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『あなたが一番嬉しい事は何ですか?』
6日前、そんな一言の質問を簡易文投稿サイトで見たのはほんの偶然だった。
家で一人ご飯を食べながら、用もなくスマートフォンを弄っていた時だった。
知らない人のよくある質問文、いつもなら見て終わるだけだった、だがなんとなく気になって返信した。
深く考えた訳じゃない、誰でも言いそうな事を書いた。
「一千万円くれたら嬉しい」
送信してからわたしは一人苦笑した。
こんな事小学生でも思いつく、もっと面白い事考えて送ればよかったと・・・・・・。
3日前、その日も私は一人家にいた。
何をするわけでもない、ただ居た。
都会に仕事で出てきて一人暮らしを始め3年、仲のいい友達ができる事もなく、ただ仕事と家の往復を繰り返す毎日。特筆すべき様な趣味が有る訳でもなく、ただただ漫然と生きていた。
そんな時スマートフォンが鳴った。
簡易文投稿サイトで誰かが言葉を送って来たらしい。
顔も本名も知らぬ、SNS上だけの暇つぶしの為、寂しさを紛らわせるだけの偽りの友人達の一人だろうと予想してスマートフォンを手に取った。
『一千万円ご用意しました、お受け取りになる場合は3日後の夜8時に大迫公園までお越しください。当方は白いワンピースを来た23歳の女です』
そう書かれていた。
確かに先日私は「一千万円くれたら嬉しい」などと軽い気持ちで返信した。
だが本当に貰えるなどと思っていない、七夕の短冊に書くよりももっと軽い気持ちであった。
新手の詐欺か?いや、悪戯か?
どちらでもいい、びっくりしたのはいい刺激になった、変わらない毎日へのほんのちょっとしたスパイスだった。
今日、私は「もしかしたら」なんて思って、指定のあった大迫公園に来た。いや、正確にいうと指定時間には公園の周りから中を伺っていた。
詐欺にしろ、冗談にしろ、のこのこと正直に出て行ったら笑われて晒し者になるかもしれない。
どこかにカメラがあるかもしれないっと考えたのだ。
周囲をぐるっと一周しても怪しい人も車もなかった。
そして時間になると入り口から一人の白いワンピースをきた女性が、小さなバッグと紙袋を持って入って来た。
わたしは念の為にもう一度公園の周りを一周する。
いない、誰もいない。
わたしはスマートフォンを取り出して返信する。
「もういますか?」
っと、確認のためだ。
公園にいる女性は手元で何かを操作した直後、私の手の中が震えた。
『はい、お待ちしております』
暇だったのだ、寂しかったのだ、興味本位だったんだ。
私は公園の中へと足を踏み入れた。
女性に向かって歩いていく。
「簡易投稿サイトで・・・・・・」
恐る恐るわたしが声をかけると、目の前の女性は手に持っていた紙袋を突き出した。
『どうぞ、一千万円です』
私は思わず手を出して受け取った、条件反射のように手を出したのだ。
そっと紙袋を開けてみると、確かにお金が束になっていた。
『嬉しいですか?最高に嬉しいですか?』
その言葉になぜか恐怖が走った、ぞわぞわとした恐怖が足元から押し寄せてきていた。
「嬉しいです」
なんとか一言発すると、わたしは駆け出していた。
帰る途中何度も後ろを振り返り、遠回りし、家に着く頃にはクタクタになっていた。
鍵を閉め、部屋に入ったわたしはもう一度紙袋を確認する。
確かに一千万円ある、100万円の束が10あるのだ。
暇つぶしにスマートフォンを見ていてよかった、返信してよかった、悪戯だと無視せず赴いてよかった。
私は1000万円を無償で手に入れたのだ。
この結果を生み出してくれたサイトに私は書き込む。
「無料で1000万円貰った!」
SNS上の偽りの友人達が一斉に「なぜ」「教えて」「奢れ」「それは俺のだ」などと送ってくる。
今は怨嗟の言葉さえ祝福に見える。
『今最高に嬉しいですか?』
例から再度確認のような返信が来ていた。
それに私は満面の笑みで返信する。
「最高に嬉しいです」
「そうですか、それはよかったです」
確かに私は耳でその言葉を聞いた。
直後、わたしはニコニコと微笑む赤いワンピースを来た女性と、首から何かを吹き出す私の身体を見た。
----------------------------------------------------------------------------------------------
『ふぅっ美味しかった』
『やはり歓喜の状態のお肉は甘いのかしら、そろそろ在庫も少なくなってきたし調達しないと』
『ねえ、貴女もそう思うでしょ?』
冷蔵庫の中を見ながら一人の若い女性が呟いた。
その瞳の先には満面の笑みを浮かべた女の顔が皿に載っていた。
『やあねぇ~最近は物騒なニュースばかり』
そう呟く女性の部屋ではテレビがつけられ、アナウンサーが悲しみの表情を浮かべ読み上げていた。
《本日未明、都内で一人暮らし中の女性の部屋から大量の血痕が見つかり、警察は住民女性の行方を捜索中です》
6日前、そんな一言の質問を簡易文投稿サイトで見たのはほんの偶然だった。
家で一人ご飯を食べながら、用もなくスマートフォンを弄っていた時だった。
知らない人のよくある質問文、いつもなら見て終わるだけだった、だがなんとなく気になって返信した。
深く考えた訳じゃない、誰でも言いそうな事を書いた。
「一千万円くれたら嬉しい」
送信してからわたしは一人苦笑した。
こんな事小学生でも思いつく、もっと面白い事考えて送ればよかったと・・・・・・。
3日前、その日も私は一人家にいた。
何をするわけでもない、ただ居た。
都会に仕事で出てきて一人暮らしを始め3年、仲のいい友達ができる事もなく、ただ仕事と家の往復を繰り返す毎日。特筆すべき様な趣味が有る訳でもなく、ただただ漫然と生きていた。
そんな時スマートフォンが鳴った。
簡易文投稿サイトで誰かが言葉を送って来たらしい。
顔も本名も知らぬ、SNS上だけの暇つぶしの為、寂しさを紛らわせるだけの偽りの友人達の一人だろうと予想してスマートフォンを手に取った。
『一千万円ご用意しました、お受け取りになる場合は3日後の夜8時に大迫公園までお越しください。当方は白いワンピースを来た23歳の女です』
そう書かれていた。
確かに先日私は「一千万円くれたら嬉しい」などと軽い気持ちで返信した。
だが本当に貰えるなどと思っていない、七夕の短冊に書くよりももっと軽い気持ちであった。
新手の詐欺か?いや、悪戯か?
どちらでもいい、びっくりしたのはいい刺激になった、変わらない毎日へのほんのちょっとしたスパイスだった。
今日、私は「もしかしたら」なんて思って、指定のあった大迫公園に来た。いや、正確にいうと指定時間には公園の周りから中を伺っていた。
詐欺にしろ、冗談にしろ、のこのこと正直に出て行ったら笑われて晒し者になるかもしれない。
どこかにカメラがあるかもしれないっと考えたのだ。
周囲をぐるっと一周しても怪しい人も車もなかった。
そして時間になると入り口から一人の白いワンピースをきた女性が、小さなバッグと紙袋を持って入って来た。
わたしは念の為にもう一度公園の周りを一周する。
いない、誰もいない。
わたしはスマートフォンを取り出して返信する。
「もういますか?」
っと、確認のためだ。
公園にいる女性は手元で何かを操作した直後、私の手の中が震えた。
『はい、お待ちしております』
暇だったのだ、寂しかったのだ、興味本位だったんだ。
私は公園の中へと足を踏み入れた。
女性に向かって歩いていく。
「簡易投稿サイトで・・・・・・」
恐る恐るわたしが声をかけると、目の前の女性は手に持っていた紙袋を突き出した。
『どうぞ、一千万円です』
私は思わず手を出して受け取った、条件反射のように手を出したのだ。
そっと紙袋を開けてみると、確かにお金が束になっていた。
『嬉しいですか?最高に嬉しいですか?』
その言葉になぜか恐怖が走った、ぞわぞわとした恐怖が足元から押し寄せてきていた。
「嬉しいです」
なんとか一言発すると、わたしは駆け出していた。
帰る途中何度も後ろを振り返り、遠回りし、家に着く頃にはクタクタになっていた。
鍵を閉め、部屋に入ったわたしはもう一度紙袋を確認する。
確かに一千万円ある、100万円の束が10あるのだ。
暇つぶしにスマートフォンを見ていてよかった、返信してよかった、悪戯だと無視せず赴いてよかった。
私は1000万円を無償で手に入れたのだ。
この結果を生み出してくれたサイトに私は書き込む。
「無料で1000万円貰った!」
SNS上の偽りの友人達が一斉に「なぜ」「教えて」「奢れ」「それは俺のだ」などと送ってくる。
今は怨嗟の言葉さえ祝福に見える。
『今最高に嬉しいですか?』
例から再度確認のような返信が来ていた。
それに私は満面の笑みで返信する。
「最高に嬉しいです」
「そうですか、それはよかったです」
確かに私は耳でその言葉を聞いた。
直後、わたしはニコニコと微笑む赤いワンピースを来た女性と、首から何かを吹き出す私の身体を見た。
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『ふぅっ美味しかった』
『やはり歓喜の状態のお肉は甘いのかしら、そろそろ在庫も少なくなってきたし調達しないと』
『ねえ、貴女もそう思うでしょ?』
冷蔵庫の中を見ながら一人の若い女性が呟いた。
その瞳の先には満面の笑みを浮かべた女の顔が皿に載っていた。
『やあねぇ~最近は物騒なニュースばかり』
そう呟く女性の部屋ではテレビがつけられ、アナウンサーが悲しみの表情を浮かべ読み上げていた。
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