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8. 決着/宿儺
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漆黒に包まれた憂悟は、部屋に溢れ返りそうになっていた怨児を襲った。その身に宿る拳と、右腕に握る刀で、次々と怨児を殺す。
そして倒れた怨児に喰らい付いた。
しゃくしゃくと、殺して、喰いを繰り返す。
その様を見て、さしもの山ン本も困惑の色を示していた。
「貴様、平田だけでは飽き足らず、我が下僕をも喰らいおるか。何という不遜。何という傲岸」
山ン本は憂悟を捕まえようと、腕を伸ばす。憂悟は――憂悟を騙っていた怨児は――ひらりと山ン本を華麗に躱し、家中に溢れ返る怨児を喰らい続けた。
喰らううちに、憂悟の身体は肥大する。ズンズンと、ズンズンとその身の漆黒を広げている。
山ン本の背丈の半分程になって、憂悟は遂に山ン本に飛びかかった。がぶり、と山ン本の右脚に喰らいつく。
「✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎‼︎」
憂悟に喰いつかれ、山ン本は叫んだ。それから、憂悟を蹴り上げようとしたが、憂悟はピッタリと山ン本にくっ付いて離れない。
ブチィと肉の裂ける音と共に、山ン本の右脚が、憂悟に引き抜かれた。切断面からボタボタと血が溢れる。
「貴様、この儂をも喰らうか。何故だ、何故なのだ」
憂悟は答えない。もう身体の全ては漆黒に覆われていて、其処にいるモノがぼくの知る憂悟だったとは一目で絶対に判らない。
憂悟は喰い千切った山ン本の脚をもバリバリと喰らう。
脚を喰い千切られた当の山ン本からは、先程までに露わにしていた怒りが少し引いていた。自身に立ち向かう憂悟に対して、純粋に興味を感じ始めているのかもしれなかった。
「貴様は儂と同じだと思ったがな」
山ン本が憂悟に語りかける。当然のように憂悟は答えない。違う、もう答えられないのだ。
「平田の話を聞いた時は、人間を喰らい、人間を弄ぶ為に人間に紛れているのかと。違ったか。そうか、貴様、自身が喰らうた人間の遺志に呑まれたな」
山ン本はイヒヒヒヒ、と今度は叫び声ではなく、気味の悪い嗤い声をあげた。
「あの娘御がそれ程大事か。大事であったか。だがもう遅い。娘御の腹には、既に儂の胤が植わっておる」
その言葉に、山ン本の脚を喰らう憂悟の動きが一瞬止まったように見えた。山ン本は失った右脚の付け根をふらふらと左右に振る。山ン本の右脚の付け根がぼこぼこと泡立ちながら、少しずつ新しい右脚が生えてくる。
「後は娘御に儂の子を産んでもらうだけだ。そしてその子は儂の新たな器と成る」
山ン本の言葉に、憂悟の漆黒の身体がわなわなと震えた。全く声が聞こえていないというわけでもないのか。
そしてぼくもまた、山ン本の言葉に我を失いそうになっていた。
遅かった? 否、何となくそんな予感はしていた。ただ、認めたくなかっただけだ。知りたくなかっただけだ。
由李歌が、今眼の前にいるこの化物に蹂躙されたのだという事実を。
ぼくは刀を拾い上げる。斬らねば。この化物を、斬らねば。
だが、そんなぼくの頭の中に、言葉が響いた。
『✳︎✳︎』
それは本当に言葉だったのか。一瞬でよく判らない。ぼくは憂悟を見た。漆黒に染まる憂悟の眼が、ぼくを見ている気がした。
憂悟は残っていた山ン本の脚を口に放り込み、丸呑みにする。どくどくと憂悟の身体が脈打ち、また大きくなる。
最早家の屋根など全壊していた。憂悟も今や山ン本と同じくらいに大きくなっている。
憂悟は両腕を振り回し、辺りにある邪魔な壁や瓦礫を吹き飛ばした。
ぼくも巻き込まれないように瓦礫を避けて、憂悟と山ン本から距離を取る。
瓦礫の一部が山ン本目掛けて飛んできた。
山ン本は鬱陶しそうに瓦礫を振り払う。
その瞬間に、憂悟が山ン本目掛けて突進した。憂悟が両腕を突き出すと、一呼吸遅れて山ン本も両腕を前に突き出す。
お互いの手を組み、押し合うような形になるが、山ン本は右脚が再生したばかりのせいか、地面に踏ん張ることが出来ず、憂悟に押されていた。
更に、憂悟の背中がボコボコと変形し、そこから新たに二本、腕が生えた。
「何と?」
驚く山ン本の首を、憂悟は新たに生えた腕を用いて締め上げた。
『✳︎✳︎✳︎』
まただ。またさっきと同じ、声とも言えない音が頭の中に響く。だが、二度目のその声にぼくは確信していた。
この声は、間違いなく憂悟だ。
ぼくは刀を握り直す。
山ン本はぼくのことなど見えていない。きっと、この場にぼくという存在がいることすら忘れているだろう。
ぼくは深く息を吸い込む。憂悟と押し合い、首を絞められている山ン本を見上げた。首筋から足先まで、冷たい血が流れていくような心地がする。こんな化物相手に、ぼく如きが何か出来ると言うのか。
『上出来だ』
ぼくの脳裏を、牛鬼を斬り伏せた時に憂悟がかけてくれた言葉が浮かぶ。
あの時の感覚でいい。思い出せ。
牛鬼を斬った時、憂悟が珍しくぼくの頭を優しく叩いてくれた時の感覚が蘇る。泣きそうになるのを堪えて、ぼくはかぶりを振った。
刀を自身の左胸に直接押し付ける。
左胸の漆黒に触れ、刀が染まっていく。
漆黒く、漆黒く。
夜の闇より濃い怨児の漆黒に染め上げられていく。
ぼくはしっかりと地面を踏みしめる。怨児の力が、足元に流れ込むよう意識した。
地面を、蹴る。
ふわりと自分の身体が浮いた。跳躍し、ぐんぐんと山ン本の後頭部が近づいて来る。
「お、おおおおおおおおお‼︎」
ぼくは雄叫びをあげた。空中で刀を振り上げる。山ン本の首筋が、もう眼の前にある。
パッと憂悟が山ン本の首から手を離した。そして山ン本が大きく息を吸ったその瞬間に。
刀を、振り下ろす。
ぼくが振り下ろした刀は、山ン本の首元にすっと入る。そのまま首を両断しようと刀を持つ両腕に力を込めた。だが、空中で力を一点に込めるのは難しかった。
山ン本の首の中央辺りで、刀が引っかかる。
ぼくはそのまま刀の柄にぶら下がる形になってしまった。
「小蟲共が。調子に乗りおって」
それまで憂悟と対峙していた山ン本が、ぼくの存在に気付いた。
だが、刀が首を一息に斬れずとも、山ン本はもう終わっていた。
山ン本の首を斬り損ねた刀から、漆黒が広がった。広がる漆黒を、憂悟が掴む。
憂悟は四本の腕の内、元からあった右腕で、そのまま漆黒を引き抜くように引っ張る。
山ン本の首に引っかかっていた刀が、斬れ味を取り戻した。刀はそのまま山ン本の残りの首半分を斬る。
すぱん、と山ン本の首が宙を舞った。
刀の柄を握ったままだったぼくも空中に放り出される。
憂悟は背中から生えた両手で、山ン本の首を蚊でも潰すかのように両手で力強く潰した。
首を失った山ン本の身体が、ぐらりと揺れる。
憂悟は山ン本の首を斬った刀から漏れ出る漆黒を変わらず掴んでいた。そのまま漆黒が真っ直ぐに伸びる。
その様は、巨体となった憂悟が巨大な刀を握っているかのようだった。
その巨大な刀で、憂悟は山ン本の胸を突き刺した。ぶしゅう、と胸から血が噴き出す。憂悟の漆黒の顔が、血に濡れた。
どしん、と山ン本の身体が倒れる。
ぼくもまた、山ン本の身体が倒れるのとほぼ同時に地面に着地した。
憂悟は倒れた山ン本の腹を踏みつけ、山ン本の胸に突き刺さる漆黒を引き抜く。
四本腕で、刀を握る漆黒の憂悟の姿を見て、ぼくは日本書紀に語られる鬼人、両面宿儺を連想した。
ぼくは両面宿儺の如き憂悟を見上げた。
憂悟は山ン本の腹を踏み抜き、反対側の足で、動かなくなってもなお股間に屹立していた山ン本の魔羅を踏み潰した。
そして、背中から生える両の手を開き、その手で自身の胸を突き刺した。
「憂悟さん⁉︎」
ぼくは思わず声をあげた。
何を、何をしているんだ。
憂悟は自身の胸に突き刺した両腕を引き抜く。
その両掌に、どくどくと脈打つ漆黒の大きな球体が乗っていた。
憂悟の心臓。
憂悟は元の右手に握っていた刀から手を離す。
周りを覆っていた漆黒も収縮し、カランと音を立てて刀が地面に落ちた。
それを見て、今ぼくが何をしなければいけないのか、よく理解できた。
ぼくは落ちた刀を拾う。もう涙を堪えるのは無理だった。濡れる頬を拭って、ぼくは再び地面を蹴り、跳躍した。
狙うは、憂悟の持つ、憂悟の心臓。
ぼくは憂悟の手に、宝物のように置かれた漆黒の心臓に向けて、渾身の力で刀を振り下ろした。
漆黒に包まれた憂悟は、部屋に溢れ返りそうになっていた怨児を襲った。その身に宿る拳と、右腕に握る刀で、次々と怨児を殺す。
そして倒れた怨児に喰らい付いた。
しゃくしゃくと、殺して、喰いを繰り返す。
その様を見て、さしもの山ン本も困惑の色を示していた。
「貴様、平田だけでは飽き足らず、我が下僕をも喰らいおるか。何という不遜。何という傲岸」
山ン本は憂悟を捕まえようと、腕を伸ばす。憂悟は――憂悟を騙っていた怨児は――ひらりと山ン本を華麗に躱し、家中に溢れ返る怨児を喰らい続けた。
喰らううちに、憂悟の身体は肥大する。ズンズンと、ズンズンとその身の漆黒を広げている。
山ン本の背丈の半分程になって、憂悟は遂に山ン本に飛びかかった。がぶり、と山ン本の右脚に喰らいつく。
「✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎‼︎」
憂悟に喰いつかれ、山ン本は叫んだ。それから、憂悟を蹴り上げようとしたが、憂悟はピッタリと山ン本にくっ付いて離れない。
ブチィと肉の裂ける音と共に、山ン本の右脚が、憂悟に引き抜かれた。切断面からボタボタと血が溢れる。
「貴様、この儂をも喰らうか。何故だ、何故なのだ」
憂悟は答えない。もう身体の全ては漆黒に覆われていて、其処にいるモノがぼくの知る憂悟だったとは一目で絶対に判らない。
憂悟は喰い千切った山ン本の脚をもバリバリと喰らう。
脚を喰い千切られた当の山ン本からは、先程までに露わにしていた怒りが少し引いていた。自身に立ち向かう憂悟に対して、純粋に興味を感じ始めているのかもしれなかった。
「貴様は儂と同じだと思ったがな」
山ン本が憂悟に語りかける。当然のように憂悟は答えない。違う、もう答えられないのだ。
「平田の話を聞いた時は、人間を喰らい、人間を弄ぶ為に人間に紛れているのかと。違ったか。そうか、貴様、自身が喰らうた人間の遺志に呑まれたな」
山ン本はイヒヒヒヒ、と今度は叫び声ではなく、気味の悪い嗤い声をあげた。
「あの娘御がそれ程大事か。大事であったか。だがもう遅い。娘御の腹には、既に儂の胤が植わっておる」
その言葉に、山ン本の脚を喰らう憂悟の動きが一瞬止まったように見えた。山ン本は失った右脚の付け根をふらふらと左右に振る。山ン本の右脚の付け根がぼこぼこと泡立ちながら、少しずつ新しい右脚が生えてくる。
「後は娘御に儂の子を産んでもらうだけだ。そしてその子は儂の新たな器と成る」
山ン本の言葉に、憂悟の漆黒の身体がわなわなと震えた。全く声が聞こえていないというわけでもないのか。
そしてぼくもまた、山ン本の言葉に我を失いそうになっていた。
遅かった? 否、何となくそんな予感はしていた。ただ、認めたくなかっただけだ。知りたくなかっただけだ。
由李歌が、今眼の前にいるこの化物に蹂躙されたのだという事実を。
ぼくは刀を拾い上げる。斬らねば。この化物を、斬らねば。
だが、そんなぼくの頭の中に、言葉が響いた。
『✳︎✳︎』
それは本当に言葉だったのか。一瞬でよく判らない。ぼくは憂悟を見た。漆黒に染まる憂悟の眼が、ぼくを見ている気がした。
憂悟は残っていた山ン本の脚を口に放り込み、丸呑みにする。どくどくと憂悟の身体が脈打ち、また大きくなる。
最早家の屋根など全壊していた。憂悟も今や山ン本と同じくらいに大きくなっている。
憂悟は両腕を振り回し、辺りにある邪魔な壁や瓦礫を吹き飛ばした。
ぼくも巻き込まれないように瓦礫を避けて、憂悟と山ン本から距離を取る。
瓦礫の一部が山ン本目掛けて飛んできた。
山ン本は鬱陶しそうに瓦礫を振り払う。
その瞬間に、憂悟が山ン本目掛けて突進した。憂悟が両腕を突き出すと、一呼吸遅れて山ン本も両腕を前に突き出す。
お互いの手を組み、押し合うような形になるが、山ン本は右脚が再生したばかりのせいか、地面に踏ん張ることが出来ず、憂悟に押されていた。
更に、憂悟の背中がボコボコと変形し、そこから新たに二本、腕が生えた。
「何と?」
驚く山ン本の首を、憂悟は新たに生えた腕を用いて締め上げた。
『✳︎✳︎✳︎』
まただ。またさっきと同じ、声とも言えない音が頭の中に響く。だが、二度目のその声にぼくは確信していた。
この声は、間違いなく憂悟だ。
ぼくは刀を握り直す。
山ン本はぼくのことなど見えていない。きっと、この場にぼくという存在がいることすら忘れているだろう。
ぼくは深く息を吸い込む。憂悟と押し合い、首を絞められている山ン本を見上げた。首筋から足先まで、冷たい血が流れていくような心地がする。こんな化物相手に、ぼく如きが何か出来ると言うのか。
『上出来だ』
ぼくの脳裏を、牛鬼を斬り伏せた時に憂悟がかけてくれた言葉が浮かぶ。
あの時の感覚でいい。思い出せ。
牛鬼を斬った時、憂悟が珍しくぼくの頭を優しく叩いてくれた時の感覚が蘇る。泣きそうになるのを堪えて、ぼくはかぶりを振った。
刀を自身の左胸に直接押し付ける。
左胸の漆黒に触れ、刀が染まっていく。
漆黒く、漆黒く。
夜の闇より濃い怨児の漆黒に染め上げられていく。
ぼくはしっかりと地面を踏みしめる。怨児の力が、足元に流れ込むよう意識した。
地面を、蹴る。
ふわりと自分の身体が浮いた。跳躍し、ぐんぐんと山ン本の後頭部が近づいて来る。
「お、おおおおおおおおお‼︎」
ぼくは雄叫びをあげた。空中で刀を振り上げる。山ン本の首筋が、もう眼の前にある。
パッと憂悟が山ン本の首から手を離した。そして山ン本が大きく息を吸ったその瞬間に。
刀を、振り下ろす。
ぼくが振り下ろした刀は、山ン本の首元にすっと入る。そのまま首を両断しようと刀を持つ両腕に力を込めた。だが、空中で力を一点に込めるのは難しかった。
山ン本の首の中央辺りで、刀が引っかかる。
ぼくはそのまま刀の柄にぶら下がる形になってしまった。
「小蟲共が。調子に乗りおって」
それまで憂悟と対峙していた山ン本が、ぼくの存在に気付いた。
だが、刀が首を一息に斬れずとも、山ン本はもう終わっていた。
山ン本の首を斬り損ねた刀から、漆黒が広がった。広がる漆黒を、憂悟が掴む。
憂悟は四本の腕の内、元からあった右腕で、そのまま漆黒を引き抜くように引っ張る。
山ン本の首に引っかかっていた刀が、斬れ味を取り戻した。刀はそのまま山ン本の残りの首半分を斬る。
すぱん、と山ン本の首が宙を舞った。
刀の柄を握ったままだったぼくも空中に放り出される。
憂悟は背中から生えた両手で、山ン本の首を蚊でも潰すかのように両手で力強く潰した。
首を失った山ン本の身体が、ぐらりと揺れる。
憂悟は山ン本の首を斬った刀から漏れ出る漆黒を変わらず掴んでいた。そのまま漆黒が真っ直ぐに伸びる。
その様は、巨体となった憂悟が巨大な刀を握っているかのようだった。
その巨大な刀で、憂悟は山ン本の胸を突き刺した。ぶしゅう、と胸から血が噴き出す。憂悟の漆黒の顔が、血に濡れた。
どしん、と山ン本の身体が倒れる。
ぼくもまた、山ン本の身体が倒れるのとほぼ同時に地面に着地した。
憂悟は倒れた山ン本の腹を踏みつけ、山ン本の胸に突き刺さる漆黒を引き抜く。
四本腕で、刀を握る漆黒の憂悟の姿を見て、ぼくは日本書紀に語られる鬼人、両面宿儺を連想した。
ぼくは両面宿儺の如き憂悟を見上げた。
憂悟は山ン本の腹を踏み抜き、反対側の足で、動かなくなってもなお股間に屹立していた山ン本の魔羅を踏み潰した。
そして、背中から生える両の手を開き、その手で自身の胸を突き刺した。
「憂悟さん⁉︎」
ぼくは思わず声をあげた。
何を、何をしているんだ。
憂悟は自身の胸に突き刺した両腕を引き抜く。
その両掌に、どくどくと脈打つ漆黒の大きな球体が乗っていた。
憂悟の心臓。
憂悟は元の右手に握っていた刀から手を離す。
周りを覆っていた漆黒も収縮し、カランと音を立てて刀が地面に落ちた。
それを見て、今ぼくが何をしなければいけないのか、よく理解できた。
ぼくは落ちた刀を拾う。もう涙を堪えるのは無理だった。濡れる頬を拭って、ぼくは再び地面を蹴り、跳躍した。
狙うは、憂悟の持つ、憂悟の心臓。
ぼくは憂悟の手に、宝物のように置かれた漆黒の心臓に向けて、渾身の力で刀を振り下ろした。
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