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第21話 広がる影響 ※第三者視点
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「危ない所を助けてくれて、感謝する」
そう言って男が深く頭を下げた。それに続いて、彼の仲間の冒険者たちも頭を下げる。本当に危なかった。あのまま助けが来なければ、全員死んでいたに違いない。命を救われたことを、助けられた者たちは心の底から感謝した。
冒険者としての長い活動の中で、こんな経験は初めてだった。冒険者は、基本的に自己責任が原則。顔見知りであれば助けることもあるかもしれないが、見ず知らずの人を助けられるほど余裕のある者は少ない。だが、駆けつけてくれた者たちは違っていた。
「間に合ってよかったです」
そう答えたのは、美しい女性だった。まだ若いのに堂々としている。凛々しくも優しい雰囲気を漂わせ、強者特有のオーラを感じさせた。彼女の背後には、先ほど活躍していた三人の姿があった。
金髪の女騎士、活発に動く少女に落ち着いた様子の老人。不思議な組み合わせのようにも見えるが、完璧なチームワークを発揮していた。
そんな彼女たちの姿を見て、熟練の冒険者は思い出した。最近、王都で話題になっている新人冒険者パーティーのことを。
新人のはずなのに、数多くの依頼を短期間でこなしているという噂。しかも、あの名高いアンクティワン商会が後ろ盾になっていて、その活躍はまさに伝説的だという。ギルドでは、彼女たちの評判が冒険者の間で急速に広まっていた。
聞いた話によると、そのパーティーは困っている冒険者を見かけたら必ず助けるらしい。今までの冒険者には見られなかったタイプで、神殿の聖女のような存在だと評されていた。一度その噂のパーティーに会ってみたいと思っていた。だけど、まさか自分が助けられる側になるとは思わなかった。
しかも、助けてもらったお礼の報酬は受け取らないという。「次に困っている人を見かけたら、あなたが助けてください」。そう言って去っていくのだと。
一部の人間は、単に人気集めをしているだけだと批判するが、実際に助けられた者たちは本当に感謝して、言われた通り困っている者を見かければ助けるようになっていた。その助け合いの輪が、王都の冒険者たちの間でどんどん広がっているのだ。
冒険者たちの雰囲気が、その新人パーティーの登場によって大きく変わった。最近は都市周辺に生息するモンスターが例年にないほど活発化しており、すでに犠牲者も出ていた。このような助け合いがなければ、もっと多くの命が失われていたかもしれない。そんな危機的状況で、他人を助けるという行為が広がっていたのだ。
「まだ奥に、モンスターが集まっているかもしれない。対処しておかないと、王都の方に迫って来るかもしれないぞ」
白髭の老人が穏やかな口調で報告した。そんな穏やかさの中にも、緊迫感を含んだ声に、その場にいた全員の表情が引き締まった。ここを突破されたら、王都の安全が脅かされかねない。
「それは、危ないわね」
リーダーらしい若い女性が冷静に応じる。彼女の目に、決意の光が宿る。
「我々は、対処に向かいます。皆さんは、王都に戻って報告を」
「いや、しかしっ!」
男は反射的に声を上げた。回復してもらった今なら、自分たちも戦える。何か手伝えることはないのかと言おうとした。だが、冷静になって状況を見つめ直した。
武器と防具の状態が悪く、さっきまで全滅寸前だったことを思い出して口を閉じる。仲間たちの顔を見れば、彼らもまだ疲労が抜けていない。そして、彼女の提案を受け入れることにした。
「……わかった。俺たちは、急いで王都に戻る。ギルドへの報告も引き受けよう」
「お願いします」
助けられたパーティーは、後を任せて帰還することにした。自分たちに代わって、強者である彼女たちが戦ってくれることに感謝しながら。
それぞれの目的地へ向かおうとした時、熟練の冒険者は聞いた。
「助けてもらった礼は、君たちが無事王都に戻ってきたら支払えばいいか?」
救援してもらったお礼はどうするのかと。女性は振り返り、にこりと微笑んで口を開いた。その表情はまるで太陽のように明るく純粋な笑顔。見る者の心に温かい希望の光を灯すものだった。
「お礼は、いりません」
「いや、しかし。それでは」
噂に聞いていた通りの返答だった。だがそれでは困る。どうやって感謝の気持ちを伝えればいいのか。助けられた男は、戸惑った表情を浮かべる。
「それなら、困っている人を見かけたら、今回のように貴方たちが助けてあげてください」
やはり彼女たちが、そうなのか。
その言葉を聞いた瞬間、彼女たちこそが王都で噂になっている冒険者パーティーであることを確信した。間違いない。王都の状況を変えているのは彼女たちの影響だ。彼女たちの優しさと強さが、冒険者たちの在り方を変えつつあるのだ。
「わかった。君たちは強いから大丈夫だろうけど、くれぐれも気をつけてくれ!」
「お気遣い、感謝します。そちらも、お気をつけて」
そう言って、彼女たちはモンスターの残党を討伐するために深い森へと向かっていった。四人の背中が、だんだんと森の中に溶け込んでいく。その姿を見送りながら、男たちは王都へと急いで戻る道を進んだ。
彼らの胸に残ったのは、危機を救われた感謝と、彼女たちの優しさだった。そして、次に困っている者を見かけたら、今度は自分たちが手を差し伸べようという決意だった。
そう言って男が深く頭を下げた。それに続いて、彼の仲間の冒険者たちも頭を下げる。本当に危なかった。あのまま助けが来なければ、全員死んでいたに違いない。命を救われたことを、助けられた者たちは心の底から感謝した。
冒険者としての長い活動の中で、こんな経験は初めてだった。冒険者は、基本的に自己責任が原則。顔見知りであれば助けることもあるかもしれないが、見ず知らずの人を助けられるほど余裕のある者は少ない。だが、駆けつけてくれた者たちは違っていた。
「間に合ってよかったです」
そう答えたのは、美しい女性だった。まだ若いのに堂々としている。凛々しくも優しい雰囲気を漂わせ、強者特有のオーラを感じさせた。彼女の背後には、先ほど活躍していた三人の姿があった。
金髪の女騎士、活発に動く少女に落ち着いた様子の老人。不思議な組み合わせのようにも見えるが、完璧なチームワークを発揮していた。
そんな彼女たちの姿を見て、熟練の冒険者は思い出した。最近、王都で話題になっている新人冒険者パーティーのことを。
新人のはずなのに、数多くの依頼を短期間でこなしているという噂。しかも、あの名高いアンクティワン商会が後ろ盾になっていて、その活躍はまさに伝説的だという。ギルドでは、彼女たちの評判が冒険者の間で急速に広まっていた。
聞いた話によると、そのパーティーは困っている冒険者を見かけたら必ず助けるらしい。今までの冒険者には見られなかったタイプで、神殿の聖女のような存在だと評されていた。一度その噂のパーティーに会ってみたいと思っていた。だけど、まさか自分が助けられる側になるとは思わなかった。
しかも、助けてもらったお礼の報酬は受け取らないという。「次に困っている人を見かけたら、あなたが助けてください」。そう言って去っていくのだと。
一部の人間は、単に人気集めをしているだけだと批判するが、実際に助けられた者たちは本当に感謝して、言われた通り困っている者を見かければ助けるようになっていた。その助け合いの輪が、王都の冒険者たちの間でどんどん広がっているのだ。
冒険者たちの雰囲気が、その新人パーティーの登場によって大きく変わった。最近は都市周辺に生息するモンスターが例年にないほど活発化しており、すでに犠牲者も出ていた。このような助け合いがなければ、もっと多くの命が失われていたかもしれない。そんな危機的状況で、他人を助けるという行為が広がっていたのだ。
「まだ奥に、モンスターが集まっているかもしれない。対処しておかないと、王都の方に迫って来るかもしれないぞ」
白髭の老人が穏やかな口調で報告した。そんな穏やかさの中にも、緊迫感を含んだ声に、その場にいた全員の表情が引き締まった。ここを突破されたら、王都の安全が脅かされかねない。
「それは、危ないわね」
リーダーらしい若い女性が冷静に応じる。彼女の目に、決意の光が宿る。
「我々は、対処に向かいます。皆さんは、王都に戻って報告を」
「いや、しかしっ!」
男は反射的に声を上げた。回復してもらった今なら、自分たちも戦える。何か手伝えることはないのかと言おうとした。だが、冷静になって状況を見つめ直した。
武器と防具の状態が悪く、さっきまで全滅寸前だったことを思い出して口を閉じる。仲間たちの顔を見れば、彼らもまだ疲労が抜けていない。そして、彼女の提案を受け入れることにした。
「……わかった。俺たちは、急いで王都に戻る。ギルドへの報告も引き受けよう」
「お願いします」
助けられたパーティーは、後を任せて帰還することにした。自分たちに代わって、強者である彼女たちが戦ってくれることに感謝しながら。
それぞれの目的地へ向かおうとした時、熟練の冒険者は聞いた。
「助けてもらった礼は、君たちが無事王都に戻ってきたら支払えばいいか?」
救援してもらったお礼はどうするのかと。女性は振り返り、にこりと微笑んで口を開いた。その表情はまるで太陽のように明るく純粋な笑顔。見る者の心に温かい希望の光を灯すものだった。
「お礼は、いりません」
「いや、しかし。それでは」
噂に聞いていた通りの返答だった。だがそれでは困る。どうやって感謝の気持ちを伝えればいいのか。助けられた男は、戸惑った表情を浮かべる。
「それなら、困っている人を見かけたら、今回のように貴方たちが助けてあげてください」
やはり彼女たちが、そうなのか。
その言葉を聞いた瞬間、彼女たちこそが王都で噂になっている冒険者パーティーであることを確信した。間違いない。王都の状況を変えているのは彼女たちの影響だ。彼女たちの優しさと強さが、冒険者たちの在り方を変えつつあるのだ。
「わかった。君たちは強いから大丈夫だろうけど、くれぐれも気をつけてくれ!」
「お気遣い、感謝します。そちらも、お気をつけて」
そう言って、彼女たちはモンスターの残党を討伐するために深い森へと向かっていった。四人の背中が、だんだんと森の中に溶け込んでいく。その姿を見送りながら、男たちは王都へと急いで戻る道を進んだ。
彼らの胸に残ったのは、危機を救われた感謝と、彼女たちの優しさだった。そして、次に困っている者を見かけたら、今度は自分たちが手を差し伸べようという決意だった。
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