【完結】政略結婚なのにここまで溺愛されるなんて思いませんでした

ベル

文字の大きさ
22 / 22

番外編

しおりを挟む
「クラスト、悪い事は言わない。あの令嬢との婚約は諦めたほうがいいんじゃないか?」


いつだっただろうか。毎晩徹夜しながら公務に励む僕に、兄が心配そうな表情でそう言った。


「...それはできないよ」


「相手は男爵令嬢だろう?それに、お前のことを愛してくれている相手なのか?」


「それは...」


僕にとって彼女はとても大切な愛しい存在だ。けれど彼女から見た僕はどうなのだろう。


会うたびに綺麗になるマリー。愛しいと思う度に、僕は彼女から愛されていないことを自覚する。


彼女が僕に興味を持つような仕草や言葉をかけてもらったことはない。今は認めてもらえている婚約だって、今回任されている公務次第では解消になる可能性もある。


そうなったら彼女は、別の誰かの元へ嫁ぐことになるのだろうか。


僕以外の男のものに、なるのだろうか。


...いやだ。
そんなことは許さない。


愛されなくてもいい。そばにいて欲しい。ただ、彼女が欲しい。


「それでも、いいんだ」


「...そうか」


兄はまだ納得していないような表情をしながらもそう呟く。


正直、辛い日もあった。マリーに会いたくてたまらない日もあった。


マリーと会えた瞬間、疲れが嘘のように吹き飛んでいく。


こうしてマリーと会える僕は、彼女を妻として迎えることができる僕は幸せだと思った。





「....様、クラスト様っ」


「...ん...?」


「大丈夫ですか?」


「マリー....?」


「すみません、うなされていたので...」


心配そうな表情で僕を覗き込むマリー。僕は思わず目の前にいるぎゅっとマリーを抱きしめた。


...夢、か。


今こうして抱きしめているマリーは、僕を好きだと言ってくれた妻だ。


「マリー....大好きだ」


マリーは一瞬ピクッと反応したがすぐにぎゅっと僕の背中に腕を回して言った。


「私も、大好きです」


幸せで、幸せで。
泣きそうになる。


あの頃の自分に伝えたい。マリーとこんなにも幸せな時間を過ごせる日が来るのだと。


抱きしめていた腕を緩めて、僕はマリーの頬に手をかける。


どちらともなく顔を近づけ目を閉じる。


いつも触れ合っているのに、どうしてこんなにも泣きそうなほど幸せなのだろうか。


夢を見ていたからかもしれない。今日は余計にそう思う。


「んっ...」


息をしようとする彼女の唇の隙間から舌を入れる。


そのまま、マリーをじっくりと味わった。少し前までは受け身だったのに、いつしか彼女の方からも求めてくれるようになった。


それが嬉しくて仕方ない。好かれているのだと、愛されているのだと実感する。


「はぁっ....マリー。これからもずっと、僕の妻でいてくれ...」


「はいっ...もちろんです」


涙を浮かべながらマリーは微笑む。僕はマリーを抱きしめて、そのまま安心して眠りについた。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる

ラム猫
恋愛
 王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています ※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

恋人でいる意味が分からないので幼馴染に戻ろうとしたら‥‥

矢野りと
恋愛
婚約者も恋人もいない私を憐れんで、なぜか幼馴染の騎士が恋人のふりをしてくれることになった。 でも恋人のふりをして貰ってから、私を取り巻く状況は悪くなった気がする…。 周りからは『釣り合っていない』と言われるし、彼は私を庇うこともしてくれない。 ――あれっ? 私って恋人でいる意味あるかしら…。 *設定はゆるいです。

処理中です...