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小規模ギルドのある町
第3話 あるパーティの話
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「ジャンが死んでからザフは変わってしまったわね。
今までは意見を出すことはなく、同意することしかしなかったのに。リーダーを引き継いで、チームをよく引っ張ってくれてる」
ティシャは少しうつむきながら空のグラスの縁を人差し指で撫でながら言う。
「まぁ、少し鬱陶しいけどな」
少しでも暗くなりすぎないように、ポロが茶化す。
「ザフは無理してくれてるんだよ」
ザフに背負わせ過ぎていると考えるベックが彼の行動を擁護する。
「そういえばジャンが北の洞窟に行くことだけはザフは最後まで反対してたわね」
もの憂い気な表情で少しずつ上を見上げながらティシャが言う。
「何の話をしていたんだ?」
ザフが戻るとメンバー達は話を変える。
「ダンさんとはどんな話をしてたの?随分長い間話をしていたけど?」
「ああ、あの流れ者について話を聞いていたんだ」
「へ・へぇ、どんな話を聞いてきたの?」
ザフはベックを睨み、これからの自分達の方針についていつものように話題を変えようとする。
だが、他のメンバーに反対され、この日は解散した。
彼らはこれからの方針に対して今までずっと話し合ってきたが、常に堂々巡りになっていた。
メンバーと別れ、ザフは独り家路につく。
ザフはリーダーとして未熟な自分に対してイラついていた。そしてそのイラつきをぶつけるものがなく、悶々としていた。
大人狼について聞き回ることをしばらく止めていたザフは、メンバーの意向にしたがって、東の森でザフたちは簡単な討伐ミッションを行っていた。
安全なダンジョンでゆっくり時間をかけて少しずつレベルをあげていく。そんなことばかりの毎日で退屈すると同時に、こんな毎日に満足する仲間たちにザフだけが不満を持っていた。
雑魚ばかり倒していても新たな経験は得られない。それでもその日暮らしの人間にとっては少ないリスクで安定して得られる利益の方が、自分達のスキルアップよりも好ましかった。
同じパーティ内で目的がリーダーとメンバーで異なっていた。
最近ザフは東の森の最深部に行こうと提案することもしなくなっていた。
「そういや、調査チームが北の洞窟で大人狼と遭遇したらしいぜ?まぁ、びびって直ぐ逃げちまったらしいけどな」
帰路でポロが唐突に大人狼の話題を持ち出す。ザフはこの件に関しては険悪な雰囲気になるため、意図的に避けていたためポロがこの話題を出してきたことに少し驚く。
「んな話聞いたことないぞ、一体いつの話だ?」
「んー。昨日ダンさんとこのメンバーが言ってただけで詳しいことはわかんねぇ」
「ダンとこのメンバーが言ってたって、信憑性がねぇじゃねぇか!あいつら北の洞窟行ってねぇだろ」
北の洞窟に行ける5等級の冒険者ともなると、この町では各パーティのリーダークラスくらいしかいない。
そのため、ダンのパーティーメンバーの話という時点で又聞きになってしまう。
「どうするの?直接ダンさんに聞きに行くの?」
ティシャの質問にザフは答えられないでいる。
「僕たちも全くあの洞窟を忘れたわけではないんだ。ただ・・・今のレベルじゃ通用しないってだけで」
「今のままで通用しないのは、俺たちの努力が足りないからだろ!頑張ってる・頑張ってるって思ってるだけで、全く結果だしていないじゃないか」
ザフはベックの言葉に怒り、怒鳴る。
「こんな安全なところで雑魚をいくら刈ったって、新しい術も技も身に付かないだろ!精々薬と装備品が良くなったくらいじゃないか。こんな状況じゃそりゃいつまでたっても北の洞窟なんて行けないよ」
ザフは全く言い返してこないベックに呆れ、そのまま帰る。
ティシャ達が後ろで何か言っているが、ザフは全く聞くそぶりも見せなかった。
ザフ達がギルド内に到着すると、他にもいくつかのパーティがいたが、目当てのダン達のパーティは居なかった。
いくら高い等級の彼らとはいえ常に仕事をしているわけではない。
だがギルド内では北の洞窟の話で持ちきりであった。
「どう思う?」ザフはギルドを出、道すがらに仲間たちに訊ねる。
ギルド内での噂は多かったが、信憑性にかける話が多かった。そもそも重要な部分はギルドで情報統制されているのだ。ギルドに止められていない情報の時点で眉唾物である。
「あのモンスターと遭遇して、ある程度戦闘をした後撤退したってことは事実なんじゃないの?
ある程度戦闘して相手に逃げられたのか、隙を見て逃げたかどうかは分からないけど」
ティシャが聞いた噂を統括した。他にも噂では多様な宝箱やモンスターの生態やダンジョンについてのいくつもの矛盾した情報が飛び交っていた。
その噂の中で共通して矛盾していなかった情報がティシャの言った程度であった。
「実際に大人狼と遭遇した奴等に聞かないと何も分からんな。行ったメンバーは判るのか?」
「いやぁ~メンバーまでは聞いていなかったな。実際あれだけ情報が錯綜しているのを知っちまったら、ダンさんが遭遇したのかさえ怪しくなっちまったぜ」
「そ、そんなこと調べてどうするの?あの怪物と戦うの?」
「ベック・・・。別にもうやつとは戦う気はないさ。だが、当事者として知ろうとすることはしてもいいはずだ」
ザフはベックを攻める気は無くなっていた。
今までは意見を出すことはなく、同意することしかしなかったのに。リーダーを引き継いで、チームをよく引っ張ってくれてる」
ティシャは少しうつむきながら空のグラスの縁を人差し指で撫でながら言う。
「まぁ、少し鬱陶しいけどな」
少しでも暗くなりすぎないように、ポロが茶化す。
「ザフは無理してくれてるんだよ」
ザフに背負わせ過ぎていると考えるベックが彼の行動を擁護する。
「そういえばジャンが北の洞窟に行くことだけはザフは最後まで反対してたわね」
もの憂い気な表情で少しずつ上を見上げながらティシャが言う。
「何の話をしていたんだ?」
ザフが戻るとメンバー達は話を変える。
「ダンさんとはどんな話をしてたの?随分長い間話をしていたけど?」
「ああ、あの流れ者について話を聞いていたんだ」
「へ・へぇ、どんな話を聞いてきたの?」
ザフはベックを睨み、これからの自分達の方針についていつものように話題を変えようとする。
だが、他のメンバーに反対され、この日は解散した。
彼らはこれからの方針に対して今までずっと話し合ってきたが、常に堂々巡りになっていた。
メンバーと別れ、ザフは独り家路につく。
ザフはリーダーとして未熟な自分に対してイラついていた。そしてそのイラつきをぶつけるものがなく、悶々としていた。
大人狼について聞き回ることをしばらく止めていたザフは、メンバーの意向にしたがって、東の森でザフたちは簡単な討伐ミッションを行っていた。
安全なダンジョンでゆっくり時間をかけて少しずつレベルをあげていく。そんなことばかりの毎日で退屈すると同時に、こんな毎日に満足する仲間たちにザフだけが不満を持っていた。
雑魚ばかり倒していても新たな経験は得られない。それでもその日暮らしの人間にとっては少ないリスクで安定して得られる利益の方が、自分達のスキルアップよりも好ましかった。
同じパーティ内で目的がリーダーとメンバーで異なっていた。
最近ザフは東の森の最深部に行こうと提案することもしなくなっていた。
「そういや、調査チームが北の洞窟で大人狼と遭遇したらしいぜ?まぁ、びびって直ぐ逃げちまったらしいけどな」
帰路でポロが唐突に大人狼の話題を持ち出す。ザフはこの件に関しては険悪な雰囲気になるため、意図的に避けていたためポロがこの話題を出してきたことに少し驚く。
「んな話聞いたことないぞ、一体いつの話だ?」
「んー。昨日ダンさんとこのメンバーが言ってただけで詳しいことはわかんねぇ」
「ダンとこのメンバーが言ってたって、信憑性がねぇじゃねぇか!あいつら北の洞窟行ってねぇだろ」
北の洞窟に行ける5等級の冒険者ともなると、この町では各パーティのリーダークラスくらいしかいない。
そのため、ダンのパーティーメンバーの話という時点で又聞きになってしまう。
「どうするの?直接ダンさんに聞きに行くの?」
ティシャの質問にザフは答えられないでいる。
「僕たちも全くあの洞窟を忘れたわけではないんだ。ただ・・・今のレベルじゃ通用しないってだけで」
「今のままで通用しないのは、俺たちの努力が足りないからだろ!頑張ってる・頑張ってるって思ってるだけで、全く結果だしていないじゃないか」
ザフはベックの言葉に怒り、怒鳴る。
「こんな安全なところで雑魚をいくら刈ったって、新しい術も技も身に付かないだろ!精々薬と装備品が良くなったくらいじゃないか。こんな状況じゃそりゃいつまでたっても北の洞窟なんて行けないよ」
ザフは全く言い返してこないベックに呆れ、そのまま帰る。
ティシャ達が後ろで何か言っているが、ザフは全く聞くそぶりも見せなかった。
ザフ達がギルド内に到着すると、他にもいくつかのパーティがいたが、目当てのダン達のパーティは居なかった。
いくら高い等級の彼らとはいえ常に仕事をしているわけではない。
だがギルド内では北の洞窟の話で持ちきりであった。
「どう思う?」ザフはギルドを出、道すがらに仲間たちに訊ねる。
ギルド内での噂は多かったが、信憑性にかける話が多かった。そもそも重要な部分はギルドで情報統制されているのだ。ギルドに止められていない情報の時点で眉唾物である。
「あのモンスターと遭遇して、ある程度戦闘をした後撤退したってことは事実なんじゃないの?
ある程度戦闘して相手に逃げられたのか、隙を見て逃げたかどうかは分からないけど」
ティシャが聞いた噂を統括した。他にも噂では多様な宝箱やモンスターの生態やダンジョンについてのいくつもの矛盾した情報が飛び交っていた。
その噂の中で共通して矛盾していなかった情報がティシャの言った程度であった。
「実際に大人狼と遭遇した奴等に聞かないと何も分からんな。行ったメンバーは判るのか?」
「いやぁ~メンバーまでは聞いていなかったな。実際あれだけ情報が錯綜しているのを知っちまったら、ダンさんが遭遇したのかさえ怪しくなっちまったぜ」
「そ、そんなこと調べてどうするの?あの怪物と戦うの?」
「ベック・・・。別にもうやつとは戦う気はないさ。だが、当事者として知ろうとすることはしてもいいはずだ」
ザフはベックを攻める気は無くなっていた。
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