帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ

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仲間たち再集結

第11話 星華の帰国

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 約束した日、羽田空港の国際線到着ロビーに集まったハヤトと莉々、そして城介の三人。彼らは、星華の到着を待っていた。

「何便だっけ?」

 ハヤトが電光掲示板を見上げながら尋ねた。

「LA発の直行便。あと10分ほどで到着予定だ」

 城介がスマートフォンを確認しながら答える。彼の横で莉々は少し落ち着きなく、指先でバッグの持ち手を弄っていた。

「星華さんとの再会、とても楽しみです」
「そうだな。早く会いたい」

 そう話しているうちに、到着ゲートから次々と乗客が現れ始めた。

 やがて、彼らが待ち望んでいた星華の姿が見えてきた。

 彼女は白衣こそ着ていなかったが、何人かの学者風の男女と一緒に歩いていた。全員がスーツ姿で、同じ学会か研究プロジェクトのメンバーなのだろうか。星華自身は洗練されたダークグレーのスーツに身を包み、髪は緩やかにまとめられていた。

 星華がハヤトたちの姿を見つけると、それまでの真面目な表情から一転、にこりと柔らかな笑みを浮かべた。彼女は一緒に居た中年の教授らしき男性に何かを告げると、グループから離れてハヤトたちへと近づいてきた。長身でスタイルの良い彼女の歩き方は、まるでモデルのように優雅だった。

「出迎え、ありがとう」

 堂々とした物言いで、星華は言った。そして彼女はハヤトの前に立つと、急に姿勢を正し、わずかに頭を下げた。

「そして、お久しぶりです。ハヤト様」

 ハヤトに対してだけ、態度が一変して丁寧になった。周囲の人間には見せない、目上の人に対する敬意に満ちた態度。もし星華の仕事仲間がこの姿を目撃したら、間違いなく驚愕するだろう。普段の星華は、大学の権威ある教授や会社の上層部に対してさえも、対等とも取れる威厳のある態度で接するのだから。

 しかし、ハヤトに対してだけは別なのだ。かつて勇者であり、世界を救ってくれた彼だけが特別だった。

「久しぶりだね、セレスティア。今は、星華だね」

 ハヤトは少し照れくさそうに頭をかいた。

「はい。そう呼んでください」

 彼女は微笑んだ。

「ということで、ここから口調は軽くいきますね。さすがに周りの目もありますし」
「うん。そっちのほうが気が休まるかな」

 星華らしい態度に変わり、ハヤトもほっとした表情で頷いた。

 最初の挨拶だけ丁寧に済ませると、星華は肩の凝らない話し方でハヤトとの会話を進めた。

 次に彼女は、莉々の方へ視線を向けた。

「こっちでは初めてだけど、久しぶりだねリリア」
「うん。久しぶり、セレスティア」

 莉々の目に涙が浮かんでいた。再会を喜ぶ仲間たち。

 二人は自然な流れで抱き合った。美少女と美女の抱擁は、空港内で少なからぬ注目を集めた。周りの人たちがチラチラと視線を向けている。

「しかし、莉々は小さくて、可愛くなったな」

 星華が莉々の肩に手を置いて言った。

「星華も変わった。すごく大人っぽくて、貫禄があるね」

 莉々は少し羨ましげに星華を見上げた。

 お互いの変化を観察して、感想を言い合う二人。

「向こうの世界の私は、まだまだ100歳程度の若造だったからな」

 星華は小声で言った。

「しかし、今の私は30歳だ。エルフ換算で言えば、だいたい300歳ぐらいという感じだ。見え方も変わる」
「そっか」

 莉々が少し物悲しげな表情になる。

「やっぱり、こっちの世界の星華は人間なんだね」
「ああ、ありがたいことにな」

 莉々の言葉に、星華は優しく微笑んだ。

「これで、お前たちと一緒の時間を過ごしていける。こんなに幸せなことはない」

 そんな会話を交わす二人。異世界の記憶と人間としての感情が交錯する不思議な関係は、言葉にならない絆で彼らを結んでいた。

 しばらく、星華と莉々の二人で会話を楽しんだ後、星華は城介に視線を向けた。

「連絡ありがとう、ジョン……じゃなかった、城介。とても嬉しい帰国になったよ」
「うん。それは良かったよ、星華」

 城介も穏やかな笑顔で返した。

 星華は主に城介と連絡を取り合い、今日の帰国予定日も伝えていた。そして城介は、ハヤトたちの情報を星華に積極的に提供していたのだ。今日三人が星華を迎えに来たのも、城介がセッティングしたから。そのことに感謝しながら、仲間同士の握手を交わした。

「さて、荷物は?」

 ハヤトが聞きながら、周囲を見回した。

「仕事の荷物や大きな荷物は、別便で既に送ってある」

 星華は手元のキャリーケースを示した。

「これだけだ」
「じゃあこの後、ちょっと一緒に過ごせるか? どこかお店に入って、話そうか」

 無事に再会を終えて、これからどうするのか、という話になったとき、星華が提案する。

「その前に、この皆で一緒に行きたい場所がある」
「どこだい?」

 ハヤトが問いかけると、星華が答える。

「病院だ」
「病院?」

 三人が同時に声を上げた。予想していなかった場所。もしかして、どこか悪いのかと心配する三人に、星華は落ち着いた様子で理由を説明した。

「安心しろ、私が病気というわけではない。……いや、もしかしたら調べるとなにか発見する可能性もあるが。念の為に、君たちの身体の状態をチェックしておきたいと思ってね」

 彼女は声を少し落として続けた。

「数ヶ月前に起きた現象による影響について、ちゃんと病院で調べておきたくてね。ハヤトは元の世界に戻ってきた時に一ヶ月も続いた痛みがあったと聞いているが?」
「ああ」

 ハヤトは、異世界から戻ってきた直後の1ヶ月について思い出しながら答えた。

「他の皆も、生まれ変わったことによる影響や、異世界での記憶が突然戻ったことによる変化がないか確認しておきたい。できれば今日中に」
「そんなに急ぐ必要があるのか?」

 城介が眉をひそめた。

「単なる予防措置さ」

 星華は専門家らしい冷静さで答えた。

「私の勘では何も問題ないと思うが、念の為に医者として確認しておきたいだけだ」

 そんな星華の説明を聞いた三人は納得して、彼女が指定する病院へ向かうことになった。

「急ぐのなら、タクシーを拾おうか」
「いや、私の車で行こう」

 星華は言った。

「空港の駐車場に預けてある」

 荷物を持って空港を出る四人。久しぶりの再会と、これから始まる新たな日常に、どこか懐かしさと新鮮さが入り混じった感情を抱きながら。

 星華の運転する高級外車に乗り込み、一行は病院へと向かった。窓の外に広がる都会の街並みを眺めながら、ハヤトは考えた。

 異世界で失った仲間たちが、こうして現代で再び集まりつつある。それは奇跡以外の何物でもない。

 ハヤトは窓から差し込む陽光に目を細めた。かつての戦いの日々とは違う、平和な日常。それがどれほど尊いものか、彼は誰よりも理解していた。
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