Vodzigaの日は遠く過ぎ去り。

宮塚恵一

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17.VSガジャゴ

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 メカヴォズィガは、TALARIAタラリアを認識すると、直様すぐさま前脚の鋭い爪を振り下ろした。

 肝の冷える思いをしながら、急いでメカヴォズィガの前からジェット噴射で距離を取る。

「博士! 何あれ!?」
「ぼくが知るか!」

 紅空の下、何が待ち受けていても構わないと覚悟はしていたが、は流石に想定外だ。

MechaVodzigaヴォッズィーガ・メカニッコは、初めて東京に現れた個体を素体としている」

 聞いてもいないのに、マッヨォロガがメカヴォズィガについて語り始めた。

「巫女の活躍によって怪獣災害が終わり、HERMヘルマは解体。それまで怪獣災害への対処に力を注いでいた多くの職員が路頭に迷った。そこで我がガジャゴが打った計画こそがMV計画プロジェクト-MVだ」

 マッヨォロガがマイクを握って講釈を垂れる間も、メカヴォズィガはTALARIAタラリアに向けて攻撃を繰り出し続ける。

 機械の身体に補助アシストを受けているのか、一つ一つの攻撃が速い。
 金属の軋むような咆哮を上げる様子はこれまで対峙してきた他の怪獣と何ら変わらない。

最終形態200メートル級の個体は彼女と共に失われたが、東京を襲った最初の個体50メートル級の死体ならば、秘密裏に保管されていた。我々を襲う怪獣も、ヴォズィガもいない今、MechaVodzigaヴォッズィーガ・メカニッコこそが唯一にして最強の怪獣」

「それでまた怪獣が現れたら、貴方はどう責任を取るの!?」
「それならばそれで良い。MechaVodzigaヴォッズィーガ・メカニッコは全てを蹂躙する。今度は君も怪獣と戦う必要はない。我々に任せれば良い。怪獣討伐の為の雇用も発生し、我々の当初の目的である、路頭に迷った職員の救済にもなる」

「何それふざけんな!」

 先輩の犠牲を、本当に何だと思っているんだ。何の為に先輩がヴォズィガと決死の覚悟で相対したと思っているんだ!

 ──────。

 先輩の部屋で一緒にヴォズィガを倒そうと決意したあの後、博士達と相談して決めたのは、ガイアが産み落とすという他の怪獣も牽制しつつ、ヴォズィガを倒すことに全力を捧ぐことだった。

 ヴォズィガは倒す。でもだからって、他の怪獣だって好き勝手させやしない。ヴォズィガを倒す為に怪獣が現れていると言うなら、私達が先にヴォズィガを倒せば良いんだ。

「ヴォズィガは私がやる」

 先輩は再びその瞳に闘志を燃やしていた。先輩はヴォズィガを全力で討つことに全てを費やし、その間に私は他の怪獣を残らず相手する。

 私達の決意を、HERMヘルマも全力で支援した。幸運なことに、怪獣達と戦い続けたことは決して無駄ではなかった。

 数え切れぬ程の怪獣討伐のデータを元に、博士とHERMヘルマは異次元発生装置を作り上げた。
 一言で言えば、シャッガイ領域で怪獣に吊るされた糸を切るのではなく、回収する装置だ。

 装置は怪獣と同じ周波数の次元波を発生することで、ガイアに異次元発生装置を怪獣だと誤認させる。そうすることで、怪獣に吊るされた糸をサイレントに回収する。

 シャッガイ領域との接続を即座に回復するヴォズィガ相手でも、これなら戦える。

 だが、装置には問題があった。

「今の技術では、怪獣に接近した状態でないと、怪獣であると誤認させられないし、糸を回収することも出来ない」

 そう歯噛みする博士に、先輩は笑って応えた。
「だったら簡単でしょ。私がその装置を背負って、ヴォズィガに挑めば良い」

 背負うと言うのは比喩で、実際にはヴォズィガに接近可能な決戦兵器TALARIAタラリアの開発を進めることで、先輩はヴォズィガとの最終決戦に挑んだ。

 あの博士も珍しくはっきり口にしなかったが、先輩は自分が無事では済まないことをわかっていた。

 ヴォズィガはただ倒すだけでは意味がない。

 東京に初めて出現したヴォズィガは、原因不明で消滅したと記録されていたにも関わらず、同個体が再度現れた。
 ヴォズィガを一体倒したところで、次のヴォズィガが現れる。

 ならば、これまではこちら側で切っていた糸を領域の向こう側で切り落とすしかない。

 それは装置を使い、ヴォズィガごと異次元に引きずり落とすことを意味していた。

「必ず、帰るよ」

 そんなことを嘯いていたが私だってわかっていた。先輩は自分ごとヴォズィガを異次元に叩き落とすつもりだと。

 ──────。

「博士」

 メカヴォズィガに対峙しつつ、私は博士に尋ねた。

「あの肩の機械、ヴォズィガを倒す時に使ったのと同じモノだよね?」
「おそらく。あれがあのふざけた兵器の要だろう。だが、もしそうなら、今のTALARIAにあれの装甲を壊す手段はないぞ」

 異次元発生装置は、ヴォズィガ討伐の要でもあったから、最新鋭のカーボン素材で何重にも装甲を重ねていた。肩に置いているのも、そうでないとシャッガイ領域との接続が困難というのもあるが、ちょっとやそっとのことでは壊れないという自負があるんだろう。

「でも、あれを止めることが出来れば」

 メカヴォズィガとシャッガイ領域との繋がりは不安定になる。後は残った糸を切り落としていけば良いだけだ。

「決めたよ博士」
「馬鹿なことを考えてるんじゃないだろうな」

 博士は心配している。私が先輩と同じことをしやしないか、と。確かに、先輩の決意を踏み躙るあのふざけた兵器は許せない。

 だけど、相手はヴォズィガじゃない。その紛い物だ。

「そんな勿体ないこと、してやるもんか」

 私は全速力で、メカヴォズィガの肩にある装置目掛けて突進した。装置に接近した瞬間、緊急脱出ボタンを押す。私は強化アーマーのみの姿で外に放り出される。TALARIAタラリア程ではないが、このアーマーも怪獣と対峙する為のモノだ。私はメカヴォズィガの首筋辺りを掴み、立ち上がった。

「何を!?」

 マッヨォロガが驚愕した様子を見せる。教えてやる必要はない。私の操縦していたTALARIAタラリアは装置の装甲を無視して、高速回転するプロペラに突っ込んだ。ベキベキと、TALARIAタラリアが潰される音がする。同時にプロペラも拉て、その動きを止めた。

 博士との通信は途絶えたが、脳裏に博士の唖然とした顔が浮かび、少し愉快になる。
 私はメカヴォズィガの顔を見上げた。
 シャッガイ領域から吊るされている糸が、しっかりと見える。

「私を! 舐めるな!!」

 私を誰だと思っいる。先輩の代わりに、先輩と同じ働きが出来るように、あの頃の私は全てを捧げた。だから、先輩に出来ることは私にも出来る。否、出来なくちゃいけない!

「うおおおおお!」

 私はメカヴォズィガに吊るされた糸を、強化アーマーで機体の上を這いずり回り、一本一本切り落として行く。

 糸を切り落とす度に、メカヴォズィガはバランスを崩しそうになり、その姿勢を整えるので、その隙にまた糸を切り落とす。

「これで終わりだ!!」

 そして背中に吊るされた最後の一本を切り落とすと、メカヴォズィガは糸の切れた操り人形のように、制御を失った巨体を地面に叩き付けた。
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