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逃亡姫は負けヒロイン
十六話
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ルヴァン宅 昼 ルヴァン視点
「どうですか?」
不安そうな顔で、アリエス姫は感想を尋ねてくる。
俺は無言で、野菜炒めにスプーンを伸ばし掬うと口に入れる。
「美味い」
「そうですか。それは良かったです。ちょっと、本に書いている時間より長くお肉を焼いてしまったので心配だったんですよ」
料理の感想を聞くと、アリエス姫はホッと胸を撫で下ろした。
「それなら気にしなくていいぞ。俺多少焼き目が付いてる方が好みだから、これくらいが丁度いい」
「ルヴァンさん多少焼いた方が好きですか。覚えておきますね」
「そうしてくれると、助かる」
俺が口の中に入れたものを飲み込み、直ぐにスプーンを伸ばしているのを見て、本当のことを言ってるのだと悟ったのかメモ帳を取り出し何かを書き込んでいく。
アリエス姫に昼食を任せて四日目。まだまだ、自信がないのか料理を食べるたびに感想を求め、メモをしている。
小説を読んでいた頃から思っていたが、彼女はかなりの努力家だ。
勇者である光輝の側にいるため、軍略を学んで戦場では指揮官をしたり、たった半年で上級回復魔法や強化魔法を覚えたりしている。
それらは、生半可な努力では出来るものではない。一つの属性上級魔法を覚えるのに、普通は二年から三年掛かるといえば彼女の凄さが分かってもらえるだろう。
まぁ、集中し過ぎるあまり初めて料理をした日みたいに過労になるくらいやるのは止めて欲しいが。
「?どうしたんですか。私の顔に何か付いてます」
「いや、付いてねぇよ。ただ、ボッーとしてただけだ。それより、何か欲しいものはないか?本だけだと退屈だろうし、何か欲しいものがあったら夕方に買ってきてやるよ」
倒れないか心配していたなんて柄じゃないので、適当にはぐらかし話題を変える。
「欲しいものですか……………。あの、ルヴァンさん質問なんですけど、私の捜索状況ってどうなってます?」
「兵士の数は減ってきているな。王都内で見つからないから、近辺の町に人数を割いているらしい。それがどうかしたか?」
「いや、ただ外に出れる状況か知りたかったです」
「何か、自分で買いたいものでもあるのか?」
下着類は奇跡的にキャラクタープロフィールを覚えていたので、大丈夫だと思うんだが。まさか、この短期間で成長したとは言わんよな。十代でHの次とか、やば過ぎるだろ。
「そうじゃなくてですね。中に困りっぱなしだと身体が鈍りそうなので、素振りをしたいなと思ってまして。ですが、この状況だと難しそうですね。大丈夫です」
「忘れてください」と、取り繕った笑みを浮かべるアリエス姫。
俺の邪な考えとは全く違う、至極当たり前な意見で一瞬自分を思いっきり殴りたくなった。
それにしても、身体を動かしたいか。出来なくはないが、迷宮で初めて会った時のことを考えると安易に裏庭でならやってもいいと許可を出しづらい。したら、ずっと素振りをしてそうだ。でも、このまま缶詰め状態にさせるのも辛いだろうからな。
「出来なくはないが、条件がある」
「条件ですか」
数秒考えた末に、俺はアリエス姫の要望を条件付きにだが、受け入れることにした。
「一つ、出る範囲は裏庭だけ。二つ、身体を動かすのは俺が朝鍛錬している時のみ。三つ、これを破ったらその日は風呂に入れない。これを呑めるなら許可してやる」
要は俺の目の届く範囲にいろってことだ。それ以外でやったら罰として、アリエス姫が好きな風呂に入れなくする。至ってシンプルな条件。
「それくらいでしたら、全然大丈夫です。呑みます」
この程度なら何の縛りもないも当然なので、アリエス姫は「ぜひ、お願いします」と、首を縦に振った。
◇
次の日 朝
「ほら、素振り用の剣だ」
約束通り、朝の鍛錬に来たアリエス姫に俺は剣を渡す。
「うわわわぁっ、重過ぎませんか!?これ」
受け取った剣が予想外に重かったのか、ヨロケながら本当に使えるのかとアリエス姫は抗議の声を上げる。
「そりゃ、『身体強化』使う前提の奴だからな。当然だ。素振りしながら魔力の流れを整える訓練にもなるから、意外とありなんだぞ。『身体強化』」
身体強化をかけ、手本を見せるため剣を一旦取り上げると俺は剣を振る。特に型なんてない我流だが、実戦の中で磨いた剣だ。無駄は削ぎ落とされているため、兵士達のセピア流の剣にも負けないだろう。
横薙ぎ、斬り上げ、斬り下ろし、時には蹴りや拳を交え同じ型をなぞらない様意識して振り、三分程度で終わる。
本来なら後五十七分はやるのだが、今は手本だ。軽くでいいだろう。
「ほら、魔法を使えば振れるだろ?」
「そうですけど、これだと感覚が狂いそうです」
「文句言うな。元はと言えばアリエス姫が剣を雑に扱って、壊れる一歩手前までにしたのが悪いんだろ。今日鍛錬用の剣買ってくるから我慢しろ」
「うっ、そうでした」
俺の指摘に言葉を詰まらせるアリエス姫。
実は昨日の昼、飯を食べ終えてすぐ「今すぐ剣を振りたいです」と言って、ボロボロの剣を振るってぶっ壊しているのだ。
だから、文句を言われてもどうしようもないっての。
「まぁ、今日だけなら何とか頑張りましょう『身体強化』」
魔法を唱え、アリエス姫は素振りを開始する。
最初は振り難そうにしていたが、途中から慣れてきたのかある程度様になってきていた。
コツを掴んでいくのが楽しいのか、調子に乗って彼女は俺と同じ一時間素振りを続けていたのだ。
その結果、次の日「腕が上がりません」と、アリエス姫が筋肉痛を訴え、俺が呆れた言うまでもないだろう。
「どうですか?」
不安そうな顔で、アリエス姫は感想を尋ねてくる。
俺は無言で、野菜炒めにスプーンを伸ばし掬うと口に入れる。
「美味い」
「そうですか。それは良かったです。ちょっと、本に書いている時間より長くお肉を焼いてしまったので心配だったんですよ」
料理の感想を聞くと、アリエス姫はホッと胸を撫で下ろした。
「それなら気にしなくていいぞ。俺多少焼き目が付いてる方が好みだから、これくらいが丁度いい」
「ルヴァンさん多少焼いた方が好きですか。覚えておきますね」
「そうしてくれると、助かる」
俺が口の中に入れたものを飲み込み、直ぐにスプーンを伸ばしているのを見て、本当のことを言ってるのだと悟ったのかメモ帳を取り出し何かを書き込んでいく。
アリエス姫に昼食を任せて四日目。まだまだ、自信がないのか料理を食べるたびに感想を求め、メモをしている。
小説を読んでいた頃から思っていたが、彼女はかなりの努力家だ。
勇者である光輝の側にいるため、軍略を学んで戦場では指揮官をしたり、たった半年で上級回復魔法や強化魔法を覚えたりしている。
それらは、生半可な努力では出来るものではない。一つの属性上級魔法を覚えるのに、普通は二年から三年掛かるといえば彼女の凄さが分かってもらえるだろう。
まぁ、集中し過ぎるあまり初めて料理をした日みたいに過労になるくらいやるのは止めて欲しいが。
「?どうしたんですか。私の顔に何か付いてます」
「いや、付いてねぇよ。ただ、ボッーとしてただけだ。それより、何か欲しいものはないか?本だけだと退屈だろうし、何か欲しいものがあったら夕方に買ってきてやるよ」
倒れないか心配していたなんて柄じゃないので、適当にはぐらかし話題を変える。
「欲しいものですか……………。あの、ルヴァンさん質問なんですけど、私の捜索状況ってどうなってます?」
「兵士の数は減ってきているな。王都内で見つからないから、近辺の町に人数を割いているらしい。それがどうかしたか?」
「いや、ただ外に出れる状況か知りたかったです」
「何か、自分で買いたいものでもあるのか?」
下着類は奇跡的にキャラクタープロフィールを覚えていたので、大丈夫だと思うんだが。まさか、この短期間で成長したとは言わんよな。十代でHの次とか、やば過ぎるだろ。
「そうじゃなくてですね。中に困りっぱなしだと身体が鈍りそうなので、素振りをしたいなと思ってまして。ですが、この状況だと難しそうですね。大丈夫です」
「忘れてください」と、取り繕った笑みを浮かべるアリエス姫。
俺の邪な考えとは全く違う、至極当たり前な意見で一瞬自分を思いっきり殴りたくなった。
それにしても、身体を動かしたいか。出来なくはないが、迷宮で初めて会った時のことを考えると安易に裏庭でならやってもいいと許可を出しづらい。したら、ずっと素振りをしてそうだ。でも、このまま缶詰め状態にさせるのも辛いだろうからな。
「出来なくはないが、条件がある」
「条件ですか」
数秒考えた末に、俺はアリエス姫の要望を条件付きにだが、受け入れることにした。
「一つ、出る範囲は裏庭だけ。二つ、身体を動かすのは俺が朝鍛錬している時のみ。三つ、これを破ったらその日は風呂に入れない。これを呑めるなら許可してやる」
要は俺の目の届く範囲にいろってことだ。それ以外でやったら罰として、アリエス姫が好きな風呂に入れなくする。至ってシンプルな条件。
「それくらいでしたら、全然大丈夫です。呑みます」
この程度なら何の縛りもないも当然なので、アリエス姫は「ぜひ、お願いします」と、首を縦に振った。
◇
次の日 朝
「ほら、素振り用の剣だ」
約束通り、朝の鍛錬に来たアリエス姫に俺は剣を渡す。
「うわわわぁっ、重過ぎませんか!?これ」
受け取った剣が予想外に重かったのか、ヨロケながら本当に使えるのかとアリエス姫は抗議の声を上げる。
「そりゃ、『身体強化』使う前提の奴だからな。当然だ。素振りしながら魔力の流れを整える訓練にもなるから、意外とありなんだぞ。『身体強化』」
身体強化をかけ、手本を見せるため剣を一旦取り上げると俺は剣を振る。特に型なんてない我流だが、実戦の中で磨いた剣だ。無駄は削ぎ落とされているため、兵士達のセピア流の剣にも負けないだろう。
横薙ぎ、斬り上げ、斬り下ろし、時には蹴りや拳を交え同じ型をなぞらない様意識して振り、三分程度で終わる。
本来なら後五十七分はやるのだが、今は手本だ。軽くでいいだろう。
「ほら、魔法を使えば振れるだろ?」
「そうですけど、これだと感覚が狂いそうです」
「文句言うな。元はと言えばアリエス姫が剣を雑に扱って、壊れる一歩手前までにしたのが悪いんだろ。今日鍛錬用の剣買ってくるから我慢しろ」
「うっ、そうでした」
俺の指摘に言葉を詰まらせるアリエス姫。
実は昨日の昼、飯を食べ終えてすぐ「今すぐ剣を振りたいです」と言って、ボロボロの剣を振るってぶっ壊しているのだ。
だから、文句を言われてもどうしようもないっての。
「まぁ、今日だけなら何とか頑張りましょう『身体強化』」
魔法を唱え、アリエス姫は素振りを開始する。
最初は振り難そうにしていたが、途中から慣れてきたのかある程度様になってきていた。
コツを掴んでいくのが楽しいのか、調子に乗って彼女は俺と同じ一時間素振りを続けていたのだ。
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