2 / 26
学園の王子様
しおりを挟む
ラエル様は学園内で王子様のような存在。令嬢はなんとかラエル様にお近づきになろうとみな必死でした。
「中庭にラエル公爵様がいらっしゃるそうよ!」
「それは本当?直ぐに行くわ、早く支度してちょうだい!」
ラエル様がいると知り、令嬢もお付きの侍女たちも慌ただしくお会いできるよう準備をしています。
ラエル様は公爵家の中でも上流階級のお方。
幼少期から公務に関する様々な知識を身につけ剣術の教育を受けていたこともあり、剣の腕前はもちろんのこと頭のキレも鋭く、他の生徒と同じ授業を受けるにはあまりにも勿体無いと、授業は特別クラスで受けていらっしゃいます。
他にもラエル様と同じ階級におられる生徒はみな別の校舎で学園生活を過ごしています。
校舎も少し離れているため、なかなかお会いできない遠い存在の方なのです。
そして、〝中庭“と呼ばれる、とてつもなく広い花園があり、そこが唯一この校舎と特別クラスの校舎を繋いでいる場所なのです。
「あなたの婚約者様は本当に人気者ね」
そう言って私を見るのは、この学園で唯一できたお友達のマリアです。
彼女はこの地域一帯を取りまとめる伯爵家の令嬢で、階級は私と比較するのも申し訳ないほど。
同じ爵位でも、上流・中流・下流が存在し、私は下流。彼女は上流のトップなのです。
この国では階級にとても厳しく、令嬢同士で揉め事を起こすこともしばしば。
悲しいことですが、同じ伯爵家同士でも、下流階級の人間は上流階級の人間から辛く当たられても黙っているしかありません。そういう世界なのです。
もちろん、ラエル様のお父様やマリアのようにそんな事気にしない、と言ってくれる方もいらっしゃいます。
「ラエル様は、とても素敵な方ですから。」
声を少し潜めて私は返事をしました。
ラエル様と私が婚約している事は、この学園ではマリア様しか知りません。
他の令嬢に知られたらどんな目に遭うかを考えると、恐ろしくて震えてしまいます。
「あら、惚気かしら?」
「ちがっ...」
思わず飲んでいた紅茶を溢しそうになり、けほけほっとむせてしまいました。
惚気なんて。そんなつもりはもちろんありませんでした。
「ふふっ。ほんと、からかいがいがあるわ」
少し意地悪そうに微笑む姿も美しく見えるほど、マリアの容姿はとても整っています。
私がマリアのように美しかったら、ラエル様の隣にいて恥ずかしくなることも無いのかしら、なんて思うこともしばしば。
「ラエル様は本当に私でいいのかしら...」
「それは愚問ね。ねえ、ローズ。あなた、ラエル公爵様がどんな風にあなたを見ているか、本当に分かっているの?」
「どんな風に...」
昨日の記憶が蘇ってきました。
あの後、どれくらい抱きしめられていたかわかりません。コンコンっとドアを鳴らす音で我に返り、ラエル様を凄い勢いで押してしまい、慌てて謝って...
『ローズ、頭を上げて』
そっとラエル様の方を見ると、楽しそうに、けれど幸せそうに微笑まれていて...
「ローズ?」
「...わからないんです。どうしてラエル様は私にあんなに嬉しそうに微笑んでくれるのか」
そういうと、マリアは少し息を吐いて何か呟いているようでしたが、よく聞き取れませんでした。
「これは、自覚させるのに時間がかかりそうね」
「中庭にラエル公爵様がいらっしゃるそうよ!」
「それは本当?直ぐに行くわ、早く支度してちょうだい!」
ラエル様がいると知り、令嬢もお付きの侍女たちも慌ただしくお会いできるよう準備をしています。
ラエル様は公爵家の中でも上流階級のお方。
幼少期から公務に関する様々な知識を身につけ剣術の教育を受けていたこともあり、剣の腕前はもちろんのこと頭のキレも鋭く、他の生徒と同じ授業を受けるにはあまりにも勿体無いと、授業は特別クラスで受けていらっしゃいます。
他にもラエル様と同じ階級におられる生徒はみな別の校舎で学園生活を過ごしています。
校舎も少し離れているため、なかなかお会いできない遠い存在の方なのです。
そして、〝中庭“と呼ばれる、とてつもなく広い花園があり、そこが唯一この校舎と特別クラスの校舎を繋いでいる場所なのです。
「あなたの婚約者様は本当に人気者ね」
そう言って私を見るのは、この学園で唯一できたお友達のマリアです。
彼女はこの地域一帯を取りまとめる伯爵家の令嬢で、階級は私と比較するのも申し訳ないほど。
同じ爵位でも、上流・中流・下流が存在し、私は下流。彼女は上流のトップなのです。
この国では階級にとても厳しく、令嬢同士で揉め事を起こすこともしばしば。
悲しいことですが、同じ伯爵家同士でも、下流階級の人間は上流階級の人間から辛く当たられても黙っているしかありません。そういう世界なのです。
もちろん、ラエル様のお父様やマリアのようにそんな事気にしない、と言ってくれる方もいらっしゃいます。
「ラエル様は、とても素敵な方ですから。」
声を少し潜めて私は返事をしました。
ラエル様と私が婚約している事は、この学園ではマリア様しか知りません。
他の令嬢に知られたらどんな目に遭うかを考えると、恐ろしくて震えてしまいます。
「あら、惚気かしら?」
「ちがっ...」
思わず飲んでいた紅茶を溢しそうになり、けほけほっとむせてしまいました。
惚気なんて。そんなつもりはもちろんありませんでした。
「ふふっ。ほんと、からかいがいがあるわ」
少し意地悪そうに微笑む姿も美しく見えるほど、マリアの容姿はとても整っています。
私がマリアのように美しかったら、ラエル様の隣にいて恥ずかしくなることも無いのかしら、なんて思うこともしばしば。
「ラエル様は本当に私でいいのかしら...」
「それは愚問ね。ねえ、ローズ。あなた、ラエル公爵様がどんな風にあなたを見ているか、本当に分かっているの?」
「どんな風に...」
昨日の記憶が蘇ってきました。
あの後、どれくらい抱きしめられていたかわかりません。コンコンっとドアを鳴らす音で我に返り、ラエル様を凄い勢いで押してしまい、慌てて謝って...
『ローズ、頭を上げて』
そっとラエル様の方を見ると、楽しそうに、けれど幸せそうに微笑まれていて...
「ローズ?」
「...わからないんです。どうしてラエル様は私にあんなに嬉しそうに微笑んでくれるのか」
そういうと、マリアは少し息を吐いて何か呟いているようでしたが、よく聞き取れませんでした。
「これは、自覚させるのに時間がかかりそうね」
46
あなたにおすすめの小説
イリス、今度はあなたの味方
さくたろう
恋愛
20歳で死んでしまったとある彼女は、前世でどハマりした小説、「ローザリアの聖女」の登場人物に生まれ変わってしまっていた。それもなんと、偽の聖女として処刑される予定の不遇令嬢イリスとして。
今度こそ長生きしたいイリスは、ラスボス予定の血の繋がらない兄ディミトリオスと死ぬ運命の両親を守るため、偽の聖女となって処刑される未来を防ぐべく奮闘する。
※小説家になろう様にも掲載しています。
この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。
毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。
【完結】精霊姫は魔王陛下のかごの中~実家から独立して生きてこうと思ったら就職先の王子様にとろとろに甘やかされています~
吉武 止少
恋愛
ソフィアは小さい頃から孤独な生活を送ってきた。どれほど努力をしても妹ばかりが溺愛され、ないがしろにされる毎日。
ある日「修道院に入れ」と言われたソフィアはついに我慢の限界を迎え、実家を逃げ出す決意を固める。
幼い頃から精霊に愛されてきたソフィアは、祖母のような“精霊の御子”として監視下に置かれないよう身許を隠して王都へ向かう。
仕事を探す中で彼女が出会ったのは、卓越した剣技と鋭利な美貌によって『魔王』と恐れられる第二王子エルネストだった。
精霊に悪戯される体質のエルネストはそれが原因の不調に苦しんでいた。見かねたソフィアは自分がやったとバレないようこっそり精霊を追い払ってあげる。
ソフィアの正体に違和感を覚えたエルネストは監視の意味もかねて彼女に仕事を持ち掛ける。
侍女として雇われると思っていたのに、エルネストが意中の女性を射止めるための『練習相手』にされてしまう。
当て馬扱いかと思っていたが、恋人ごっこをしていくうちにお互いの距離がどんどん縮まっていってーー!?
本編は全42話。執筆を終えており、投稿予約も済ませています。完結保証。
+番外編があります。
11/17 HOTランキング女性向け第2位達成。
11/18~20 HOTランキング女性向け第1位達成。応援ありがとうございます。
【完結】ぼくは悪役令嬢の弟 〜大好きな姉さんのために復讐するつもりが、いつの間にか姉さんのファンクラブができてるんだけどどういうこと?〜
水都 ミナト
恋愛
「ルイーゼ・ヴァンブルク!!今この時をもって、俺はお前との婚約を破棄する!!」
ヒューリヒ王立学園の進級パーティで第二王子に婚約破棄を突きつけられたルイーゼ。
彼女は周囲の好奇の目に晒されながらも毅然とした態度でその場を後にする。
人前で笑顔を見せないルイーゼは、氷のようだ、周囲を馬鹿にしているのだ、傲慢だと他の令嬢令息から蔑まれる存在であった。
そのため、婚約破棄されて当然だと、ルイーゼに同情する者は誰一人といなかった。
いや、唯一彼女を心配する者がいた。
それは彼女の弟であるアレン・ヴァンブルクである。
「ーーー姉さんを悲しませる奴は、僕が許さない」
本当は優しくて慈愛に満ちたルイーゼ。
そんなルイーゼが大好きなアレンは、彼女を傷つけた第二王子や取り巻き令嬢への報復を誓うのだが……
「〜〜〜〜っハァァ尊いっ!!!」
シスコンを拗らせているアレンが色々暗躍し、ルイーゼの身の回りの環境が変化していくお話。
★全14話★
※なろう様、カクヨム様でも投稿しています。
※正式名称:『ぼくは悪役令嬢の弟 〜大好きな姉さんのために、姉さんをいじめる令嬢を片っ端から落として復讐するつもりが、いつの間にか姉さんのファンクラブができてるんだけどどういうこと?〜』
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
【完結】ツンデレ令嬢は無愛想騎士に振り回される
ベル
恋愛
無口で無愛想、何を考えているのか分からない騎士、マートス
言動はキツいけれど、実は恥ずかしがり屋でツンデレな伯爵令嬢、アリス
「マートス、私と婚約しなさい」
「良いですよ」
「こ、婚約よ!....いいの?」
「はい。俺はアリスお嬢様のこと、ずっと好きでしたし」
「なっ...」
そんな二人のラブコメです。
温かい目で読んでもらえたら嬉しいです。
全5話の予定です。
本編完結、番外編も完結しました。
恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~
めもぐあい
恋愛
公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。
そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。
家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――
クリスティーヌの本当の幸せ
宝月 蓮
恋愛
ニサップ王国での王太子誕生祭にて、前代未聞の事件が起こった。王太子が婚約者である公爵令嬢に婚約破棄を突き付けたのだ。そして新たに男爵令嬢と婚約する目論見だ。しかし、そう上手くはいかなかった。
この事件はナルフェック王国でも話題になった。ナルフェック王国の男爵令嬢クリスティーヌはこの事件を知り、自分は絶対に身分不相応の相手との結婚を夢見たりしないと決心する。タルド家の為、領民の為に行動するクリスティーヌ。そんな彼女が、自分にとっての本当の幸せを見つける物語。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる