、ギルドの仕事もようやくできるようになってきたがそれでも俺たちは立ち直れていない。

 しばらく尾行していると町から少し離れた滝壺のある広場に到着した。
 奴はしばらく技や術の稽古をすると上着を脱いで滝に向かう。
 剣を両手で逆さに持ち、低く姿勢を構えると姿が消える。気付いたときには、流れ落ちる水はなくなり滝の上に飛び上がっていた。
 「熱い!」反射的にそう叫ぶと同時に爆音と共に熱湯が降り注ぎ、俺は慌ててその場を逃げた。


ギルド内集会所にて。

 「で、結局今日は滝壺で火傷したってこと以外何の情報もなくかえってきったてわけ?」盗賊のティシャはたいしたリーダーねとあきれ果てている。
 ティシャだけではない。他のパーティメンバーも同じことを思っているようだった。
 この中であのモンスターにたいして執着しているのは俺だけだ。
 皆ジャンのことを忘れたわけではないが、あの厄介なモンスターを倒したとまでは思っていない。
 「だいたい僕たちのレベルではあのダンジョンは早すぎたんだ。今向かっても最深部まで行って帰ってこられるとは思えない」
 僧侶のベックもやはり同意する。
 「っつかさ、っつかさ、ぶっちゃけこのパーティのレベルじゃどんだけ情報集めてもあそこには入れないでしょ?
 無断で入るわけ?それと上位ギルドメンバーに連れってもらうとか、一気にレベル上げるとか全部無理っしょ」
 奇術師のポロもイラつかせる喋りをしながら分かりきっていることを言う。
 「わかっってる。判ってるがそれでも何せずにはいられないだろ。もう、何もせずに失うのは嫌なんだよ」
 そういうと皆心を打たれたようで黙り混む。
 しかし死んだジャンの代わりに今までパーティのリーダーとして皆を引っ張ってきたが、リーダーとして何の成果をあげられていないのも事実。このままチームの未来について話し合わずに、ダンジョンの情報を集めているだけでは何の意味も・・・。
 話に行き詰まっていると、ダンのパーティがギルドに入ってくるのが見え、そちらに向かう。


 「おい、ダン最近調子どうだい?」
 ダンは機嫌が悪そうに「お前は新たにリーダーになれたことがよほど嬉しく見えるな」返す。
 深い怒りが込み上げてくる。だがここで感情に流されて行動を起こすとダンの思う壺だ。
 ダンは俺たちの相手をする気がない。
 よそ者の相手は喜んでするくせに地元民の雑魚の相手はしないってか。だがこいつはあの流れ者と一番交流が深い。
 「最近はあの流れ者と一緒によく洞窟探査にいっているらしいじゃないか」
 「ふん。まぁ、そんな怖い顔をするな。お前が仲間を失ってからがむしゃらに頑張って空回りしまくってるのはこの町じゃ皆知ってる。それとお前は知らんだろうが、旦那はなかなか尊敬ので切る男だぜ?」ダンは自分のパーティメンバーに諭されて言う。
 旦那とは言うが、ダンの方があの流れ者より年上の気がする。
 
 ダンが言うにはあの流れ者は町に来た頃は独りで仕事をしていたが、少しずつ高難度の任務をこなしていくにつれ最初は低等級のメンバーや流れ者達と仕事をするようになっていったという。
 その内ギルド中で、事前に敵やダンジョンの情報共有や装備品の用意、任務後の報酬の多さが有名になっていったという。
 そうしていくうちに、町の高等級の冒険者たちがこぞって組むようになっていった。
 その話を聞いていくとどうもあの男がそんなに強いように思えなかった。
 その事を訊ねると、あの男の強さは分からないと言う。
 ダンはその理由として、あの男は任務に対して必要な準備をした上でことに当たっていると言う話だった。
 何故かイライラがつのる。
 ジャンが死んだのは、それらのことが出来なかったからだ。
 あの男なら迷宮変動中のダンジョンにはどれ程の戦力があっても侵入しなかったかもしれない。

 だが、そんなことを言っていればいつまでたっても仕事が出来ないではないか。そんなに臆病であることが評価される仕事だったか?冒険者って仕事は。
 話を聞くほどにいけすかない奴に思えてくる。遠目でしか見たことはないが、いつも偉そうな態度をとっているあの男がそんなに好かれるようには思えない。
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