芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥

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出会い

32話

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 話は綉礼と雲嵐の事にまで及んだ。

「私に手紙を届けてくれた子が驚いてました。雲嵐様から手紙なんてどういうことなんだって」
「そうだったんですね。そこまで思い至らず申し訳ないです……」
「あ、いえいえ! お気になさらないでください。きっと私でもそうしたと思いますし」
「でも成り行きとはいえ、久しぶりに雲嵐様とお話出来て嬉しかったです」
 
 綉礼はぽっ、と頬を赤らめながらそう呟いた。嬉しそうな様子に思わず蓮花も女子心がくすぐられてしまい質問をする。

「綉礼様は雲嵐様のどこに惹かれたんですか?」
「惹かれただなんて! どうしてそれを……」
「あ、すいません。てっきりそうかと思っていたんですが――違いましたか?」
「いえ……合っています」

 もごもごと肯定する綉礼。蓮花は誤魔化すようにお茶を飲む綉礼の姿を微笑ましく見ていた。

「雲嵐様とは幼馴染みって仰っていましたけど、昔から仲がよろしかったんですか?」
「父が雲嵐様のお父様と仲が良くて、私が七歳の時ある日雲嵐様を連れてうちにやって来たんです。私は昔から引っ込み思案で、上手く話せなくて……」

 ――綉礼は在りし日の思い出を思い出すように語ってくれた。









「初めまして、宋 綉礼です……」
 雲嵐です」

 綉礼は初めて雲嵐を見た時白いふわふわの耳としっぽが日に透けてキラキラ輝いて見えた。

「きれい……」
「え?」
「な、なんでもない、です」

 思わず口からこぼれてしまった声は運良く雲嵐には届かなかったようだ。雲嵐の横に立った彼の父、煌嵐コウランがしゃがんで綉礼と目を合わせる。彼も雲嵐と同じく猫の獣人だ。

「無愛想な子ですがどうか仲良くしてやってください」
「うちの綉礼も内気だからな、ごにょごにょ言っても許してやってくれ」

 綉礼の父はがしがしと綉礼の頭を撫でながら雲嵐に笑いかける。綉礼はまだその時は羽州に住んでいて、時々雲嵐達が訊ねて来るようになった。



 綉礼の父は貴族という枠にとらわれない人で、普通の子と同じように外を一人で歩かせることも珍しくなかった。
 その日綉礼は髪紐が切れてしまったので新しいものを買いに出かけていた。
 
「おい! そこの変な髪のやつ!」
「きゃっ」

 綉礼が買い物を終えて邸に帰っている時、突然大声とともに頭に鋭い痛みを感じた。
 振り返るとそこには街でガキ大将と呼ばれている同年代の男の子たちが数人立っていた。
 すぐに先程の痛みは綉礼の髪を引っ張った事が原因だと気づいた。

 以前から何回かこうやって絡まれる事があったが、綉礼は両親を心配させないように内緒にしていた。もしバレてしまったら今の様に一人で歩くことは許されなくなるだろう。

 綉礼は自分を引き止めた少年の意図が分からず困惑した。



 
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