負けヒロインがダンジョンに落ちてたので連れ帰ってみることにした

睡眠が足りない人

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逃亡姫は負けヒロイン

十話

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 迷宮 四十九階層 湖エリア 昼前 ルヴァン視点

 「アリエス姫の専属メイドか。確かストーリーに
絡んできたからビジュアルも名前も出でいた気がするが、思い出せねぇ。顔見りゃ思い出しそうなんだが、軽くすれ違っただけで顔なんてよく見てねえ。しくったな」

 名前さえ分かれば協力してもらって、家事とか姫様の身の回りのことを任されて楽が出来たかもしれない。と、俺はリアクリスタルをピッケルを使ったモンカリ方法で採取しながら後悔した。

 ズガンッ!
 
 「おっ、カブレライヌ鉱石じゃん。中級冒険者装備に結構使われるから品薄だし持って帰るか。お、さらにその上のユニオニオン鉱石も出てきた大量、大量」

  ピッケルで破壊した壁から、沢山のレア鉱石が出てきてホクホク気分だが、肝心のビアクリスタルが落ちていないので、このまま気持ちよく帰ることは出来ない。
 湖エリアは水晶系の鉱石が出やすいのはこの世界でも共通なのだが、今日は珍しく一個も出なかった。
 気を取り直して、他の壁をもう一度ピッケルでぶち壊し出てきた鉱石を拾って確認するが、先程と変わらず一個も落ちていない。
 
 「いや、だる。モンカリで言ったら採取ポイント二つも潰したのにゼロ個て。採取ツアーならチケット納品してすぐ帰るぞこれ。…いつもなら、これくらい壊せば出てくるはずなのに。もう少し、いやどうせなら思いっきりぶち壊せば出てくるだろ。『身体強化《ソーマエナジス》』、『付与《アナティス》:壁破壊《ティフォンカタストロフ》』。おらぁっ!!」

 ピッケルに壁を破壊するのに特化した魔法を付与し、身体強化して倍近く強くなった腕力にものをいわせ思いっきり振り下ろす。
 ドガガガンッ!
流石は特化付与魔法と身体強化の合わせ技。先程は高さ一メートル横一メートルくらいだったのに対して、今回は横五メートル高さ三メートルとかなりの広さの壁を破壊出来た。

 「流石にこれだけ広範囲を壊せば出てくるだろう。…おっし、予定通り。ビアクリスタル発見。これでクエスト達せ─「きしゃあーーーーーーーーーーーーー!」ッツあっぶな!?」

 俺が地面に落ちているビアクリスタルに手を伸ばしかけたタイミングで、目の前にあったビアクリスタルにミミズのような巨大な生き物が噛みつき粉砕した。
 その際に自分の腕も持っていかれそうになったので、噛まれるギリギリのところで手を引っ込ることに成功し俺は無傷。
 右手の感触が残っていることに、安堵の息を零しつつ目の前に現れたモンスターへと向き合う。

 「鉱石喰らいのトロイマターか。相変わらず気持ち悪い見た目してるよな」

 この全身の甲殻をレア鉱石で守っているめちゃくちゃでかいミミズみたいな奴は、この階層だと異常事態でしか現れないレアモンスターで、本来は七十一階層辺りから現れるトロイマターというモンスターだ。
 主食が主に鉱石類なことから、鉱石喰らいの異名を持ち上級冒険者から色んな意味で嫌われている。

 「きいいいいぃえやぁーーー!」

 「最近は異常事態モンスターに出会うことが多いな。好かれてんのかね?」

 俺は軽口を叩きつつ、突進してきたてきたトロイマターを迎撃するため剣を抜き構える。
 突進をギリギリのところで大きく上に飛んで避け、天井に足をつけると勢いよく蹴り、トロイマターに向かって急落下。
 甲殻の間に剣を差し込み走らせ、分厚い肉を切り裂く。
 が、この程度では肉の半分も断ち切れておらずトロイマターは怯んだ様子がない。
 俺は肉で剣挟まれ抜けなくなる前に剣を無理矢理抜き、一度距離を取る。
 すると、トロイマターは俺の方とは全く違う方向へと突進を始めた。
 敵を前にしての意味不明な行動。俺はトロイマターの意図が分からず離れて様子を確認していると、鉱石をムシャムシャと食べている。主にビアクリスタルを。
 
 「こいつが、ビアクリスタルが少なくなった原因か。それ以上喰われたらクエストが達成できねぇ。呑気に食事なんてさせるかよ」

 俺は悠長にご飯を食べているところへと疾走し、距離を詰めようとしたタイミングで、トロイマターの身体が突然膨らむ。

「『七十結界《アイアース》』」

 俺はそれに嫌な予感がして、咄嗟に上級結界魔法を発動した。瞬間、トロイマターの全身から鉱石が生えもの凄い勢いで射出され俺の結界魔法と衝突する。
一枚、二枚、三枚、四枚…五十枚ともの凄い結界は割れていったがそこからは割れる速度が緩やかになり、最後から二枚目の結界に当たったところで止まった。

 「ただ食べてるだけかと思っていたが、まさかそうじゃなく体内に取り入れて射出するためとは驚いたぜ。だが、そのおかげで面白いことを思い付いたぜ『岩石雨エダスブロヒム』」

  俺はニヤリと口元を歪めると、土属性の上級魔法をトロイマターに向けて放つ。
 が、当然魔法で生成した紛い物の石では鉱石で出来た甲殻を傷つけることは出来ない。同じように、トロイマターは魔法を無視しながらまたこちらに向かってくる。
 それを避け、俺はもう一度同じ魔法を発動。当然無傷。トロイマターは同じように鉱石を食べ始めた。
 それは、前までなら唯の美味しい食事だった。
 だが、今は違う俺の魔法で作った石が混ざったことで、それは劇物に変貌している。

 「吹き飛べや!『付与:爆破《エクリクス》』!」

 体内に入っている俺の魔法で作った石たちに爆破を付与。どんな生き物も内側からの攻撃は対処することは出来ない、見事トロイマターの肉体は爆発四散した。

「こりゃいいな。次からトロイマターみたいな鉱石を食うやつと戦う時使ってみよう」

  俺は有用な戦法を見つけたことを喜びつつお目当てのビアクリスタルを探すと、トロイマターから射出されたものが何個か壁に刺さっていた。
 「消化されてなくてラッキー」と思いつつ、俺は手を伸ばしたタイミングで頭に電流が走った(閃き的な意味で)。
 これって、あいつの体内から出てきたってことは排泄物だよな。つまり、これはあいつの糞と同義。
そう考えたら、めちゃくちゃ汚ねえじゃねぇか!
 俺はすぐ様伸ばしていた手を引き、地面にビアクリスタルが落ちていないか確認する。
 何処かにないか?あいつが食っていないビアクリスタルは!
 だが、そんな願いも虚しく四つん這いになって探すが地面には見当たらない。
 なら、壁をもう一度壊してとピッケルの方を見ると先程トロイマターに喰われていたのか鉱石部分だけが壁に突き刺さっている。

 「ウッソだろーーーーーーー!」

 俺は、この汚ねえクリスタルを持って帰るしかないのかと絶望の叫び声を上げた。

あとがき
ユナ「このビアクリスタル純度が高くて、素晴らしいですね。どうやって手に入れたんですか?」
ルヴァン「世の中には知らない方が良いこともあるんだ、ユナさん」
ユナ「??どういうことですか」
 
余談
しっかりとルヴァンが持って帰る際に浄化魔法で菌や汚れをしっかり落としているので、ビアクリスタルとても綺麗です。
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