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第2章 学園編
閑話09 懐かしのゲームをプレイ(佐藤優視点)
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「うわっ、懐かしい!」
とある日。買い物に向かっている途中で、ゲームセンターの前を通りかかった時に発見した懐かしのゲーム。それを見て、僕は声を上げた。そのゲームは格闘ゲームで昔ブームになったこともあり、僕も何度かゲームセンターで友達とプレイしたことがあるものだった。
「っと、違う違う」
意識的には、過去のゲーム。だけど、良く考えると、今はまだ1996年だった。筐体の状態などを見ても、最新のゲームだとわかる。
懐かしいけれど新しい。とても不思議な感覚だった。
ワンコインだけプレイしていこうかな。腕時計を確認すると、少し時間があった。1プレイなら、急いでいけばタイムサービスに間に合うぐらいの時間だと、頭の中で計算した。
よし、やろう。
ちょうど空いていた席に座る。並んでいる人もいなかったので、イスに体をすべり込ませて、ボタンに手を乗せた。
聞き覚えのある懐かしい音楽、選択画面で一番得意にしていたキャラにカーソルを合わせる。操作の感じを思い出すようにして確かめる。意外と覚えているものだなと感じていた。
僕の記憶だと数年前のモノだけれど、コマンドを入力することが出来た。COMが操作するキャラクターに、面白いようにコンボ技が決まっていく。
勝ち上がって次第に強くなっていくCOMのキャラクターを、次々と倒していく。 やがて、EDが流れ始めるた。
「おぉ!」
「すごい」
「クリアした!?」
「……ッ!?」
いつの間にか後ろに、たくさんの人が居た。ゲームに熱中している間に、集まっていたようだ。
「スゴイね、君」
「えっ?」
群衆達の中から一人が前に出てきて、話しかけられた。僕に声を掛けてきたのは、小柄な女の子だった。
つばが逆になるように帽子をかぶって、腰まで届くロングの髪の毛。愛嬌たっぷりの大きな目と口をした、可愛らしい女の子。身長は僕と同じか、僕より少しだけ低いかもしれない小さな子。
僕が座って彼女を振り返り見上げると、彼女はにっこりと笑ってつづける。
「このゲーム出たばっかりなのに、もう攻略できてる」
人差し指をゲーム画面に向けながら言う。
「ゲーム、好きなの?」
「あっと、えっと……そうです」
グイと迫るように話しかけられたので、僕は戸惑いながら聞かれたことを答える。もしかして、知り合いなのかな。でも、知らない相手だ。
「あっ、ゴメン。ナンパとかじゃないよ。ただ君のプレイが気になっただけだから。そんなに緊張しなくても、いいよ」
「えっと、そうなんですか」
彼女は慌てながら、早口で言うと両腕を目の前で振ってナンパを否定する。見た目よりも、年上の女性なのかもしれない。
「それよりも、私もそのゲームやってもいいかな?」
「あっ、はい。どうぞ、僕は終わったところなんで」
そう言って、席を空ける。
ゲーム画面は、ちょうどEDが流れ終わったところだった。なのでちょうど良い。彼女は椅子に座って、慣れた手付きでコインを素早く投入口から入れる。それから、キャラクター画面でしばらく悩んでから、聞いてくる。まだ僕が彼女を見ていたから話しかけられたようだ。
「どれか、オススメのキャラクターとかいる?」
「えっと、そーですね」
なんとなく、彼女ともう少し話そうかという気になった。僕は古い記憶を探って、キャラクターを指さしで解説していく。
「このキャラクターはオールラウンドで初心者向けですね。こっちのキャラクターは素早く動いて攻撃を繰り出すので、爽快感抜群です。このキャラクターは火力が高く一気に勝負を決めるのに向いています」
「君、凄いね! このゲームをそんなに研究しているなんて!?」
僕は、ちょっとズルをしているから。だけど、彼女に説明するわけにもいかない。
「いえ、そんな……っと、もう時間が無いですね」
「おっと」
キャラクター選択画面には時間が表示されていて、見たところ残り10秒になって選択しなければ、強制でキャラクターを決められて先に進んでしまう。
「じゃあ、このキャラクターでやらせてもらおうかな!」
彼女は、オールラウンドと説明したキャラクターを選択した。ゲームを開始する。初めは戸惑いながらボタンを押して、色々と試しながらコマンドを発見して技を出していく。
「あぁ、なるほど。技は、あのゲームと大体いっしょだね」
どうやら、彼女はゲーマーのようだ。他のゲームの知識を活用しながら、キャラを操作していく。そして敵を倒して、勝ち進めていく。
「あっ! 駄目か……」
だが、ボス一歩手前の所で負けてしまった。コンテニュー画面が表示されて残りの数字が減っていく。その画面を眺めながら、彼女はがっくしと肩を落としていた。
やがて、彼女は顔を上げて僕の方に向いて言った。
「ありがとう。解説してくれたおかげで、いいところまで行けたよ」
「いえ、どういたしまして」
「よかったら、この後……」
「あっ!」
彼女が何か言いかけたが、急に時間が気になって僕は時計を見た。そして、焦る。既にタイムサービスが始まる時間だったから。今からスーパーまで走って行かないと間に合わない時間だった。
「ごめん。用事があるから、もう行くね!」
そして僕は彼女の返事も待たずに走り出した。早くスーパーに行かないと、商品が売り切れてしまうから。急がないと!
とある日。買い物に向かっている途中で、ゲームセンターの前を通りかかった時に発見した懐かしのゲーム。それを見て、僕は声を上げた。そのゲームは格闘ゲームで昔ブームになったこともあり、僕も何度かゲームセンターで友達とプレイしたことがあるものだった。
「っと、違う違う」
意識的には、過去のゲーム。だけど、良く考えると、今はまだ1996年だった。筐体の状態などを見ても、最新のゲームだとわかる。
懐かしいけれど新しい。とても不思議な感覚だった。
ワンコインだけプレイしていこうかな。腕時計を確認すると、少し時間があった。1プレイなら、急いでいけばタイムサービスに間に合うぐらいの時間だと、頭の中で計算した。
よし、やろう。
ちょうど空いていた席に座る。並んでいる人もいなかったので、イスに体をすべり込ませて、ボタンに手を乗せた。
聞き覚えのある懐かしい音楽、選択画面で一番得意にしていたキャラにカーソルを合わせる。操作の感じを思い出すようにして確かめる。意外と覚えているものだなと感じていた。
僕の記憶だと数年前のモノだけれど、コマンドを入力することが出来た。COMが操作するキャラクターに、面白いようにコンボ技が決まっていく。
勝ち上がって次第に強くなっていくCOMのキャラクターを、次々と倒していく。 やがて、EDが流れ始めるた。
「おぉ!」
「すごい」
「クリアした!?」
「……ッ!?」
いつの間にか後ろに、たくさんの人が居た。ゲームに熱中している間に、集まっていたようだ。
「スゴイね、君」
「えっ?」
群衆達の中から一人が前に出てきて、話しかけられた。僕に声を掛けてきたのは、小柄な女の子だった。
つばが逆になるように帽子をかぶって、腰まで届くロングの髪の毛。愛嬌たっぷりの大きな目と口をした、可愛らしい女の子。身長は僕と同じか、僕より少しだけ低いかもしれない小さな子。
僕が座って彼女を振り返り見上げると、彼女はにっこりと笑ってつづける。
「このゲーム出たばっかりなのに、もう攻略できてる」
人差し指をゲーム画面に向けながら言う。
「ゲーム、好きなの?」
「あっと、えっと……そうです」
グイと迫るように話しかけられたので、僕は戸惑いながら聞かれたことを答える。もしかして、知り合いなのかな。でも、知らない相手だ。
「あっ、ゴメン。ナンパとかじゃないよ。ただ君のプレイが気になっただけだから。そんなに緊張しなくても、いいよ」
「えっと、そうなんですか」
彼女は慌てながら、早口で言うと両腕を目の前で振ってナンパを否定する。見た目よりも、年上の女性なのかもしれない。
「それよりも、私もそのゲームやってもいいかな?」
「あっ、はい。どうぞ、僕は終わったところなんで」
そう言って、席を空ける。
ゲーム画面は、ちょうどEDが流れ終わったところだった。なのでちょうど良い。彼女は椅子に座って、慣れた手付きでコインを素早く投入口から入れる。それから、キャラクター画面でしばらく悩んでから、聞いてくる。まだ僕が彼女を見ていたから話しかけられたようだ。
「どれか、オススメのキャラクターとかいる?」
「えっと、そーですね」
なんとなく、彼女ともう少し話そうかという気になった。僕は古い記憶を探って、キャラクターを指さしで解説していく。
「このキャラクターはオールラウンドで初心者向けですね。こっちのキャラクターは素早く動いて攻撃を繰り出すので、爽快感抜群です。このキャラクターは火力が高く一気に勝負を決めるのに向いています」
「君、凄いね! このゲームをそんなに研究しているなんて!?」
僕は、ちょっとズルをしているから。だけど、彼女に説明するわけにもいかない。
「いえ、そんな……っと、もう時間が無いですね」
「おっと」
キャラクター選択画面には時間が表示されていて、見たところ残り10秒になって選択しなければ、強制でキャラクターを決められて先に進んでしまう。
「じゃあ、このキャラクターでやらせてもらおうかな!」
彼女は、オールラウンドと説明したキャラクターを選択した。ゲームを開始する。初めは戸惑いながらボタンを押して、色々と試しながらコマンドを発見して技を出していく。
「あぁ、なるほど。技は、あのゲームと大体いっしょだね」
どうやら、彼女はゲーマーのようだ。他のゲームの知識を活用しながら、キャラを操作していく。そして敵を倒して、勝ち進めていく。
「あっ! 駄目か……」
だが、ボス一歩手前の所で負けてしまった。コンテニュー画面が表示されて残りの数字が減っていく。その画面を眺めながら、彼女はがっくしと肩を落としていた。
やがて、彼女は顔を上げて僕の方に向いて言った。
「ありがとう。解説してくれたおかげで、いいところまで行けたよ」
「いえ、どういたしまして」
「よかったら、この後……」
「あっ!」
彼女が何か言いかけたが、急に時間が気になって僕は時計を見た。そして、焦る。既にタイムサービスが始まる時間だったから。今からスーパーまで走って行かないと間に合わない時間だった。
「ごめん。用事があるから、もう行くね!」
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