負けヒロインがダンジョンに落ちてたので連れ帰ってみることにした

睡眠が足りない人

文字の大きさ
9 / 17
逃亡姫は負けヒロイン

九話

しおりを挟む
 王都ピルア 朝 ルヴァン視点 

 「クエストを受けに行ってくる。簡単な奴で済ませるから昼には飯を買って帰ってくると思う。それまでは、本とか読んで暇を潰してろ。回復魔法で治したとはいえ、かなり血を流していたからな。今日まだ安静にしてた方がいい」

 食事後、俺は冒険者装備一式を身に付け、ベッドの上で寝ている姫様に外に行ってくると伝え、ドアに手を掛ける。

「分かりました。気をつけていってらっしゃいませ、ルヴァンさん」

「おう」
 
 一言返事を返し姫様に見送られながら、俺は部屋を後にした。

 「ヨイッショ」

  掛け声と共に昨日借りた台車を持ち上げ、雑貨屋へと向かう。
 すると、今日はいつもより遅い時間に出たせいかチラホラと冒険者がギルドに向かっているのを見かけた。
 この時間から増え始めんのか。初めて知ったわ。
 数年王都に住んでいてまだ新しい発見ってあるんだなぁと、人波に流されながらそんなこと思う。
 
 「なぁ、知ってるか?昨日から第二王女のアリエス様が行方不明になったんだとよ」

 近くを歩いている冒険者の話が姫様について、隣にいる冒険者に話しているのが聞こえた。
 俺は昨日の今日で何か進展があったのか気になり、冒険者二人の会話に耳を傾けてみることにした。

 「あぁ、知ってるぞ。朝になったら忽然と姿を消してたんだってな。誘拐でもされちまったのか」

「王城の警備はネズミ一匹通さねぇほど、厳重なんだぞ?誘拐なんてあるはずがねぇ」

「だとしたら、脱走か。何があってそんなことをしたんだ?まさか、勇者様達に会う方法を探すためとかではないだろうな。姫様は勇者様にほの字だったと聞くし」

「さぁな、まぁ庶民の俺達には理由なんて分かんねぇよ。それよりさ、あの話は知ってるか?普通女性に体重は聞いちゃいけないらしいぞ」

「えっ、今まで知らなかったのか?世間一般の常識だぞ?」

「そのなのか、知らなかった。うちの村じゃ体重を聞いたら皆んな嬉しそうに増えたって自慢してくれてたんだけどなぁ」

「それはお前の村がおかしいんだよ!」

 何なんだよお前の村は!おかしいだろ!?
 一人の冒険者がツッコンだタイミングで俺も、心の中でツッコンだ。
 姫様の話が終わったから、聞くのを止めようと思ってたのにお前が変な話するから気になって聞いてみたら、何なんだよその村。美醜逆転世界的なノリで太ってるのがその村だとステータスになるのか。だとしたらもう、そこはプチ異世界だぞ。

 「そうだよなぁ、王都じゃ普通みんな毎日お腹いっぱい食べられるもんな。迷宮があるからうちみたいに毎日黒パン一個しか食べらないなんてことは話は聞かないし」

「いや、なんかごめん。早とちりしたわ」

 うん、俺もごめん。そういう村なら体重が増えて健康的な姿に近づけて嬉しいよな。自慢したくなるよな。やっぱ、人の話はきちんと聞かないと駄目だわ。

 「まぁ、村の話は嘘なんだけど。単純に知らんかったわ」

「「俺の反省を返せ!!」」
 
 俺と話を聞いていた冒険者は、平然と嘘と言い放った冒険者の胸ぐらを思いっきり掴みそう叫ぶのだった。


 ◇

 冒険者ギルド 朝 ユナ視点

 「では、目撃情報一つに付き金貨一枚で依頼を発注しますが宜しいのですか?恐らくですが虚偽の報告が相次ぎますよ」

「そんなことは分かっています。けれど、そうだとしても早急に私は見つけなければならないのです。でなければ、アリエス様は…」

 メイド服を着た少女は、思い詰めたような表情でスカートを思いっきり握り締めます。
 早く見つけたい理由が彼女にはあるんでしょうね。でなければ、行方不明になってだった一日が経っただけで捜索依頼なんて出しませんもの。
 私は依頼内容を改めて確認しながら、何故そこまで焦る理由があるのでしょうかと首を傾げます。 
 が、アリエス様について全く知らない私がその理由を考えつくはずもなく、先程言われた通りの内容で依頼書を作成します。

「分かりました。では、こちらの内容で発注します。情報が入り次第そちらにギルド職員から連絡が行くように手配しておきます」

「ありがとうございます」

 メイドは深々と礼をすると、足早にギルドから出て行きました。
 メイドと入れ違えるようなタイミングで、私の専属冒険者であるルヴァンさんがやって来ます。
 
 「おはよう、ユナさん。ご飯めっちゃ旨かった。ありがとう」

 朝の挨拶と共に、ルヴァンさんそう言って昨日作った料理の感想を伝えてくれました。

 「ふふっ、口にあったようで何よりです。今晩は何が食べたいですか?」

  彼から料理を褒められ私の胸がポワポワと温かくなり思わず笑みが溢れます。
 練習した甲斐がありました。この勢いで胃袋を掴んでしまいましょう。

 「特に、今はこれと言ってないからな。クエストをしている間に考える。いつもより簡単めなクエストを頼む」

「そうですね…ちょっと待ってて下さい」

 私は比較的浅い階層で済ませることの出来る依頼をクエストリストから探します。
 と、言ってもルヴァンさんの簡単めは普通の人ものさしでの簡単ではありません。
 冒険者の平均ランクはDからCランクなのに対して、ルヴァンさんのランクはB+。しかも、基本的に冒険者は四人パーティを組んであげるのですが、ルヴァンさんは今現在までずっとソロです。階層が深くなって行くごとに強くなって行く迷宮。
 その迷宮の八十階層にいるボスモンスターを単身で倒せるルヴァンさんは、この世で数十人しかいないAランク冒険者と同等の力を持っていると言っても過言ではないでしょう。
 ちなみに、冒険者のランクは十階層毎に現れる強力なボスを倒すごとにE、E +、D、D+と一つずつ上がっていきます。 
 
 「四十九階層にある湖からとれるリアクリスタルの採取などは如何ですか?湖にさえつけば大量に採取することが出来ますし」

「じゃあ、それにしようかな。後、質問なんだけどその依頼書の内容って本当か?目撃情報だけで金貨一枚って」

 先程作成した手元にある依頼書の報酬を見て、ルヴァンさんは正気かと訊ねます。

「えぇ、本当ですよ。依頼をしたメイドさんはかなり急いでようでしたから。見つけるためにお金は度外視してるようです。ルヴァンさんはアリエス姫を見たりしませんでしたか?」

「…見てないな。まぁ、頭の片隅には入れておくか。目撃情報だけで金貨一枚は美味いし。じゃあ、行ってくる」

「はい、いってらしゃいませ」

 ルヴァンさんを見送りながら、今晩は何をリクエストされるのでしょうと、今から夕方のことを楽しみにしていました。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

見捨てられた(無自覚な)王女は、溺愛には気付かない

みん
恋愛
精霊に護られた国ルテリアル。精霊の加護のお陰で豊かで平和な国ではあったが、近年ではその精霊の加護も薄れていき、他国から侵略されそうになる。戦いを知らない国王は、スネフリング帝国に助けを求めるが、その見返りに要求されたのは──。 精霊に護られた国の王女として生まれたにも関わらず、魔力を持って生まれなかった事で、母である王妃以外から冷遇されているカミリア第二王女。このカミリアが、人質同然にスネフリング帝国に行く事になり─。 ❋独自設定有り。 ❋誤字脱字には気を付けていますが、あると思います。すみません。気付き次第修正していきます。

【完結】嫌われ公女が継母になった結果

三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。 わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...