帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ

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仲間たちとの旅行

第43話 航海の終わりと新たな日常へ

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 クルーズ船の旅行は、ハヤトが想像していた以上に充実していた。

  タイのパタヤでは美しいビーチと活気ある街並みに感動し、マレーシアのクアンタンでは美しいスルタン・アフマド・シャー・モスクとビーチを観光した。各寄港地ではそれぞれの文化や食べ物を堪能し、クルーズ船に戻ってきたら、毎日開催されているイベントやショーに参加して楽しんだ。



「お。マジック・ショーしてるぞ」

 食事中、船内新聞を見ていた剛が呟くと、葵が大きな目を輝かせた。

「また、マジックみたい!」

 この前のマジック・ショーで参加した時から、葵はすっかりマジックにハマったようだ。

 どこかへ行っていた城介が食事テーブルに戻ってきた。時々、彼は仲間たちと離れて行動することがある。

「城介、なんだか忙しそうだな」

 ハヤトが声をかけると、隣の席に座りながら城介は微笑んだ。

「ちょっとね。船内で知り合った投資家たちと意見交換していたんだ。彼らの視点は新鮮で参考になる」

 資産家も多く乗っているクルーズ船。そこで出会い、意見交換するほどの仲を深める城介は流石だと思うハヤト。

「ここでも仕事か。流石だな」

 剛が冗談めかして言うと、城介は軽く肩をすくめた。彼は自分のグラスを手に取り、一口飲んでから答えた。

「これはもう、俺の生きがいみたいなものだ。しかし、そういう君こそ、昨日のエンジンルームツアーでスタッフに専門的な質問を浴びせていたじゃないか」
「いや、あれは。純粋な興味からだよ」



 様々な思い出を積み重ねながら、7泊8日のクルーズ旅行は、あっという間に最終日の前日を迎えた。明日の朝には最終目的地のシンガポールに到着する。最後の夜は、船の中でも特に格式高いメインダイニングでの夕食だった。
 
 クリスタルのシャンデリアが輝く豪華な食堂で、ウェイターたちがフォーマルな装いで給仕する。テーブルには白い布が敷かれ、銀食器が並ぶ。子どもたちも少し緊張した面持ちで、背筋を伸ばして座っていた。特に陸は、父親に似た凛々しい表情で、大人の真似をするように振る舞っている。

「いやぁ、この一週間で世界中の料理を食べたね」

 ハヤトがメニューを見ながら感慨深げに言った。フランス料理、イタリア料理、中華料理、各国の郷土料理まで、日替わりで様々な国の味を楽しんできた。

「昨日のステーキなんて、絶品だった」
「こんな贅沢、なかなかできないわね」
「肉が美味しかったな。ソースがすごく香りよくて!」

 これまで食べた料理の思い出話に花が咲く中、豪華なコース料理が次々と運ばれてきた。前菜、スープ、魚料理、肉料理、そしてデザート。それぞれが芸術品のように美しく盛り付けられており、最後まで味も絶品だった。

「おいしい!」

 葵が満面の笑みで言うと、皆も同意した。食事している途中、船長が各テーブルを回ってきて、ひとことずつ挨拶を交わした。白い制服に身を包んだ船長は、温かい笑顔で彼らの旅の感想を尋ねた。

「今回の航海は楽しめましたか? また機会があれば、ぜひご乗船ください」
「ええ、ぜひ」

 その言葉は本心で、またクルーズ船に乗りたいと思うハヤト。この仲間たちと一緒に、また新しい思い出を作りたい。

 食事を終え、最後の夜を過ごした翌朝、船はシンガポールの港に到着した。

 窓の外に広がる近代的な高層ビル群を眺めながら、ハヤトたちは荷物をまとめた。船内アナウンスが下船の手順を説明し、乗客たちは順番に船を去っていく。ハヤトは自分たちの部屋を最後にチェックし、忘れ物がないことを確認した。

「すごい景色だね」

 甲板から眺めるシンガポールの街並みに、ハヤトは感嘆の声を上げた。幾何学的に並ぶ高層ビル、整備された緑地、そして海に面したランドマークたち。現代技術の粋を集めたような都市景観が、朝日に照らされて輝いていた。

 下船の手続きを済ませ、ハヤトたちは大きな荷物を運びながら、ゆっくりと船を降りた。最後にもう一度振り返り、彼らを一週間運んでくれた巨大な船に感謝の気持ちを抱く。

「じゃあ、せっかくだからシンガポール観光していこう」

 城介が予約していたバンが彼らを待っていた。船から直接空港へ向かうオプションもあったが、せっかくなのでシンガポール観光をすることにしたのだ。

 マーライオン公園での記念撮影、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイでの壮大な植物園見学、そしてマリーナベイ・サンズでの最後の昼食。限られた時間ではあったが、効率よく回って、シンガポールの魅力を存分に味わった。

 子どもたちは、特に植物園の巨大な人工樹に驚いていた。高さ50メートルを超えるスーパーツリーは、未来と自然が融合したような不思議な光景を作り出していた。

「パパ、あの木、すごい! ほんものなの?」
「あれは人工物だよ。でも中には、本物の植物がたくさん植えられているんだ」

 剛が説明すると、陸は感心したように頷いた。少年の目には好奇心と憧れが満ちていて、大人たちの心を温かくした。

 観光を終え、彼らはシンガポールのチャンギ国際空港へと向かった。近代的な設備と洗練されたデザインの空港内を見て回りながら、最後の土産物を購入する。

「この空港も凄いな」

 ハヤトが噴水や巨大な観葉植物が配置された空港内部を見回しながら言った。
「世界ベスト空港というランキングで、世界一位に何年も続けて選ばれたらしいわよ。空港というより、リゾートのようね」
「へぇ、そうなのか」

 星華が説明すると、ハヤトは納得した様子で頷いた。

 チェックインと出国手続きを済ませ、搭乗時間まで空港内のラウンジで過ごした。深夜便の長時間フライトに備えて、子どもたちを少し休ませておく。

「少し疲れてきたかしら?」

 母親の楓が娘の葵の髪を優しく撫でながら尋ねると、葵は小さく首を横に振った。その仕草には、まだまだ元気だと主張する子供らしい意地が見えた。

「ううん。まだ、だいじょうぶ」

 葵の答えに、周囲の大人たちが微笑む。しかし、その言葉とは裏腹に、彼女の瞳は少し眠そうになっていた。

 やがて搭乗時間となり、彼らは日本行きの飛行機に乗り込んだ。隣り合った座席に座り、離陸の瞬間を楽しんだ。エンジンの轟音とともに、飛行機は急速に高度を上げていく。

「船より速いね」

 莉々が窓から見える夜景を指さしながら言う。あっという間に雲の上へと上昇し、シンガポールの街並みは小さく遠ざかっていった。その光景に、ハヤトは改めて現代技術の凄さを実感する。

 機内では映画を観たり、軽い食事を取ったりしながら、約7時間のフライトを過ごした。子どもたちは途中で眠りに落ち、その様子を見ながら大人たちも交代で休息を取った。

 朝早く、飛行機が羽田空港に到着した。雲を抜けて見えてきた富士山と東京湾の景色が、彼らの帰国を迎えてくれる。


「日本に戻ってきたね」

 機内アナウンスが日本語に切り替わった瞬間、安心感が広がった。やっぱり、自分は日本人なんだとハヤトが感じる瞬間だった。海外へ行っても、異世界へ行っても、それは変わらない。

 入国手続きを済ませ、荷物を受け取り、ようやく空港のロビーに出る。

「いやー、楽しかったけど、やっぱり日本に帰ってきたらホッとするね」

 ハヤトの言葉に、仲間たち皆が頷いた。それぞれが思い思いに、旅の疲れと充実感を表情に浮かべている。

「また日常に戻るか」

 城介が言うと、莉々が少し寂しそうな表情を見せた。

「でも、また皆で旅行したいですね」
「ああ、今度はどこに行こうか」

 剛が頷く。子どもたちも「またいく!」と元気よく言った。彼らも存分に楽しめたようで、大人たちが微笑む。

 空港で解散する前に、最後の記念写真を撮る。皆が笑顔で集まり、城介のカメラのタイマーで全員が写る一枚を撮影した。この瞬間を、永遠に残しておきたいという気持ちが、全員に共有されていた。

「写真データは後で送るよ」

 城介が約束する。そして、別れの挨拶が始まった。特に子どもたちとの別れは名残惜しく、ハヤトは陸と葵にしっかりと「また会おうね」と約束した。




 数日ぶりに帰ってきたマンションのエレベーターに乗りながら、ハヤトは旅の疲れと充実感を同時に感じていた。部屋のドアを開け、荷物を下ろすと、久しぶりの自宅の匂いが彼を包み込んだ。

「ただいま」

 誰もいない部屋に向かって小さく呟いたハヤトは、窓際に立ち、東京の景色を眺めた。クルーズ船から見た海と空、各国の景色、そして仲間たちとの笑顔が次々と思い出として蘇ってくる。新しく作った、仲間たちとの大事な思い出。

 明日からはまた警備会社での仕事、そしてVtuberの活動を再開する。日常が戻ってくる。けれど、この旅で得たものは、きっと自分たちの日常にも新たな色を加えていくだろう。ハヤトは心地よい疲労感と共に、そんなことを考えていた。
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