51 / 60
第51話 任命式1
学校が夏休みに入ったけれど、僕は忙しい日々を送っていた。宣伝大使を引き受けるにあたって、知り合いの人達に説明したり協力してもらうため会って話をしたり、メールで連絡したりしていたから。
それから、宣伝大使の件について提案してくれた久遠さんに正式に引き受ける旨を伝えると、彼女はとても喜んでくれた。すぐに任命するにあたって必要な手続きや、詳細な打ち合わせなどが何度も行われた。
そして、宣伝大使の任命式は8月に入ってすぐ行われることになった。
場所は、市内のホテルにある多目的ホールで行われることに。国の偉い人が来て、任命書を渡されるらしい。その様子が、テレビでも放送されるそうだ。
そんな仰々しい任命式になるなんて、思ってもみなかった。もっと、小規模なものだと思っていたのに。僕が想像している以上に、宣伝大使という立場は重要なものなのかもしれない。前もって、皆に伝えておいてよかった。
任命式の当日の朝、家の前に黒塗りの車が止まった。車の中からスーツを着た女性が降りてきた。その人は、僕の前まで来ると深々と頭を下げた。
「おはようございます、七沢さん」
「久遠さん、おはようございます」
いつもの通り、クールな表情で挨拶をする彼女。今日もスーツをびしっと着こなしている。
「本日は、私が七沢さんをご案内させていただきます」
「すみません、わざわざ家まで迎えに来ていただいて」
「問題ありません。仕事ですから」
「ありがとうございます」
久遠さんは、車の後部座席のドアを開けてくれる。車に乗り込む前に、僕は後ろを振り返る。
「それじゃあ行ってくるね、母さん」
「ええ、行ってらっしゃい。頑張って」
母親に見送られながら、僕は車に乗り込んだ。久遠さんも乗ってドアを閉めると、すぐに車は動き出した。
「本日行われる任命式のスケジュールについて、簡単に説明させていただきます」
「はい、お願いします」
目的地へ向かう車の中で、久遠さんから資料を受け取って任命式についての説明をしてもらった。その都度、指示してくれるそうなので全て覚える必要はないとのことらしいけれど、念のために集中して聞いておく。
まず最初に多目的ホールで、国の重鎮たちの前で挨拶をして任命書を受け取る。
それが終わると、今度はテレビ局の取材があるそうだ。内容はインタビューと写真撮影だそう。その後、昼食を挟んでから記者会見を行うことになっている。
もちろん、マスコミ関係者以外にも多くの人たちが出席するみたい。その中には、総理大臣も含まれているらしい。
「以上になります。何か質問などはありますか?」
「……いえ、特には」
久遠さんの話を聞き終えた僕は、渡された資料に何度も目を通した。細かいところまで色々と書いてある。こんなにたくさんのことをやるんだな。
それに、総理大臣が来るなんて。まだ、あんまり実感がわかない。けれど、これは凄いことなんだろうなと思う。前の人生だと、一切関わりのなかった国の偉い人達と顔を合わせる。これからのことを思うと、すごく緊張してきた。
「到着しました」
車が停まって、久遠さんがそう言った。窓の外を見てみると、とても大きな建物が見えた。あれが、今日これから任命式を行う場所。
「七沢さん、こちらです」
久遠さんの他に、僕はボディーガードらしき女性達に周りを囲まれて一緒に歩く。建物の中に入ると、中はとても広々としていた。高級そうな家具が置かれているし、床もピカピカで綺麗だ。天井も高いし、シャンデリアのようなものもある。まるで、どこかのお城みたい。
高級ホテルだな、ここ。一泊するのに何十万もかかりそう。そんな感想を抱いた。
「こちらが控室です」
そう言って通されたのは、宴会場みたいな広い部屋だった。真ん中にはテーブルが置かれていて、その上には化粧道具が大量に置いてあった。他にはソファーや椅子もある。壁際には、スーツや洋服が何十着も用意されている。その横に、アクセサリーなどが入ったケースが置かれていた。その他にも、何に使うのかわからないような物がたくさん置いてある。
「来たね。待っていたよ」
「おはよう、チーさん。来てくれてありがとう」
「これぐらい、お安い御用さ」
先に来て待っていた智恵子さんに挨拶する。いつも僕が着ている服を選んでくれたり、ファッションについて相談に乗ってくれる頼りになるお姉さん。今日の任命式は、彼女に厳選してもらった衣装で参加する。そのために、わざわざ来てもらった。
「小川さんも、おはようございます。そして、今日はよろしくおねがいしますね」
「は、ハイッ! 一生懸命、頑張りますッ!」
いつもヘアカットを任せている、美容師の小川さんにも来てもらった。ヘアセットをお願いするため、智恵子さんと一緒に来てもらったのだ。
彼女はガチガチに緊張しながら、返事をした。いつも以上に声が上ずっている気がする。そんな彼女の様子に、僕と智恵子さんは苦笑するしかなかった。だけど、腕は確かなので安心して任せられる。ちゃんと仕上げてくれるはずだと、信頼していた。
他にも、何人かスタッフさん達がいるみたいだ。皆忙しそうに動いている。そんな中、僕は用意されていた椅子に座った。早速、任命式に出るための準備が始まる。
されるがまま、僕はメイクやら髪形を整えてもらった。
それから、宣伝大使の件について提案してくれた久遠さんに正式に引き受ける旨を伝えると、彼女はとても喜んでくれた。すぐに任命するにあたって必要な手続きや、詳細な打ち合わせなどが何度も行われた。
そして、宣伝大使の任命式は8月に入ってすぐ行われることになった。
場所は、市内のホテルにある多目的ホールで行われることに。国の偉い人が来て、任命書を渡されるらしい。その様子が、テレビでも放送されるそうだ。
そんな仰々しい任命式になるなんて、思ってもみなかった。もっと、小規模なものだと思っていたのに。僕が想像している以上に、宣伝大使という立場は重要なものなのかもしれない。前もって、皆に伝えておいてよかった。
任命式の当日の朝、家の前に黒塗りの車が止まった。車の中からスーツを着た女性が降りてきた。その人は、僕の前まで来ると深々と頭を下げた。
「おはようございます、七沢さん」
「久遠さん、おはようございます」
いつもの通り、クールな表情で挨拶をする彼女。今日もスーツをびしっと着こなしている。
「本日は、私が七沢さんをご案内させていただきます」
「すみません、わざわざ家まで迎えに来ていただいて」
「問題ありません。仕事ですから」
「ありがとうございます」
久遠さんは、車の後部座席のドアを開けてくれる。車に乗り込む前に、僕は後ろを振り返る。
「それじゃあ行ってくるね、母さん」
「ええ、行ってらっしゃい。頑張って」
母親に見送られながら、僕は車に乗り込んだ。久遠さんも乗ってドアを閉めると、すぐに車は動き出した。
「本日行われる任命式のスケジュールについて、簡単に説明させていただきます」
「はい、お願いします」
目的地へ向かう車の中で、久遠さんから資料を受け取って任命式についての説明をしてもらった。その都度、指示してくれるそうなので全て覚える必要はないとのことらしいけれど、念のために集中して聞いておく。
まず最初に多目的ホールで、国の重鎮たちの前で挨拶をして任命書を受け取る。
それが終わると、今度はテレビ局の取材があるそうだ。内容はインタビューと写真撮影だそう。その後、昼食を挟んでから記者会見を行うことになっている。
もちろん、マスコミ関係者以外にも多くの人たちが出席するみたい。その中には、総理大臣も含まれているらしい。
「以上になります。何か質問などはありますか?」
「……いえ、特には」
久遠さんの話を聞き終えた僕は、渡された資料に何度も目を通した。細かいところまで色々と書いてある。こんなにたくさんのことをやるんだな。
それに、総理大臣が来るなんて。まだ、あんまり実感がわかない。けれど、これは凄いことなんだろうなと思う。前の人生だと、一切関わりのなかった国の偉い人達と顔を合わせる。これからのことを思うと、すごく緊張してきた。
「到着しました」
車が停まって、久遠さんがそう言った。窓の外を見てみると、とても大きな建物が見えた。あれが、今日これから任命式を行う場所。
「七沢さん、こちらです」
久遠さんの他に、僕はボディーガードらしき女性達に周りを囲まれて一緒に歩く。建物の中に入ると、中はとても広々としていた。高級そうな家具が置かれているし、床もピカピカで綺麗だ。天井も高いし、シャンデリアのようなものもある。まるで、どこかのお城みたい。
高級ホテルだな、ここ。一泊するのに何十万もかかりそう。そんな感想を抱いた。
「こちらが控室です」
そう言って通されたのは、宴会場みたいな広い部屋だった。真ん中にはテーブルが置かれていて、その上には化粧道具が大量に置いてあった。他にはソファーや椅子もある。壁際には、スーツや洋服が何十着も用意されている。その横に、アクセサリーなどが入ったケースが置かれていた。その他にも、何に使うのかわからないような物がたくさん置いてある。
「来たね。待っていたよ」
「おはよう、チーさん。来てくれてありがとう」
「これぐらい、お安い御用さ」
先に来て待っていた智恵子さんに挨拶する。いつも僕が着ている服を選んでくれたり、ファッションについて相談に乗ってくれる頼りになるお姉さん。今日の任命式は、彼女に厳選してもらった衣装で参加する。そのために、わざわざ来てもらった。
「小川さんも、おはようございます。そして、今日はよろしくおねがいしますね」
「は、ハイッ! 一生懸命、頑張りますッ!」
いつもヘアカットを任せている、美容師の小川さんにも来てもらった。ヘアセットをお願いするため、智恵子さんと一緒に来てもらったのだ。
彼女はガチガチに緊張しながら、返事をした。いつも以上に声が上ずっている気がする。そんな彼女の様子に、僕と智恵子さんは苦笑するしかなかった。だけど、腕は確かなので安心して任せられる。ちゃんと仕上げてくれるはずだと、信頼していた。
他にも、何人かスタッフさん達がいるみたいだ。皆忙しそうに動いている。そんな中、僕は用意されていた椅子に座った。早速、任命式に出るための準備が始まる。
されるがまま、僕はメイクやら髪形を整えてもらった。
あなたにおすすめの小説
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
この男子校の生徒が自分以外全員男装女子だということを俺だけが知っている
夏見ナイ
恋愛
平凡な俺、相葉祐樹が手にしたのは、ありえないはずの超名門男子校『獅子王院学園』からの合格通知。期待を胸に入学した先は、王子様みたいなイケメンだらけの夢の空間だった!
……はずが、ある夜、同室のクールな完璧王子・橘玲が女の子であるという、学園最大の秘密を知ってしまう。
なんとこの学園、俺以外、全員が“訳アリ”の男装女子だったのだ!
秘密の「共犯者」となった俺は、慣れない男装に悩む彼女たちの唯一の相談相手に。
「祐樹の前でだけは、女の子でいられる……」
クールなイケメンたちの、俺だけに見せる甘々な素顔と猛アプローチにドキドキが止まらない!
秘密だらけで糖度120%の学園ラブコメ、開幕!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる
九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。
※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。
男女比の狂った世界で俺だけ美醜逆転してるんだが…。
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、青山春。
日本によく似たパラレルワールド(男女比1:9)で彼女を作るために色々する物語。
前世の記憶のせいで、俺だけ美醜が逆転してしまっているので、この世界で可愛いと言われている子達には興味がない…。
うん。ポジティブに考えれば、前世で女優やモデルを出来る容姿の子とお付き合いできるのでは!?
と、幼少期に光〇氏計画を実行しようとするも断念。
その後は勉強出来るのおもしれぇ! 状態に陥り、時が流れ大学に入学。
そこで義務を思い出し二十歳までに彼女が欲しい!いなきゃしんどい!と配信を始めてみたり…。
大学の食堂で出会った美人とお近づきになろうとしたり…!
作者が暗い話が嫌いなので、基本的に明るめの話構成になってるはずです。