美味しい食卓

マニアックパンダ

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蜜の味①

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『蜜を吸ったその肉はどれほど美味しいのかしら』
『ねえ?どれほど吸って来たのかしら?』

冷蔵庫の中を見つめながら、頬を緩ませる女が一人。

『期待しているわ、蜜を吸った直後だったものね。頬肉にも期待しなきゃ』


----------------------------------------------------------------------

チッ、この男も他人の金だとわかったら遠慮なく注文しやがる。

「おう、食べろ食べろ、好きなもん飲んでくれ」

俺は心と裏腹に目の前で口の周りを油で汚した男に声をかけた。
この男とは数年前に競馬場で知り合った。
ことごとく外して居たところ、よく見かけるといって馴れ馴れしくしてきたやつだ。
名前は確か・・・・・・

「それにしても、よく今日は声を掛けてくれたな。もう俺の名前なんて忘れちまったと思ってたから「河合」って呼ばれた時はわかんなかったよ」

上機嫌にビールを呷りやがる。まだ半分も残っているのにまた追加を注文だと?てめぇの金の時には一滴さえ舐めるように飲む癖に。
そう、河合だ河合。薄くなったものを無理矢理後ろに纏めてごまかした髪に、他人なんて餌としか思っていないようないやらしい目つき。河合って名前も本名かどうかわかりゃしねぇが、その意地汚い顔だけはよく覚えていたよ。

「どうしたんだ?こんなに奢ってくれるなんて。いやに金回りが良さそうじゃないか。そのスーツも腕時計も靴も高そうなもん着てるな~」

あぁ、俺が今日声を掛けた時からずっと上から下まで値踏みしていたのは知っているよ。

「この服か?まぁ安くはないが……実はだな・・・・・・」
「お?なんだいい伝手でもあるのか?」

おうおう、その小汚ねぇ服が焼き鳥についてタレが付くほどに身を乗り出しやがって。

「いや、な・・・・・・服も靴も時計もだな、それぞれ数十づつ纏めてオーダーしたり注文したもんだから値段なんて一々覚えちゃいねえんだ」
「ふんっ、いいご身分だね~お大尽様かい」

妬むな妬むな、いやらしい目をしやがって。本当に値段は知らねえんだからよ、まあ注文したりしたんじゃなくて、たまたま配達途中に寄った家には誰もいなかったのでちょっとしてきただけなんだからよ。

「で、なんだ、その金の出所はどこよ?なんかいい稼ぎ先があるんだろ?一丁俺にも恵んでくれよ」

ふんっ、何が恵んでくれだよ、ここで俺が教えなかったら奪うんだろ?

「あぁ、数年前には声を掛けてくれて飯も奢って貰って世話になったからな」
「おう!あん時は俺も苦しかったが、お前にな・・・・・・」

たった一回だけどな。しかもお前は万券当てて、俺は大負けした日だ。俺の負けた掛具合や考えをさも嬉しそうに聞いて、それをツマミにして飲んだんじゃねぇか。

「教えてやってもいいんだが……絶対に笑うし信じちゃくれねぇと思うんだ、いやバカにするだろうな~」
「おっ?なんだそんな不思議な話なのか?俺はお前のいう事なら信じるぞ」
「そんなに言うなら・・・・・・だがここは人が多すぎるな、他人には聞かせられねぇ」
「おう、そうだな旨い話は知られねぇほうがいい、そうだそこに知り合いの飲み屋がある。貸し切りにして貰おうか」
「いや、カラオケに行こう。お前の連れを信じないわけじゃないんだが・・・・・・な」
「そうか・・・・・・いや、信用のおける奴だし、あれだ、外に出てって貰えばいいだろ?」

フンッ、お前の仲間なんて信用できるか。旨い話を聞いたら最後、俺の身ぐるみでも剝いでしまおうって思ってるんだろ?お前のテリトリーには入ってやらんよ。

「いや・・・・・・そこまでカラオケが嫌なら仕方ないな」
「おっ、じゃあ連「この話はここまでにしよう」・・・・・・わかったカラオケでいい」

お前の考えなんかわかってるんだよ、俺とだからな。


レジで財布の中身を奴に十分に見せつけながら勘定を済ませる。
他人の財布の中身を数えてるのがよくわかったよ、思わず笑いそうになるくらいにな。
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