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第12話 ホームレス、女王とイチャイチャする
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食堂に俺は連れられて、食事をする。
ヴォルフスブルク名物の貴腐ワインを堪能した。
「すごい、酒なのに甘い。ワインってこんなに甘くなるんですね」
「ええ、ヴォルフスブルクの名物ですからね。甘いぶどうにカビをつけることで発酵させるんですよ。そうすれば、こんなに甘くなるんです。一応国家機密ですから、内緒にしておいてくださいね」
女王陛下は年相応の笑顔になった。表の威圧感がある表情とはまるで別人だ。金髪の長い髪が笑うたびに美しくなびいていく。
前菜にはサラダとチーズが運ばれてきた。
「陛下、このチーズ、何か中に入っていますね」
「ええ。それは"マンゼル・バベット"と呼ばれるものですよ。チーズの中にハムやサラミを入れて煙であぶったものです。客人をもてなすために、私のお気に入りを選んできました」
「最高に美味しいですね」
「クニカズ様の母国はどんなところですか?」
「島国ですね。とても平和な国で、経済的にも豊か。文化も独自のものが発展していて、海外から見れば面白い国と呼ばれていました」
「平和だったんですか?」
「そうですね。200年以上鎖国していたんですよ。そこから外国の圧力で開国せざるを得なくなって、国民が一致団結したんです。このままでは外国にやられてしまうってね。そのままわずか70年くらいで世界5位の大国まで成長したんですが……超大国に戦争で敗れて、すべて燃やされてしまったんです」
女王陛下は、その話を聞くと悲しそうな顔になった。
「でも、ここでもう一つの奇跡を起こしたんですよ。みんなが復興を目指してがんばって、俺が生まれた時で世界第2位……そのあと少し順位を落としましたが、第3位の経済大国に復活しました。大学にも若者の50パーセント以上が進学できるほど豊かになっているんです。そして、超大国に負けた後は70年以上戦争も経験していない」
「それはすばらしいですね。ヴォルフスブルクの現状から考えれば、まるで天国ですね。国民は、生きていくだけで精いっぱい。大国の意向におびえる日々を過ごしている。そして、戦争になればすべてを奪われる運命」
彼女は一瞬だけ政治家の顔になっていた。
俺が18歳の時なんて、のんびり受験勉強して友達と遊んでいたくらいの時期だ。そんな青春時代を送れるだろう時期に、彼女は国民のために国を統治している。
「すいません。せっかくの夕食なのに暗い話をしてしまいました」
「いえ、女王陛下はすごいですよ。尊敬します」
「えっ?」
「俺がその若さで同じことをさせられたら絶望しますもん。逃げたくなる。でも、あなたはその運命をしっかり受け止めて頑張っている。すごいことだと思います。だから、あなたは慕われているんですよ。みんなあなたが自分の幸せを投げうってでも、頑張っていることをちゃんと見ているんです」
そう言うと、女王陛下は下を向いてしまった。やばい、なにか悪いことを言ったのか!?
心配しながら見つめると、彼女は顔をあげて少女らしい笑顔になっていた。
「ありがとう、クニカズ様。そう言ってもらえると救われた気分になるわ。ずっと悩んでいたのよ。私みたいな小娘が国の頂点になったままでいいのかなって」
「違いますよ。女王陛下じゃないとこの国は回らないんです。みんなあなたのために戦おうとしている。だから、自信を持ってください」
「本当に嬉しいことを言ってくださるわ。本当に救世主様ね、クニカズ様は……」
「様はいりませんよ。私はあなたの配下なのですから」
「では、今からはクニカズと呼ばせていただくわ。あなたとはいいお友達になれそう。お仕事では上司と部下の関係だけど……プライベートではもう少し距離感を近づけたいわ。私とふたりきりのときは、"ウィリー"とでも呼んでくれないかな?」
「いいよ、ウィリー」
「ありがとう、クニカズ! 嬉しいわ。私はこういう身分だからフラットに話せるお友達に憧れていたのよ。末永く仲良くしてね」
ヴォルフスブルク名物の貴腐ワインを堪能した。
「すごい、酒なのに甘い。ワインってこんなに甘くなるんですね」
「ええ、ヴォルフスブルクの名物ですからね。甘いぶどうにカビをつけることで発酵させるんですよ。そうすれば、こんなに甘くなるんです。一応国家機密ですから、内緒にしておいてくださいね」
女王陛下は年相応の笑顔になった。表の威圧感がある表情とはまるで別人だ。金髪の長い髪が笑うたびに美しくなびいていく。
前菜にはサラダとチーズが運ばれてきた。
「陛下、このチーズ、何か中に入っていますね」
「ええ。それは"マンゼル・バベット"と呼ばれるものですよ。チーズの中にハムやサラミを入れて煙であぶったものです。客人をもてなすために、私のお気に入りを選んできました」
「最高に美味しいですね」
「クニカズ様の母国はどんなところですか?」
「島国ですね。とても平和な国で、経済的にも豊か。文化も独自のものが発展していて、海外から見れば面白い国と呼ばれていました」
「平和だったんですか?」
「そうですね。200年以上鎖国していたんですよ。そこから外国の圧力で開国せざるを得なくなって、国民が一致団結したんです。このままでは外国にやられてしまうってね。そのままわずか70年くらいで世界5位の大国まで成長したんですが……超大国に戦争で敗れて、すべて燃やされてしまったんです」
女王陛下は、その話を聞くと悲しそうな顔になった。
「でも、ここでもう一つの奇跡を起こしたんですよ。みんなが復興を目指してがんばって、俺が生まれた時で世界第2位……そのあと少し順位を落としましたが、第3位の経済大国に復活しました。大学にも若者の50パーセント以上が進学できるほど豊かになっているんです。そして、超大国に負けた後は70年以上戦争も経験していない」
「それはすばらしいですね。ヴォルフスブルクの現状から考えれば、まるで天国ですね。国民は、生きていくだけで精いっぱい。大国の意向におびえる日々を過ごしている。そして、戦争になればすべてを奪われる運命」
彼女は一瞬だけ政治家の顔になっていた。
俺が18歳の時なんて、のんびり受験勉強して友達と遊んでいたくらいの時期だ。そんな青春時代を送れるだろう時期に、彼女は国民のために国を統治している。
「すいません。せっかくの夕食なのに暗い話をしてしまいました」
「いえ、女王陛下はすごいですよ。尊敬します」
「えっ?」
「俺がその若さで同じことをさせられたら絶望しますもん。逃げたくなる。でも、あなたはその運命をしっかり受け止めて頑張っている。すごいことだと思います。だから、あなたは慕われているんですよ。みんなあなたが自分の幸せを投げうってでも、頑張っていることをちゃんと見ているんです」
そう言うと、女王陛下は下を向いてしまった。やばい、なにか悪いことを言ったのか!?
心配しながら見つめると、彼女は顔をあげて少女らしい笑顔になっていた。
「ありがとう、クニカズ様。そう言ってもらえると救われた気分になるわ。ずっと悩んでいたのよ。私みたいな小娘が国の頂点になったままでいいのかなって」
「違いますよ。女王陛下じゃないとこの国は回らないんです。みんなあなたのために戦おうとしている。だから、自信を持ってください」
「本当に嬉しいことを言ってくださるわ。本当に救世主様ね、クニカズ様は……」
「様はいりませんよ。私はあなたの配下なのですから」
「では、今からはクニカズと呼ばせていただくわ。あなたとはいいお友達になれそう。お仕事では上司と部下の関係だけど……プライベートではもう少し距離感を近づけたいわ。私とふたりきりのときは、"ウィリー"とでも呼んでくれないかな?」
「いいよ、ウィリー」
「ありがとう、クニカズ! 嬉しいわ。私はこういう身分だからフラットに話せるお友達に憧れていたのよ。末永く仲良くしてね」
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