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第13話「永遠の誓い」
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ルカの回復は劇的だった。
『雪月花』の効能は凄まじく、一週間もしないうちにルカはベッドから起き上がり、庭を散歩できるまでに回復した。
毒素は完全に消え去り、オメガとしての機能も正常に戻りつつあった。肌艶も良くなり、以前の儚げな美しさに、健康的な色気が加わって、屋敷の使用人たちが赤面するほどだった。
ある晴れた日、クラウスはルカを王都が一望できる丘の上の教会へと連れ出した。
「散歩にしては、遠出だな」
ルカが笑うと、正装に身を包んだクラウスが真剣な表情で向き直った。
「ルカ。ここに来たのは、君に伝えたいことがあるからだ」
クラウスは片膝をつき、ポケットから小さな箱を取り出した。
パカりと開かれた箱の中には、ルカの瞳の色と同じ、透き通った琥珀色の宝石が輝く指輪があった。
「ルカ。私と結婚してくれ。正式に、生涯の伴侶として君を迎えたい」
ルカは息を呑んだ。
番にはなった。心も通じ合った。だが、結婚となると話は別だ。
「……本気か? 俺はスラム出身の元薬師だぞ。公爵家の当主の結婚相手なんて、周りが黙ってない」
「周りなど黙らせる。それに、もう手は打ってある」
クラウスはニヤリと笑った。
「君が作った『中和剤』と、今回の『万能薬』の論文を、王立研究院に提出した。君は今や、国を救った天才薬師として、王家から叙勲される予定だ」
「はあ!? いつの間に!」
「身分差なんて、実力でねじ伏せればいい。君にはそれだけの価値がある」
クラウスはルカの手を取り、指輪を薬指にはめた。
「それに、私が君なしでは生きていけないことは、周知の事実だからな」
ルカは指輪を見つめ、滲んでくる涙をこらえた。
この男は、どこまで強引で、どこまで優しいのだろう。
すべての障害を取り除き、ただルカが「はい」と言うだけでいいように準備してくれていたのだ。
「……ずるいよ、あんたは」
ルカは泣き笑いの表情で、クラウスの首に腕を回した。
「謹んでお受けします、騎士団長様。……一生、俺の面倒を見てくれよな」
「ああ、喜んで。君が飽きるまで、いや、飽きても離さない」
二人は教会の鐘が鳴り響く中、誓いのキスをした。
その姿は、まるで絵画のように美しく、通りがかった人々が思わず足を止めて見惚れるほどだった。
数ヶ月後、盛大な結婚式が行われた。
公爵家と、平民出身の「英雄薬師」の結婚は、国中を巻き込む大ニュースとなった。
白いタキシードに身を包んだルカは、緊張でガチガチになりながらも、隣に立つクラウスの堂々とした笑顔に支えられ、バージンロードを歩いた。
参列者の中には、かつてルカが世話をしたスラムの人々の姿もあった。彼らは涙を流しながら、自分たちの街から出た希望の星を祝福していた。
「幸せになれよー! ルカ!」
「泣かしたら承知しないぞ、騎士様!」
野次交じりの祝福に、ルカは吹き出し、そして心からの笑顔で手を振り返した。
祭壇の前、神父の言葉に誓いを立てる。
「健やかなるときも、病めるときも……」
その言葉の意味を、誰よりも深く理解している二人の誓いは、重く、そして温かかった。
指輪交換の後、クラウスがルカの耳元で囁く。
「愛している、私のルカ。……今夜は寝かせないから覚悟してくれ」
「……馬鹿。こっちこそ、覚悟しとけよ」
ルカは顔を赤らめながらも、挑戦的に微笑み返した。
教会の扉が開き、二人は光溢れる外の世界へと歩み出した。
空はどこまでも青く、澄み渡っている。
もう雨に濡れて震えることはない。
隣には、最強の傘であり、太陽である夫がいるのだから。
『雪月花』の効能は凄まじく、一週間もしないうちにルカはベッドから起き上がり、庭を散歩できるまでに回復した。
毒素は完全に消え去り、オメガとしての機能も正常に戻りつつあった。肌艶も良くなり、以前の儚げな美しさに、健康的な色気が加わって、屋敷の使用人たちが赤面するほどだった。
ある晴れた日、クラウスはルカを王都が一望できる丘の上の教会へと連れ出した。
「散歩にしては、遠出だな」
ルカが笑うと、正装に身を包んだクラウスが真剣な表情で向き直った。
「ルカ。ここに来たのは、君に伝えたいことがあるからだ」
クラウスは片膝をつき、ポケットから小さな箱を取り出した。
パカりと開かれた箱の中には、ルカの瞳の色と同じ、透き通った琥珀色の宝石が輝く指輪があった。
「ルカ。私と結婚してくれ。正式に、生涯の伴侶として君を迎えたい」
ルカは息を呑んだ。
番にはなった。心も通じ合った。だが、結婚となると話は別だ。
「……本気か? 俺はスラム出身の元薬師だぞ。公爵家の当主の結婚相手なんて、周りが黙ってない」
「周りなど黙らせる。それに、もう手は打ってある」
クラウスはニヤリと笑った。
「君が作った『中和剤』と、今回の『万能薬』の論文を、王立研究院に提出した。君は今や、国を救った天才薬師として、王家から叙勲される予定だ」
「はあ!? いつの間に!」
「身分差なんて、実力でねじ伏せればいい。君にはそれだけの価値がある」
クラウスはルカの手を取り、指輪を薬指にはめた。
「それに、私が君なしでは生きていけないことは、周知の事実だからな」
ルカは指輪を見つめ、滲んでくる涙をこらえた。
この男は、どこまで強引で、どこまで優しいのだろう。
すべての障害を取り除き、ただルカが「はい」と言うだけでいいように準備してくれていたのだ。
「……ずるいよ、あんたは」
ルカは泣き笑いの表情で、クラウスの首に腕を回した。
「謹んでお受けします、騎士団長様。……一生、俺の面倒を見てくれよな」
「ああ、喜んで。君が飽きるまで、いや、飽きても離さない」
二人は教会の鐘が鳴り響く中、誓いのキスをした。
その姿は、まるで絵画のように美しく、通りがかった人々が思わず足を止めて見惚れるほどだった。
数ヶ月後、盛大な結婚式が行われた。
公爵家と、平民出身の「英雄薬師」の結婚は、国中を巻き込む大ニュースとなった。
白いタキシードに身を包んだルカは、緊張でガチガチになりながらも、隣に立つクラウスの堂々とした笑顔に支えられ、バージンロードを歩いた。
参列者の中には、かつてルカが世話をしたスラムの人々の姿もあった。彼らは涙を流しながら、自分たちの街から出た希望の星を祝福していた。
「幸せになれよー! ルカ!」
「泣かしたら承知しないぞ、騎士様!」
野次交じりの祝福に、ルカは吹き出し、そして心からの笑顔で手を振り返した。
祭壇の前、神父の言葉に誓いを立てる。
「健やかなるときも、病めるときも……」
その言葉の意味を、誰よりも深く理解している二人の誓いは、重く、そして温かかった。
指輪交換の後、クラウスがルカの耳元で囁く。
「愛している、私のルカ。……今夜は寝かせないから覚悟してくれ」
「……馬鹿。こっちこそ、覚悟しとけよ」
ルカは顔を赤らめながらも、挑戦的に微笑み返した。
教会の扉が開き、二人は光溢れる外の世界へと歩み出した。
空はどこまでも青く、澄み渡っている。
もう雨に濡れて震えることはない。
隣には、最強の傘であり、太陽である夫がいるのだから。
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