虐げられΩの僕は、貢物として冷酷非情な氷血皇帝に嫁いだはずが、どうやら万に一つの「運命の番」だったらしく、過保護に溺愛されています

水凪しおん

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第13話:仕組まれた罠

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 リエルへの愛情と、彼を守りたいという思いが日に日に強くなる一方で、ヴァルモン公爵を中心とした反リエル派の動きは、水面下でより狡猾になっていた。
 彼らは、カイロスがリエルに心酔している今こそ、その絆を断ち切る絶好の機会だと見ていた。

 計画は、皇帝の食事を利用して行われた。
 それは、カイロスとリエルがいつものように二人きりで夕食をとっていた夜のことだった。
 カイロスがスープを一口飲んだ瞬間、彼は激しく咳き込み、その場に崩れ落ちた。
「カイロス様っ!?」
 リエルは悲鳴を上げて駆け寄る。カイロスの顔は青白く、その口元からは血が流れていた。明らかに、毒だ。

「陛下!」「陛下が倒れられたぞ!」
 どこで見ていたのか、侍従や衛兵たちがなだれ込むように部屋に入ってくる。その中には、ヴァルモン公爵の姿もあった。
 すぐに呼ばれた侍医がカイロスの応急処置を始める。幸い、毒は即死性のものではなく、カイロスは一命を取り留めたが、意識は混濁していた。

「いったい誰がこのようなことを!」
 騎士団長のアレクシスが怒号をあげる。
 すると、ヴァルモン公爵が待っていたとばかりに前に進み出た。
「犯人は、明らかであろう」
 その老獪な目が、震えながら立ち尽くすリエルを捉えた。

「今宵、陛下の食事に侍ることを許されていたのは、この者だけ。そして、このΩが来てからというもの、陛下の周りでは不可解なことばかりが起きていた。皆も知っているはずだ」
 公爵の言葉に、周りの貴族たちが「そうだ、そうだ」と声を合わせる。

「衛兵、この者の身を改めよ!」
 公爵の命令で、衛兵たちがリエルに取り縋る。リエルはなすすべもなく、その体を調べられた。
 すると、リエルの礼服のポケットから、小さな小瓶が「発見」された。中には、カイロスが盛られた毒と同じ成分の液体が入っている。
「こ、こんなもの、知りません!」
 リエルは必死に訴えるが、誰も聞く耳を持たない。それは、リエルが着替えをする際に、公爵の手の者がこっそりと忍ばせたものだった。

 さらに、公爵は叫んだ。
「この者の部屋も調べさせろ! きっと、さらなる証拠があるはずだ!」
 すぐにリエルの部屋に踏み込んだ衛兵たちは、これまたご丁寧に隠されていた「証拠」を次々と発見した。ルナリア王家からの密書(もちろん偽造されたものだ)や、多額の金貨。それはまるで、リエルが祖国と共謀し、金で雇われて皇帝暗殺を企てたかのように見せかけるための、完璧な筋書きだった。

「まさか、貢物というのは偽りか! ルナリアが我らが皇帝を暗殺するために送り込んだ刺客だったとは!」
「この国を惑わす魔性のΩめ!」
 貴族たちの罵声が、リエルに突き刺さる。
 違う、違うのに。誰か、信じて。
 リエルは助けを求めるように、意識の朦朧としたカイロスを見た。しかし、彼の目は固く閉じられたままだ。

 完璧に仕組まれた罠。
 次々と「発見」される、動かぬ証拠。
 リエルは、皇帝暗殺未遂という大逆罪の犯人として、その場で断罪されようとしていた。
 ヴァルモン公爵は、計画の成功を確信し、口の端に冷酷な笑みを浮かべていた。
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