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第13話「花束に込めた永遠」
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蓮と番になってから、俺の世界は一変した。
朝、隣で目覚めると、愛する人の寝顔がある。一緒に朝食をとり、「いってらっしゃい」と彼を送り出す。昼間は、彼の用意してくれたアトリエで、好きなだけ花に触れる。そして夜には、「おかえりなさい」と彼を迎える。
そんな、ごく当たり前の日常が、これほどまでに幸せなものだとは知らなかった。
蓮は、以前にも増して俺を甘やかし、大切にしてくれた。少しでも俺が不安そうな顔をすると、すぐに察して抱きしめてくれる。彼の腕の中にいると、どんな不安も溶けていくようだった。
「湊、来週、俺の実家に行かないか」
ある日の夕食後、蓮が少し緊張した面持ちで言った。
「実家……って」
「ああ。誰もいない、ただの古い家だ。でも、俺の両親が眠る墓がある。君を、紹介したいんだ。俺の、生涯を共にする大切な人だと」
その言葉に、胸が熱くなった。
彼は、俺を、ただの番としてではなく、家族として迎え入れようとしてくれている。
週末、俺たちは新幹線に乗って、蓮の故郷へと向かった。
そこは、豊かな自然に囲まれた、静かで美しい場所だった。
蓮の実家は、古いけれど手入れの行き届いた、立派な日本家屋だった。
「誰も住まなくなって久しいが、管理だけは頼んでいるんだ」
蓮は少し寂しそうに笑った。
二人で家の中を掃除し、仏壇に手を合わせる。写真立ての中の、優しそうなご夫婦が、蓮の両親なのだろう。
『息子さんを、俺にください』
心の中で、そう呟いた。
翌日、俺たちは二人で、小高い丘の上にある墓地へ向かった。
俺は、途中の花屋で買った白い花と、自分で作った小さなブーケを手にしていた。ブーケは、デルフィニウムと、白いカラー、そして紫陽花を束ねたもの。蓮と初めて会った日に、俺が作った花束と同じ組み合わせだ。
墓石に刻まれた「橘家」の文字。
俺たちは、静かに手を合わせた。
何を話したのか、よく覚えていない。ただ、これから二人で、幸せになります、と。そう誓ったことだけは確かだ。
墓参りを終え、丘の上から眼下に広がる街を眺める。
風が、心地よく頬を撫でていった。
「ありがとう、湊。来てくれて」
「いいえ。俺も、ご挨拶ができて、よかったです」
蓮は、俺が持っていたブーケに目を留めた。
「その花束……」
「覚えてますか。あなたが初めて、俺の店で買ってくれた花束です」
蓮は、驚いたように目を見開いた。
「もちろん、覚えている。あの日、君に会った瞬間、時間が止まったようだった。君が作る花も、君自身も、あまりに美しくて……一目で、恋に落ちたんだ」
「俺も……あの時は、アルファが怖くて、ひどい態度ばかりとってましたけど……本当は、嬉しかったんです。あなたが毎日、店に来てくれるのが」
お互いに、初めて出会った日から、惹かれ合っていた。
ただ、俺の心の傷が、素直になることを邪魔していただけなのだ。
「湊」
蓮は、俺の肩を抱き寄せると、真剣な顔で俺を見つめた。
「俺と、結婚してほしい」
「……俺たち、もう番ですよ?」
「分かっている。だが、形にしたいんだ。法の下でも、社会の中でも、君が俺の唯一のパートナーだと、示したい」
彼は、ポケットから小さな箱を取り出した。
中には、シンプルなプラチナの指輪が二つ、並んでいた。
「俺の全てを、君に捧げる。俺の人生も、財産も、この命さえも。だから、君の人生を、俺にくれないか」
涙で、視界が滲んで、彼の顔がよく見えない。
でも、俺は力強く頷いた。
「……はい、喜んで」
蓮は、俺の左手の薬指に、そっと指輪をはめてくれた。ひんやりとした感触。それは、俺たちの永遠の誓いの証。
俺も、彼の指に指輪をはめる。少し不格好になってしまったが、彼はとても嬉しそうに、その指輪を眺めていた。
俺たちは、どちらからともなく、唇を重ねた。
穏やかで、優しいキス。
それは、これからの俺たちの未来を象徴しているかのようだった。
過去の傷が、完全に消えることはないのかもしれない。時々、悪夢を見て、うなされる夜もあるだろう。
でも、もう大丈夫。
隣には、この人がいる。
深い森のように、俺を優しく包み込んでくれる、たった一人の、運命の人。
俺は、手に持っていたブーケを、空に向かって高く掲げた。
ありがとう。
俺を、蓮さんに出会わせてくれて。
花束に込めた想いは、きっと、空にいる彼のご両親にも、届いているはずだ。
青い空が、どこまでも、どこまでも、広がっていた。
朝、隣で目覚めると、愛する人の寝顔がある。一緒に朝食をとり、「いってらっしゃい」と彼を送り出す。昼間は、彼の用意してくれたアトリエで、好きなだけ花に触れる。そして夜には、「おかえりなさい」と彼を迎える。
そんな、ごく当たり前の日常が、これほどまでに幸せなものだとは知らなかった。
蓮は、以前にも増して俺を甘やかし、大切にしてくれた。少しでも俺が不安そうな顔をすると、すぐに察して抱きしめてくれる。彼の腕の中にいると、どんな不安も溶けていくようだった。
「湊、来週、俺の実家に行かないか」
ある日の夕食後、蓮が少し緊張した面持ちで言った。
「実家……って」
「ああ。誰もいない、ただの古い家だ。でも、俺の両親が眠る墓がある。君を、紹介したいんだ。俺の、生涯を共にする大切な人だと」
その言葉に、胸が熱くなった。
彼は、俺を、ただの番としてではなく、家族として迎え入れようとしてくれている。
週末、俺たちは新幹線に乗って、蓮の故郷へと向かった。
そこは、豊かな自然に囲まれた、静かで美しい場所だった。
蓮の実家は、古いけれど手入れの行き届いた、立派な日本家屋だった。
「誰も住まなくなって久しいが、管理だけは頼んでいるんだ」
蓮は少し寂しそうに笑った。
二人で家の中を掃除し、仏壇に手を合わせる。写真立ての中の、優しそうなご夫婦が、蓮の両親なのだろう。
『息子さんを、俺にください』
心の中で、そう呟いた。
翌日、俺たちは二人で、小高い丘の上にある墓地へ向かった。
俺は、途中の花屋で買った白い花と、自分で作った小さなブーケを手にしていた。ブーケは、デルフィニウムと、白いカラー、そして紫陽花を束ねたもの。蓮と初めて会った日に、俺が作った花束と同じ組み合わせだ。
墓石に刻まれた「橘家」の文字。
俺たちは、静かに手を合わせた。
何を話したのか、よく覚えていない。ただ、これから二人で、幸せになります、と。そう誓ったことだけは確かだ。
墓参りを終え、丘の上から眼下に広がる街を眺める。
風が、心地よく頬を撫でていった。
「ありがとう、湊。来てくれて」
「いいえ。俺も、ご挨拶ができて、よかったです」
蓮は、俺が持っていたブーケに目を留めた。
「その花束……」
「覚えてますか。あなたが初めて、俺の店で買ってくれた花束です」
蓮は、驚いたように目を見開いた。
「もちろん、覚えている。あの日、君に会った瞬間、時間が止まったようだった。君が作る花も、君自身も、あまりに美しくて……一目で、恋に落ちたんだ」
「俺も……あの時は、アルファが怖くて、ひどい態度ばかりとってましたけど……本当は、嬉しかったんです。あなたが毎日、店に来てくれるのが」
お互いに、初めて出会った日から、惹かれ合っていた。
ただ、俺の心の傷が、素直になることを邪魔していただけなのだ。
「湊」
蓮は、俺の肩を抱き寄せると、真剣な顔で俺を見つめた。
「俺と、結婚してほしい」
「……俺たち、もう番ですよ?」
「分かっている。だが、形にしたいんだ。法の下でも、社会の中でも、君が俺の唯一のパートナーだと、示したい」
彼は、ポケットから小さな箱を取り出した。
中には、シンプルなプラチナの指輪が二つ、並んでいた。
「俺の全てを、君に捧げる。俺の人生も、財産も、この命さえも。だから、君の人生を、俺にくれないか」
涙で、視界が滲んで、彼の顔がよく見えない。
でも、俺は力強く頷いた。
「……はい、喜んで」
蓮は、俺の左手の薬指に、そっと指輪をはめてくれた。ひんやりとした感触。それは、俺たちの永遠の誓いの証。
俺も、彼の指に指輪をはめる。少し不格好になってしまったが、彼はとても嬉しそうに、その指輪を眺めていた。
俺たちは、どちらからともなく、唇を重ねた。
穏やかで、優しいキス。
それは、これからの俺たちの未来を象徴しているかのようだった。
過去の傷が、完全に消えることはないのかもしれない。時々、悪夢を見て、うなされる夜もあるだろう。
でも、もう大丈夫。
隣には、この人がいる。
深い森のように、俺を優しく包み込んでくれる、たった一人の、運命の人。
俺は、手に持っていたブーケを、空に向かって高く掲げた。
ありがとう。
俺を、蓮さんに出会わせてくれて。
花束に込めた想いは、きっと、空にいる彼のご両親にも、届いているはずだ。
青い空が、どこまでも、どこまでも、広がっていた。
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