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第4章 親権問題編
第31話 邪道で面倒な状況
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僕が学園に通う時、姉さんたちが付き添ってくれることになった。
基本的には、時間に余裕のある春姉さんが一緒に来てくれることに。通学の時には常に横に並んで歩いてくれて、電車に乗る時も付きっきりで守ってくれた。
今日も授業が終わり、校門前で迎えに来てくれるのを待っていた。すると、周りが騒がしくなってきた。学園の外の方から聞こえてくる声だ。何事だろうかと不思議に思っていると、春姉さんが慌てて駆け寄ってきた。
「良かった、無事に合流出来た」
「そんなに慌てて、どうしたの春姉さん?」
「その話をする前に、とりあえずここから早く離れよう」
「えっと、うん。わかった」
どうしたのだろう。疑問に思ったけど、詳しく聞く前に先に移動する。春姉さんと一緒に、正面の校門とは別の場所から出る。
どうやら、さっき外から聞こえてきた騒がしい声が関係しているようだけど。
「こっちの扉から出られるよ」
学園の裏にあった、小さな扉。学校用務員などが利用しているのだろうか、普段は使わないような場所だった。そこから外に出ることが出来るのだが、先に春姉さんが出ていく。そして、扉の先の道を確認していた。
「うん。奴らは、居ないみたいだ。気付かれないように、静かに行こう」
「わかった」
春姉さんに言われた通り、僕は無言のまま移動する。
そして、いつも歩く帰宅ルートから大回りして、最寄りの駅に向かった。駅に着くまで特に何もなかったが、改札前に人だかりが見えた。
大きなテレビカメラを持った人が居る。先日、学校紹介のテレビを取材された時に使われていたカメラを思い出した。つまり、あの人たちはメディア関係者なのかな。
「あれも、あんまり近寄らないほうが良さそうだな。仕方ない、タクシーを拾うか」
そう言って、近くに停まっていたタクシーに飛び乗った。そのまま、僕らは自宅へ帰る。わざわざタクシーに乗って帰るなんて、普段はしないことだが。それなりに、お金がかかった。
「良かった。無事に帰ってこれたのね」
家に帰るなり、香織さんが安心した表情を浮かべながら出迎えてくれた。リビングに入ると、弁護士である小池さんの姿もあった。
「おかえりなさい、優くん」
「えっと、ただいまです。小池さん」
「君が無事で安心したよ」
「ありがとうございます。でも今って、どういう状況なんですか?」
「詳しく説明しよう。とりあえず、座って聞いてくれ。カオリと春ちゃんも一緒に」
そう言われて、ソファに腰かける。僕を挟む形で右に春姉さんが、左に香織さんが座る。テーブルを挟んで向かい側に小池さんが座っていた。
小池さんの話によると、とある週刊誌の記事が原因らしい。
その内容は、僕の生活について書かれているらしい。朝早くから家事をさせられ、家族から奴隷のような扱いを受けているという。過労で入院するまで追い詰めるような酷い家庭環境だとか。そんな嘘が、記事に書かれていた。
それから、学園で女性に襲われた件についても書かれていて、息子を持つ責任感がない母親としてバッシングされているようだ。
そんな記事、事実無根だ。そんな事を書くなんて、酷い。奴隷のような扱いなんて一切されていないし、女性に襲われた件についても香織さんの問題じゃないだろう。責任とか、関係ない。それよりも、僕の注意不足が大きい。
「おそらく、この記事に書かれている情報を週刊誌に流したのは、都築精児だろう」
そう言ったのは、小池さんだった。僕も、そう思う。入院した件や、学園であった出来事について知っている彼。事実だけでなく嘘も交えて、香織さん達の立場を悪くするようなことを書かせた。
「都築精児は世論を味方にして、優くんの親権を取り戻そうと考えているようだ」
「ど、どうしよう、アイ。そんなことされたら、私達は不利になってしまうわ!?」
不安そうな顔をしながら慌てて、僕と小池さんを見る香織さん。どうすれば良いのかわからない、といった様子。しかし、そんな彼女に対して冷静になるように告げる小池さん。彼女は、とても落ち着いていた。
「安心しろ、カオリ。私達には正しい情報がある。このような嘘で不利になることは無い。落ち着いて対処すれば、世論も関係ないだろう」
「そうなの?」
「あぁ。むしろ、焦っているのは向こうの方だろうな。このような邪道な手を使ってきたということは、裁判では不利な立場にあるからだ」
自信満々な態度で、言い切る小池さん。そんな彼女の言葉を聞いて、落ち着く事ができた香織さん。
「だが、問題もある」
小池さんが、僕の方に視線を向ける。
「この記事によって、マスコミ連中が騒ぎ出すだろう。それで、しばらく君の周辺が騒がしくなると思う。学園に通うことや、外出することも難しくなるかもしれない」
「それは、ちょっと面倒ですね」
週刊誌に書かれていた記事の内容は嘘だけど、それをいちいち説明をして回るのは大変だ。ちゃんと説明したとして、信じてくれるかも怪しい。
対応の仕方を間違えれば、良くない方向へ転がっていく可能性も高い。事態が解決するまで、自宅で大人しくしておくのが一番だろう。
だから今日も、マスコミの人達には捕まらないように避けて帰ってきたのか。僕は小池さんの話を聞いて、今の面倒な状況について理解した。
基本的には、時間に余裕のある春姉さんが一緒に来てくれることに。通学の時には常に横に並んで歩いてくれて、電車に乗る時も付きっきりで守ってくれた。
今日も授業が終わり、校門前で迎えに来てくれるのを待っていた。すると、周りが騒がしくなってきた。学園の外の方から聞こえてくる声だ。何事だろうかと不思議に思っていると、春姉さんが慌てて駆け寄ってきた。
「良かった、無事に合流出来た」
「そんなに慌てて、どうしたの春姉さん?」
「その話をする前に、とりあえずここから早く離れよう」
「えっと、うん。わかった」
どうしたのだろう。疑問に思ったけど、詳しく聞く前に先に移動する。春姉さんと一緒に、正面の校門とは別の場所から出る。
どうやら、さっき外から聞こえてきた騒がしい声が関係しているようだけど。
「こっちの扉から出られるよ」
学園の裏にあった、小さな扉。学校用務員などが利用しているのだろうか、普段は使わないような場所だった。そこから外に出ることが出来るのだが、先に春姉さんが出ていく。そして、扉の先の道を確認していた。
「うん。奴らは、居ないみたいだ。気付かれないように、静かに行こう」
「わかった」
春姉さんに言われた通り、僕は無言のまま移動する。
そして、いつも歩く帰宅ルートから大回りして、最寄りの駅に向かった。駅に着くまで特に何もなかったが、改札前に人だかりが見えた。
大きなテレビカメラを持った人が居る。先日、学校紹介のテレビを取材された時に使われていたカメラを思い出した。つまり、あの人たちはメディア関係者なのかな。
「あれも、あんまり近寄らないほうが良さそうだな。仕方ない、タクシーを拾うか」
そう言って、近くに停まっていたタクシーに飛び乗った。そのまま、僕らは自宅へ帰る。わざわざタクシーに乗って帰るなんて、普段はしないことだが。それなりに、お金がかかった。
「良かった。無事に帰ってこれたのね」
家に帰るなり、香織さんが安心した表情を浮かべながら出迎えてくれた。リビングに入ると、弁護士である小池さんの姿もあった。
「おかえりなさい、優くん」
「えっと、ただいまです。小池さん」
「君が無事で安心したよ」
「ありがとうございます。でも今って、どういう状況なんですか?」
「詳しく説明しよう。とりあえず、座って聞いてくれ。カオリと春ちゃんも一緒に」
そう言われて、ソファに腰かける。僕を挟む形で右に春姉さんが、左に香織さんが座る。テーブルを挟んで向かい側に小池さんが座っていた。
小池さんの話によると、とある週刊誌の記事が原因らしい。
その内容は、僕の生活について書かれているらしい。朝早くから家事をさせられ、家族から奴隷のような扱いを受けているという。過労で入院するまで追い詰めるような酷い家庭環境だとか。そんな嘘が、記事に書かれていた。
それから、学園で女性に襲われた件についても書かれていて、息子を持つ責任感がない母親としてバッシングされているようだ。
そんな記事、事実無根だ。そんな事を書くなんて、酷い。奴隷のような扱いなんて一切されていないし、女性に襲われた件についても香織さんの問題じゃないだろう。責任とか、関係ない。それよりも、僕の注意不足が大きい。
「おそらく、この記事に書かれている情報を週刊誌に流したのは、都築精児だろう」
そう言ったのは、小池さんだった。僕も、そう思う。入院した件や、学園であった出来事について知っている彼。事実だけでなく嘘も交えて、香織さん達の立場を悪くするようなことを書かせた。
「都築精児は世論を味方にして、優くんの親権を取り戻そうと考えているようだ」
「ど、どうしよう、アイ。そんなことされたら、私達は不利になってしまうわ!?」
不安そうな顔をしながら慌てて、僕と小池さんを見る香織さん。どうすれば良いのかわからない、といった様子。しかし、そんな彼女に対して冷静になるように告げる小池さん。彼女は、とても落ち着いていた。
「安心しろ、カオリ。私達には正しい情報がある。このような嘘で不利になることは無い。落ち着いて対処すれば、世論も関係ないだろう」
「そうなの?」
「あぁ。むしろ、焦っているのは向こうの方だろうな。このような邪道な手を使ってきたということは、裁判では不利な立場にあるからだ」
自信満々な態度で、言い切る小池さん。そんな彼女の言葉を聞いて、落ち着く事ができた香織さん。
「だが、問題もある」
小池さんが、僕の方に視線を向ける。
「この記事によって、マスコミ連中が騒ぎ出すだろう。それで、しばらく君の周辺が騒がしくなると思う。学園に通うことや、外出することも難しくなるかもしれない」
「それは、ちょっと面倒ですね」
週刊誌に書かれていた記事の内容は嘘だけど、それをいちいち説明をして回るのは大変だ。ちゃんと説明したとして、信じてくれるかも怪しい。
対応の仕方を間違えれば、良くない方向へ転がっていく可能性も高い。事態が解決するまで、自宅で大人しくしておくのが一番だろう。
だから今日も、マスコミの人達には捕まらないように避けて帰ってきたのか。僕は小池さんの話を聞いて、今の面倒な状況について理解した。
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