帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ

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プロポーズ

第45話 異世界の記憶が形になる日

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「サーバー負荷テストの結果は、どうだった?」

 剛が尋ねると、技術チームのリーダーが自信に満ちた表情で頷いた。鉄村グループから派遣された精鋭のIT技術者たちは、数日前からゲーム公開の準備に取り組んでいた。

「問題ありません。最大で同時に50万ダウンロードまで対応できるようスケーリング設定を完了しました。クラウドサーバーの自動拡張機能も実装済みですので、これを超過した場合も対応処理可能です」

 それを聞いたハヤトと莉々は驚いた顔で顔を見合わせた。そこまで想定して備えているのかと。そんな二人の反応を見て、剛が言う。

「当然だ。これだけ注目を集めているんだ。なるべく問題が起きないようにしておきたいんだよ」

 剛の声には、経営者としての冷静さと、仲間の作品や活動を無事に成功させたいという温かさが混じっていた。

 配信で正式版の公開日を発表してから、各ゲームのニュースサイトでも大きく取り上げられていた。SNSでは莉々の開発したゲーム関連のハッシュタグが幾つも急上昇ランキングに入り、様々な憶測や期待のコメントが飛び交っていた。

『Vtuberグループが手がける本格アクションRPG、ついに正式版へ』

 剛がスマートフォンで記事のタイトルを読み上げる。

『体験版の段階から驚異的なクオリティで話題を呼んだゲームが遂に前編公開へ。業界関係者からも注目集まる』
「想像以上の注目だな」

 ハヤトが呟くと、莉々は少し緊張した様子で自分のノートパソコンの画面を確認し始めた。あれから何度も繰り返し、公開前の最終チェックに没頭している。キーボードを打つ彼女の指の動きは素早く、画面に映るプログラムのコードを次々と確認していく。

「大丈夫だよ、莉々。もう十分チェックしただろう」

 ハヤトが彼女の肩に軽く手を置いて言うと、莉々は一瞬目を閉じ、深呼吸をした。

「でも、もし何か問題があったら……。ハヤトの、皆の異世界での大切な記憶が体験できなくなってしまう。それだけは避けたいんです」

 彼女の言葉には切実さがあった。このゲームは単なるエンターテイメントではなく、彼女たちにとっては異世界での記憶と絆を形にしたものだった。特に莉々にとっては、ハヤトへの感謝と敬愛の気持ちを込めた作品でもある。

「だけど莉々、もう夜の7時だ。そろそろ家に帰ろうか」
「あと少しだけ。最終チェックで、ちょっと気になった部分があって」
「なら、少しだけだぞ」

 莉々は、細かい部分を隅々まで何度も確認を繰り返す。ハヤトは、彼女の両親に帰りが遅くなるという連絡を入れた。

「終わりました。これで明日の公開に向けて、すべての準備が整いました」

 そして1時間ほどチェックを繰り返してから、ようやく納得したのか、完成版のデータを公開するための準備を完了させた。

「お疲れ様。よく頑張ったな」

 ハヤトが率直に言うと、莉々はほっとしたように微笑んだ。

「ありがとうございます。これも皆さんの支えがあったからです」

 それから、家に帰る支度を始める。ハヤトと城介が彼女を家まで送り届けた。



 莉々を無事に送り届けた後に、ハヤトと城介も自宅に帰る。その道中で城介から色々と話を聞いた。二人は夜の街を歩きながら、明日に控える大きなイベントについて語り合った。

「フリーゲームとして公開しながら、グッズ販売で開発費を回収する。この方法を参考にしたいという問い合わせが、いくつものゲーム会社から来ているらしい」
「へぇ、そうなのか」

 ハヤトは少し驚いた様子で答える。彼はゲーム業界のビジネスモデルについてはあまり詳しくないけれど、注目を集めるほどなのかと思った。

「最初からそれを狙っていたわけじゃない。莉々が『みんなに異世界での記憶を共有したい』という思いから始まったプロジェクトだから」
「そうそう。彼女の目的は、お金のためじゃなかったんだよな」

 莉々がゲームを開発したいと提案した時のことを思い出す。彼女の言っていた目的。それを果たすために、今日まで彼女は頑張ってきた。その頑張りを見守ってきたハヤト。

「でも、結果として良いビジネスになるなら、それはそれで素晴らしいことだ。鉄村グループとしても、IVEの新たな収益モデルとして期待されている」

 城介は冷静に現状を分析していた。

「そういえば多言語版の準備も、なんとか大丈夫か」

 日本だけでなく世界へ向けて。各国の言語で翻訳したバージョンも公開することになっていた。その準備は大丈夫なのか。ハヤトが尋ねると、城介がタブレットを操作しながら答えた。

「心配ないぞ。英語、中国語、韓国語、スペイン語、フランス語の5カ国語に対応。翻訳チームが最終チェックを終えている。大丈夫だろう」
「こんなに大がかりになるなんてな」

 ハヤトは感慨深げに夜空を見上げた。

「君の異世界での活躍が凄かったから。それを広めたいという莉々の気持ちは、俺も良く理解できる。問題を起こすことなく、ちゃんと公開したいという気持ちも」
「そうだね。だけど、あまり無理はしてほしくないな」

 莉々の頑張りは嬉しいけれど、やっぱり無理はしてほしくないと思うハヤト。この世界なら、あの時のように無理して命まで失ってしまうことはないと思うけれど。

「とにかく、無事に公開できるように祈っているよ。そのための準備もしてきた」
「そうだな。まあ大丈夫だろう。信じて結果を待とう」



 公開した瞬間、あっという間に100万ダウンロードを超えたとの連絡が入る。ものすごいスピードだ。サーバーは予想通りの負荷に耐え、システムは安定して動作していたという。入念な準備が実を結んでいる。

 昼休みに確認すると、ダウンロード数はすでに500万を突破していた。こんなにも早く、しかも世界中からアクセスがあるという。世界中のゲーム実況者たちも一斉にプレイ動画を投稿しているらしい。SNSではゲーム関連のハッシュタグが世界中でトレンド入りしていた。



 ハヤトの携帯に、莉々から興奮気味のメッセージが届いた。

『ハヤト! すごいことになってます! 多くの人たちが、私たちの冒険を体験してくれていますよ!』

 ハヤトはそのメッセージを見て、静かに微笑んだ。異世界で命を懸けた戦いの記憶が、今こうして多くの人に共有される。それは不思議な感覚だったが、同時に心を温かくするものでもあった。

『素晴らしいね。莉々の頑張りが実を結んだんだ』

 ハヤトが返信すると、すぐに莉々からの返事が来た。

『ハヤトの英雄譚を、多くの人に伝えることができて本当に嬉しいです。これで、皆の中に記憶は引き継がれていく』
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