30 / 33
第30話 死をもって償え ※ギオマスラヴ王子視点
しおりを挟む
「それで話とは、一体何だ?」
不機嫌そうな表情で座る父上を目の前にして、俺は緊張していた。ギロリと睨まれながら問われて、少し怖くもある。こんなに父上の機嫌が悪いのは仕事が忙しくて、疲れているからなのか。
腹いせに怒られたりするかもしれないから、さっさと話を終わらせてしまおうかと思い、俺は口を開いた。
「リザベットとの婚約を破棄しました」
「お前はまた、勝手にそんな事を……」
険しい顔つきで父上が言う。しかし、俺の気持ちも分かって欲しいものだ。彼女のした行為も許せない。
「彼女は不義を働いたので、婚約を破棄して処刑するように命じました」
「……話は、それだけか?」
「いえ。まだ、報告しておくことがあります」
王家とイステリッジ公爵家との関係を修復するために、もう一度エルミリアと婚約しようと手紙を送ったことを伝えた。すると、父上はため息をつく。それから、怒り出した。
「どうしてそう、面倒なことばかり起こすのだ!」
「ですが、父上! イステリッジ公爵家との関係修復は、重要な事でしょう?」
それから俺は、帝国へ行ってしまったイステリッジ公爵家が王国に戻ってくるべき理由を説明した。父上も、公爵家の力を認めていた。再び王国に戻ってきてくれたら嬉しいはず。
そのためにも、エルミリアとの関係を元通りにしなければいけない。婚約者だった頃に戻れば、きっと父上の疲れも癒えるはず。イステリッジ公爵家と王家の関係も。困難な状況になっている王国の現状も、全て元通りになるはず。
そのために大事なのが、俺とエルミリアの結婚。この前まで、そうなるはずだった予定を元通りにする。
だけど、エルミリアから返事がない。送った手紙が届いていないのかもしれない。だから今こそ、王家の力が必要だった。
「今現在、帝国に居ると思われるエルミリアのもとに手紙を届けるために、王である父上にも協力してほしいのです!」
俺が必死になって頼むと、父上は呆れたように頭を振った。まだ、理解してもらえないのか。もっと説明が必要なのか。理解してもらうまでは、何度でも諦めずに話を続けようと思った。それなのに。
「お前には、本当に期待していた。だが、その様子では無理そうだ。私の判断が全て間違っていた。それを認めないといけない。私自身も愚かだったことを」
「え?」
いきなり父上は、そんな事を言いだした。何を言っているんだ。今は、エルミリアに手紙を届ける方法を、一緒に考えてくれないといけないのに。
「きっと、変わってくれるだろうと思っていた。愚かな過ちをした後には後悔して、必ず良くなるだろうと。だが、お前は変わらなかった」
だから、父上は何を言って。
「王国に混乱を招いた罪で、死刑を命ずる! 死をもって償うのだ」
「待ってください、父上! どういうことですか!?」
意味が分からない。俺は父上に詰め寄ろうとしたけど、すぐ騎士たちに阻まれた。
「陛下の命令だ。大人しくしろ」
「は、離せッ! 私は、王国の未来のために頑張ってきたのにッ!」
どうしてこんな事になるんだ。これから、ようやく皆が幸せになれる国になるはずだったのに。
「王子である私が居なくなれば、王国の未来は大変なことに!」
「お前が居るほうが、王国は大変なことになる。もっと早く、決断するべきだった」
そう言い残して、父上は去って行った。一度も振り返らずに。本気で俺を処刑するというのか。
「ま、待って! 父上ェ!!」
俺の叫び声は、もう届かない。このままだと本当に処刑されてしまう。死ぬなんて絶対に嫌だ。 誰か助けて! 誰でも良いから! お願いだ、エルミリア!
どうして、こんな事に。
不機嫌そうな表情で座る父上を目の前にして、俺は緊張していた。ギロリと睨まれながら問われて、少し怖くもある。こんなに父上の機嫌が悪いのは仕事が忙しくて、疲れているからなのか。
腹いせに怒られたりするかもしれないから、さっさと話を終わらせてしまおうかと思い、俺は口を開いた。
「リザベットとの婚約を破棄しました」
「お前はまた、勝手にそんな事を……」
険しい顔つきで父上が言う。しかし、俺の気持ちも分かって欲しいものだ。彼女のした行為も許せない。
「彼女は不義を働いたので、婚約を破棄して処刑するように命じました」
「……話は、それだけか?」
「いえ。まだ、報告しておくことがあります」
王家とイステリッジ公爵家との関係を修復するために、もう一度エルミリアと婚約しようと手紙を送ったことを伝えた。すると、父上はため息をつく。それから、怒り出した。
「どうしてそう、面倒なことばかり起こすのだ!」
「ですが、父上! イステリッジ公爵家との関係修復は、重要な事でしょう?」
それから俺は、帝国へ行ってしまったイステリッジ公爵家が王国に戻ってくるべき理由を説明した。父上も、公爵家の力を認めていた。再び王国に戻ってきてくれたら嬉しいはず。
そのためにも、エルミリアとの関係を元通りにしなければいけない。婚約者だった頃に戻れば、きっと父上の疲れも癒えるはず。イステリッジ公爵家と王家の関係も。困難な状況になっている王国の現状も、全て元通りになるはず。
そのために大事なのが、俺とエルミリアの結婚。この前まで、そうなるはずだった予定を元通りにする。
だけど、エルミリアから返事がない。送った手紙が届いていないのかもしれない。だから今こそ、王家の力が必要だった。
「今現在、帝国に居ると思われるエルミリアのもとに手紙を届けるために、王である父上にも協力してほしいのです!」
俺が必死になって頼むと、父上は呆れたように頭を振った。まだ、理解してもらえないのか。もっと説明が必要なのか。理解してもらうまでは、何度でも諦めずに話を続けようと思った。それなのに。
「お前には、本当に期待していた。だが、その様子では無理そうだ。私の判断が全て間違っていた。それを認めないといけない。私自身も愚かだったことを」
「え?」
いきなり父上は、そんな事を言いだした。何を言っているんだ。今は、エルミリアに手紙を届ける方法を、一緒に考えてくれないといけないのに。
「きっと、変わってくれるだろうと思っていた。愚かな過ちをした後には後悔して、必ず良くなるだろうと。だが、お前は変わらなかった」
だから、父上は何を言って。
「王国に混乱を招いた罪で、死刑を命ずる! 死をもって償うのだ」
「待ってください、父上! どういうことですか!?」
意味が分からない。俺は父上に詰め寄ろうとしたけど、すぐ騎士たちに阻まれた。
「陛下の命令だ。大人しくしろ」
「は、離せッ! 私は、王国の未来のために頑張ってきたのにッ!」
どうしてこんな事になるんだ。これから、ようやく皆が幸せになれる国になるはずだったのに。
「王子である私が居なくなれば、王国の未来は大変なことに!」
「お前が居るほうが、王国は大変なことになる。もっと早く、決断するべきだった」
そう言い残して、父上は去って行った。一度も振り返らずに。本気で俺を処刑するというのか。
「ま、待って! 父上ェ!!」
俺の叫び声は、もう届かない。このままだと本当に処刑されてしまう。死ぬなんて絶対に嫌だ。 誰か助けて! 誰でも良いから! お願いだ、エルミリア!
どうして、こんな事に。
278
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の私、計画通り追放されました ~無能な婚約者と傾国の未来を捨てて、隣国で大商人になります~
希羽
恋愛
「ええ、喜んで国を去りましょう。――全て、私の計算通りですわ」
才色兼備と謳われた公爵令嬢セラフィーナは、卒業パーティーの場で、婚約者である王子から婚約破棄を突きつけられる。聖女を虐げた「悪役令嬢」として、満座の中で断罪される彼女。
しかし、その顔に悲壮感はない。むしろ、彼女は内心でほくそ笑んでいた――『計画通り』と。
無能な婚約者と、沈みゆく国の未来をとうに見限っていた彼女にとって、自ら悪役の汚名を着て国を追われることこそが、完璧なシナリオだったのだ。
莫大な手切れ金を手に、自由都市で商人『セーラ』として第二の人生を歩み始めた彼女。その類まれなる才覚は、やがて大陸の経済を揺るがすほどの渦を巻き起こしていく。
一方、有能な彼女を失った祖国は坂道を転がるように没落。愚かな元婚約者たちが、彼女の真価に気づき後悔した時、物語は最高のカタルシスを迎える――。
悪役令嬢に相応しいエンディング
無色
恋愛
月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。
ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。
さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。
ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。
だが彼らは愚かにも知らなかった。
ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。
そして、待ち受けるエンディングを。
婚約破棄が私を笑顔にした
夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」
学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。
そこに聖女であるアメリアがやってくる。
フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。
彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。
短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。
そちらがその気なら、こちらもそれなりに。
直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。
それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。
真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。
※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。
リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。
※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。
…ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº…
☻2021.04.23 183,747pt/24h☻
★HOTランキング2位
★人気ランキング7位
たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*)
ありがとうございます!
婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?
鶯埜 餡
恋愛
バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。
今ですか?
めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?
「君の話はつまらない」と言われて婚約を破棄されましたが、本当につまらないのはあなたの方ですよ。
冬吹せいら
恋愛
「君の話はつまらない」
公爵令息のハメッド・リベルトンに婚約破棄をされた伯爵令嬢、リゼッタ・アリスベル。
リゼッタは聡明な美少女だ。
しかし、ハメッドはそんなリゼッタと婚約を破棄し、子爵令嬢のアイナ・ゴールドハンと婚約を結び直す。
その一方、リゼッタに好意を寄せていた侯爵家の令息が、彼女の家を訪れて……?
お前との婚約は、ここで破棄する!
ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」
華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。
一瞬の静寂の後、会場がどよめく。
私は心の中でため息をついた。
【完結】お姉様!脱お花畑いたしましょう
との
恋愛
「私と結婚して頂けますか?」
今日は人生で最高に幸せな日ですわ。リオンから結婚を申し込まれましたの。
真実の愛だそうです。
ホントに? お花畑のお姉様ですから、とっても心配です。私の中のお姉様情報には引っかかっていない方ですし。
家族のため頑張って、脱お花畑目指していただきます。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。不慣れな点、多々あるかと思います。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる