女男の世界

キョウキョウ

文字の大きさ
36 / 60
第3章 テレビ出演編

第25話 対策についての相談

しおりを挟む
 圭一と一緒にご飯を食べて、その後を喋りながら過ごしていると田中先生が戻ってきた。手には、購買から買ってきたのかサンドイッチを持っている。

 昼休みの時間ぎりぎりまで保健室で田中先生を交えて、他愛ない話をして過ごす。

 チャイムが鳴った後にすぐ、僕と圭一は保健室を後にして教室に戻った。そして、普通に授業を受けた。

 授業も終わって放課後になり、帰ろうかという時。それは聞こえてきた。

「2年2組の佐藤優さん、2年2組の佐藤優さん、至急職員室まで来てください」
「ん?」

 圭一の方を見ると、困ったような顔をしている。多分、今朝の件に関する話だろうと思い、圭一には先に帰ってもらうように伝える。

「遅くなりそうだから、圭一は先に帰ってて」

 僕が言うと、圭一が頷いて答える。

「分かった。待っていたいけど、今日は先約もあるから帰るわ。バイバイ」
「うん。また明日ね」

 圭一と別れを告げて、僕は呼び出された職員室へ向かう。

 どのくらい時間がかかるかな。遅くなるようだったら、部活も寄れないし、夕食の準備もしないといけないから早く終わってほしいけど。そんな事を考えながら歩いていると、職員室に到着した。

「失礼します」

 職員室の扉を開けて中に入ると、始業式の時に少しだけ話したメガネを掛けた女性の先生と目が合った。確か、日野先生と呼ばれていたっけ。

 その名前は、入院していた時に担当してくれた日野原女医のことを思い出す。あの人は今、どうしてるかな。そんな他愛のないことを考える。

 そんな事よりも今は、職員室に呼び出されたことを思い出して日野先生に尋ねた。

「今、放送で呼ばれたんですが」
「あー、はいはい。ちょっと待っててね。加藤先生、優君が来ましたよ」

 席にタイミングよく戻ってきた、担任の加藤先生に声を掛ける日野先生。

 僕に気づいて近寄ってくる加藤先生。相変わらず迫力ある身体をしているな。身長差もあり、ちょっと怖い。その高身長は羨ましいけれど。

「おおっと、お待たせ。わざわざ来てもらって申し訳ないね」
「いえ、大丈夫です」

 一言謝られる。気にしないでいいですよ、という返事をして何故呼ばれたのか聞こうとすると、すぐに加藤先生から次の言葉が投げかけられた。

「とりあえず、来客室に人を待たせてるから。そっちに行こうか」
「あ、はい」

 来客室? 人が待っている? どういうことか分からないけれど、加藤先生の後について行くことにした。

「さぁ、中に入って」
「失礼します」

 来客室の扉を開けて中に入ると、そこには見知った顔がいた。というか、香織さんだった。

「ゆうくん」

 僕の名を呼んで、ソファーから立ち上がる。そして僕は、抱きしめられた。

「あ、あの……。ごめんなさい」
「いいの。本当に、無事で良かった」

 頭上から聞こえてくる、香織さんの弱々しい声。

 どうやら、また心配させてしまったようだ。この頃ずっと心配させてしまい、抱きしめられるまでがパターン化しているような気がする。こんなに何度も心配させてしまうなんて、本当に申し訳ない。

 数分後、落ち着いた香織さんと加藤先生とで話が始まる。内容は、今朝の女性に関する問題だった。

「授業中、学園側は不審人物を招き入れないように警備員の巡回を増やして対処しようと考えています」
「登下校は、どうしたら良いでしょうか?」

 すかさず香織さんが質問する。僕以上に真剣になって、色々と考えてくれている。暴行罪となった女性に襲われたのは僕だけど、自分自身に起きたことなのかと現実感が無くて、どうもそんなに深く考える事かと本気になれなかった。まだ危機感が少ないのかもしれない。周りの皆は、とても真摯に対応してくれているというのに。

 僕も、もっと真剣に向き合わないとダメだろうな。他人事のように考えちゃダメだ。

 そんな事で悩んでいる間に、香織さんと加藤先生の話し合いが続く。

「そうですね。今週か来週ぐらいの短期間については、不自由になるでしょうが私か他の先生が付いてお家まで送り迎えします。ですが、一人の生徒をそんなに長く特別扱いできないですね。長期となると、生徒の中で佐藤さんと同じ方向に家がある生徒たちと時間を合わせて集団下校することで、一人だけにすることを避けるとか……。もしくは、ご家族の方どなたかに付いてもらうぐらいの方法しかありません」
「姉妹が居るので、その子達に付き添ってもらうとか」
「そうして頂けると、助かります。ただ、皆さんの都合もあると思いますから、無理強いはできないのですが」

 話し合いが続き、二人はいくつかの対策を考えてくれている。

 また、負担を増やしてしまうことになりそうだ。僕は男なのに、一人だけで生きて行くのが困難な世界なんだと、改めて感じていた。女性の皆に助けてもらわないと、生活もままならないなんて情けない。

 今朝の出来事で、本当に身に染みて理解できた。僕は弱い。

 話し合いが終わった頃には、既に外は夕暮れ時になっていた。そろそろ、夕ご飯の準備をしないと間に合わないぐらいの時間。

 加藤先生と別れて、香織さんの運転する車に乗って僕は家へと帰ることになった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...