9 / 12
第9話 好き勝手に
しおりを挟む
アンセルム王子の行動は、国王陛下に全て報告済みだった。
彼が、王族という立場にプレッシャーを感じていたこと。私に隠れて、ディアヌという名の女性と会っていたこと。近いうちに、何か問題を起こしそうということを。
国王陛下と王妃は真剣に、私の話を聞いてくれた。どうにかして問題を回避する、その方法を話し合った。
アンセルム王子に忠告して、教育にも力を入れてきた。彼が王立学園に入学した頃から、両親に強く反発するようになった。それで国王夫妻は干渉や小言を減らして、王子の資質を見極めることにした。学園を卒業する頃に、王国を背負っていけるのかどうかを判断されることになった。
こうして、両親からの干渉が減ったのをいいことにアンセルム王子は自由気ままに行動するようになる。そして、ディアヌという女に引っかかってしまった。
「王室から除名される貴方は当然、王位継承権を剥奪されます。代わりに、貴方の弟であるライオネル様が第一継承者の王太子となります」
「な、なにを言っている……? 王位継承権を剥奪だと……!?」
呆然とするアンセルム元王子に、更に突きつける。
「王室から除名される貴方は、王都から出てくように陛下から命令されます。指示に従って、速やかに立ち去って下さい」
「はぁ? な、なぜ王族の俺が王都を追い出されなければならないのだ!?」
「陛下が承認された、この書状をお読みください」
「……くっ!」
私が彼に突きつけた羊皮紙には、アンセルム王子が婚約を一方的に破棄した場合は王位継承権を剥奪して、王室から除名すること。王都から出ていくようにという指示が、しっかりと書き記してあった。先程、私が彼に言ったことが。
本当は、王都から追い出すんじゃなくて、死刑になる可能性もあった。でも私が、彼の助命を願った。かつて愛していた人だから。それでも、彼には生きていてほしいと思ったから。
将来に禍根を残す恐れがあるのに、陛下と王妃は私の願いを聞き入れてくれた。
「なぜだ!? なぜ、こんな仕打ちを受けるんだ……! ただ俺は、真実の愛に生きようとしただけなのにッ!」
「真実の愛、ですか……」
廃嫡すると知った時にディアヌの表情が引きつるのを、私は目撃していた。やはり彼女は、打算を働かせて王子の婚約者という立場を奪おうとしたようね。残念ながら思い通りにさせないよう、阻止することは出来たかしら。
アンセルム王子も、きちんと手順を踏んで事を進めるべきだった。心の底から彼女を愛して、幸せにしたいと思っていたのなら。
彼の口から出た言葉は、場当たり的な考えで軽々しく出てきただけのもの。でも、真実の愛。それは、私が求めていたものだった。
「真実の愛に生きる、と言うのなら! まず私と話し合って、婚約を円満に解消するべきでした。その後に、国王陛下と話し合い、ディアヌとの婚約を認めてもらうのが筋でしょう? それなのに貴方は逃げ出して、自分勝手に動いた。今日の婚約破棄も思いつきで、陛下の許可も無い独断専行。身勝手な行動をした罰を受け入れなさい」
「だけど、それだけで、こんな……」
「それだけ? この国の王が決めた婚約を好き勝手に破棄しようとしたのですよ? 貴方は王族であり、継承順位一位の王子でした。ですが、陛下よりも立場は下です。国王陛下に逆らったのです。それは、とても重い罪ですよ」
彼が、王族という立場にプレッシャーを感じていたこと。私に隠れて、ディアヌという名の女性と会っていたこと。近いうちに、何か問題を起こしそうということを。
国王陛下と王妃は真剣に、私の話を聞いてくれた。どうにかして問題を回避する、その方法を話し合った。
アンセルム王子に忠告して、教育にも力を入れてきた。彼が王立学園に入学した頃から、両親に強く反発するようになった。それで国王夫妻は干渉や小言を減らして、王子の資質を見極めることにした。学園を卒業する頃に、王国を背負っていけるのかどうかを判断されることになった。
こうして、両親からの干渉が減ったのをいいことにアンセルム王子は自由気ままに行動するようになる。そして、ディアヌという女に引っかかってしまった。
「王室から除名される貴方は当然、王位継承権を剥奪されます。代わりに、貴方の弟であるライオネル様が第一継承者の王太子となります」
「な、なにを言っている……? 王位継承権を剥奪だと……!?」
呆然とするアンセルム元王子に、更に突きつける。
「王室から除名される貴方は、王都から出てくように陛下から命令されます。指示に従って、速やかに立ち去って下さい」
「はぁ? な、なぜ王族の俺が王都を追い出されなければならないのだ!?」
「陛下が承認された、この書状をお読みください」
「……くっ!」
私が彼に突きつけた羊皮紙には、アンセルム王子が婚約を一方的に破棄した場合は王位継承権を剥奪して、王室から除名すること。王都から出ていくようにという指示が、しっかりと書き記してあった。先程、私が彼に言ったことが。
本当は、王都から追い出すんじゃなくて、死刑になる可能性もあった。でも私が、彼の助命を願った。かつて愛していた人だから。それでも、彼には生きていてほしいと思ったから。
将来に禍根を残す恐れがあるのに、陛下と王妃は私の願いを聞き入れてくれた。
「なぜだ!? なぜ、こんな仕打ちを受けるんだ……! ただ俺は、真実の愛に生きようとしただけなのにッ!」
「真実の愛、ですか……」
廃嫡すると知った時にディアヌの表情が引きつるのを、私は目撃していた。やはり彼女は、打算を働かせて王子の婚約者という立場を奪おうとしたようね。残念ながら思い通りにさせないよう、阻止することは出来たかしら。
アンセルム王子も、きちんと手順を踏んで事を進めるべきだった。心の底から彼女を愛して、幸せにしたいと思っていたのなら。
彼の口から出た言葉は、場当たり的な考えで軽々しく出てきただけのもの。でも、真実の愛。それは、私が求めていたものだった。
「真実の愛に生きる、と言うのなら! まず私と話し合って、婚約を円満に解消するべきでした。その後に、国王陛下と話し合い、ディアヌとの婚約を認めてもらうのが筋でしょう? それなのに貴方は逃げ出して、自分勝手に動いた。今日の婚約破棄も思いつきで、陛下の許可も無い独断専行。身勝手な行動をした罰を受け入れなさい」
「だけど、それだけで、こんな……」
「それだけ? この国の王が決めた婚約を好き勝手に破棄しようとしたのですよ? 貴方は王族であり、継承順位一位の王子でした。ですが、陛下よりも立場は下です。国王陛下に逆らったのです。それは、とても重い罪ですよ」
221
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄した王子と男爵令嬢のその後……は幸せ?……な訳ない!
たろ
恋愛
「エリザベス、君との婚約を破棄する」
「どうしてそんな事を言うのですか?わたしが何をしたと言うのでしょう」
「君は僕の愛するイライザに対して嫌がらせをしただろう、そんな意地の悪い君のことは愛せないし結婚など出来ない」
「……愛せない……わかりました。殿下……の言葉を……受け入れます」
なんで君がそんな悲しそうな顔をするんだ?
この話は婚約破棄をして、父親である陛下に嘘で固めて公爵令嬢のエリザベスを貶めたと怒られて
「そんなにその男爵令嬢が好きなら王族をやめて男爵に婿に行け」と言われ、廃嫡される王子のその後のお話です。
頭脳明晰、眉目秀麗、みんなが振り向くかっこいい殿下……なのにエリザベスの前では残念な男。
★軽い感じのお話です
そして、殿下がひたすら残念です
広ーい気持ちで読んでいただけたらと思います
(完結)婚約解消は当然でした
青空一夏
恋愛
エヴァリン・シャー子爵令嬢とイライジャ・メソン伯爵は婚約者同士。レイテ・イラ伯爵令嬢とは従姉妹。
シャー子爵家は大富豪でエヴァリンのお母様は他界。
お父様に溺愛されたエヴァリンの恋の物語。
エヴァリンは婚約者が従姉妹とキスをしているのを見てしまいますが、それは・・・・・・
婚約破棄をした相手方は知らぬところで没落して行きました
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢だったアンネリーは婚約者であり、侯爵でもあるスティーブンに真実の愛がどうたらという理由で婚約破棄されてしまった。
悲しみに暮れたアンネリーだったが、偶々、公爵令息のジョージと再会し交流を深めていく。
アンネリーがジョージと楽しく生活をしている中、真実の愛に目覚めたらしいスティーブンには様々な災厄? が降りかかることになり……まさに因果応報の事態が起きるのであった。
王子が親友を好きになり婚約破棄「僕は本当の恋に出会えた。君とは結婚できない」王子に付きまとわれて迷惑してる?衝撃の真実がわかった。
佐藤 美奈
恋愛
セシリア公爵令嬢とヘンリー王子の婚約披露パーティーが開かれて以来、彼の様子が変わった。ある日ヘンリーから大事な話があると呼び出された。
「僕は本当の恋に出会ってしまった。もう君とは結婚できない」
もうすっかり驚いてしまったセシリアは、どうしていいか分からなかった。とりあえず詳しく話を聞いてみようと思い尋ねる。
先日の婚約披露パーティーの時にいた令嬢に、一目惚れしてしまったと答えたのです。その令嬢はセシリアの無二の親友で伯爵令嬢のシャロンだったというのも困惑を隠せない様子だった。
結局はヘンリーの強い意志で一方的に婚約破棄したいと宣言した。誠実な人柄の親友が裏切るような真似はするはずがないと思いシャロンの家に会いに行った。
するとヘンリーがシャロンにしつこく言い寄っている現場を目撃する。事の真実がわかるとセシリアは言葉を失う。
ヘンリーは勝手な思い込みでシャロンを好きになって、つきまとい行為を繰り返していたのだ。
婚約破棄からの復讐~私を捨てたことを後悔してください
satomi
恋愛
私、公爵令嬢のフィオナ=バークレイはアールディクス王国の第2王子、ルード様と婚約をしていましたが、かなりの大規模な夜会で婚約破棄を宣言されました。ルード様の母君(ご実家?)が切望しての婚約だったはずですが?その夜会で、私はキョウディッシュ王国の王太子殿下から婚約を打診されました。
私としては、婚約を破棄された時点でキズモノとなったわけで、隣国王太子殿下からの婚約話は魅力的です。さらに、王太子殿下は私がルード殿下に復讐する手助けをしてくれるようで…
婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。
久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」
煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。
その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。
だったら良いでしょう。
私が綺麗に断罪して魅せますわ!
令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?
【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?
しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。
王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。
恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!!
ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。
この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。
孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。
なんちゃって異世界のお話です。
時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。
HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24)
数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。
*国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。
貴方との婚約は破棄されたのだから、ちょっかいかけてくるのやめてもらっても良いでしょうか?
ツキノトモリ
恋愛
伯爵令嬢エリヴィラは幼馴染で侯爵令息のフィクトルと婚約した。婚約成立後、同じ学校に入学した二人。フィクトルは「婚約者とバレたら恥ずかしい」という理由でエリヴィラに学校では話しかけるなと言う。しかし、自分はエリヴィラに話しかけるし、他の女子生徒とイチャつく始末。さらに、エリヴィラが隣のクラスのダヴィドと話していた時に邪魔してきた上に「俺以外の男子と話すな」とエリヴィラに言う。身勝手なことを言われてエリヴィラは反論し、フィクトルと喧嘩になって最終的に婚約は白紙に戻すことに。だが、婚約破棄後もフィクトルはエリヴィラにちょっかいをかけてきて…?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる