嘘つきオメガの賞味期限〜スラムの薬師はスパダリ騎士団長に溺愛されて逃げられない〜

水凪しおん

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番外編「騎士団長の甘すぎる日常」

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 結婚生活は、甘く、そして騒がしかった。
 公爵邸の朝は、クラウスの過剰なスキンシップから始まる。
「ルカ、おはようのキスを」
「……まだ顔も洗ってない」
「関係ない。君は寝起きでも最高に可愛い」
 ベッドの中でじゃれ合い、朝食の時間に遅れるのは日常茶飯事だ。
 執事たちは咳払いをしつつも、幸せそうな主人夫婦を生温かい目で見守っていた。
 ルカは公爵夫人としての公務をこなしつつ、屋敷内に新設された研究所で薬の研究を続けていた。
 ある日、ルカが研究に没頭しすぎて夕食の時間になっても出てこないと、クラウスが研究所に乗り込んでくる。
「ルカ! 薬と私、どっちが大事なんだ!」
「子供か、あんたは。今いいところなんだよ」
「寂しいんだ! 君の成分が足りなくて枯れそうだ!」
 大男が駄々をこねる姿に、ルカは呆れつつも、愛おしさを隠せない。
「はいはい、わかったよ。……充電してやるから、こっち来い」
 ルカが腕を広げると、クラウスは嬉々として抱きついてくる。
 大型犬のような夫を撫でながら、ルカは幸せを噛みしめる。
 そんなある日、ルカの体に異変が起きた。
 朝食のスープの匂いを嗅いだ瞬間、吐き気を催したのだ。
「うっ……」
「ルカ!? どうした! どこか悪いのか!?」
 クラウスが顔面蒼白で駆け寄る。
 すぐに医師が呼ばれた。
 診断結果を聞いた医師は、満面の笑みで告げた。
「おめでとうございます、閣下。ご懐妊です」
「……へ?」
 クラウスとルカは顔を見合わせた。
 そして次の瞬間、屋敷が揺れるほどの歓声が上がった。
「やったァァァァ!! ルカ! ありがとう!!」
 クラウスはルカを抱き上げ、くるくると回った。
「危ないって! 下ろせ!」
「ああ、すまない! 嬉しくてつい……。ああ、神よ!」
 涙を流して喜ぶクラウスを見て、ルカも自然と涙が溢れた。
 自分の体は、もう「期限切れ」なんかじゃない。新しい命を育めるほどに、満ち溢れているのだ。
 お腹に手を当てる。まだ何も感じないけれど、確かにここに、二人の愛の結晶がいる。
「……名前、考えないとな」
「ああ。世界で一番幸せな名前をつけよう」
 窓の外、柔らかな雨が降り始めた。
 けれどそれは冷たい雨ではなく、大地を潤し、命を育む恵みの雨だった。
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