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1週間ほど経ちその後何もないままいつものように高嶺を公園で待っていた。高嶺はまだきていないようだったので本を読んで待つことにした。
「おい」
急に低くて濁った声が飛んできた。声の主のほうを向くと背の低めな中肉中背の袖から刺青が覗くおじさんが立っていた。
やばい。咄嗟に頭の中に逃げると言う文字が浮かび逃げようとするが、腕を掴まれた。振り解こうにも力が強くさらに捻られて痛みが走る。
「おい、逃げんな。ちょっと前にここで見つけてから1人になる機会を見計らったんだから」
しばらくつけ狙われてたのか全然気づけなかった。誰かわからないけど、たぶん兄の客だろうか。
「こっちこい」
きっともうすぐ高嶺が来るだろう。こいつはたぶん堅気じゃないだろう。高嶺が市長の息子ってのも気づくだろう。そしたら僕より高嶺の方に興味を持つだろう。巻き込むわけにもいかない。
抵抗に試みつつも刺青の入ったおじさんに手を引っ張られていった。どこか車に乗せられて拉致られるかと思ったが、そんなことなくすぐ近くのトイレへと導かれた。確かに僕なんか拉致ったところで金にもならないし誰をしないか。そんなことを呑気に考えていると個室に押し込まれた。押し込まれた衝撃でトイレに頭が当たり痛みを感じていると髪を掴まれ首をぐるっとおじさんの方へ向かせれた。
「咥えろ」
顔をズボン越しにおじさんの股間へと当てられた。
「嫌だ」
考え事してる場合じゃなかった。最近平和ボケしすぎていた。助けて。
「最近あいつ相手してくんなくてよ。おら、あいつがいつもやってることだぞ」
駆け巡る思考と必死に抵抗するもビクとも動かなかった。
「それ以上抵抗するとあいつにやってもらってるフルコースに変更すっぞ。譲歩してやってんだからよ」
言葉でガツーンと打たれた気分だった。いつも兄がシゴトをしているとなんとなくわかった気になりつつもどういう状況でどんな気持ちだったのか全く理解していなかった。僕は兄に甘えていたの生活をしていたのだ。
「わかりました」
震える手でおじさんのファスナーに手をかける。
咥えれば終わる。大丈夫。
自己暗示をかけながらファスナーを下ろした。
「うっ」
ドスっと上から鈍い鈍器のようなものが当たる音がした。おじさんが呻き声をあげ倒れ込む。
「大丈夫?」
トイレの扉が開きそこには高嶺がいた。大丈夫と返事をする前に高嶺に腕を引っ張られた。
「とにかく家まで走るよ」
僕は手を引かれながら家まで走った。高嶺の家まで全力で走り息切れした。この日は家政婦さんがいたようで僕らに驚いた様子を見せつつもお茶を出してくれた。
「よっぽどいい感じに入っただろうから追ってこないとは思うけど全力で走らせてごめんね」
家に入り高嶺の部屋に着くと少しは息が落ち着いたのかこちらに言った。
「大丈夫。助けてくれてありがとう」
高嶺が助けてくれなかったらと思うと苦しかった。
「公園に本が落ちててなんかおかしいと思って。本当に気づけて良かった」
高嶺が鞄から僕が読んでいた本を返してくる。あの時強引に引っ張られたから本を落としててよかった。
「本当にありがとう」
僕が言うと高嶺はむず痒そうな顔をした後、神妙な面持ちになった。
「…何もなかったよね?」
気にかけてくれてるようだ。
「大丈夫。何もされてないよ」
高嶺はほっとしたようによかったと胸を撫でおろした。僕もその安心が移ったのか目から涙がポロポロと出てきた。
「大丈夫?本当に何もされてない?」
心配した様子でこちらを覗き込む。
「なにもされてないよ」
涙を手で拭いながら答える。
「何か欲しいものとかある?甘いものとか家にあるから」
「…抱きしめて欲しい」
振り絞って出した僕の声に応えるように僕を抱きしめる。高嶺の肩で子供のように泣きじゃくった。
しばらくして泣き止んだ僕は静かに高嶺から離れた。
「やっぱり甘いものも欲しい」
僕がそう言うと高嶺はピッと立ち上がった。
「わかった」
高嶺は颯爽とおしゃれなロゴの入ったケーキの箱を持ってきた。
「どれにする?ってあれ?大きいの一個しか入ってないや」
中には小さめのベリーのホールケーキが入っていた。
「これ持ち帰ってもいい?」
「いいけどどうして」
「兄さんにあげたいんだよね」
高嶺は少しを歪めた。
「貰ったもの人にあげるって最低だよね」
当たり前だ。何を考えてるんだろう。
「いやそうじゃなくて」
高嶺が慌てて否定する。
「また今度高嶺になんかあげるからそれでトントンにできないかな。お金的にこのケーキみたいなのは多分買えないけど」
自分の渡されたお小遣いも高嶺の家でご馳走になっているおかげで少しは浮いてるものの、このケーキは買うことはできなさそうだ。
「無理しなくていいから。本当にそんなこと思ってないから」
高嶺は否定しつつもでもと続けた。
「でも幸斗から何か貰えるなら欲しいな」
「わかった。今度出かけたときね」
高嶺は心配だからと僕を家まで送ってくれた。帰った頃には兄は寝ていた。箱に兄さんへと書き冷蔵庫を開ける。開けると同じロゴの描かれたケーキの箱が入っていた。兄のお気に入りかそれともお客さんからのものなのか。わからないけどきっと好きなものだろうと思いながら冷蔵庫へ箱を入れた。
「兄さんいつもごめんね」
ぽろっと自然に出た呟きに兄は寝ていて何も意味をなさなかった。
「おい」
急に低くて濁った声が飛んできた。声の主のほうを向くと背の低めな中肉中背の袖から刺青が覗くおじさんが立っていた。
やばい。咄嗟に頭の中に逃げると言う文字が浮かび逃げようとするが、腕を掴まれた。振り解こうにも力が強くさらに捻られて痛みが走る。
「おい、逃げんな。ちょっと前にここで見つけてから1人になる機会を見計らったんだから」
しばらくつけ狙われてたのか全然気づけなかった。誰かわからないけど、たぶん兄の客だろうか。
「こっちこい」
きっともうすぐ高嶺が来るだろう。こいつはたぶん堅気じゃないだろう。高嶺が市長の息子ってのも気づくだろう。そしたら僕より高嶺の方に興味を持つだろう。巻き込むわけにもいかない。
抵抗に試みつつも刺青の入ったおじさんに手を引っ張られていった。どこか車に乗せられて拉致られるかと思ったが、そんなことなくすぐ近くのトイレへと導かれた。確かに僕なんか拉致ったところで金にもならないし誰をしないか。そんなことを呑気に考えていると個室に押し込まれた。押し込まれた衝撃でトイレに頭が当たり痛みを感じていると髪を掴まれ首をぐるっとおじさんの方へ向かせれた。
「咥えろ」
顔をズボン越しにおじさんの股間へと当てられた。
「嫌だ」
考え事してる場合じゃなかった。最近平和ボケしすぎていた。助けて。
「最近あいつ相手してくんなくてよ。おら、あいつがいつもやってることだぞ」
駆け巡る思考と必死に抵抗するもビクとも動かなかった。
「それ以上抵抗するとあいつにやってもらってるフルコースに変更すっぞ。譲歩してやってんだからよ」
言葉でガツーンと打たれた気分だった。いつも兄がシゴトをしているとなんとなくわかった気になりつつもどういう状況でどんな気持ちだったのか全く理解していなかった。僕は兄に甘えていたの生活をしていたのだ。
「わかりました」
震える手でおじさんのファスナーに手をかける。
咥えれば終わる。大丈夫。
自己暗示をかけながらファスナーを下ろした。
「うっ」
ドスっと上から鈍い鈍器のようなものが当たる音がした。おじさんが呻き声をあげ倒れ込む。
「大丈夫?」
トイレの扉が開きそこには高嶺がいた。大丈夫と返事をする前に高嶺に腕を引っ張られた。
「とにかく家まで走るよ」
僕は手を引かれながら家まで走った。高嶺の家まで全力で走り息切れした。この日は家政婦さんがいたようで僕らに驚いた様子を見せつつもお茶を出してくれた。
「よっぽどいい感じに入っただろうから追ってこないとは思うけど全力で走らせてごめんね」
家に入り高嶺の部屋に着くと少しは息が落ち着いたのかこちらに言った。
「大丈夫。助けてくれてありがとう」
高嶺が助けてくれなかったらと思うと苦しかった。
「公園に本が落ちててなんかおかしいと思って。本当に気づけて良かった」
高嶺が鞄から僕が読んでいた本を返してくる。あの時強引に引っ張られたから本を落としててよかった。
「本当にありがとう」
僕が言うと高嶺はむず痒そうな顔をした後、神妙な面持ちになった。
「…何もなかったよね?」
気にかけてくれてるようだ。
「大丈夫。何もされてないよ」
高嶺はほっとしたようによかったと胸を撫でおろした。僕もその安心が移ったのか目から涙がポロポロと出てきた。
「大丈夫?本当に何もされてない?」
心配した様子でこちらを覗き込む。
「なにもされてないよ」
涙を手で拭いながら答える。
「何か欲しいものとかある?甘いものとか家にあるから」
「…抱きしめて欲しい」
振り絞って出した僕の声に応えるように僕を抱きしめる。高嶺の肩で子供のように泣きじゃくった。
しばらくして泣き止んだ僕は静かに高嶺から離れた。
「やっぱり甘いものも欲しい」
僕がそう言うと高嶺はピッと立ち上がった。
「わかった」
高嶺は颯爽とおしゃれなロゴの入ったケーキの箱を持ってきた。
「どれにする?ってあれ?大きいの一個しか入ってないや」
中には小さめのベリーのホールケーキが入っていた。
「これ持ち帰ってもいい?」
「いいけどどうして」
「兄さんにあげたいんだよね」
高嶺は少しを歪めた。
「貰ったもの人にあげるって最低だよね」
当たり前だ。何を考えてるんだろう。
「いやそうじゃなくて」
高嶺が慌てて否定する。
「また今度高嶺になんかあげるからそれでトントンにできないかな。お金的にこのケーキみたいなのは多分買えないけど」
自分の渡されたお小遣いも高嶺の家でご馳走になっているおかげで少しは浮いてるものの、このケーキは買うことはできなさそうだ。
「無理しなくていいから。本当にそんなこと思ってないから」
高嶺は否定しつつもでもと続けた。
「でも幸斗から何か貰えるなら欲しいな」
「わかった。今度出かけたときね」
高嶺は心配だからと僕を家まで送ってくれた。帰った頃には兄は寝ていた。箱に兄さんへと書き冷蔵庫を開ける。開けると同じロゴの描かれたケーキの箱が入っていた。兄のお気に入りかそれともお客さんからのものなのか。わからないけどきっと好きなものだろうと思いながら冷蔵庫へ箱を入れた。
「兄さんいつもごめんね」
ぽろっと自然に出た呟きに兄は寝ていて何も意味をなさなかった。
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