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第10話 意図せぬ犠牲 ※アレクサンダー王子視点
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エリザベートとの関係は残念だったけれど、気合を入れて俺は動き始めた
王子の仕事に集中した。簡単な計算をこなせば、周りの人たちが褒めてくれた。これぐらいのことで褒めてくれるなんて。これは、前世の知識があるからこそ。だから、どんどん仕事を処理していく。
前世の記憶を参考に、ちょっとした政策を提案する。それも上手くいった。
王子としての有能さをアピールしていく。王国過去最高の王子だと呼ばれるようになって、俺の目的に近づいていく実感があった。王になる、という目的に。
協力してくれる人が増えていった。大臣に有力貴族、技術者たちなど。上の兄たちと比べても、俺のほうが協力者の数が多い。どんどん仲間を増やしていく。そして、認めさせる。俺が王に相応しいことを。
そんなある日のこと、部下が報告に来た。
「第一王子の暗殺に成功しました」
「は?」
それは、突然のことだった。頭の中が真っ白になる。
「任務にあたった者は、全員処理済みです。これで、誰がやったのか発覚する恐れはありません」
「な、ど、どうして……、俺はそんな命令は……」
「これも、アレクサンダー様に王の座を手に入れてもらうためです。必要な犠牲でした」
兄が死んだ。俺は言葉を失った。震える手を握りしめ、混乱する頭を必死で冷静さを取り戻そうとする。こんなことになるなんて、思ってもみなかった。
その後、兄の葬式が行われた。家族と一緒に俺も参加する。皆が悲しみに暮れていた。前世の記憶がある俺は、兄に対して家族という意識が薄かった。それでも俺は、悲しかった。
犯人は発覚していない。
そんなこと、俺は命令していない。どうして、そんなことをするのか。どうして、こうなってしまったのか。自分の意図しないところで部下が勝手に動いている。次は誰が標的になるのか。
俺が止めなければ。そう思ったのに、もう一人の王子が部下によって暗殺された。残された王子たちは、暗殺を恐れ、次々と姿を消していった。海外へ行ってしまったのか、行方不明である。
そして王国に残った俺が、王位継承権第一位となった。暗殺を行った組織は、俺の手によって壊滅したことになった。全て、優秀な部下たちが仕組んだこと。俺は、暗殺を恐れない勇敢な王子として称えられた。
「……どうして」
たしかに俺は、王になることを目指していた。でも、こんな犠牲を払うような方法でなるつもりはなかった。順当に、能力を認めてもらい、王や兄たちを説得して座を譲ってもらう。そのつもりだった。けれど、それを待たずに周りが動いてしまった。その結果が、これだ。
胸の奥で、罪悪感がざわめく。兄たちは、俺の野望のために命を奪われたようなものだ。責任は感じずにはいられない。
だが、今更後悔しても仕方がない。ならば俺は、兄たちの犠牲に報いるために王国の未来を、より良いものにしなければならない。なんとしてでも。
「俺が望んでしまったから、部下が動いた。そして、こうなってしまった。ならば、必ず俺は王国を平和で豊かなものにしなければならない。それが、兄たちの犠牲に報いて、罪を償う方法」
こうして、俺は王としての道を歩み始めることになった。だが、その道のりは平坦ではないだろう。
失敗は許されない。俺は、自分の意思とは関係なく、運命に追い詰められてしまったのだ。
王子の仕事に集中した。簡単な計算をこなせば、周りの人たちが褒めてくれた。これぐらいのことで褒めてくれるなんて。これは、前世の知識があるからこそ。だから、どんどん仕事を処理していく。
前世の記憶を参考に、ちょっとした政策を提案する。それも上手くいった。
王子としての有能さをアピールしていく。王国過去最高の王子だと呼ばれるようになって、俺の目的に近づいていく実感があった。王になる、という目的に。
協力してくれる人が増えていった。大臣に有力貴族、技術者たちなど。上の兄たちと比べても、俺のほうが協力者の数が多い。どんどん仲間を増やしていく。そして、認めさせる。俺が王に相応しいことを。
そんなある日のこと、部下が報告に来た。
「第一王子の暗殺に成功しました」
「は?」
それは、突然のことだった。頭の中が真っ白になる。
「任務にあたった者は、全員処理済みです。これで、誰がやったのか発覚する恐れはありません」
「な、ど、どうして……、俺はそんな命令は……」
「これも、アレクサンダー様に王の座を手に入れてもらうためです。必要な犠牲でした」
兄が死んだ。俺は言葉を失った。震える手を握りしめ、混乱する頭を必死で冷静さを取り戻そうとする。こんなことになるなんて、思ってもみなかった。
その後、兄の葬式が行われた。家族と一緒に俺も参加する。皆が悲しみに暮れていた。前世の記憶がある俺は、兄に対して家族という意識が薄かった。それでも俺は、悲しかった。
犯人は発覚していない。
そんなこと、俺は命令していない。どうして、そんなことをするのか。どうして、こうなってしまったのか。自分の意図しないところで部下が勝手に動いている。次は誰が標的になるのか。
俺が止めなければ。そう思ったのに、もう一人の王子が部下によって暗殺された。残された王子たちは、暗殺を恐れ、次々と姿を消していった。海外へ行ってしまったのか、行方不明である。
そして王国に残った俺が、王位継承権第一位となった。暗殺を行った組織は、俺の手によって壊滅したことになった。全て、優秀な部下たちが仕組んだこと。俺は、暗殺を恐れない勇敢な王子として称えられた。
「……どうして」
たしかに俺は、王になることを目指していた。でも、こんな犠牲を払うような方法でなるつもりはなかった。順当に、能力を認めてもらい、王や兄たちを説得して座を譲ってもらう。そのつもりだった。けれど、それを待たずに周りが動いてしまった。その結果が、これだ。
胸の奥で、罪悪感がざわめく。兄たちは、俺の野望のために命を奪われたようなものだ。責任は感じずにはいられない。
だが、今更後悔しても仕方がない。ならば俺は、兄たちの犠牲に報いるために王国の未来を、より良いものにしなければならない。なんとしてでも。
「俺が望んでしまったから、部下が動いた。そして、こうなってしまった。ならば、必ず俺は王国を平和で豊かなものにしなければならない。それが、兄たちの犠牲に報いて、罪を償う方法」
こうして、俺は王としての道を歩み始めることになった。だが、その道のりは平坦ではないだろう。
失敗は許されない。俺は、自分の意思とは関係なく、運命に追い詰められてしまったのだ。
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