隠れオメガの整備士は自由になりたい。なのに暴走する最強騎士を身体を張って止めたら、運命の番だとバレて過保護な専属契約を結ばされました

水凪しおん

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第6話「嫉妬と疑惑」

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 平穏な日々は長くは続かなかった。
 クレイドの専属になったことで、俺に向けられる視線は好意的なものばかりではなかったからだ。

 特に、第二小隊の隊長であるゼクスという男は、あからさまに敵意を向けてきた。
 彼は以前からクレイドをライバル視しており、その専属整備士が新入りの俺になったことが気に入らないらしい。

「おい、そこの腰巾着」

 廊下ですれ違いざま、ゼクスに肩をぶつけられた。
 俺はよろめきながらも踏みとどまり、彼を睨み返す。

「何か用ですか、ゼクス隊長」

「フン、ただのベータ風情が、クレイドに取り入っていい気になっているようだがな。あいつの機体が好調なのは、お前の腕がいいからじゃない。たまたまだ」

「そうですか。でも、結果は出ています」

 俺は冷静に返した。整備データを見れば一目瞭然だ。銀狼の稼働効率は以前より15%も向上している。

「口の減らないガキだ。……まあいい。次の遠征任務、失敗したらただじゃ済まさんぞ。お前の化けの皮を剥いでやる」

 ゼクスは意味深な笑みを浮かべて去っていった。
 化けの皮。その言葉にドキリとする。
 まさか、俺がオメガだと疑っているのか?

 不安を抱えたまま、遠征任務の日がやってきた。
 今回は汚染区域の深部にある、旧時代の浄化プラントを再起動させる作戦だ。
 クレイドの銀狼を先頭に、数機の機装が出撃する。
 俺は後方支援の装甲車に乗り込み、リアルタイムで機体の状態を監視していた。

「ポイントA、到達。汚染濃度、予想より高いぞ」

 無線からクレイドの声が聞こえる。
 ノイズ混じりのその声には、わずかな緊張が滲んでいた。

「クレイド様、フィルターの出力を上げてください。エンジンの冷却が追いつきません」

 俺はマイクに向かって指示を出す。

「了解。……エリアン、私の声が聞こえているか?」

「はい、クリアに聞こえています」

「ならいい。お前の声が聞こえると、不思議と落ち着く」

 不意打ちのような言葉に、俺はマイクを握りしめた。
 こんな状況で、何を言っているんだこの人は。
 でも、その信頼が嬉しかった。

 順調に進んでいた作戦だったが、プラント内部に侵入した直後、異変が起きた。
 ゼクスの機体が、突然隊列を離れたのだ。

「ゼクス隊長!? ルートが違います!」

「うるさい! こっちに近道があるんだよ!」

 ゼクスが向かった先は、構造図にはない未確認エリアだった。
 そして次の瞬間、爆発音が響き渡り、大量の汚染獣が壁を突き破って溢れ出してきた。

「なっ……罠か!?」

「違う、誘引剤だ! 誰かが汚染獣をおびき寄せたんだ!」

 混乱する通信網。
 その中で、クレイドの銀狼だけが冷静に反応した。

「総員、円陣を組め! 私が前衛に出る!」

 銀色の機体が剣を抜き、群がる敵をなぎ倒していく。
 だが、数が多すぎる。
 それに、この場所は磁場が狂っている。
 同調システムにノイズが走り始めた。

「くっ……頭が……割れそうだ……」

 クレイドの苦しげな声。
 俺はモニターを見て凍りついた。
 外部からの妨害電波だ。誰かが意図的に、クレイドの機装の制御を奪おうとしている。

 ゼクスだ。あいつ、クレイドを陥れるためにこんな真似を!

「クレイド様! 同調を切ってください! このままだと逆流します!」

「ダメだ……今引いたら、部下たちが全滅する……!」

 彼は引かない。そういう男だ。
 俺は歯を食いしばった。
 ここで俺ができることは一つしかない。
 俺はシステムに割り込みコードを打ち込んだ。
 俺の精神波を、直接回線に乗せて送る。

 距離は離れている。でも、一度繋がった俺たちなら届くはずだ。
『俺を使ってください、クレイド!』
 俺の叫びは、電子の海を越えて彼に届いた。
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