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それから高嶺と僕は公園であって猫の世話をしてから高嶺の家で過ごすのが定番になっていた。高嶺の家は大体誰もおらず気を使う要素が少なかったからか、最初は申し訳ない気持ちがあったものの徐々に薄れていった。
兄はあの日以来家を空けることが多くなり、僕に暴力を振るう頻度が少なくなった。高嶺と出会って以来うまく行くことが多くなっている気がする。
いつも通り公園に向かう途中に猫探しの張り紙があった。猫を捨てる人もいれば探す人もいる色んな人がいるもんだと考えているとあることを思いついた。
「高嶺、猫を飼ってくれる人探そう」
公園につき猫の世話をしている高嶺に言った。いい提案だと高嶺もすぐ乗ってくれると思った。
「なんで?」
高嶺からの返答は全然違うもので声色も冷たかった。
「だって猫もこんなとこにいるより飼ってくれる人がいたほうが幸せだよ」
「幸斗もこんなとこにいたのに?」
いつもと違う高嶺の返しに詰まってしまった。
「冗談だよ。猫の親探そう」
優しい高嶺の雰囲気に戻り僕の頭を軽く撫でた。変な高嶺の冗談に驚きつつも猫の飼い主探しのポスターを作り街に張り出した。
「猫の親見つかるといいね」
「…うん。そうだね」
高嶺は猫との別れが悲しいのだろうか。やっぱりいつもと少し違うように感じた。
学校の中間考査が終わった日、何やら少しざわついている校門を巻き込まれないように出ようとした時だった。
「幸斗こっち」
ざわついている場所の中心に高嶺がいた。有名私立の制服を着た人が校門にいたらそれはざわつくだろう。中には高嶺のことを市長の息子だって知ってる人もいるだろう。
「なんでいるの?」
慌てて駆け寄り言うとこっちこっちと手を引かれ、運転手がドアを開いて待っている車に乗せられた。
「今日は一緒に打ち上げしよう」
「打ち上げ?」
「そう。幸斗の中間考査終わったからそれの打ち上げ」
テンションの高さについていけずにいると目的地に到着したようで車から降ろされた。目的地はカラオケだった。
「この曲一緒に歌おう」
慣れたように選曲した高嶺にマイクを渡されたが、知らない曲で歌えずただぼーっとしてしまい曲が終わった。
「ごめん、僕は高嶺のを聞いてるね」
高嶺はウキウキで僕を連れてきたようだが、流行りの曲も知らなければカラオケなんて来たこともない僕はどうすることもできなかった。せっかく連れてきてくれた高嶺への申し訳なさと世間とのズレに逃げ出したくなっていると終了の時間になったようだった。
カラオケを出て車に乗りいつもの公園で猫の世話をした。
「楽しくなかったよね?」
高嶺が心配そうにこちらを覗き込む。
「いや、僕が世間とズレてるから。ごめん」
高嶺に気を遣わせて辛かった。
「最後に挽回のチャンスお願い」
「無理しなくていいよ」
「無理なんかじゃないから」
猫の世話を一通り済ませると再び車に乗った。
たどり着いたのは花畑のある大きな公園だった。一面真っ青の花畑だった。
「…きれい」
「綺麗でしょ。俺の母さんとの思い出の場所なんだ。気に入った?」
「うん。海みたいできれい」
目を奪われる美しさに公園が閉まる時間まで僕たちは過ごした。
「これ幸斗にあげるね」
帰りの車の中、渡されたのは携帯ショップの袋だった。中を見るとスマホが入っていた。
「こんな高価なものもらえないよ」
「俺が電話掛けたりしたいだけだから貰って。オレがあげたいだけだから」
つっかえそうとする僕の手を絶対に受け取らせるというくらい強引に高嶺は押し付けた。
「じゃあ貰うね。ありがとう」
僕がそう返答すると高嶺は満足そうな顔をした。その日はそのまま僕の家まで送ってくれた。家に帰ると誰もおらず兄は外へ出ているようだった。カバンの中に入れたスマホを取り出す。一度断ろうとしたもののやはり高校生のほとんどが持っている物に憧れがあり、何より高嶺からプレゼントされたのが嬉しかった。真っ暗な画面のまましばらく眺めていると突然音が鳴り出した。びっくりして画面を見ると高嶺遥都と表示されていた。慌てて電話に出る。
「もしもし」
『幸斗、今日は連れ回してごめんね』
高嶺の声が返ってくる。
「大丈夫。花畑綺麗だったし」
『幸斗ってさ海とか好き?』
「うん、家族でよく見に行ってたから好きな方」
『本当?じゃあ次出かける時は海行こう』
高嶺の声からウキウキしているのが伝わる。
「うん。わかった」
僕も楽しみな気持ちがあったが、何だか伝えるのが恥ずかしくなった。
『じゃあおやすみ』
「おやすみ」
短い時間だった。でもじんわりと温かくぽかぽかと気持ちが広がった。
兄はあの日以来家を空けることが多くなり、僕に暴力を振るう頻度が少なくなった。高嶺と出会って以来うまく行くことが多くなっている気がする。
いつも通り公園に向かう途中に猫探しの張り紙があった。猫を捨てる人もいれば探す人もいる色んな人がいるもんだと考えているとあることを思いついた。
「高嶺、猫を飼ってくれる人探そう」
公園につき猫の世話をしている高嶺に言った。いい提案だと高嶺もすぐ乗ってくれると思った。
「なんで?」
高嶺からの返答は全然違うもので声色も冷たかった。
「だって猫もこんなとこにいるより飼ってくれる人がいたほうが幸せだよ」
「幸斗もこんなとこにいたのに?」
いつもと違う高嶺の返しに詰まってしまった。
「冗談だよ。猫の親探そう」
優しい高嶺の雰囲気に戻り僕の頭を軽く撫でた。変な高嶺の冗談に驚きつつも猫の飼い主探しのポスターを作り街に張り出した。
「猫の親見つかるといいね」
「…うん。そうだね」
高嶺は猫との別れが悲しいのだろうか。やっぱりいつもと少し違うように感じた。
学校の中間考査が終わった日、何やら少しざわついている校門を巻き込まれないように出ようとした時だった。
「幸斗こっち」
ざわついている場所の中心に高嶺がいた。有名私立の制服を着た人が校門にいたらそれはざわつくだろう。中には高嶺のことを市長の息子だって知ってる人もいるだろう。
「なんでいるの?」
慌てて駆け寄り言うとこっちこっちと手を引かれ、運転手がドアを開いて待っている車に乗せられた。
「今日は一緒に打ち上げしよう」
「打ち上げ?」
「そう。幸斗の中間考査終わったからそれの打ち上げ」
テンションの高さについていけずにいると目的地に到着したようで車から降ろされた。目的地はカラオケだった。
「この曲一緒に歌おう」
慣れたように選曲した高嶺にマイクを渡されたが、知らない曲で歌えずただぼーっとしてしまい曲が終わった。
「ごめん、僕は高嶺のを聞いてるね」
高嶺はウキウキで僕を連れてきたようだが、流行りの曲も知らなければカラオケなんて来たこともない僕はどうすることもできなかった。せっかく連れてきてくれた高嶺への申し訳なさと世間とのズレに逃げ出したくなっていると終了の時間になったようだった。
カラオケを出て車に乗りいつもの公園で猫の世話をした。
「楽しくなかったよね?」
高嶺が心配そうにこちらを覗き込む。
「いや、僕が世間とズレてるから。ごめん」
高嶺に気を遣わせて辛かった。
「最後に挽回のチャンスお願い」
「無理しなくていいよ」
「無理なんかじゃないから」
猫の世話を一通り済ませると再び車に乗った。
たどり着いたのは花畑のある大きな公園だった。一面真っ青の花畑だった。
「…きれい」
「綺麗でしょ。俺の母さんとの思い出の場所なんだ。気に入った?」
「うん。海みたいできれい」
目を奪われる美しさに公園が閉まる時間まで僕たちは過ごした。
「これ幸斗にあげるね」
帰りの車の中、渡されたのは携帯ショップの袋だった。中を見るとスマホが入っていた。
「こんな高価なものもらえないよ」
「俺が電話掛けたりしたいだけだから貰って。オレがあげたいだけだから」
つっかえそうとする僕の手を絶対に受け取らせるというくらい強引に高嶺は押し付けた。
「じゃあ貰うね。ありがとう」
僕がそう返答すると高嶺は満足そうな顔をした。その日はそのまま僕の家まで送ってくれた。家に帰ると誰もおらず兄は外へ出ているようだった。カバンの中に入れたスマホを取り出す。一度断ろうとしたもののやはり高校生のほとんどが持っている物に憧れがあり、何より高嶺からプレゼントされたのが嬉しかった。真っ暗な画面のまましばらく眺めていると突然音が鳴り出した。びっくりして画面を見ると高嶺遥都と表示されていた。慌てて電話に出る。
「もしもし」
『幸斗、今日は連れ回してごめんね』
高嶺の声が返ってくる。
「大丈夫。花畑綺麗だったし」
『幸斗ってさ海とか好き?』
「うん、家族でよく見に行ってたから好きな方」
『本当?じゃあ次出かける時は海行こう』
高嶺の声からウキウキしているのが伝わる。
「うん。わかった」
僕も楽しみな気持ちがあったが、何だか伝えるのが恥ずかしくなった。
『じゃあおやすみ』
「おやすみ」
短い時間だった。でもじんわりと温かくぽかぽかと気持ちが広がった。
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