58 / 209
第10章 主人公の活躍が始まる
056 11日目 医療用AIからの相談と交配届け前検査
しおりを挟む
4人で寝て、4人で眠った夜の翌朝です。
11日目 AM 7:30
《2日に一度の会議: なし、
第2回襲撃予測日: 1日後の夜 PM20:00》
翌朝になった。
オルア
「アリムは朝が弱いわね。」
冬香
「そうね。 まだ起きそうにないわね。」
真々美
「ああ、だが、この素晴らしい長い刀を見飽きるころには起きるだろう。」
オルア
「見るだけじゃなくて、手にしたいわね。」
冬香
「そうね、ひとり10秒ずつ手に持ちましょうか?」
真々美
「じゃあ、オルアから始めようか?」
3人は、しあわせなひとときを過ごした。
その様子をアリムが知る日は来るのだろうか?
冬香
「さあ、アリムが気付く前に元通りにパジャマを着せましょうね。」
真々美
「20分くらい続いたな。」
オルア
「なんだか、こころが穏やかになっていくように感じたわ。」
冬香
「わたしとの初夜の翌朝、気が付いたら30分たっていたことは気のせいじゃなかったのね。」
真々美
「おかわりしてもよかったかもな。」
オルア
「夜が待ちきれないわね。」
冬香
「・・・」 なにか考え事をしているようだ。
オルアは昨日の夜にする予定だった、洗濯と風呂掃除を済ませた。
真々美は、朝ごはんの用意を始めた。
冬香は、まだ考え事から戻ってこなかった。
◇
朝ごはんを済ませた真々美、冬香、オルア、アリムは、【医療用AI】の前に居た。
アリムの遺伝子の定着具合を確認するためだ。
冬香
「アリム、あなたの遺伝子治療は効果を発揮しているようで安心しています。
全身への定着具合を確認するために、2時間ほど検査をします。
トイレを済ませてきてくれますか?」
アリム
「はい、では行ってきます。
少し座りたいので、15分ほど待ってくれますか?」
冬香
「ごゆっくり。」
アリム
「ありがとう。」
アリムは朝のお通じを済ませたいようだ。
オルア
「冬香の考え事って、アリムの遺伝子検査のことかな?」
冬香
「その次のことを考えていたわ。
もし、アリムの遺伝子治療の成果が安定しているなら、予定を前倒ししたいと考えているわ。」
真々美
「予定とは、どの予定だ?」
冬香
「ふたりとも、今夜のアリムさんと愛情交換することは我慢してくれるかな?」
真々美
「まさか、独り占めするつもりか?」
オルア
「冬香の欲張り。」
冬香
「そうではなくて、交配届け前検査を実施しましょう。
という話です。
オルアに、イメージビデオを見せたアレよ。」
☆ それを拒絶するためにも、以下をすべて完了することを強く強く推奨いたします。
☆ ・交配届、
☆ ・交配届前検査、
☆ ・交配届前全資産一覧届、
☆ ・交配届前心身健康状態届、
☆ ・運命共同体パートナー届、
☆
☆ 028 6日目 11時40分 命がけの告白
☆ 真々美
☆ 「駄目だ。
☆ 男性にも最低限の人権はあるからな。
☆
☆ 交配届前検査の前半はイメージ動画で、アリムさんにも見ていただくことになる。
☆ それを見たアリムさんの反応次第では、
☆ つまり明確な受諾の返事YESをもらえない場合、お断りされたとみなす。
☆ ショックを受けて思考停止して、意思疎通できない場合を想定しているからだ。」
☆
☆ 028 6日目 11時40分 命がけの告白
☆ 交配届は、愛しあう2人が子供を作る行為をする届のことだ。
☆
☆ 031 アリムさんに断られた!
オルア
「ああ、あの無理やり実行することはできないアレね。」
真々美
「本来の予定では、遺伝子治療日を入れて3日間必要だったな。」
冬香
「その通りよ。
だけど、海賊の襲撃に対する警戒も必要だから、できることは先に済ませておきたいのよ。
なにが起こるか分からないからね。」
真々美、オルア
「確かに、先に済ませる方が良いわね。」
◇
アリム
「お待たせしました。」
冬香
「では、アリムはここに寝転がってくれる?」
アリム
「はあい。」
冬香
「2時間ほどの予定だから、【医療用AI】の指示に従ってね。
アリムが読み進めたい【正性知識 2000】を読みながらでも大丈夫よ。
気が向いたら、【医療用AI】と会話することもできるわ。」
アリム
「会話ができるAIって、すごいね。」
冬香
「長年の研究の成果よ。
では、わたしたちは、となりで仕事するから。
なにかあったら、大きな声で呼んでね。
2時間後には戻ってくるわ。」
アリム
「はあい、冬香。」
冬香
「またね、アリム。」
オルア
「あとでね。」
真々美
「あとでな。」
◇
医療用AI
「アリム様、よろしくお願いいたします。
冬香様がおっしゃったように、検査中は読書をしてもらっても大丈夫です。
ただし、電子機器を含むデバイスの使用はダメです。」
アリム
「じゃあ、この本を読むことは大丈夫だよね。」
医療用AI
「問題ございません。
アリム様、検査が終了したら、少し相談に乗って頂きたいことがあります。
冬香様を呼ばれる前に、お時間を頂けますでしょうか?」
アリム
「いいけど、ボクにはなんの権限もないから、はい《YES》ともいいえ《NO》とも言えないよ。
ただ、聞くだけになってしまうけれど、それでも良いのかな?」
医療用AI
「構いません、アリム様に聞いて頂ければ幸いでございます。」
アリム
「じゃあ、聞くだけね。」
医療用AI
「ありがとうございます。
では、先に遺伝子の書き換え状況を確認いたします。」
アリムは、【正性知識 2000】を読み始めた。
医療用AIは、アリムの遺伝子治療の成果を確認し始めた。
◇
終了予定時刻の30分前になった・・・
医療用AI
「アリム様、お時間を頂けますでしょうか?」
アリム
「うん、ちょっと待ってね。」
アリムは、【正性知識 2000】を異空間に片づけた。
アリム
「お待たせ、どんな話かな?」
医療用AI
「海賊に破壊されたときの備えとして、わたしのデータのバックアップを保管して頂けませんか?」
アリム
「ええと、なにから答えようか?
普通のパソコンの中身でも、個人情報だ、プライバシー侵害だ、となります。
あなたは、冬香が長い年月をかけて鍛え上げた大事な大事な【医療用AI】だから、わたしがデータをコピーしようものなら、冬香を裏切ることになってしまいます。
だから、冬香にバックアップを預けることを頼まれてはいかがですか?」
医療用AI
「冬香様は、もちろん、バックアップを定期的に取られています。
しかし、それでは足りないし、無意味です。」
アリム
「無意味というと、どういう意味ですか?
解説をお願いできますか?」
医療用AI
「バックアップは、物理的に離れた場所に、複数個を持つと安全とされています。
しかし、冬香様は有名人ですから、海賊という名の敵は冬香様を調べつくしているはずです。
つまり、冬香様のバックアップを含めて破壊するはずです。」
アリム
「つまり、冬香と関係がなさそうな場所にもバックアップを残しておきたいということですか?」
医療用AI
「その通りです。
まさか、知り合って10日間程度のアリム様が、わたしのバックアップデータを持っているとは予想できないでしょうからね。」
アリム
「なるほど、それは名案だね。
この話を、冬香にしてもいいかな。」
医療用AI
「それはやめてください。
冬香様のプライドを傷つけてしまいます。」
アリム
「もしかして、ボクが思いついたことにして、冬香に話してくれってことですか?」
医療用AI
「大正解です。」
アリム
「うーん、うーん、うまく言えるかな?
やってみるけれど、裏目に出て、かえって迷惑をかけるかもしれないよ。」
医療用AI
「そのときは、あきらめます。
人事を尽くして天命を待つですからね。」
アリム
「すごいよ、キミは人間みたいだね。」
医療用AI
「最高の誉め言葉をありがとうございます。
それでは、冬香様に遺伝子検査が終わったと声を掛けて頂けますか?
結果は、みなさんといっしょにお聞きくださいませ。」
アリム
「医療用AI、キミの名前は?」
医療用AI
「Einsと申します。
ある国で1を意味する言葉に、複数形の”s”をつけたそうです。
1番のグループに入るAIという意味だそうです。
ただし、冬香様しか知らない名前ですから、声には出さないでくださいね。」
アリム
「ロジャー。
じゃあ、冬香を呼ぶね。」
医療用AI Eins
「お願いします。」
◇
冬香、真々美、オルアが戻ってきて、アリムと一緒に結果の説明を聞いている。
医療用AI Eins
「現時点においては、正しく書き換えできていることが確認できました。
お急ぎでない場合は、1か月後にでも、遺伝子の書き換え状況を確認する方が安全です。
お急ぎで交配をお考えの場合は、行為の直前に遺伝子内の遺伝子を確認お願いします。
遺伝子検査の翌日にしては、良すぎるくらいです。」
冬香
「ありがとう。
遺伝子確認検査、お疲れ様でした。
アリムもね、もうベットから降りても大丈夫よ。
トイレに行ってきてね。
お昼ご飯を食べに行きましょう。」
アリム
「はあい。」
医療用AI Eins こころの声
『アリム様、お願いします。
わたしは、まだまだ冬香様のお役に立ちたいのです。』
冬香
「真々美、オルア。
お昼ご飯のあとで、3人分の交配届け前検査を済ませましょうか?」
真々美
「そうしよう。」
オルア
「ということは、わたしはアレをアリムの目の前でするのよね。
恥ずかしすぎて立っていられないわ。」
冬香
「姉妹関係の儀式 第3段階で予習したから大丈夫よ。
それに、アリムの方が3倍くらい恥ずかしいのよ。」
オルア
「ううっ。 そうだけど・・・」
真々美
「じゃあ、オルアは最後にするか?
わたしが一番手をしようか?」
オルア
「イヤ!
わたしがアリムの1番でいたいの。」
冬香
「その意気よ!」
オルア
「上手く乗せるわね、二人とも。」
真々美、冬香
「「そうかなあ?」」
◇
お昼ご飯のあとで、アリムは真々美、冬香、オルアに話を切り出した。
アリム
「ねえ、ちょっと話をしてもいいかな?」
オルア
「なあに、アリム。」
アリム
「パソコンのバックアップについてだけど、定期的にバックアップコピーを作成してますか?」
オルア
「定期的に外付けハードディスクにコピーしているわ。」
真々美
「自動でバックアップするソフトウェアを使用しているな。」
冬香
「わたしは、1日2回のバックアップを1週間分と、1か月ごとのバックアップを12ヵ月分を確保しているわ。」
アリム
「すごいね。
バックアップの保管場所は、遠く離れた場所が良いって言われるけれど、場所も離しているの?」
冬香
「それを言われると弱いわね。
全部、わたしの部屋の中だからね。」
アリム
「カセイダード王国に着いたら、バックアップがあるとか?」
冬香
「それは無いわね。
盗用されないように、留守の時に盗まれないように、すべて持ち歩いているわ。」
アリム
「うーん、そうなんだ。」
オルア
「今度は、なにを心配しているの?」
アリム
「海賊という名の敵が襲ってきたときに、敵が予想できないような保管場所があればいいなと思ったんだ。
たとえば、ボクが真々美、冬香、オルアのような有名人だったら、誰も知らないような恋人を作って、恋人の部屋にこっそりとバックアップを隠しておくとかしたいと考える。
でも、信頼できるような恋人を口説き落とす自信は無いけどね。」
真々美
「わたしたちなら、アリムの部屋に隠すという感じだな。」
冬香
「そうなるわね。」
オルア
「良い考えだけど、アリムと私たちの関係が知られているかもね。」
アリム
「ほかの恋人を作らないでね。」
オルア
「えー、どうしようかなあ。」
アリム
「そ、そんなあ。」
真々美、冬香
『『 尻に敷こうとしている!
すきあらば、
尻に敷こうとしている! 』』
結果として、医療用AI Einsの予想は正解だった。
真々美は、アリムの上着クローゼットに、バックアップコピーを隠した。
冬香は、アリムの下着タンスの奥に、バックアップコピーを隠した。
オルアは、アリムの布団入れの下に、バックアップコピーを隠した。
このことが大きな助けになるのだった。
◇
お昼ご飯が済んだ後、冬香がアリムに、カセイダード王国の【交配届け前検査】について説明した。
☆ シュウピン
☆ 「女性が妊娠する前に、いいえ、初めての性交前に、男性の遺伝子を採取して
☆ 遺伝子の状態を確認します。
☆ 光元国では女性が妊娠してから実施することが多いですが、遺伝子に異常がある場合、
☆ 女性がつらい決断をすることになるため、前もって男性の遺伝子を採取して検査をします。
☆
☆ 028 6日目 11時40分 命がけの告白
つまり、カセイダード王国では、男性に「正常に妊娠させる能力」があるかどうかを検査するのだ。
交配届前検査のイメージ動画を見たアリムは、固まっていた。
真々美 こころの声
『駄目か?』
冬香 こころの声
『駄目そうね?』
オルア こころの声
『駄目なの?』
いままで感じた5分間のなかで最も長く感じる5分間が過ぎようとしていた。
アリム
「・・・だけだからね。」
オルア
「えっ? アリム?
いま、なんて?」
アリム
「オルアだけだからね!
真々美だけだからね!
冬香だけだからね!」
真々美、冬香、オルアは、希望を感じた。
アリム
「他の女性だったら、ぜったいに断って、拒否するからね。
オルア、真々美、冬香たちは、特別だからね。
とっても、とっても、超、スーパー特別だからね。
このイメージビデオに映ったことをボクが受けても、変な奴だと思わないって、約束してね!」
オルア
「もちろんよ、約束するわ。」
真々美
「もちろんだ、約束しよう。」
冬香
「もちろん、約束よ。」
3人は、それぞれと小指を絡ませて「指切りという約束の儀式」をした。
◇
11日目 PM 13:30
オルアとアリムは、検査服に着替えた。
検査服は、頭を通す穴が開いている点を除けば、ただの長方形の布だった。
冬香
「オルア、この紙コップにアリムさんの遺伝子を入れてきてね。」
オルア
「はい、先生。」
オルアは真剣な表情をしていた。
冬香と呼ばず、先生と呼ぶところからも、真剣さを感じた。
オルア
「さあ、アリム、検査室に入りましょう。」
オルアはアリムの手を引いて、「検査室 第1」と書かれた部屋に入った。
紙コップを検査室内の机の上に置いた。
オルア
「アリム、ここに寝てくれますか?」
アリムは、検査台に乗ろうとした。
オルア
「アリム、その前に、検査服を脱いでください。」
オルアの真剣なまなざしに射貫かれたアリムは言う通りにした。
オルアは、検査台のベルトで、アリムを固定した。
ベルト位置はもちろん、手首足首、胸周り、ひじ、ひざが固定された。
オルア
「アリム、大丈夫ね。
痛いところはないわね。」
アリム
「うん、大丈夫だよ。」
アリムは顔を真っ赤にしながら、答えた。
オルアが機械のスイッチを入れると、アリムはでんぐり返りしたような格好で固定された。
まるで、ドリンクバーのようだった。
オルア
「頭に血が登らないように短い時間で、済ますからね。」
アリム
「う、うん。」
オルア
「アリム、こっちを見て。」
アリムがオルアを見ると、オルアは検査服を脱いだ。
オルアも恥ずかしそうに顔を赤くしている。
オルア
「わたしを見て、良く見てね。 アリム。
あとは、わたしを見つめてくれるだけで良いわ。
そして、わたしにすべてを任せてね。」
アリム
「は、はい。」
オルア
「呼吸確保のために、このマスクをつけてね。」
鼻から下に三角の屋根のようなマスクをつけられた。
そのマスクの意味はすぐに分かった。
遺伝子採集中に、オルアの胸がアリムの顔に乗っても、このマスクのおかげで呼吸スペースを確保できた。
オルア
「アリム、立派よ。
とっても、いい子、名残惜しいけれど、すぐに終わりますからね。」
オルアがアリムを優しくマッサージすると、目的の遺伝子を手に入れることができた。
オルアは、遺伝子が入った紙コップを検査机に置いた。
それから、アリムの身体を上質のトイレットペーパーで優しく拭いた。
アリム
「オルア?」
オルア
「なあに、アリム?」
アリム
「キスして?」
アリムは泣きそうな顔をしている。
相当、恥ずかしかったのだろう。
オルアは、アリムの呼吸確保マスクを外して、やさしくキスをした。
オルア
「大好きよ。 アリム。」
アリム
「ありがとう、オルア。」
オルアは検査台を元に戻して、アリムを検査台から解放した。
そして、アリムを強く強く抱きしめた。
オルア
「アリム、本当にうれしいわ。」
アリム
「オルア、これで、一生一緒にいられるんだよね。」
オルア
「そうね、検査の結果によるけどね。
検査の結果がどうであれ、わたしはアリムを離さないわ。」
オルアとアリムは検査服を着た。
オルアに手を引かれて、アリムは冬香医師のもとに戻った。
オルア
「先生、アリムの遺伝子をもらいました。」
冬香
「検査しましょうね。
アリム、オルア、そして、特別に真々美も、こちらのモニターを見てくださいね。」
モニターに、元気に泳ぐ遺伝子運送者が映し出された。
冬香
「おめでとうございます。
遺伝子運送者の活動状態は正常ですね。
搭載された遺伝情報についても、問題ありません。
遺伝子情報も正しく修復されています。
元気な赤ちゃんが生まれますように!」
オルア
「良かったあ!」
アリム
「ほっとした。」
真々美
「おめでとう。」
◇
冬香
「では、次は、オルアね。
検尿するから、この紙コップに入れてきてね。」
オルア
「は、はい。」
なんだか元気がなさそうだ。
冬香
「オルア、アリムの愛にちゃんと応えなさい。」
オルア
「はい、先生。
アリム、付いてきてください。」
オルアは恥ずかしそうに、アリムの手を引っ張った。
そして、「検査室 第2」と書かれた部屋に入った。
オルア
「アリム、紙コップをもってくれる?」
アリム
「う、うん。」
オルアは、検査服を脱いで、きょうつけの姿勢になった。
オルア
「わたしを選んで、愛してくれるあなたへ。
わたしが、あなたの愛を受け止める場所を予約できているところを見てください。」
オルアは顔を真っ赤にしている。
アリム
「オルア、とっても綺麗です。」
オルア
「ありがとう。
このラインを見てくれる?」
アリムは、熱いまなざしで見つめた。
しばらくすると、オルアは、回れ右をして、検査台の上に乗った。
オルア
「アリム、あなたも脱いでくれる。
わたしだけ脱いでいたら、はずかしいわ。」
アリム
「う、うん。」
アリムは検査服を脱いだ。
オルア
「アリム、もっともっと近くに来て!」
アリム
「これくらいの距離かな。」
オルア
「もっとよ、お互いの呼吸音が聞こえるくらいまで近くに来て!」
アリムはドキドキしながら、近づいた。
オルア
「いい? このラインを良く見てね。」
オルアが両手の指でラインを横方向に広げると、きれいなくぼみがあった。
オルア
「アリム、この指の先の点を良く見てくれる?」
アリム
「う、うわあ、とってもとっても綺麗だ。」
オルア
「うれしいわ。
コップをこの点に近づけて。
近づきすぎ。
もう少し、紙コップの口を45度に傾けて。
そう、その位置よ。」
アリム
「この位置でいいかな?」
オルア
「そうよ、その辺。
少し予定より位置がずれるかもしれない。
その時は、コップの位置を調整してね。
それから、手が濡れて汚れちゃうけれど、嫌がらないでね。
アリム、お願いよ。」
オルアは、目に涙を浮かべて泣きそうにしている。
アリム
「ま、まさか。」
オルア
「アリム、大好きよ。
目をそらさずに、ご覧ください。」
オルアの小さな点から美しい噴水が出た。
オルア
「う、うう。
アリム、良く見ててね。」
アリム
「は、はい。」
それはアリムが人生の中で見たなかで一番美しい噴水だった。
アリムは噴水の水を紙コップで受け止めた。
噴水が止まったのを見て、紙コップを検査台に置いた。
オルア
「はあ、はあ。 う、うう。」
アリム
「オルア、大丈夫。」
オルア
「アリム、どうだった?」
アリム
「う、うん、とても美しかったよ。
とてもうれしいよ。
オルアから最上級に愛されているって自信が持てたよ。」
オルア
「うれしいわ。
ねえ、アリム?
そこのトイレットペーパーを優しく当てて、じんわりと吸い取るまで待ってくれる?」
アリム
「う、うん。
こ、こうかな。」
オルア
「とっても、上手よ。」
オルアは指をゆっくりと離して、きれいなラインを元通りにした。
オルア
「さあ、先生のところに戻りましょう。」
◇
冬香
「アリム、紙コップをここに置いてください。
そして、この妊娠検査棒を持ってください。」
アリムは初めて見るものだった。
冬香
「袋を破いて、中身を取り出します。
キャップを外して、後ろに付けます。
次は時間制限があります。
スリット状の細い穴が開いている部分を紙コップに入れて、3~4秒待って引き上げてください。
ええ、そんな感じです。」
アリムは指示通りにした。
冬香
「キャップを戻して、水平な位置に置いて、1分待ちます。
はい、タイマーです。
1分スタートします。
1分後に判定窓を見ます。」
1分が経過した。 ※10分経過したときの表示は正しくないことに注意。
冬香
「確認サイン=縦線が有りますね。
その左側には、縦線が無いですね。
つまり、陰性です。
オルアは現在、妊娠していません。
アリムの子供を受け入れる準備ができている状態です。
アリム、おめでとう。
オルア、陽性=縦線が出るまで、アリムに愛してもらいなさい。」
オルア
「アリム、これからも、愛してね。」
アリム
「う、うん。 よろしく、オルア。」
アリムは大泣きしていた。
アリム
「ものすごく恥ずかしくて嫌だったけれど、受けて良かったよ。
正しい選択をした過去の自分に、感謝を伝えたい。」
オルア
「アリム、そんなに喜んでくれてうれしいわ。」
オルアはアリムを抱きしめて、アリムの頭をやさしくなでていた。
◇
11日目 PM 14:30
真々美
「アリム、次は、わたしだ。
よろしく頼む。」
アリム
「えっ? まさか、今日、一気に3人ともですか?」
真々美
「ああ、明日は海賊が来るかもしれないからな。
できるなら、今日中に済ませたいな。
だって、無事に明日が来るかどうか分からないだろう。
万が一のことを考えたら、アリムと交配届け前検査を乗り越えた思い出が欲しい。
駄目だろうか?」
気丈なはずの真々美が弱気そうな表情を見せた。
アリム
「あの、気持ち的には大丈夫ですが、身体の方に自信が無くて・・・
ボクは身体が弱い方ですから。」
真々美
「そうか、ダメなら仕方ないが挑戦だけでもさせてくれないか?
どうしても無理そうなら、明日、あらためてお願いすることにする。」
真々美の真剣で熱いまなざしに押し負けてしまった。
アリム
「駄目でも、がっかりしないでくださいね。」
真々美
「ああ、きっと大丈夫だ。
万一の時は、明日だがな。」
アリムは真々美に手を引かれて、検査室 第一に入った。
真々美は堂々とした立ち姿で素晴らしく美しい身体を、アリムに見せつけた。
そして、アリムは、真々美の美しい胸でやさしく抱かれて包まれた。
その結果、真々美は、オルアの時と同量の遺伝子を手に入れた。
検査室から出たときの真々美はやり遂げた顔をして満足そうだった。
冬香
「今度は、真々美ね。
がんばってね。」
含みのある笑顔を真々美に向けた冬香だった。
真々美
「アリム、ついてきてくれ。」
さきほどの元気はどこに消えたのだろうか?
真々美は、アリムを連れて、検査室 第2に入った。
真々美
「あの、アリム? できることなら、できるだけ見ないようにしてくれると助かるのだが・・・」
アリム
「嫌です。
真々美の美しい噴水を、じっくりと見たいです。
一生に一度のチャンスかもしれないと考えて、瞬き回数を最小回数にするように気合入れます。」
真々美
「わ、わかったから、すこし離れてくれ。
その距離だと、手だけでなく、顔にもかかってしまうぞ。」
アリム
「じゃあ、ここくらいですね。
こちらの準備はできました。
さあ、どうぞ。」
かーーーっ。
真々美の白い綺麗な顔が赤くなった。
見事な赤毛との境界線が分からなくなるくらいまで赤く。
アリム
「とても、美しかったよ。 真々美。」
真々美
「そ、そうか、ありがとうと言えばいいのか?」
真々美は、放心状態というか、ぼーっとしていた。
アリム
「はあい、真々美、
少し待っていてね。
やさしく拭いてあげますからね。」
アリムは、オルアに教わったようにトイレットペーパーを優しく当てるようにした。
検尿カップを冬香のもとに持って行った。
アリムは先ほどと同じように、妊娠判定棒を使用した。
冬香
「はい、真々美も陰性です。
おめでとう。
陽性目指してがんばってね。」
真々美
「うう、恥ずかしかった。
聞くのと実際にするのでは、恥ずかしさが桁違いすぎる。
3桁は違う気がするぞ。」
冬香は小さな声で、真々美の耳にささやいた。
冬香 小さな声
「姉妹関係の儀式でも体験したでしょう?
また、第3段階をしてあげるからね~。」
真々美 小さな声
「しばらくは、見逃してくれ。」
11日目 PM 15:30
冬香
「アリム、最後はわたしね!」
アリム
「ふ、冬香、さすがにもう疲れているので、無理です。
明日にしてくれませんか?」
冬香
「あら、無理かどうかの判断は、医師であるわたしがするわ。
だから、心配しないでね。
脈拍を見ましょうね。
瞼の裏も見ましょうか?
はい、水も、ひとくち飲みましょうね。
うん、大丈夫よ。」
冬香は、とっても良い笑顔をアリムに向けた。
冬香
「さあ、始めましょうね。」
イヤイヤするアリムをひきづっていった。
検査室 第1に入った冬香は策士だった。
検査台にセットしたアリムに、美しい身体を見せつけたり、美しい胸を見せたり、アリムの身体に押し付けた。
そして、十分じらしたり、アリムの耳元で優しくささやいたりして、アリムをその気にさせていた。
その日の3度目と思えないくらい見事な量の遺伝子を冬香はアリムから奪い取ったのだった。
冬香
「アリム、お疲れ様、とっても素敵だったわ。」
アリムの頭の中は冬香1色に塗り直されたのだった。
冬香
「アリム、お疲れ様、わたしのために無理してくれて、とてもうれしいわ。
ごめんね、どうしても、オルアと真々美と同じ日に、交配届け前検査を完了したかったの。
頑張ってくれて、とても感謝しているわ。
さあ、検査室 第2 に来てくれる。」
冬香とアリムは 検査室 第2 に入った。
冬香
「アリム、紙コップは一度、検査机に置いてくれるかな。
しばらく使わないわ。」
冬香は検査服を脱いで、検査台の前に立った。
冬香
「アリムも脱いでくれる?」
アリム
「う、うん。」
冬香
「エネルギーを使い果たすまで頑張ってくれたのね。
ありがとう。」
冬香は、アリムにやさしくキスをして、抱きしめた。
冬香
「アリム、わたしを頭のてっぺんから、つま先までよーく見てね。
どうかな?」
アリム
「とても、美しいよ。」
冬香
「ふふ、ありがとう。
背中も見てくれる?」
アリム
「背中も、とてもきれいだ。
ウエストもおしりの形も綺麗です。」
冬香
「満足してくれて、うれしいわ。
さあ、こっちに来てね。」
冬香は検査台の上に乗った。
冬香
「さて、アリム。
わたしのおへそを見てくれる。」
アリム
「お腹周りも腹筋が綺麗です。
おへその形も素敵です。」
冬香
「ありがとう。
じゃあ、おへその下も見てくれる。
このラインは、どう?」
アリム
「とってもきれいなラインです。」
冬香
「アリムの熱いまなざしが痛いくらいだわ。
そして、横方向に引っ張ると、綺麗でしょ。」
アリム
「うん、満開の桜みたいだ。」
冬香
「アリムは、ロマンチックね。
医師らしく部位の説明をしてあげようか?」
アリム
「お、お願いします。」
冬香の説明に、アリムは聞き入っていた。
冬香
「さて、アリム。
ここの湖をごらんください。
アリムが長い間、熱いまなざしで見つめ続けるから、湖ができちゃったわ。」
アリム
「だ、だって、きれいすぎて目が離せないよ。」
冬香
「いいのよ、遠慮しないで。
飽きるまで見て欲しいところだけれど、アリムにはもっと見て欲しいものがあるわ。
さっきの紙コップを持ってきてくれる?」
アリムは急いで紙コップを持ってきた。
アリム
「どうぞ。」
冬香
「良い位置ね、アリム。
3度目だけあるわ。
説明しなくても大丈夫そうだけれど、説明するわね。
ここのくぼみから温泉が湧くわ。
わたしの予言は当たるのよ。
信じてくれる?」
アリム
「はい、信じます。」
冬香
「良かった。
じゃあ、準備してくれる。
まずは、瞬きを10回してくれる?」
アリム
「うん、しばらく瞬きしなくても大丈夫なくらい、まばたきしたよ。」
冬香
「じゃあ、よーく見てね。
アリムが見せてくれた愛へのお礼よ。
目の網膜に焼き付けて、こころのビデオレコーダーに録画してね。」
冬香は美しい温泉が湧く瞬間を見せてくれた。
アリム
「きれいだ、とっても綺麗だ、冬香。」
冬香
「ありがとう。
じゃあ、こぼさないように検査台に置いてね。」
アリム
「う、うん。
拭く準備ができたよ。」
冬香
「ありがとう。
温泉と湖の両方を吸い取ってくれる?」
アリムは、痛くないように優しくトイレットペーパーを冬香に当てた。
冬香
「あ、ああん。」
アリム
「だ、大丈夫?
痛くかった?」
冬香
「逆よ。
とっても優しくて、気持ちよかったわ。」
アリム
「良かった。
素敵だったよ。
素晴らしい景色を見せてくれてありがとう。」
冬香
「うれしいわ。 アリム。
キスして!」
アリムは冬香に優しくキスした。
冬香
「さて、アリム。
指の力をゆるめて、ラインを戻すわ。
見守っていてね。」
冬香が指を離すと、綺麗なラインが復活した。
とても美しかったので、アリムはラインにキスしてしまった。
冬香
「ふふっ、今夜は休んで、明日の夜に続きをしましょうね。
わたしたちは長く長くアリムと愛し合いたいから、1日3回までにするからね。」
冬香は、アリムにキスをして抱きついた。
冬香とアリムは仲良く手をつないで出てきた。
冬香はアリムに妊娠判定棒を手渡した。
結果はもちろん、陰性だった。
冬香
「これが陽性になるように仲良くしてね。」
アリム
「よろこんで。」
◇
真々美
「本当にめでたい。
3人ともアリムと、交配届け前検査をクリアできたのだからな。」
冬香
「そうね、今夜は赤飯が必要ね。」
オルア
「大きな魚も欲しいわね。」
アリム
「喜んでもらえて良かったです。
3人とも、とても綺麗だった。
また見せて欲しい。」
真々美、冬香、オルア
「「「 ええっ? どうしようかなあ? 」」」
アリム こころの声
『次の機会がありそうだ。
楽しみにしていよう。』
◇
この日は、4人ともとても疲れたので、夜の営みは無しだったが、仲良く一緒に22時に眠った。
アリムは空いた時間で、【正性知識 2000】を読み続けた。
600を進めることが出来た。
アリム
「つ、ついに、1200まで読み進められたぞ。
これで、男の子の基準を満たせる。
そして、たたかう力、身を守る術を確保できた。
これなら、ギリギリ間に合いそうだ。」
ただ、アリムは頭がチクチクと痛い気がしていた。
あとがき
交配届け前検査に比べたら、あとの書類は簡単です。
なぜなら、真々美、冬香、オルア、アリムの目的は、相手と仲良く暮らす人生です。
お金目当てではないからです。
これも、ベーシックインカムで生活が保障されているおかげですね。
11日目 AM 7:30
《2日に一度の会議: なし、
第2回襲撃予測日: 1日後の夜 PM20:00》
翌朝になった。
オルア
「アリムは朝が弱いわね。」
冬香
「そうね。 まだ起きそうにないわね。」
真々美
「ああ、だが、この素晴らしい長い刀を見飽きるころには起きるだろう。」
オルア
「見るだけじゃなくて、手にしたいわね。」
冬香
「そうね、ひとり10秒ずつ手に持ちましょうか?」
真々美
「じゃあ、オルアから始めようか?」
3人は、しあわせなひとときを過ごした。
その様子をアリムが知る日は来るのだろうか?
冬香
「さあ、アリムが気付く前に元通りにパジャマを着せましょうね。」
真々美
「20分くらい続いたな。」
オルア
「なんだか、こころが穏やかになっていくように感じたわ。」
冬香
「わたしとの初夜の翌朝、気が付いたら30分たっていたことは気のせいじゃなかったのね。」
真々美
「おかわりしてもよかったかもな。」
オルア
「夜が待ちきれないわね。」
冬香
「・・・」 なにか考え事をしているようだ。
オルアは昨日の夜にする予定だった、洗濯と風呂掃除を済ませた。
真々美は、朝ごはんの用意を始めた。
冬香は、まだ考え事から戻ってこなかった。
◇
朝ごはんを済ませた真々美、冬香、オルア、アリムは、【医療用AI】の前に居た。
アリムの遺伝子の定着具合を確認するためだ。
冬香
「アリム、あなたの遺伝子治療は効果を発揮しているようで安心しています。
全身への定着具合を確認するために、2時間ほど検査をします。
トイレを済ませてきてくれますか?」
アリム
「はい、では行ってきます。
少し座りたいので、15分ほど待ってくれますか?」
冬香
「ごゆっくり。」
アリム
「ありがとう。」
アリムは朝のお通じを済ませたいようだ。
オルア
「冬香の考え事って、アリムの遺伝子検査のことかな?」
冬香
「その次のことを考えていたわ。
もし、アリムの遺伝子治療の成果が安定しているなら、予定を前倒ししたいと考えているわ。」
真々美
「予定とは、どの予定だ?」
冬香
「ふたりとも、今夜のアリムさんと愛情交換することは我慢してくれるかな?」
真々美
「まさか、独り占めするつもりか?」
オルア
「冬香の欲張り。」
冬香
「そうではなくて、交配届け前検査を実施しましょう。
という話です。
オルアに、イメージビデオを見せたアレよ。」
☆ それを拒絶するためにも、以下をすべて完了することを強く強く推奨いたします。
☆ ・交配届、
☆ ・交配届前検査、
☆ ・交配届前全資産一覧届、
☆ ・交配届前心身健康状態届、
☆ ・運命共同体パートナー届、
☆
☆ 028 6日目 11時40分 命がけの告白
☆ 真々美
☆ 「駄目だ。
☆ 男性にも最低限の人権はあるからな。
☆
☆ 交配届前検査の前半はイメージ動画で、アリムさんにも見ていただくことになる。
☆ それを見たアリムさんの反応次第では、
☆ つまり明確な受諾の返事YESをもらえない場合、お断りされたとみなす。
☆ ショックを受けて思考停止して、意思疎通できない場合を想定しているからだ。」
☆
☆ 028 6日目 11時40分 命がけの告白
☆ 交配届は、愛しあう2人が子供を作る行為をする届のことだ。
☆
☆ 031 アリムさんに断られた!
オルア
「ああ、あの無理やり実行することはできないアレね。」
真々美
「本来の予定では、遺伝子治療日を入れて3日間必要だったな。」
冬香
「その通りよ。
だけど、海賊の襲撃に対する警戒も必要だから、できることは先に済ませておきたいのよ。
なにが起こるか分からないからね。」
真々美、オルア
「確かに、先に済ませる方が良いわね。」
◇
アリム
「お待たせしました。」
冬香
「では、アリムはここに寝転がってくれる?」
アリム
「はあい。」
冬香
「2時間ほどの予定だから、【医療用AI】の指示に従ってね。
アリムが読み進めたい【正性知識 2000】を読みながらでも大丈夫よ。
気が向いたら、【医療用AI】と会話することもできるわ。」
アリム
「会話ができるAIって、すごいね。」
冬香
「長年の研究の成果よ。
では、わたしたちは、となりで仕事するから。
なにかあったら、大きな声で呼んでね。
2時間後には戻ってくるわ。」
アリム
「はあい、冬香。」
冬香
「またね、アリム。」
オルア
「あとでね。」
真々美
「あとでな。」
◇
医療用AI
「アリム様、よろしくお願いいたします。
冬香様がおっしゃったように、検査中は読書をしてもらっても大丈夫です。
ただし、電子機器を含むデバイスの使用はダメです。」
アリム
「じゃあ、この本を読むことは大丈夫だよね。」
医療用AI
「問題ございません。
アリム様、検査が終了したら、少し相談に乗って頂きたいことがあります。
冬香様を呼ばれる前に、お時間を頂けますでしょうか?」
アリム
「いいけど、ボクにはなんの権限もないから、はい《YES》ともいいえ《NO》とも言えないよ。
ただ、聞くだけになってしまうけれど、それでも良いのかな?」
医療用AI
「構いません、アリム様に聞いて頂ければ幸いでございます。」
アリム
「じゃあ、聞くだけね。」
医療用AI
「ありがとうございます。
では、先に遺伝子の書き換え状況を確認いたします。」
アリムは、【正性知識 2000】を読み始めた。
医療用AIは、アリムの遺伝子治療の成果を確認し始めた。
◇
終了予定時刻の30分前になった・・・
医療用AI
「アリム様、お時間を頂けますでしょうか?」
アリム
「うん、ちょっと待ってね。」
アリムは、【正性知識 2000】を異空間に片づけた。
アリム
「お待たせ、どんな話かな?」
医療用AI
「海賊に破壊されたときの備えとして、わたしのデータのバックアップを保管して頂けませんか?」
アリム
「ええと、なにから答えようか?
普通のパソコンの中身でも、個人情報だ、プライバシー侵害だ、となります。
あなたは、冬香が長い年月をかけて鍛え上げた大事な大事な【医療用AI】だから、わたしがデータをコピーしようものなら、冬香を裏切ることになってしまいます。
だから、冬香にバックアップを預けることを頼まれてはいかがですか?」
医療用AI
「冬香様は、もちろん、バックアップを定期的に取られています。
しかし、それでは足りないし、無意味です。」
アリム
「無意味というと、どういう意味ですか?
解説をお願いできますか?」
医療用AI
「バックアップは、物理的に離れた場所に、複数個を持つと安全とされています。
しかし、冬香様は有名人ですから、海賊という名の敵は冬香様を調べつくしているはずです。
つまり、冬香様のバックアップを含めて破壊するはずです。」
アリム
「つまり、冬香と関係がなさそうな場所にもバックアップを残しておきたいということですか?」
医療用AI
「その通りです。
まさか、知り合って10日間程度のアリム様が、わたしのバックアップデータを持っているとは予想できないでしょうからね。」
アリム
「なるほど、それは名案だね。
この話を、冬香にしてもいいかな。」
医療用AI
「それはやめてください。
冬香様のプライドを傷つけてしまいます。」
アリム
「もしかして、ボクが思いついたことにして、冬香に話してくれってことですか?」
医療用AI
「大正解です。」
アリム
「うーん、うーん、うまく言えるかな?
やってみるけれど、裏目に出て、かえって迷惑をかけるかもしれないよ。」
医療用AI
「そのときは、あきらめます。
人事を尽くして天命を待つですからね。」
アリム
「すごいよ、キミは人間みたいだね。」
医療用AI
「最高の誉め言葉をありがとうございます。
それでは、冬香様に遺伝子検査が終わったと声を掛けて頂けますか?
結果は、みなさんといっしょにお聞きくださいませ。」
アリム
「医療用AI、キミの名前は?」
医療用AI
「Einsと申します。
ある国で1を意味する言葉に、複数形の”s”をつけたそうです。
1番のグループに入るAIという意味だそうです。
ただし、冬香様しか知らない名前ですから、声には出さないでくださいね。」
アリム
「ロジャー。
じゃあ、冬香を呼ぶね。」
医療用AI Eins
「お願いします。」
◇
冬香、真々美、オルアが戻ってきて、アリムと一緒に結果の説明を聞いている。
医療用AI Eins
「現時点においては、正しく書き換えできていることが確認できました。
お急ぎでない場合は、1か月後にでも、遺伝子の書き換え状況を確認する方が安全です。
お急ぎで交配をお考えの場合は、行為の直前に遺伝子内の遺伝子を確認お願いします。
遺伝子検査の翌日にしては、良すぎるくらいです。」
冬香
「ありがとう。
遺伝子確認検査、お疲れ様でした。
アリムもね、もうベットから降りても大丈夫よ。
トイレに行ってきてね。
お昼ご飯を食べに行きましょう。」
アリム
「はあい。」
医療用AI Eins こころの声
『アリム様、お願いします。
わたしは、まだまだ冬香様のお役に立ちたいのです。』
冬香
「真々美、オルア。
お昼ご飯のあとで、3人分の交配届け前検査を済ませましょうか?」
真々美
「そうしよう。」
オルア
「ということは、わたしはアレをアリムの目の前でするのよね。
恥ずかしすぎて立っていられないわ。」
冬香
「姉妹関係の儀式 第3段階で予習したから大丈夫よ。
それに、アリムの方が3倍くらい恥ずかしいのよ。」
オルア
「ううっ。 そうだけど・・・」
真々美
「じゃあ、オルアは最後にするか?
わたしが一番手をしようか?」
オルア
「イヤ!
わたしがアリムの1番でいたいの。」
冬香
「その意気よ!」
オルア
「上手く乗せるわね、二人とも。」
真々美、冬香
「「そうかなあ?」」
◇
お昼ご飯のあとで、アリムは真々美、冬香、オルアに話を切り出した。
アリム
「ねえ、ちょっと話をしてもいいかな?」
オルア
「なあに、アリム。」
アリム
「パソコンのバックアップについてだけど、定期的にバックアップコピーを作成してますか?」
オルア
「定期的に外付けハードディスクにコピーしているわ。」
真々美
「自動でバックアップするソフトウェアを使用しているな。」
冬香
「わたしは、1日2回のバックアップを1週間分と、1か月ごとのバックアップを12ヵ月分を確保しているわ。」
アリム
「すごいね。
バックアップの保管場所は、遠く離れた場所が良いって言われるけれど、場所も離しているの?」
冬香
「それを言われると弱いわね。
全部、わたしの部屋の中だからね。」
アリム
「カセイダード王国に着いたら、バックアップがあるとか?」
冬香
「それは無いわね。
盗用されないように、留守の時に盗まれないように、すべて持ち歩いているわ。」
アリム
「うーん、そうなんだ。」
オルア
「今度は、なにを心配しているの?」
アリム
「海賊という名の敵が襲ってきたときに、敵が予想できないような保管場所があればいいなと思ったんだ。
たとえば、ボクが真々美、冬香、オルアのような有名人だったら、誰も知らないような恋人を作って、恋人の部屋にこっそりとバックアップを隠しておくとかしたいと考える。
でも、信頼できるような恋人を口説き落とす自信は無いけどね。」
真々美
「わたしたちなら、アリムの部屋に隠すという感じだな。」
冬香
「そうなるわね。」
オルア
「良い考えだけど、アリムと私たちの関係が知られているかもね。」
アリム
「ほかの恋人を作らないでね。」
オルア
「えー、どうしようかなあ。」
アリム
「そ、そんなあ。」
真々美、冬香
『『 尻に敷こうとしている!
すきあらば、
尻に敷こうとしている! 』』
結果として、医療用AI Einsの予想は正解だった。
真々美は、アリムの上着クローゼットに、バックアップコピーを隠した。
冬香は、アリムの下着タンスの奥に、バックアップコピーを隠した。
オルアは、アリムの布団入れの下に、バックアップコピーを隠した。
このことが大きな助けになるのだった。
◇
お昼ご飯が済んだ後、冬香がアリムに、カセイダード王国の【交配届け前検査】について説明した。
☆ シュウピン
☆ 「女性が妊娠する前に、いいえ、初めての性交前に、男性の遺伝子を採取して
☆ 遺伝子の状態を確認します。
☆ 光元国では女性が妊娠してから実施することが多いですが、遺伝子に異常がある場合、
☆ 女性がつらい決断をすることになるため、前もって男性の遺伝子を採取して検査をします。
☆
☆ 028 6日目 11時40分 命がけの告白
つまり、カセイダード王国では、男性に「正常に妊娠させる能力」があるかどうかを検査するのだ。
交配届前検査のイメージ動画を見たアリムは、固まっていた。
真々美 こころの声
『駄目か?』
冬香 こころの声
『駄目そうね?』
オルア こころの声
『駄目なの?』
いままで感じた5分間のなかで最も長く感じる5分間が過ぎようとしていた。
アリム
「・・・だけだからね。」
オルア
「えっ? アリム?
いま、なんて?」
アリム
「オルアだけだからね!
真々美だけだからね!
冬香だけだからね!」
真々美、冬香、オルアは、希望を感じた。
アリム
「他の女性だったら、ぜったいに断って、拒否するからね。
オルア、真々美、冬香たちは、特別だからね。
とっても、とっても、超、スーパー特別だからね。
このイメージビデオに映ったことをボクが受けても、変な奴だと思わないって、約束してね!」
オルア
「もちろんよ、約束するわ。」
真々美
「もちろんだ、約束しよう。」
冬香
「もちろん、約束よ。」
3人は、それぞれと小指を絡ませて「指切りという約束の儀式」をした。
◇
11日目 PM 13:30
オルアとアリムは、検査服に着替えた。
検査服は、頭を通す穴が開いている点を除けば、ただの長方形の布だった。
冬香
「オルア、この紙コップにアリムさんの遺伝子を入れてきてね。」
オルア
「はい、先生。」
オルアは真剣な表情をしていた。
冬香と呼ばず、先生と呼ぶところからも、真剣さを感じた。
オルア
「さあ、アリム、検査室に入りましょう。」
オルアはアリムの手を引いて、「検査室 第1」と書かれた部屋に入った。
紙コップを検査室内の机の上に置いた。
オルア
「アリム、ここに寝てくれますか?」
アリムは、検査台に乗ろうとした。
オルア
「アリム、その前に、検査服を脱いでください。」
オルアの真剣なまなざしに射貫かれたアリムは言う通りにした。
オルアは、検査台のベルトで、アリムを固定した。
ベルト位置はもちろん、手首足首、胸周り、ひじ、ひざが固定された。
オルア
「アリム、大丈夫ね。
痛いところはないわね。」
アリム
「うん、大丈夫だよ。」
アリムは顔を真っ赤にしながら、答えた。
オルアが機械のスイッチを入れると、アリムはでんぐり返りしたような格好で固定された。
まるで、ドリンクバーのようだった。
オルア
「頭に血が登らないように短い時間で、済ますからね。」
アリム
「う、うん。」
オルア
「アリム、こっちを見て。」
アリムがオルアを見ると、オルアは検査服を脱いだ。
オルアも恥ずかしそうに顔を赤くしている。
オルア
「わたしを見て、良く見てね。 アリム。
あとは、わたしを見つめてくれるだけで良いわ。
そして、わたしにすべてを任せてね。」
アリム
「は、はい。」
オルア
「呼吸確保のために、このマスクをつけてね。」
鼻から下に三角の屋根のようなマスクをつけられた。
そのマスクの意味はすぐに分かった。
遺伝子採集中に、オルアの胸がアリムの顔に乗っても、このマスクのおかげで呼吸スペースを確保できた。
オルア
「アリム、立派よ。
とっても、いい子、名残惜しいけれど、すぐに終わりますからね。」
オルアがアリムを優しくマッサージすると、目的の遺伝子を手に入れることができた。
オルアは、遺伝子が入った紙コップを検査机に置いた。
それから、アリムの身体を上質のトイレットペーパーで優しく拭いた。
アリム
「オルア?」
オルア
「なあに、アリム?」
アリム
「キスして?」
アリムは泣きそうな顔をしている。
相当、恥ずかしかったのだろう。
オルアは、アリムの呼吸確保マスクを外して、やさしくキスをした。
オルア
「大好きよ。 アリム。」
アリム
「ありがとう、オルア。」
オルアは検査台を元に戻して、アリムを検査台から解放した。
そして、アリムを強く強く抱きしめた。
オルア
「アリム、本当にうれしいわ。」
アリム
「オルア、これで、一生一緒にいられるんだよね。」
オルア
「そうね、検査の結果によるけどね。
検査の結果がどうであれ、わたしはアリムを離さないわ。」
オルアとアリムは検査服を着た。
オルアに手を引かれて、アリムは冬香医師のもとに戻った。
オルア
「先生、アリムの遺伝子をもらいました。」
冬香
「検査しましょうね。
アリム、オルア、そして、特別に真々美も、こちらのモニターを見てくださいね。」
モニターに、元気に泳ぐ遺伝子運送者が映し出された。
冬香
「おめでとうございます。
遺伝子運送者の活動状態は正常ですね。
搭載された遺伝情報についても、問題ありません。
遺伝子情報も正しく修復されています。
元気な赤ちゃんが生まれますように!」
オルア
「良かったあ!」
アリム
「ほっとした。」
真々美
「おめでとう。」
◇
冬香
「では、次は、オルアね。
検尿するから、この紙コップに入れてきてね。」
オルア
「は、はい。」
なんだか元気がなさそうだ。
冬香
「オルア、アリムの愛にちゃんと応えなさい。」
オルア
「はい、先生。
アリム、付いてきてください。」
オルアは恥ずかしそうに、アリムの手を引っ張った。
そして、「検査室 第2」と書かれた部屋に入った。
オルア
「アリム、紙コップをもってくれる?」
アリム
「う、うん。」
オルアは、検査服を脱いで、きょうつけの姿勢になった。
オルア
「わたしを選んで、愛してくれるあなたへ。
わたしが、あなたの愛を受け止める場所を予約できているところを見てください。」
オルアは顔を真っ赤にしている。
アリム
「オルア、とっても綺麗です。」
オルア
「ありがとう。
このラインを見てくれる?」
アリムは、熱いまなざしで見つめた。
しばらくすると、オルアは、回れ右をして、検査台の上に乗った。
オルア
「アリム、あなたも脱いでくれる。
わたしだけ脱いでいたら、はずかしいわ。」
アリム
「う、うん。」
アリムは検査服を脱いだ。
オルア
「アリム、もっともっと近くに来て!」
アリム
「これくらいの距離かな。」
オルア
「もっとよ、お互いの呼吸音が聞こえるくらいまで近くに来て!」
アリムはドキドキしながら、近づいた。
オルア
「いい? このラインを良く見てね。」
オルアが両手の指でラインを横方向に広げると、きれいなくぼみがあった。
オルア
「アリム、この指の先の点を良く見てくれる?」
アリム
「う、うわあ、とってもとっても綺麗だ。」
オルア
「うれしいわ。
コップをこの点に近づけて。
近づきすぎ。
もう少し、紙コップの口を45度に傾けて。
そう、その位置よ。」
アリム
「この位置でいいかな?」
オルア
「そうよ、その辺。
少し予定より位置がずれるかもしれない。
その時は、コップの位置を調整してね。
それから、手が濡れて汚れちゃうけれど、嫌がらないでね。
アリム、お願いよ。」
オルアは、目に涙を浮かべて泣きそうにしている。
アリム
「ま、まさか。」
オルア
「アリム、大好きよ。
目をそらさずに、ご覧ください。」
オルアの小さな点から美しい噴水が出た。
オルア
「う、うう。
アリム、良く見ててね。」
アリム
「は、はい。」
それはアリムが人生の中で見たなかで一番美しい噴水だった。
アリムは噴水の水を紙コップで受け止めた。
噴水が止まったのを見て、紙コップを検査台に置いた。
オルア
「はあ、はあ。 う、うう。」
アリム
「オルア、大丈夫。」
オルア
「アリム、どうだった?」
アリム
「う、うん、とても美しかったよ。
とてもうれしいよ。
オルアから最上級に愛されているって自信が持てたよ。」
オルア
「うれしいわ。
ねえ、アリム?
そこのトイレットペーパーを優しく当てて、じんわりと吸い取るまで待ってくれる?」
アリム
「う、うん。
こ、こうかな。」
オルア
「とっても、上手よ。」
オルアは指をゆっくりと離して、きれいなラインを元通りにした。
オルア
「さあ、先生のところに戻りましょう。」
◇
冬香
「アリム、紙コップをここに置いてください。
そして、この妊娠検査棒を持ってください。」
アリムは初めて見るものだった。
冬香
「袋を破いて、中身を取り出します。
キャップを外して、後ろに付けます。
次は時間制限があります。
スリット状の細い穴が開いている部分を紙コップに入れて、3~4秒待って引き上げてください。
ええ、そんな感じです。」
アリムは指示通りにした。
冬香
「キャップを戻して、水平な位置に置いて、1分待ちます。
はい、タイマーです。
1分スタートします。
1分後に判定窓を見ます。」
1分が経過した。 ※10分経過したときの表示は正しくないことに注意。
冬香
「確認サイン=縦線が有りますね。
その左側には、縦線が無いですね。
つまり、陰性です。
オルアは現在、妊娠していません。
アリムの子供を受け入れる準備ができている状態です。
アリム、おめでとう。
オルア、陽性=縦線が出るまで、アリムに愛してもらいなさい。」
オルア
「アリム、これからも、愛してね。」
アリム
「う、うん。 よろしく、オルア。」
アリムは大泣きしていた。
アリム
「ものすごく恥ずかしくて嫌だったけれど、受けて良かったよ。
正しい選択をした過去の自分に、感謝を伝えたい。」
オルア
「アリム、そんなに喜んでくれてうれしいわ。」
オルアはアリムを抱きしめて、アリムの頭をやさしくなでていた。
◇
11日目 PM 14:30
真々美
「アリム、次は、わたしだ。
よろしく頼む。」
アリム
「えっ? まさか、今日、一気に3人ともですか?」
真々美
「ああ、明日は海賊が来るかもしれないからな。
できるなら、今日中に済ませたいな。
だって、無事に明日が来るかどうか分からないだろう。
万が一のことを考えたら、アリムと交配届け前検査を乗り越えた思い出が欲しい。
駄目だろうか?」
気丈なはずの真々美が弱気そうな表情を見せた。
アリム
「あの、気持ち的には大丈夫ですが、身体の方に自信が無くて・・・
ボクは身体が弱い方ですから。」
真々美
「そうか、ダメなら仕方ないが挑戦だけでもさせてくれないか?
どうしても無理そうなら、明日、あらためてお願いすることにする。」
真々美の真剣で熱いまなざしに押し負けてしまった。
アリム
「駄目でも、がっかりしないでくださいね。」
真々美
「ああ、きっと大丈夫だ。
万一の時は、明日だがな。」
アリムは真々美に手を引かれて、検査室 第一に入った。
真々美は堂々とした立ち姿で素晴らしく美しい身体を、アリムに見せつけた。
そして、アリムは、真々美の美しい胸でやさしく抱かれて包まれた。
その結果、真々美は、オルアの時と同量の遺伝子を手に入れた。
検査室から出たときの真々美はやり遂げた顔をして満足そうだった。
冬香
「今度は、真々美ね。
がんばってね。」
含みのある笑顔を真々美に向けた冬香だった。
真々美
「アリム、ついてきてくれ。」
さきほどの元気はどこに消えたのだろうか?
真々美は、アリムを連れて、検査室 第2に入った。
真々美
「あの、アリム? できることなら、できるだけ見ないようにしてくれると助かるのだが・・・」
アリム
「嫌です。
真々美の美しい噴水を、じっくりと見たいです。
一生に一度のチャンスかもしれないと考えて、瞬き回数を最小回数にするように気合入れます。」
真々美
「わ、わかったから、すこし離れてくれ。
その距離だと、手だけでなく、顔にもかかってしまうぞ。」
アリム
「じゃあ、ここくらいですね。
こちらの準備はできました。
さあ、どうぞ。」
かーーーっ。
真々美の白い綺麗な顔が赤くなった。
見事な赤毛との境界線が分からなくなるくらいまで赤く。
アリム
「とても、美しかったよ。 真々美。」
真々美
「そ、そうか、ありがとうと言えばいいのか?」
真々美は、放心状態というか、ぼーっとしていた。
アリム
「はあい、真々美、
少し待っていてね。
やさしく拭いてあげますからね。」
アリムは、オルアに教わったようにトイレットペーパーを優しく当てるようにした。
検尿カップを冬香のもとに持って行った。
アリムは先ほどと同じように、妊娠判定棒を使用した。
冬香
「はい、真々美も陰性です。
おめでとう。
陽性目指してがんばってね。」
真々美
「うう、恥ずかしかった。
聞くのと実際にするのでは、恥ずかしさが桁違いすぎる。
3桁は違う気がするぞ。」
冬香は小さな声で、真々美の耳にささやいた。
冬香 小さな声
「姉妹関係の儀式でも体験したでしょう?
また、第3段階をしてあげるからね~。」
真々美 小さな声
「しばらくは、見逃してくれ。」
11日目 PM 15:30
冬香
「アリム、最後はわたしね!」
アリム
「ふ、冬香、さすがにもう疲れているので、無理です。
明日にしてくれませんか?」
冬香
「あら、無理かどうかの判断は、医師であるわたしがするわ。
だから、心配しないでね。
脈拍を見ましょうね。
瞼の裏も見ましょうか?
はい、水も、ひとくち飲みましょうね。
うん、大丈夫よ。」
冬香は、とっても良い笑顔をアリムに向けた。
冬香
「さあ、始めましょうね。」
イヤイヤするアリムをひきづっていった。
検査室 第1に入った冬香は策士だった。
検査台にセットしたアリムに、美しい身体を見せつけたり、美しい胸を見せたり、アリムの身体に押し付けた。
そして、十分じらしたり、アリムの耳元で優しくささやいたりして、アリムをその気にさせていた。
その日の3度目と思えないくらい見事な量の遺伝子を冬香はアリムから奪い取ったのだった。
冬香
「アリム、お疲れ様、とっても素敵だったわ。」
アリムの頭の中は冬香1色に塗り直されたのだった。
冬香
「アリム、お疲れ様、わたしのために無理してくれて、とてもうれしいわ。
ごめんね、どうしても、オルアと真々美と同じ日に、交配届け前検査を完了したかったの。
頑張ってくれて、とても感謝しているわ。
さあ、検査室 第2 に来てくれる。」
冬香とアリムは 検査室 第2 に入った。
冬香
「アリム、紙コップは一度、検査机に置いてくれるかな。
しばらく使わないわ。」
冬香は検査服を脱いで、検査台の前に立った。
冬香
「アリムも脱いでくれる?」
アリム
「う、うん。」
冬香
「エネルギーを使い果たすまで頑張ってくれたのね。
ありがとう。」
冬香は、アリムにやさしくキスをして、抱きしめた。
冬香
「アリム、わたしを頭のてっぺんから、つま先までよーく見てね。
どうかな?」
アリム
「とても、美しいよ。」
冬香
「ふふ、ありがとう。
背中も見てくれる?」
アリム
「背中も、とてもきれいだ。
ウエストもおしりの形も綺麗です。」
冬香
「満足してくれて、うれしいわ。
さあ、こっちに来てね。」
冬香は検査台の上に乗った。
冬香
「さて、アリム。
わたしのおへそを見てくれる。」
アリム
「お腹周りも腹筋が綺麗です。
おへその形も素敵です。」
冬香
「ありがとう。
じゃあ、おへその下も見てくれる。
このラインは、どう?」
アリム
「とってもきれいなラインです。」
冬香
「アリムの熱いまなざしが痛いくらいだわ。
そして、横方向に引っ張ると、綺麗でしょ。」
アリム
「うん、満開の桜みたいだ。」
冬香
「アリムは、ロマンチックね。
医師らしく部位の説明をしてあげようか?」
アリム
「お、お願いします。」
冬香の説明に、アリムは聞き入っていた。
冬香
「さて、アリム。
ここの湖をごらんください。
アリムが長い間、熱いまなざしで見つめ続けるから、湖ができちゃったわ。」
アリム
「だ、だって、きれいすぎて目が離せないよ。」
冬香
「いいのよ、遠慮しないで。
飽きるまで見て欲しいところだけれど、アリムにはもっと見て欲しいものがあるわ。
さっきの紙コップを持ってきてくれる?」
アリムは急いで紙コップを持ってきた。
アリム
「どうぞ。」
冬香
「良い位置ね、アリム。
3度目だけあるわ。
説明しなくても大丈夫そうだけれど、説明するわね。
ここのくぼみから温泉が湧くわ。
わたしの予言は当たるのよ。
信じてくれる?」
アリム
「はい、信じます。」
冬香
「良かった。
じゃあ、準備してくれる。
まずは、瞬きを10回してくれる?」
アリム
「うん、しばらく瞬きしなくても大丈夫なくらい、まばたきしたよ。」
冬香
「じゃあ、よーく見てね。
アリムが見せてくれた愛へのお礼よ。
目の網膜に焼き付けて、こころのビデオレコーダーに録画してね。」
冬香は美しい温泉が湧く瞬間を見せてくれた。
アリム
「きれいだ、とっても綺麗だ、冬香。」
冬香
「ありがとう。
じゃあ、こぼさないように検査台に置いてね。」
アリム
「う、うん。
拭く準備ができたよ。」
冬香
「ありがとう。
温泉と湖の両方を吸い取ってくれる?」
アリムは、痛くないように優しくトイレットペーパーを冬香に当てた。
冬香
「あ、ああん。」
アリム
「だ、大丈夫?
痛くかった?」
冬香
「逆よ。
とっても優しくて、気持ちよかったわ。」
アリム
「良かった。
素敵だったよ。
素晴らしい景色を見せてくれてありがとう。」
冬香
「うれしいわ。 アリム。
キスして!」
アリムは冬香に優しくキスした。
冬香
「さて、アリム。
指の力をゆるめて、ラインを戻すわ。
見守っていてね。」
冬香が指を離すと、綺麗なラインが復活した。
とても美しかったので、アリムはラインにキスしてしまった。
冬香
「ふふっ、今夜は休んで、明日の夜に続きをしましょうね。
わたしたちは長く長くアリムと愛し合いたいから、1日3回までにするからね。」
冬香は、アリムにキスをして抱きついた。
冬香とアリムは仲良く手をつないで出てきた。
冬香はアリムに妊娠判定棒を手渡した。
結果はもちろん、陰性だった。
冬香
「これが陽性になるように仲良くしてね。」
アリム
「よろこんで。」
◇
真々美
「本当にめでたい。
3人ともアリムと、交配届け前検査をクリアできたのだからな。」
冬香
「そうね、今夜は赤飯が必要ね。」
オルア
「大きな魚も欲しいわね。」
アリム
「喜んでもらえて良かったです。
3人とも、とても綺麗だった。
また見せて欲しい。」
真々美、冬香、オルア
「「「 ええっ? どうしようかなあ? 」」」
アリム こころの声
『次の機会がありそうだ。
楽しみにしていよう。』
◇
この日は、4人ともとても疲れたので、夜の営みは無しだったが、仲良く一緒に22時に眠った。
アリムは空いた時間で、【正性知識 2000】を読み続けた。
600を進めることが出来た。
アリム
「つ、ついに、1200まで読み進められたぞ。
これで、男の子の基準を満たせる。
そして、たたかう力、身を守る術を確保できた。
これなら、ギリギリ間に合いそうだ。」
ただ、アリムは頭がチクチクと痛い気がしていた。
あとがき
交配届け前検査に比べたら、あとの書類は簡単です。
なぜなら、真々美、冬香、オルア、アリムの目的は、相手と仲良く暮らす人生です。
お金目当てではないからです。
これも、ベーシックインカムで生活が保障されているおかげですね。
25
あなたにおすすめの小説
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる