女男の世界

キョウキョウ

文字の大きさ
35 / 60
第3章 テレビ出演編

第24話 モテる理由

しおりを挟む
「優って、ブス専?」

 お昼ご飯を食べ終わった後、いきなり圭一にそう言われて、僕は動揺した。どうしてそう思われたのか、さっぱりわからなかったから。彼から見ると、そんな風に見えるのだろうか?

「なんだよ、いきなり」
「昨日のテレビを見てたんだけどさぁ」

 そう言って、圭一は話し始めた。昨日のテレビというのは、料理部の取材で僕が出演した番組のことだった。

「部員の女の一人に、ちょっと酷いのがいるだろ?」

 誰の事か分からなかった。というか、部員の誰かを貶して言っている友人に対して少しイラっと来た。

「酷いの、って誰の事さ?」
「たしか、副部長の桜って女だよ」
「えっ? 桜さん? 酷いって何が」
「何がって、顔が」
「えー? そうかな?」

 料理部の副部長である桜さん。紅茶を入れるのが上手で、僕は毎回部活の終わりに入れてもらっている。そんな優しい彼女が、何故圭一に酷いと言われているのか、僕には理解できなかった。僕から見れば十分に可愛いし、愛嬌もある。だから、圭一の発言に腹が立った。わざわざ言う必要がないだろうに。

「男ってのはどこかで必ず、女性たちに嫌悪感を覚えるものさ。自分ではそんな風に感じなくても、女どもは意外にそういうのを察知している。いつも鈍いのに、たまに鋭い時があったりする。ブスの女ほどそうだったりする。だから、女はあんまり我を出してこない。たまに自覚していない女もいるけど、ほとんど空気を読んで自重してるんだよ。だけど、優の周りには色んな女が寄ってきてる」

 ズケズケと物を言う奴だ。だけど圭一のような考え方が、この世界での常識らしい。ズレているのは、僕の方なのだろうか。

「優は、学校の女どもに別け隔てなく親切にするだろう? 教科書忘れたからって、机引っ付けて一緒に見てたろ。その時、男の子たちがざわついてたの気づかなかったのか?」
「そんなこと、あったかな?」
「あったよ」

 周りの男子の視線に気づいたかどうか以前に、机を引っ付けて教科書を一緒に見たのなんていつの事やらさっぱり思い出せない。

「弁当を忘れた女がふざけておかずを募った時、一緒におかずを分けてたろ?」
「あぁ、うん」

 それは覚えてる、1週間前に弁当忘れた女子生徒におかずをちょっと分けてあげた。渾身の出来のだし巻玉子だったけど、食べてもらってすごく喜ばれた時の事だろう。

「そういう積み重ねがあって今は、学校中の女たちがお前のファンだってさ。隠れてファンクラブなんてものも作っているらしい」
「そんな事になってるの?」

 ファンクラブ。まるで漫画やアニメの世界だな、なんて思った。僕なんかのファンになっても、何も得しないと思うんだけど。

「そして、昨日のテレビ!」
「昨日のテレビ?」
「そう! 言っちゃなんだが、あれほどのブスを相手にして、普通に接して、あまつさえ指導を熱心にやったらブスな自分でも、あんなふうに接してもらえるかもなんて思うだろ?」
「いや、熱心にって……。別に、たまたまだよ」

 桜さんは料理部で最初に知り合った女性だし、一緒に料理部を盛り上げる仲間だったから。料理部の中では一番気を許せる相手だったけど。今思い返してみると、熱心だったのかもしれない。

 それに桜さんは、かなりの美人だと思う。美人に対して親切にしてしまうのは、男のサガだ。その様子を周りが見れば、熱心に指導していると勘違いされたのかもしれない。

 でも、僕にとってはただ、当たり前のことをしただけだったんだけれどな。

「今日の朝の女だって、多分それが原因だよ。運命の相手なんて、ちょっとおかしな空想に入り浸るのも女性特有の妄想癖さ」
「いや、でも優しくしたからってモテるかどうかは。むしろ、あんまり好まれる容姿じゃないよ僕は」
「……はぁ」

 なぜか重い溜息をつく圭一。彼の言わんとしていることが、いまいち分からない。

「謙虚でいることは美徳だけど、行き過ぎると嫌味に聞こえるって」
「謙虚? 僕は、本気で言ってるけど」
「その容姿で、女性に好かれないと思っているのなら、自己評価が低すぎるよ」
「そうかな?」
「そうだよ」

 謙虚なつもりなんて、全くない。前の世界では女性というものに全く縁が無かった僕は、女性にモテるというのがどういうものかいまいち分からない。意味は分かるけど、相手が自分を好きでいてくれるという感覚がいまいちピンとこない。

 だから、女性に好かれているという感覚もあまりわからない。もし本当に僕に好意を持ってくれている人がいるなら、申し訳ないと思うばかりだ。

「とにかく、今後また女性関係で問題が起きそうだから、気をつけろって話」
「うん。それは、分かったよ」

 圭一が注意してくれる事は、素直にありがたいと思った。今朝の出来事も大変だったから、日頃から気をつける必要があることは分かっている。

「本当に大丈夫かなぁ? 僕は、優が心配だよ」

 また圭一が重い溜息をついて、僕のことを心配している。そんなに僕の事が信用できないのだろうか?

 まぁ確かに、今まで女性に対する警戒心が薄かったから今朝のような事件が起きてしまった。今まで注意が足りなかったことを反省しなければいけない。

 今度から、もう少し女性に対して敏感になるべきなのだろうな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。 ↓ PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。

処理中です...