虐げられ追放された悪役令息Ω、実は氷の皇太子αの運命の番で、めちゃくちゃに溺愛されています

水凪しおん

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第十四話「嫉妬の影」

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 僕がゼノンに寵愛されているという話は、当然ながら帝国の社交界にも広まっていた。
 それを快く思わない人間がいるのも、また事実だった。
 特に、未来の皇妃の座を狙っていた貴族の令嬢たちにとって、僕の存在は邪魔でしかなかっただろう。

 ある日、僕は皇妃教育の一環として、貴族の夫人や令嬢たちが集まるお茶会に招かれた。
 案の定、僕が席に着くと、会場は探るような、あるいは敵意のこもった視線で満たされた。

「まあ、アシュベリー様。あなた様が皇太子殿下に見初められた方ですのね?」

 侯爵令嬢のマーサが、扇で口元を隠しながら、ねっとりとした声で話しかけてきた。

「噂では、薬草の知識で殿下をたぶらかしたとか。オメガというのは、そうやってアルファを誘惑するのがお上手ですこと」

 その言葉に、周りの令嬢たちがくすくすと笑う。明らかな侮辱だった。
 虐げられていた頃の僕なら、きっと俯いて黙り込んでしまっただろう。
 でも、今の僕は違う。ゼノンに愛され、守られているという自信が、僕に小さな勇気を与えてくれていた。

 僕はにっこりと微笑んで、マーサ嬢に向き直った。

「たぶらかすだなんて、とんでもない。私はただ、殿下のお役に立ちたい一心で、自分の知識を使ったまでですわ」

 そして、僕はテーブルの上に置かれたハーブティーのポットを指差した。

「例えば、このお茶。ペパーミントが使われていますが、マーサ様のような冷え性の方には、体を冷やす効果があるのであまりお勧めできませんね。ジンジャーやシナモンを使ったお茶の方が、血行が良くなって、お肌の艶も増しますのに。ご存知なかったですか?」

 前世で得た知識と、この世界に来てから温室で学んだ知識。それらを総動員し、僕はにこやかに、しかし的確に彼女たちの無知を指摘していく。

「あら、あちらの御夫人は少し顔色がすぐれないようですが、カモミールとリンデンをブレンドしたお茶を飲まれれば、きっと気分も落ち着きますわ」

 僕が淀みなく語る専門的な知識に、最初は嘲笑していた令嬢たちは、次第に顔色を変えていった。
 彼女たちがファッションや恋物語にうつつを抜かしている間に、僕がどれだけ知識を蓄えてきたか、思い知っただろう。

 お茶会が終わる頃には、僕を侮辱しようとしていた令嬢たちはすっかり意気消沈し、逆に何人かの夫人からは「私の体調に合うハーブを教えてほしい」と相談されるまでになっていた。
 僕は、ただ守られるだけのか弱い存在じゃない。自分の力で、自分の居場所を作っていくんだ。
 その小さな勝利は、僕に大きな自信を与えてくれた。
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