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出会い
3話
しおりを挟む「今日もとても美味しそうな夕食だね。それでは頂こうか」
家族が全員揃い家長である父、王琳が席に着き、皆でいただきますと挨拶し食べ始める。柳家の食卓は賑やかだがきちんと貴族としての作法も教えられているので所作は洗練されている。
「今日は蓮花が持って帰って来てくれた大根で作った大根餅なのよ」
「そうなのか。どれどれ――うん、美味しい。ご飯が進むね」
父の王琳は穏やかな性格で少々お転婆な性格の母の蘭玲をいつも笑顔で見守っている。蓮花を含める子供たちは優しい両親に姉弟たちに囲まれているこの生活に満足していた。家計が苦しくてもこの家の子供で良かったと心から思えている。
「父様、科挙の試験問題の中で理解が難しいところがあるんだ。後で手が空いたら教えてもらえないかな」
「もちろんいいとも。しかし王静、あまり根を詰めないようにね。心が参ってしまってはいけないから」
「はい」
王静は官吏になるための試験――科挙を受けるために勉強中だ。科挙を良い成績で合格すればその後の給金も上がることが多いらしい。家計を助けるために少しでもいい成績で通過したいと言っていたのを蓮花は思い出す。本人は勉強することが好きらしく特に苦に思ってはいないみたいなので皆で応援している。
王静の向かいでは蘭翠が王偉の口に付いたタレを拭っている。
「ちょっと王偉、じっとしてね」
「後ででいいってばあ」
王偉はご飯を優先したいのか顔を逸らそうとしたが蘭翠が顔を押さえるのが少し早かった。スッキリした顔で王偉はまた食べ始めた。蘭翠も自分のおかずを口に運び食を進める。
「ところで蓮花、仕事はどうだ、無理していないかい?」
弟妹の様子を見ているとふいに父から話しかけられた。蓮花は笑顔を見せ答える。
「ええ、皆優しくていい人ばかりよ。内容も難しいものではないし家事でやっていることの量が倍増したって感じね」
「でも蓮花の年頃なんてお友達と買い物したりお茶会したり一番楽しい時でしょう。無理して働かなくても――それに周りも嫁入りされる方が増える頃だし……」
蘭玲は眉を下げて言うが、蓮花にとっては早く借金を返すことの方が大事だった。正直借金があるうちはどんな家であろうと嫁に貰ってもらうのは難しいだろう。自分はいいが妹達が嫁入りする頃になるまでには完済しておきたい。
「私みたいなの貰ってくれる物好きなんてそうそういないわよ。それにせっかく完済までもう少しなんだから少しでも早く返したいもの」
心配するなと言わんばかりに母に笑いかける蓮花。しかしあまり納得していないのか少し口を尖らせながら黙り込む蘭玲。そんな二人を見ながら少し申し訳なさそうな顔をする王琳。
「いつも苦労ばかりかけてすまないね。でも本当に無理はしてはいけないよ。私の給金だけでも返済はできるのだから」
「ええ、ありがとう父様」
その言葉の通り柳家の借金はもうかなり少なくなってきている。いつもの調子で返済するとあと一年もあれば完済できるだろう。蓮花が働いた分なんて微々たるものかもしれない――それでも家族を少しでも早く楽をさせたい。じっと家で家事をしているだけなんて自分の気持ちが納得しないのだ。
それに結婚より今は家族でこうして過ごす時間が何より大切だと改めて思う蓮花だった。
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